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悪役令息の従者に転職しました  作者:   *  ゆるゆ


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27/54

報告はスパダリで




 とん


 冒険者同盟の3階建ての邸の前に降り立った透夜は、さわやかに両開きの扉を開けた。


「やあ、戻ったよ」


 さわやかに髪を、かきあげてみた!


 今度こそ決まったぜ──!

 ふふん、俺のスパダリ振りに、ひれふすがいい──!


 鼻高々で、胸を反らした。



 受付に、おじちゃんは、いなかった。


『現在、仮眠中。緊急のご用の方は、呼び鈴を鳴らしてください』

 札が立ってた。


 ……誰も見てなかったよ。



「うぷぷぷぷぷ!」


 楽し気な声に振り返る。


「トゥヤ、お、かえり」

「ユィル、ロロァ、ぶじ」


 孤児仲間が胸を張った。


「……皆のほうが、スパダリだよ」


 うなだれる透夜の肩を、やさしい手が、ぽふぽふ慰めてくれた。



 孤児仲間と交代で見張りをしつつ少し眠ったら夜が明けた。

 ほんのわずかな睡眠で48時間連続で働ける技能を、暗殺人形だった皆は習得している。

 勿論、透夜も。

 こきりと首を鳴らして起きあがったら、いつもどおり起動だ。


 受付にゆくと眠そうな目をこすりながら、おじちゃんが手を挙げる。


「おー、おあよー、ぼっちゃん。眠れたか?」


「ああ、皆に寝床をありがとう。これが証拠だ」


 仮眠明けのおじちゃんに、透夜は書類を差しだした。


 いちおう髪も、かきあげてみた。


 おじちゃん、書類を見てた。


 ──くっ!



「金庫のなかに色々あったから、まとめて持ってきた。こっちが映像記録」


 透夜は魔道具を起動する。


『げへへへへ!』


 笑うぷるぷる腹とひげのおじちゃんがお金をやり取りし、書類をやり取りしているところが、かんぺきに映っていた。


「ほへ?」


 受付のおじちゃんが、あんぐり口を開ける。


「依頼完了! 家をくれ!」


 どーん!


 農家の小屋の見取り図の羊皮紙を叩きつける俺って、スパダリ!


『そこって豪邸を請求するところなんじゃ?』とか

『農家の小屋って……』とか

『荒れ放題なんだろ』とか

『ないわー』とか

 全く全然、微塵も聞こえないんだからな!


 ちょっと涙目になった透夜の後ろで、起きてきたらしいユィルが、恥ずかしそうに目をこすった。

 その後ろで、ちっちゃなあるじの藍の髪が、ぽわぽわ揺れる。


「……とーや? おかえり!」


 ぎゅう


 抱きついてくれるロロァが、天使だ。


「けが、しなかった?」


 心配そうな、大きな藍の瞳で見あげてくれる。


「大丈夫です、わがきみ。よくお眠りになられましたか?」


「うん!」


 真っ赤なほっぺでうなずいてくれるあるじが、天使だ。



 後ろで透夜が提出した書類をめくったおじちゃんが


「えぇ!? はぁ!? こ、これ、この情報全部……うぎゃあ!」


 たるたるのお腹と一緒に跳びあがる。

 チョビひげまで、ちょっとバサバサしてる。


「これは商業同盟を越えて、帝都警護団が出動するぞ!」


 おじちゃんの手の中で『お隣のお兄さんの下着の色』が輝いてる。


 透夜は、いかめしく、うなずいた。


「そう思って持ってきたんだよ」


 持ってたら、だめ!


「お、おそらく、商業同盟と、被害に遭った商家から謝礼金が届くだろうな、帝都警護団からの感謝状も」


 謝礼金、うれしい!

 今回の報酬は家を購入で使い果たす予定だからな。皆のご飯が買えるぞ!


「おお! 悪役の初仕事としては華々しいな!」


 ふふんと透夜は胸を張る。



「……悪役なの……?」


 おじちゃんが引きつってる。








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