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迷走 ~重度~

年末にこんな酷い内容書いてるって何やっているのかな?

 授業中に倒れてしまった私は保健室に運ばれたみたいで目が覚めたのは放課後……うん、気絶中も何故か夢の中で読書が再開されたとか私終わってるし、死ねば良いと思う。

 本格的に精神をヤられて来てると感じてほろりと涙を流すのはしょうがないと思うの……ついでに隣に座っていたリアに殺意を向けるのもしょうがないわよね? えぇ、しょうがないわ。


「ティファナ。落ち着いてください……誤解があると思うの」

「誤解なんて無いわよ。私の人生滅茶苦茶にしてくれて……頭にウジ虫が湧いて死にそうなのよ?」


 多分今の私は()()()()()を向けていると思う……リアがちょっと引き攣った表情だし、この殺意の全てを向けたらどうなるのかしらね?


「ティファナ……良く考えて下さい? 確かに切っ掛けは私達でしたが、コレは運命だったのです」

「へぇ~……運命ね?」


 そのふざけた言葉に思わず右手に力が籠る、ちょっと溢れた魔力の奔流(ほんりゅう)がカーテンとか揺らしているけど大丈夫。私はまだ冷静だからリア、その場を動くんじゃないわよ?


「ティファナはあの程度でこの沼に沈んだのですよ? でしたらいずれこの世界に触れる事もあったでしょう。遅かれ早かれという奴です」

「全然あの程度じゃないでしょ!? あんな……あんな沢山押し付けておいて!?」


 右手から火花が散っているけど知った事じゃない……多分怒りが限界で思いっきり目の前の馬鹿にぶつけたいっ!


「全然ですよ? そもそもレフィンド夫人でしたらあの百倍持ってますよ?」

「………………ちょっと待ちなさい、なんで私のお母さまが出て来るのよ?」

「実は秘密の会員制の本屋を経営していてあの手の本の販売をしているのですが、その影響で顧客の情報を把握しているのですよ。ついでにレフィンド夫人は個人的なお友達です」


 ………………えーと? 待ちなさい、私のお母さまがコイツ等と同じ?


「私のお母さまの名誉を侮辱するなんて良い度胸しているじゃないリア? 覚悟はできているわよねぇ?」

「ですから落ち着いてくださいティファナっ!? せめて……そう、せめて確認してからにしてください」

「へぇ~……? 確認した後なら良いんだ? ならソレを楽しみにしてるわ」


 私のお母さまがそんな馬鹿げた事する訳ないじゃないっ!? 全く変な事を言うわねリア……事が終わったらその顔に全力の一撃ぶち込んで縁を切ってやるわ! もう知った事じゃないわ! さぁ、家に帰ったらこの怒りを、怒りを――


「リアステラ嬢、良くいらっしゃいました。歓迎いたします」

「今日はリアではなく、『同性愛の(しるべ)』としてここに来たのです。いつも通り気さくにして頂けませんか?」

「まぁっ……同性愛の導先生として来て下さったのですね、嬉しいわっ! もしかして新作の話ですか!?」


 ――ぶつける前に膝から崩れ落ちた。私は泣いて良い、尊敬していたお母さまの頭が腐っていたってなんて誰が想像できると思う? 今右耳から左耳に掛けて理解したくない悍ましい単語の羅列が通り抜けて思わず地に手を付いた……地面は大理石でありソコにはみっともない顔が映っていた。

 うん、誰か私を助けて?


「ティファナ、こっちにいらっしゃい! 貴女も扉を開いたそうね! 最初は戸惑う事もあるけど、心のままに全てを受け入れれば直ぐに楽になるわ。ふふっ、流石私の娘ね? 同性愛の導先生に才能を見出されるだなんて……私の自慢の娘だわっ!」

「そんな事で自慢されても嬉しくないから!? というかお母さま目を覚まして!?」

「何を言っているのよティファナ、目を覚ましたからこそ今私はこの素敵な世界を楽しんでいるのよ?」


 知りたくなかった母親の一面……私が部屋に逃げたのはしょうがないと思うの。





「今までありがとう御座いました……私は家を捨てて平民として生きていきますっと。コレで良し」


 家族に向けた手紙を叩き付けるようにベッドに放り込んだ私は、一呼吸を置くと気合を入れる為に頬を叩いた。私は傷心して引き籠るなんて柄じゃないからね……直ぐに家を捨てる決心が付いて準備に走った。大国であるヴィクトリア王国から離れて田舎で冒険者としてひっそりと生きるというのが一先ずの目標。


 ただお父様とお兄様には本気で申し訳が無いと思ってる……。別れの挨拶なんてしようとすれば絶対に止められるし理由なんて言えないからね、せめて置手紙の一つでも置いていくのが良いわよね。

 お父様の書斎にこっそり隠しておくのが良いかな? 今は深夜でお父様は泊りで仕事……タイミングも良いし直ぐに手紙を書いたら実行。窓を開けてると力一杯蹴って身体を捩ると屋根まで飛ぶ、私も昔はお転婆として色々やらかしたからコレぐらい余裕よ。おしとやかなんてもう知らないし関係ないっ!


