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エピソード18:グアンロンチョン包囲戦⑦ クライマックス!全員対ヂーハオ

ロンウェイは再び立ち上がった。全身傷だらけで血まみれ、ふらつきながらも必死に戦闘姿勢を取ろうとするが、明らかに立っているのがやっとだった。


「まだ戦うつもりか、ガキ?どうやって勝つ気だ?弾だらけで、俺にボコられて、(チー)も尽きて、天の宝珠も奪われたんだぞ?お前はただ運命を引き延ばしただけだ」


「運命...って...悪党が...敗北する...ことだ...」


ヂーハオが戦闘姿勢を取ろうとした瞬間、フェイフォンとヂーリーが現場に到着する。ヂーリーは全身真っ黒に変貌したヂーハオの姿を見て衝撃を受ける。


周囲にはまだピシャーチャの盗賊10人が残っていた。15人の警備兵は地面に倒れている。共同館の入口は破壊され、ロンウェイが作った炎の壁はヂーハオが宝珠を奪った時に消えていた。


ヂーリーはバイクから降り、ゆっくりとヂーハオに向かって歩み寄る。


「ヂーハオ...?君...いったいどうしたんだ?まさか...本当に君がこんなことをするとは...グアンロンチョンは君の故郷だ、家族がいるだろう」


「ああ、親父か。ようやく来たな。知ってるか親父、力が俺の目を開かせてくれた。ポタラ寺院の和尚どもはみんな『邪気(シエチー)は危険だ、毒だ』って言ってた。だが見ろよ、使い方を覚えたら前よりずっと強くなれたんだ」


邪気(シエチー)は人を堕落させるって言うが、本当は真実を見せてくれるだけだ。道徳だの正義だのってのは、人々を縛り付け、本来の自分になるのを妨げるための枷に過ぎない」


「違う!それは真実じゃない!君の本質は凶悪な盗賊なんかじゃない!君は才能ある努力家で、自分のルーツを誇りに思う子だった!ポタラ寺院の僧として人々を守ることを誇りに思ってたじゃないか!君の運命が盗賊になることなんてありえない!」


「それは親父の期待でしかない!真実から目を背ける言い訳だ!ポタラ寺院こそ『世界を違う目で見れば真実が見える』と教えてくれたじゃないか。だが、その真実に耐えられる力がある者は少ない...親父のようにな」


ヂーハオがヂーリーに近づく。ヂーリーは反応しない。


「親父が息子の真実に向き合えないからこそ、グアンロンチョンのリーダーとして正しい決断ができず、ためらうんだ。そのためらいが、俺がこの街を滅ぼし、皆殺しにするのを許すことになる」


ヂーリーの頬を涙が伝う。


「たしかに...君の言う通りかもしれないな、ヂーハオ。だが、グアンロンチョンのリーダーになる前から、私は君の父親だった。それが一番大事な『役職』だ。父親は最後まで息子を信じるものだ」


「残念!ならば...死ね。人を盲信するなってことを地獄で学べ!」


ヂーハオがヂーリーに向かって手を上げた瞬間、フェイフォンがバイクでヂーリーを引き寄せながらヂーハオに体当たりをかます。


「ブラックフェイス気取りかよ、このバカ野郎!あんたの父親だぞ!こんなことしてもまだ信じてるんだ!親の愛情不足の反抗期なら、やりすぎだわ!」


ヂーハオが高速で走り出し、フェイフォンのバイクに並走する。横から連続攻撃を仕掛けてくる。フェイフォンは扇子で防ごうとするが、傷つき疲れ切っている。バランスを崩し、ヂーリーともどもバイクから放り出される。


「余計なガキが!他人の家庭事情に首を突っ込むなら、先に殺してやる!」


ヂーハオがフェイフォンを攻撃しようとした瞬間、ロンウェイが背後から現れ、尻尾でヂーハオの首を締め上げ、後ろへ引き倒す。同時にフェイフォンはロンウェイの棍棒を掴み、彼に投げ返した。


「受け取って、ロンウェイ!」


ヂーハオは空中で棍棒を左手でキャッチ。その刹那、ロンウェイは尻尾で首を締めたままヂーハオの肩に乗り、片手で棍棒を握り、もう片方の手でヂーハオの頭頂部を殴りつけようとする。


