ぼうけんしゃ?
あるじが、かわいい。
めちゃくちゃ、かわいい。
期待のおめめが、きらきらしてる。
………………しかし、ぼうけんしゃ……?
あの、ドガーン、バゴーン、ズガーンの?
こんなにちっちゃくて、かわいーあるじが?
「冒険者?」
こくこくロロァがうなずく。
「魔物を倒して、お金を稼ぐの!
町の皆がね、わーって言ってくれるの。
……治癒の力、きもちわるく、なぃ、みたぃなの……」
揺れる藍の瞳に、息をのんだ透夜は叫ぶ。
「わがきみは、奇跡の力を授かった、至高の方です──!」
びくんとふるえて、びっくりしたように透夜を見あげるロロァをなだめるように、ユィルのちっちゃな手がぽんぽんした。
「ロロァ、きみは奇跡の子だ。
国の希望であり、世界の希望。
きみの家族は、自分が持っていない力を持つきみがうらやましくて、だから酷い虐待を。
そんな輩の言葉なんて、ひと欠片も、おぼえていなくていいんだよ」
ユィルのほうが、圧倒的にスパダリな件について。
……いやもう顔のスペックからして圧倒的だけど!
「ふぇ……ユィル……」
やさしくロロァの髪をなでなでしてあげるユィルこそが、スパダリ。
これってやっぱり、ユィル×ロロァなのかな?
俺は見守る係なのかな……?
遠い目になる透夜の肩を、孤児仲間の皆が、ぽんぽんしてくれる。
そっとハンカチを差しだしてくれた。
泣いてた。
「とーや? だぃじょうぶ?」
心配してくれるロロァが、天使だ。
「ぼーけんしゃ、できる、かな……?」
期待のあるじの、きらきらの目は大変に愛らしいのですが!
勇者になりたい気もちも、とってもよく、わかるのですが!
ちっちゃい頃の夢だよね!
しかし
「わがきみ、それは帝都の外に出ないと、できないのです。我々は帝都から出られませんので……」
「あぅう」
人生最大の夢を潰された、泣きだしそうな顔になってる……! 大変だ!
「わがきみ、おひとりだけならできますよ!」
はげましてみた!
「とーやと一緒じゃなきゃ、こわぃよう!」
抱きつかれた。
至福をかみしめた。
「……トゥヤの、あんぽんたん」
ぷいと横を向いて、透夜のすそを、ぎゅっとにぎってつぶやくユィルの唇が、きゅっと、とがってるんですが!
そうか、両手に花って、こういうことを言うんだな。
子どもに、なつかれてるだけとか、全く全然聞こえない!
ああ、欠片だって、聞こえないさ!
これが、俺の史上最大のしあわせだ──!
「トゥヤ」
孤児仲間が、そっとハンカチを差しだしてくれた。
泣いてた。
ハンカチ、ありがとうございました。
「しかし、わがきみ、冒険者というのは、よい策かもしれません」
透夜は首をひねる。
「魔物を倒したり、迷宮を踏破するのも冒険者の仕事ですが、偵察や監視を請け負ったりもしますからね。俺たちの専売特許です。それを売りにした会社を立ちあげてみましょうか」
「目立つのはよくないぞ。国外逃亡が目的なのだろう?」
ユィルの指摘に、透夜は笑う。
「俺たちの顔と名をおぼえている者が、どれくらいいる? 秘されて育てられていたなら、ユィルでさえ、両親だけしか知らないなんじゃないか?」
ぐ、と詰まったユィルは、さみしそうに、うなずいた。




