表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

おめめを拝借 小話の公園

さようならバス

作者: 松本遊心

4-

 朝のバスはいつになく、とんでもなく混んでいた。いや、その表現は適切ではない。何かの詰め放題の袋のように人・ひと・ヒトで埋め尽くされている。

 苦しい・・・。きのう焼酎を飲みすぎたようだ。ユーチューブをあれこれザッピングしていたら、あっというまに日付は変わり、2リットルパックも空になり気づけば3時をいくらか過ぎていた。よく6時に起きれたもんだ。

 気持ち悪い。頭が痛い。眠い。(のど)が渇く。神様お願いします、ぼくの体内のネガティブ要素をすべて取り払ってください。無理か。知ってる。

 あー、吐き気がしてきた。というか、この前に立ってるおじさんのポマードか何かわかんないけど、整髪料の匂いがエグいんだけど・・・。それに体臭もひどいなぁ、ワイシャツの(えり)が黒ずんでるし。

 あー、ほんともどしそう。後ろに立ってる同年代のマッチョくん。股間が当たってるんだよ、もうずーっと。ぼくのお尻にその不快な温もりはいらないから。あんた自覚あるよね?半身ずらしてくれよお願いだから。

 あー、もう喉元まできてる。マジでやばいって。顔を左に向けると厚化粧のおばさんと目が合った。きつい。香水つけすぎだって、あんた。顔と首の色が明らかに違うって。もっと明るい鏡面の前でお化粧されてはどうですか?余計なお世話ですね、すみません。

 あー、限界が近い。たまらず右に顔を向けると、いかにもヲタ風のまばらひげがこちらを向いてあくびをしていた。うおーっ!吐く。くち筋肉。漏らすな一滴たりとも。口臭がえげつないって!!がまん、がまん、がまんしろ。さらにこの男はワキガだよ〜っ。死ぬって、マジで。がんばれ、がんばれ、がんばれ。せめて吊革を持つ手を逆にしてくれ~っ!!

 頭が沸騰しかかってる。どうしたらいいんだ?バス車内の中央付近でまったく身動きできないこの状況。目的地はまだ先だけど、とにかく次の停留所でいったん降りて、吐こう。もう手で口を押さえてないとすぐに出る。

 誰か窓を開けてくれ。みんなわかってるでしょ、この車内の空気を。もうどぶだよ、どぶ。というか、次のバス停まで遠くない?あとひとつでも負荷要素が加われば、ぼくはマーライオン確定です。

 脂汗が背中をしたたる中、ようやく車内アナウンスがあり、バスは停車した。だが、前後の扉が開く音は聴こえたが乗降の気配はまったくない。あわてて、ぼくは降りますと口を開いたつもりだったが・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