フェイフォンも両手の扇を開き、鷹の狩(インジーリエー)の構えで高速でヂーハオに突進する。


しかしヂーハオは微動だにしない。代わりに深く息を吸い、両腕を反時計回りに逆方向へ回転させる。その速さで動く腕は残像を生み、まるで腕の動きにディレイがかかっているかのようだった。


裏螳螂少林拳ニー・タンラン・シャオリン・チュエン螳螂の刃(タンラン・ジー・ダオ)


指を揃え、手のひらを反らせた状態で、ヂーハオは左掌でフェイフォンの喉元下、右掌でロンウェイの眉間を同時に打ち抜く。


「ぐはっ!」


フェイフォンは血を吐き、ロンウェイの額からは穴が開き血が噴出。フェイフォンは喉を押さえながら地面に倒れ、激痛に悶える。ロンウェイはヂーハオの背中から落下するが、棍棒は握り続けていた。


螳螂の刃(タンラン・ジー・ダオ)だ。邪気(シエチー)の波動が体内を伝わり、同時に俺の力が外部からダメージを与える。内部と外部、二つの力が一点に収束して同時に襲いかかる──まるで二重の一撃を受けるようなものさ」


ヂーハオは倒れたフェイフォンの頭髪を掴み上げる。フェイフォンは自身の(チー)の流れが変わり、ヂーハオの方へ吸い込まれていくのを感じた。


裏螳螂少林拳ニー・タンラン・シャオリン・チュエン吸血の食シーシュエ・ジー・シー


フェイフォンは高速で反撃しようとするが、体が動かない。眩暈がし、視界がぼやけ、四肢が麻痺する。やがてほぼ意識を失い、地面に崩れ落ちる。


「質の高い(チー)だな、小娘。確かに熟練の戦士だろう。残念ながら俺の敵ではなかった」


その背後で、ロンウェイが棍棒を杖にしながら起き上がろうとする。尻尾も使って必死に体を支えるが、ふらついている。


「こっちは量か。一度吸い取ったのにまだ立てるのか?だが(チー)も体力も無限じゃないぞ」


ヂーハオがロンウェイに向かうと、ヨンチーが剣を構えて立ちはだかる。


「もう…もうやめろ、ヂーハオ! これ以上はさせねえ!」


「耐久力ならお前が一番の驚きだな、ヨンチー。城門で一度、今また吸い取ったのにまだ立ち上がれる?戦士ですらないのに」


「…だって誰かがやらねえと!」


「で、何ができる?俺はポタラ寺院の僧。お前はただの警備兵だ。後ろの半妖(バンヤオ)のガキでさえ無力だった。俺に勝てると思うか?まともに当てられると?」


ヨンチーは一瞬躊躇うが、再び剣を振り上げる。


「勝つかどうかじゃねえ! やるべきことをするまでだ! 皆倒れてる。このままじゃ善人が死ぬ。なら警備兵の役目は戦いに勝つことじゃねえ…誰も死なせねえことだ! お前を少しでも食い止めりゃ十分だ!」


ヨンチーは剣を振り下ろし、ヂーハオに斬りかかる。確かに腕は立つが、武術家の域には達しておらず、ヂーハオは目を閉じたままでも軽々と回避する。ついにヂーハオは左手の小指の先だけで剣の刃を止めた。


「ここまでして立ち向かう勇気は評価してやる。だが飽きた。終わりだ、ヨンチー」


その瞬間、ヂーリーがヂーハオの背後から麻縄を投げかけ、彼を背後から抱きしめるようにして動きを封じようとする。


「ヂーハオ、もう止めなさい!頼む!君は悪い子じゃない!私の息子で、グアンロンチョンの子供だ!グアンロンチョンの民は皆、強くて優しい!君も例外じゃない!」


突然、ヌーリーが共同館の倉庫からニームの葉、線香、チベットの鈴を持って現れる。ニームの葉を燃やし、線香に火をつけると、ヂーハオの周囲に配置し、鈴を鳴らし始めた。


「あああっ! この卑劣娘! 今すぐ止めろ!」


ヂーハオはヂーリーを引きずりながらヌーリーに向かって進む。ヨンチーが間に割って入り、剣でヂーハオを斬りつける。


「ヂーハオ!あなたはただ悪いエネルギーに憑りつかれてるだけだ!私たちはあなたを信じてる!元のあなたに戻って!」


「ヌーリーの言う通りだ!俺たちの戦いはお前とは違う!お前と戦ってるんじゃない…お前を乗っ取った邪気(シエチー)と戦ってるんだ!」


「見ろ、ヂーハオ!私だけじゃない。グアンロンチョンの皆があなたを想ってる!君を仲間だと思ってる!これまで私たちが街の民を守るために戦ってきたように…今は君を守るために戦ってるんだ!君の中に閉じ込められた本当のヂーハオを!」


