第14話「オービタル・パッチ ― 無重力カーネルパニック」
きょうからげつようですねー!皆さんお疲れ様です!
バグ修正したものが全て戻されたら泡吹いて倒れます꙳⋆(lllᵔ⩌ᵔlll)౨♪
みんな頑張れ!
ではでは次の更新で!明日の22次予定です!
セレシアの雷雲が晴れた翌朝。
私たちホワイトハッカー連合(チーム AYK)は、市庁上層に設置された RevolutionOS 連邦統合ターミナル で束の間の休息を取っていた。
そこへ――地上ではなく、軌道ステーション〈オービタル・パッチ〉 からの最高優先度“S0S”が駆け込んできた。
--- URGENT BROADCAST ---
FROM : Orbital Patch Control
TO : RevolutionOS Core Maintainer (ayk)
SIG : COSMOKERNEL_PANIC / GRAVITY_DECAY
DESC : Planet‐wide patch broadcast stuck. Station altitude falling.
SIG-VOID pattern resembles Ω activity.
ACTION: Immediate on-site hotfix required.
Kuro が端末をスクロールし、尻尾を立てた。
「“CosmoKernel”は惑星全域へパッチを撒く中継 OS だ。ここが落ちたら、今までの都市パッチ全てロールバックされる」
Elma が額に手を当てる。「要するにセルディア全ネットワークが旧バージョンに逆戻り。バグも復活、しかも高度降下でステーション自体が質量兵器になる」
D0VA は短く息を吐いた。「急がねぇと、俺たちの修正が無になるどころか大惨事だ」
リナの瞳が不安に揺れる。「しかもΩ(オメガ)の痕跡……まだ黒幕が動いてる」
こうして私たちは、セレシアの臨時回復式を途中で抜け、成層圏突破艇〈アークレット〉 に乗り込んだ。
目的は二つ。
1)CosmoKernel のカーネルパニックを解消し、惑星規模パッチ網を守る。
2)Ω(または模倣犯)の新シグナル “SIG-VOID” の正体を突き止める。
都市救援から惑星レベル──戦場は、ついに宇宙へ。
「コードは嘘をつかない。なら、宇宙にだってパッチを当てられる」
私はそう言ってシートベルトを締めた。
◆
〈アークレット〉は青い大気を突き抜け、10 分後には漆黒の宇宙へ。
窓の外、星座を背に銀色の環を描く巨大ステーションが見える。
軌道ステーション〈オービタル・パッチ〉――惑星セルディア公認“最終更新拠点”、そして Ω が最後に残した謎シグナルの発信源。
機体の自動接近アラートが鳴った。
Kuro「ステーションから応答なし、でもドッキングリングは開いてる。緊急モードのまま自動招待だ」
Elma「無人化の可能性高いわね。気を付けて」
私は端末に再びメモを残す。
// mission: fix CosmoKernel & trace SIG-VOID
やがて〈アークレット〉がドッキングリングへ吸い込まれるように収まり、ハッチが開いた――。
成層圏を超え、宇宙へにじむ蒼い地球の外縁――
軌道ステーション〈オービタル・パッチ〉が巨大なパラボラ群を展開し、銀色の環を描いて浮かんでいる。ここは惑星全域へパッチをブロードキャストする【最終更新拠点】。
だが現在、ステーションのメイン OS “CosmoKernel” が Kernel Panic を連発。自動軌道修正が死亡し、慣性のまま高度が降下している。
* * *
◆異常ログ(抜粋)
・kernel panic: attempt to write to read-only planet_map.bin
・再起動試行回数:127 → 128 → 129(∞ループ)
・推定クラッシュ理由:未知シグナル SIG-VOID
Kuro「SIG-VOIDって見たことないシグナルだ。発信元不明」
Elma「メモリダンプに“無重力ポインタ”が混入、スタックアドレスが NaN 化してる」
D0VA 眉をひそめる。「こりゃ空のバグか本物かわかんねぇ」
私は端末にメモ。