 屋根沿いに移動してお父様の部屋の窓の前まで移動すると鍵を無理矢理こじ開ける……こういう時の魔法は本当に便利、出力もかなり下げているし殆どの使用人は寝ているから多分気付かれない。学生の身にしては上手く出来たと自分を褒めながら侵入。

 書いた手紙はお父様の机の引き出しにでも放り込んでおけばいいかな? そう思って魔法で軽めのライトを発動するとお目当ての引き出しを開けて………………直ぐに元に戻した。見てはいけないモノがあったような気がして。


「………………………………えーと、このパターン前にもあった様な気がするけどきっと……そうっ! きっと気のせいよね!?」


 三回程深呼吸をして更に気合を入れ直すように頬を叩いて……慎重に机を開けるとそこには見間違いでも勘違いでも無く……いかがわしい本が置いてあった。若い二人の女性が裸で抱き合い幸せそうに笑っている……所謂百合のエロ本である。そしてそこには()()()()()という作者の名前が書かれていた……膝から崩れ落ちるのはしょうがないと思うの。


「………………ねぇ、お父様もそっち系なの!?」


 イヤ、きっと何かの間違いよ!? 押し付けられたとか処分に困っていたとかそういう奴! ほらっ、他の本棚にはちゃんとした歴史書とか難しい本が並んでるじゃない! だからお父様もどうしようもない変態なんて在り得な……かったら良かったのに何で表紙詐欺のエロ本が置いてあんのよっ!? 全然歴史書じゃないじゃない!? 他にも沢山隠してるしぃ!? 書斎ってそういう本を保管する場所じゃないでしょ!? せめてノーマル系の男女のエロ本置いておく所じゃないの!? なんで同性愛ばっかなの!? ていうか百合本だけじゃなくて薔薇本もあるってどういう事!?


「嘘でしょ、知りたくなかった………………まって、もしかしてお兄様も?」


 そう思い至った時には早かった……再び窓から身体を捩り屋根まで飛ぶと全力に近い感じで走ってお兄様の部屋へ同じ要領で忍び込んだ。そして後先考えずに部屋を片っ端から漁ると……やっぱり女性同姓愛の本が出て来た。それも沢山……私の意識がプツンと切れたのはしょうがないと思うの。最近こんなのばっか……。





 ある意味最悪の形で私はゆっくりと目が覚めた。いつのまにか自室のベッドで寝かされており、暫く空虚を見つめていると壁に掛けてある時計が目に入った。時間は何故か早朝であの後何が起こったのか……多分使用人が見つけてくれたのだと思うけど。

 うーん、少し落ち着いて来たし冷静になって来た、だから取り敢えずよ? 取り敢えず――


「この家クソね、全員死んだ方が良いと思う」


 ――頭を抱えて心の本音を力一杯吐き出した。うん、こんな家系は断たれてしまった方が世界の平和になると思うの。気持ちを吐き出したら少し楽になったかな? 昨日は逃げそびれたけど監視も付いて無いし逃げましょう! いつのまにか着替えさせられているけど、もうこんな場所一秒たりとも居たくない!

 そう決意してベッドから飛び出すとタンスに手を取って……流石に三回目ともなれば膝に来ることは無かったけど、服の代わりに薔薇本が敷き詰められていたら顔を覆うのはしょうがないと思うの。


「おはようございますお嬢様」


 足に来て動けなくなった私の耳に、思わず殴りたくなくなるような声が響いた。あの馬鹿メイドである。

 その瞬間に理解した、私を運んだのは馬鹿メイドであると……そして本を敷き詰めたのも馬鹿メイド。


「……よ、よくもやってくれたわね!?」

「何のことでしょう? 素敵な飾りつけはしましたが、恨まれる覚えはありません」

「っこの馬鹿メイド……喧嘩売ってる?」

「そのような事など在り得ません、私はお嬢様の味方ですから……ね?」


 その笑顔、殴りたい……というか全力で殴る! もう知らない、右手に力を込めてあの顔に一撃をぶち込んで――


「ですのでいつでも相談に乗りますよ? こんな素敵なモノを考えるぐらいですしねぇ?」

「んなっ!?」


 ――顎が外れそうになるぐらいに衝撃を受けた。だってあの馬鹿メイドが私の目の前に差し出して来たのは以前私が捨てたカップリングを書いて纏めたノート……ちょっと嘘でしょ!?


「今すぐ返しなさい!?」


 繰り出すはずだった右手で本を奪い取ると魔法で灰に……灰にならない!? ちょっと防護魔法が掛けられている!?

 なんてもん掛けているのよ!?


「お嬢様が初めて行った創作ですよ? そんな勿体無い事出来る訳ないじゃないですかぁ?」


 コ、コイツ!? 思わず殺意のあまり睨もうとして……直ぐに目を逸らす羽目になった。いかがわしい本を私に見せて来たからである……うん、一瞬だったけど脳裏に焼き付いてしまった。この身体が憎い。


「さぁ、お嬢様? 正直になりましょう、直ぐに楽になりますよ? 私お嬢様とお話がしたいと思っていたんです、とっても素敵な話をしてこの熱い想いをぶつけ合いましょう」

「いや、ちょっとっ……!?」


 思わず後ずさり……いつのまにか壁に追い詰められて逃げ場を失った。それでも蹲って耳を塞いだけど、悪魔からは逃げられなかった。

 この馬鹿メイドってこんなに力が強かったのね、無理矢理顔を持ち上げられた私はいかがわしい本を押し付けられた。


「さぁ、お嬢様が好きそうな本のラインナップは済ませてあります。学校に行くまで堪能致しましょう」


 その笑顔に負けた私はその言葉に抗うことが出来なかった……。

 書斎――良くあるエロ本の隠し場所に漫画や雑誌に紛れ込ませるというのがあるそうです。

 ケースに隠しているパターンもあったりと、苦労した人は多いでしょうね(笑)

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