強制力?
さっさと出発したいのに、皆の明るい未来を阻むのは、目に見えない、なんか硬い壁だ!
「何ですか、この壁」
ぐりんと後ろを振り向いたら、透夜の背中でユィルは首をひねる。
「おそらく我が国、違うな、バギォ帝国を守るための結界か何かだと思うが──」
ユィルが伸ばした指が硬い何かにふれて、コツリと止まる。
確かにあるのに、触れられるのに、見えない。
不思議そうに壁をコツコツしたユィルは、首をかしげた。
「犯罪者などを通さぬようにする結界はあったと思うが、我らは登録されていないと思う。登録して脱出を阻止するほどでもないから」
なるほど。
腕を組んだ透夜は、うなる。
「じゃあもしかしてゲームの強制力なのかな? ユィルと俺たちは帝都で死ななければならない、ロロァは悪役令息にならなければいけない?」
「きょーせーりょく?」
首をかしげるロロァが、ごちんしたおでこを自分で緑の光で癒しているのに、ユィルが目をみはる。
「き、きみは治癒魔法が使えるのか!」
「首、痛くした? 治す? 精霊さん、おねがい!」
ぽわぽわロロァの掌からあふれた光が、ユィルの首に降りそそぐ。
「おお! 痛くなくなった! ありがとう!」
手をにぎられたロロァの藍の瞳が、まるくなる。
うつむくロロァのさらさらになった藍の髪が、頼りなげに揺れた。
「……あ、あの、あの、きもちわるく、ない……?」
そうっと上目遣いで見あげるロロァに、ユィルは氷の目をむいた。
「まさか! 奇跡の子だぞ!」
叫んだユィルが、つぶやいた。
「そうか、奇跡の子、治癒魔法が使える民を、帝都から出さぬように結界が設定されているのだ。きみに仲間として認定された者も、出られなくなってしまうのかもしれない」
「結界なら、解除方法がある?」
「……ある。王族の伴侶となると、自由に行き来できるようになる」
…………………………。
「え、それって、ユィル×ロロァ、もしくはロロァ×ユィルってこと!? え、俺じゃないの──!?」
泣きたい。
せっかくの異世界転生なのに、せっかく主が見つかったのに、見守るだけの脇役か──!
絶望に膝を折った透夜の肩を、ユィルがぽふぽふする。
「おそらく私は王族として認定されていないから、ロロァが帝太子の伴侶となるなら帝都を出られる、ということだと思う」
「絶対いや」
断言する透夜に、ユィルのほうが引いてる。
「……え……?」
「ロロァと将来を約束してたのに、主人公がかわいーからってケツ振って、ロロァを踏みにじって主人公と結ばれるような王子なんか、最低だ──!」
BLゲームマスターなのに『どき☆ワク☆イケメンパラダイス♡』を全否定する絶叫を放ってしまった。
いや、自分が主人公の時は、美青年ハーレムカモンだよ。
逆ハールート最高だよ。
ゲームの中ならな!
現実で、やってみて?
ドひんしゅくだから。
あれはゲームの中だからこそ尊い。
現実でやったら、めちゃくちゃ、きらわれる!
ぴんくの髪の主人公叩き、こわい! オンラインBL小説で、感想欄が、すごいことになってるよ!
「……トゥヤの言うことは、時々理解不能だな」
ユィルが遠い目になってる。
「癖だと思ってくれ」
うむうむした透夜は、確かにあるのに見えない壁を見あげた。