// suspect: zero_g_pointer
* * *
◆ドッキング
耐熱船〈アークレット〉をステーションのドッキングリングへ接続。
ハッチを抜けると、人工重力がすでに停止し、工具や紙片がゆっくり漂う。
リナが妖粉を散らし「空気は正常。でも魔力流がほぼゼロだよ」
迎えは誰もいない。照明は非常灯のみ、赤い警告ランプが回転している。
* * *
◆管制コアへ
無重力を利用して空中通路を滑空。中央モジュール〈カーネルコア〉は、直径 50m の球殻で、表面に行列ルーンが流れている。
ハッチはロック。Elma がハッシングルーンを照射、10 桁暗号を即時突破した。
中に入ると、球殻中央で水晶サーバブロックが高速回転し、青白い稲妻めいた魔力が迸る。
D0VA「でも回ってるだけで処理してねぇな」
Elma「スタックフレームが全部深度 NaN——“無重力ポインタ”が悪さしている」
* * *
◆黒幕の足跡――SIG-VOID の発信源
スキャンを走らせると、コアの裏側に小型端末が物理接続されていた。
Kuro「外部デバイス“Black Null”。MAC アドレス偽装」
私は端末を覗き、コードの末尾に1行コメントを発見。
// greetz from Ω
Elma「また判決機構Ω? いや署名違うわ……“Ω_Shadow”」
リナ「模倣犯!?」
* * *
◆カーネルパニック解消プラン
1. Kuro ― Shadow 端末の物理リンク切断、SIG-VOID ブロック
2. Elma ― スタックフレーム再構築、NaN ポインタをゼロ補正
3. D0VA ― 回転サーバを一時停止させる慣性逆回転ハンマー
4. リナ ― 漂う魔力漏洩パケットを妖粉で吸着・色分け
5. ayk ― // DISABLE: zero_g_pointer() → safe_pointer(g!=0) へ置換
私は深呼吸し、球殻壁をブーツで蹴ってコア中央へ滑空。
ここで無重力バグを止めなければ、ステーションごと地表へ落下する。
* * *
◆ゼロG突入作業
D0VA が反作用ハンマーでサーバ回転をブレーキ。慣性がゼロに近づくと、浮遊していた端末群が動きを止めた。
Elma がタブレットをディスプレイ化、スタックトレースの“深度 NaN”をリストア用にマッピング。
Kuro は Shadow 端末を引き抜こうとするが、ケーブルが“黒いスライム状魔力”に変形し彼の腕に絡みつく。
リナが妖粉を噴射し、スライム表面を緑→橙→紅へと変色させ、安全カッタ位置を示す。
D0VA のハンマー一閃。ケーブルが切断され、SIG-VOID ストームが停止。
私は safe_pointer をコミット。
// DISABLE: zero_g_pointer()
// INSERT: safe_pointer(g > 0 ? g : 9.8)
コア稼働音がピタリと止まり、次の瞬間、蒼い再起動エンブレムが浮かぶ。
> CosmoKernel v3.14 : reboot … completed
> external_broadcast = READY
* * *
◆Shadow の正体
切断した端末の外装が剥がれ、微細なホログラムが残留メッセージを映した。
「真なる Ω は未だ到達せず。蒼い稲妻よ、軌道の高みで待つ」
Elma「模倣犯じゃなく、リモートプローブ。Ω 本体は別にいる」
Kuro「さらなる上空? ラグランジュ拠点か惑星外か…」
リナが星窓を見上げ、瞳を輝かせる。
* * *
◆軌道祝宴
非常用人工重力が復旧し、回廊の自販ノズルからミッドナイトブルーの炭酸飲料が振る舞われた。“宇宙ソーダ”の甘味と微発光が喉を冷やす。
ステーション広報ドローンが接近し、アヤカたちへ宇宙パッチ勲章を投影。
D0VA がバッジをハンマーに貼り付け「鉄にも勲章は似合う」
Elma がダンプ画面を閉じ、頬を緩めた。「NaN を潰す快感、クセになるわね」
Kuro はアンテナを折り畳み、耳をピクリ。「Ω 本体を追い出す帯域、今から探るか」
リナは窓辺に立ち、地球の蒼い光を指先でなぞる。
私は端末に branch deep_space と入力。
「最後のコミットは――惑星外!」
* * *