「うるせえええええええええ!」


ヂーハオは縄を引きちぎり、ヂーリーを遠くへ投げ飛ばす。次に素手でヨンチーの剣をつかむと、刃を粉々に砕く。たった一撃でヨンチーを吹き飛ばした。


ヂーハオは鈴を鳴らし続けるヌーリーの前に立ち、首を締め上げる。ヌーリーの(チー)を吸い取り、彼女はみるみる蒼白になり弱っていくが、それでも鈴を鳴らすのをやめない。


「この雌犬!その鈴を離せ、この汚れ野郎が!」


「い…いやだ!あんたみたいな醜い妖怪(ヤオグァイ)にヂーハオを囚われたままにはさせない…死んでも離さない…!」


ヂーハオがヌーリーを殴りつけようとした瞬間、棍棒が飛来し、ヂーハオの額に直撃。彼は吹き飛ばされ、ヌーリーを解放する。ヌーリーは地面に倒れ、かすかな力でなおも鈴を鳴らし続ける。


ロンウェイは棍棒と尻尾でようやく体を支え、膝を震わせながら立ち上がっていた。


「諦めろ、ヂーハオ!どれだけ頑張っても、グアンロンチョンの闘志には勝てない!なぜかわかる?その闘志はお前自身が育てたものだからだ!」


「街を脅威から守り、人々を救ったその度ごとに、お前は彼らに勇気と意志の強さを教えた!みんなが戦ってるのはお前を愛してるからだけじゃない!お前から『愛する者を守る方法』を学んだからだ!」


「彼らはお前への恩返しをしてるんだ!お前が彼らを救ったように、今は彼らがお前を救おうとしてる!たとえ倒れても、お前は真のヒーローだ!絶望的な状況でも決して諦めない心を、人々に教えたんだから!」


ロンウェイは棍棒を握り、ヂーハオに向かって走り出す。しかし力尽きかけ、動きは鈍く予測可能だった。ヂーハオは簡単に回避し、ロンウェイの背後に回る。


「もう十分だ、ガキ!何度も立ち上がってヒーローごっこの演説するのにはうんざりだ!死ね!」


裏螳螂少林拳ニー・タンラン・シャオリン・チュエン死の合掌(ミン・ダ・ハーバイ)


ヂーハオは両手を組み、全力でロンウェイの背中に叩きつける。衝撃は凄まじく、ロンウェイは地面にめり込み、50センチほどのクレーターが形成された。


ロンウェイは完全に意識を失い、血まみれの体に無数の銃創が開き、微動だにしない。遠くで見ていたフェイフォンも、傷の痛みで顔を上げることすらできずにいる。


「ロン...ウェイ...」


ヂーハオが指を鳴らすと、残り10人のピシャーチャ盗賊が集まってくる。


「夜明け前に片付けよう。共同館に隠れてる連中を全員外に引きずり出せ」


盗賊たちは銃を手に共同館に侵入し、避難していた市民たちを強引に広場へ連行する。ヂーハオはわざわざヂーリーを連れて中央に引きずり出し、他の盗賊たちもヨンチー、ヌーリー、そして気絶した警備兵たちを全員集め、中心に押し固めた。


「戦って負けた。これがグアンロンチョンの最後だ」


ヂーリーが人群れの先頭に進み出ると、ヂーハオの前に土下座した。


「ヂーハオ、お願いだ!私を殺しても、拷問しても構わない!だが市民たちだけは...どうか助けてくれ!」


「もし俺が天の亀の宝珠の守護者に選ばれてたら...デブのシュエンウーじゃなくてな...こんなことにはならなかった。運命がそうさせたんだ、親父」


ヂーハオが手を上げる。


「全員殺せ!弾丸が尽きるまで撃て!一人残らず始末しろ!皆殺しだ!」


その瞬間──ガラガラと音が響く。振り向くと、シュエンウーが巨大な荷車を押しながら現れていた。

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