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悪役令息の従者に転職しました  作者:   *  ゆるゆ


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19/54

がんばったのです




 皆が通れないことを理解したロロァが、ちっちゃな手を組み、透明な壁の前で膝をついた。


「精霊さん、おねがい! 皆を通して!」


 キュアァアァ──!


 祈るロロァの身体から、やさしい緑の魔力があふれてく。


 応えようと精霊さんが輝くのが見えた気がした、瞬間



「──っ、ぁ……!」


 壊れそうにガリガリのちっちゃな身体が、くずおれた。



「わがきみ──!」


 抱きとめる透夜の腕のなかで、ぼんやり瞬くロロァの焦点が、さまよった。



「魔力枯渇──!? 俺の魔力を──!」


 透夜からあふれる魔力が、ロロァの身体を包みこむ。


 真っ青なロロァを見つめたユィルは目をふせた。


「魔力枯渇は、今まで身体を巡り、強化してくれていた魔力が消え失せることを意味する。ロロァのこの身体では、魔力が枯渇すると死に至るやもしれぬ」


「わがきみ──!」


 涙と鼻水でダラダラになりながら、必死でロロァを抱きしめる透夜を、ユィルのちっちゃな手がぽんぽんする。


「トゥヤの魔力が、今はロロァを補完している。何とか持つだろう」



「……ふぇ、とーや、僕……」


「しゃべっては、いけません!

 大丈夫ですロロァさま、俺の魔力をすべてお渡ししますから──!」


『それ過剰供給で逆に死ぬから!』

『僕らが調整するから、何もするな!』


 精霊さんたちに、しかられた。


「無理をすると、トゥヤも私も皆も心配する。

 できないことに挑む勇気は素晴らしいが、自らの限界を知るのも大切なことだ」


 やさしくロロァの髪をなでるユィルに、細い息のロロァはしょんぼりしたように目をふせる。


「……ごめん、なさい……めぃわく……」


「そんなこと、絶対絶対絶対ないから!

 我があるじは、至高だから──!」


 絶叫する透夜に、孤児の仲間たちが生あたたかい目になってる。





 透夜の精霊さんたちがロロァを守ってくれる。

 それでも倒れたロロァが落ち着くまで、しばらくかかった。


 透明な硬い壁は、相も変わらずそびえ立つ。


 忌々しい壁を、ぽこんとぱんちする透夜の隣で、ユィルが吐息した。


「ロロァがもっとふっくらして、健康になって、更にもっと精霊さんと仲良くなって魔力が強くなった、あかつきには結界を皆で通れるやもしれんが、今は無理だな」


 ユィルの言葉に、透夜もうなずく。


「無理をして、わがきみがまたお倒れになったら大変だ。……となると、帝都にいるしかない訳だが……」


 透夜の頭のなかにある帰る場所は、孤児院しかない。


「……孤児院に戻るのは悪手だな。帝家の庭だ」


 心配する透夜に抱っこされたままのロロァが、そうっと手をあげた。


「あ、あの……とーや……」


「何でしょう、わがきみ」


 無自覚なとろけた顔で微笑んで、抱っこの腕をやさしく強くしたら、ロロァが赤い頬で、ささやいた。


「僕、僕ね、お話、読んだことあるの。

 あの、とーやみたぃに、かっこよくて、いーなって思って……」


 今、すてきな幻聴が聞こえた気がするな!


 こーゆー時にスパダリなら、キリっとした顔で、うなずくはずだ。

 ……ふつーにありえない芸当じゃないか……?

 しかし今世の俺はスパダリのはずだ、やってやる!


 にやけ下がる頬をしかって微笑む透夜の腕のなかで、ロロァのきらきらの目が、透夜を見あげる。



「僕、ぼーけんしゃ、なりたい!」



 かわいい。


 天使だ。


 






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