Ⅵ.「辞め時」
私、東条彩音は才色兼備…なのに…どうして…
私が陥れられるなんて…ありえないのに…
「ねぇ、お願い。先生には黙ってて? ねぇ、美沙紀さんお願い。靴だって舐めるし床だって…」彼女はさっきまでの声とは全く違う、可愛らしい猫撫で声で許しを乞う。
はぁ…もう哀れ。ここまでくるともはやかわいそう。
正直まだ復讐し足りない。中学生の頃、この女が私にやったみたいに、憎いこの女の顔を原型がが無くなるまで踏みつけてやりたい。
でも、もういい。もうこれ以上は意味ない、私はもう満足した。
それにそこまでしたらこの女とと同じ、憎しみの連鎖はどこかで断ち切らないといけない。
私は、もう二度と私と後輩達に近づかない事を条件に絢音さんを許した。
はぁ…あの時は正直怖かった、想定外の事ばかりで…もし脅しに屈せずにボコボコにされたらどうしようかと。
とにかく不安で仕方なかったけど…どうにかなった。何だかんだ長い付き合いだった、でももう会う事もない筈。
今でも相変わらず同級生の友達は居ないけど、後輩さん達が何時も一緒に居てくれる。
やっと平穏な日々が…戻ってきた。もう絢音から殴られる事も無いし、髪の毛を引っ張られることも無い…
一体いつぶりだろう、一緒にいた期間が長過ぎてもう分からない。
でも、ふと私って、どうやって生きてたんだろうと、そんな事を思ったりする。
思えば何時もあの女の事を考えていた。今日はどんな暴言をはかれるのか、どんな酷い事をされるのかと…
…………不安…だったのかな……何故か、なにかモヤモヤする…
私はこうなる事を望んでいた筈なのに。