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悪役令息の従者に転職しました  作者:   *  ゆるゆ


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しあわせ家族計画




 透夜は、ふふんと胸を張る。


「はい、形勢逆転。ユィル殿下は確か、近衛も騎士も使えなかったような気が」


 ほとんど砕けてる記憶だけど、たぶん!


「俺はさっき、殿下の魔法を叩き潰した。無詠唱魔法なら、俺のほうが上です。まだやりますか?」


 ぐ、と唇を噛んだユィルは、うなだれた。


「……よくもやってくれたな。私から暗殺人形を奪うのは、私に『死ね』ということだ」


 物騒な言葉に、透夜は息を呑む。


「そうでしたっけ?」


 あんぐり口を開けたユィルが吐息する。


「何を今更と思ったが……そうか、49番、きみの記憶は壊されているんだね」


 首を傾げた透夜は、うなずいた。


 49番として生きた記憶は、ぼんやりとしかない。

 霞が掛かったかのように、思いだせない。

 叩きこまれた隠密だの監視だの偵察だの暗殺だのの身体記憶ばかりが鮮明だった。


 そうするために、記憶を壊すのだろう。

 指令に一切の疑問を抱かず、着実に遂行するように。


「ほんとうは帝太子は私なんだ。血統のうえからも、年齢でも、能力でも。

 だが私は、弟王子が帝太子だった兄を孕ませて生まれた禁忌の子、可愛がってくれたのは両親だけだ。バギォ帝の汚点として毎日暗殺部隊がやってくる」


 ユィルは顔をあげる。


「止めてくれたのは、暗殺人形の皆だ。49番、きみもね」


 なんかいっぱい来ると思ってた!


 そうか、ここはBLゲームの世界だから、ふつーに魔法で子どもができるらしい。

 魔法の発達した国では、魔力の繭のなかで胎児を育てるから母体の負担がとても少ないという。


 と、いうことは、俺とロロァの子どもも……!


 きゃ──!


 両手を両頬にあててもだもだする透夜に、ユィルの目が遠くなる。


「今、私は、切なくて辛い話をしたように思うんだけど……」


「申し訳ありません、殿下。ちょっと将来の夢が」


 しあわせ家族計画が!


「暗殺人形の皆がいなくなったら、私は、ほどなく殺されるだろう」


 予言のようにつぶやいたユィルが、目を伏せる。


 透夜はちょっと、考えた。


 帝家の血の凝縮ユィル殿下は、本来なら帝位継承権第一位であるはずなのにBLゲームには一切出て来なかった。

 隠しキャラでもない。

 フルコンプした。スチルも全部集めた。100%だった、間違いない。


 だって、BLゲームマスターだから!



『どき☆ワク☆イケメンパラダイス♡』は主人公が16歳のときの魔力覚醒から始まるので、ロロァが5歳なことを考えると今から11年後の話だ。


 ということは、おそらくユィル殿下は、暗殺人形に守ってもらっていても、力及ばず暗殺されてしまったのだろう。


 暗殺人形たちも、一緒に。


 帝家の暗部をすべて、皆殺しにしたのかもしれない。


 クリーンな帝家を、主人公にアピールするために。



『どき☆ワク☆イケメンパラダイス♡』は、そういう世界だ。

 ベタなタイトル通り王道の展開を遂行するため、無茶が通る。



『悪役』烙印を押された者は、問答無用で悲惨な最期を迎える。


『楽しいざまぁ』のために。



 プレイしている人たちには、とても楽しいお約束な展開なのだと思う。


 でも



「悪役にとったら、くそゲーだよな」



 ふんと透夜は鼻を鳴らした。









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