そうめん
三題噺もどき―きゅうじゅうよん。
お題:浴衣・氷の浮いたそうめん・くずきり
ミーンミンミンミン―
ミーンミンミンミン―
「……」
庭先の木で、蝉たちが、その短い命を嘆くように、一斉に鳴き始めた頃。
今年は、初盆だからということで、私は家族とともに祖母の家に来ていた。
他の親戚も沢山いる。
いとこはほとんどが年下の子ばかりで、こっちに来てしてることと言えば、ゲームと子守り。
「……」
今日で、この家に来てから、丁度1週間ぐらいが経った。
(あっつい……)
高い建物なんてない、田舎では、影を作るものがないから、どこに行っても日に当たる。
唯一当たらないのは、家の中か、軒先。
軒先は、まぁ、日が当たらないでもないのだが、風が通るぶん、涼しい。
「ねぇ、お母さん、新しい帯かって〜」
「今のでいいでしょう……!」
「ねぇねぇ、見てみて〜!」
「あら、可愛いわね。」
家の中では、親戚の子達が、今日の祭りに着ていく浴衣の準備をしていた。
盆の時期に帰ってくる魂を迎え入れる祭りなのだそうだ。
私も一応、浴衣を準備している。
しかし、あの子達のようにははしゃげまい。
だからと言って、特に何をする訳でもないが。
足をブラブラ、のんびりと蝉の声を聞いていた。
「昼ごはん、出来たよ〜!」
奥から、声が聞こえる。
おばさんの声である。
全員が、居間に集まる。
少し大きめの机に置かれたものを見て、うんざりした。
「また、そうめん……」
「こら、文句言わないの。」
隣に座る母に怒られた。
こっちに来てから1週間。
昼ごはんは、毎日、氷の浮いたそうめん。
夏と言えばという食べ物ではある。
書中お見舞いにとか、お盆だからとかで、たくさん送られてくるんだそう。
「……」
最初は美味しいのだが、すぐに飽きてしまう。
そもそも、そんなに好きでもないし。
一日目の時点であきたしな、そうめん。
ずるずると、すすっていく。
(なんか、甘いもの食べたい……)
甘いものが好きで、それなりの頻度で、シュークリームや、ケーキなんかを食べたりしている。
しかし、こっちに来てから、甘未がほとんどない。
(あ、くずきり食べたい。)
何故くずきりかと、言うと、多分、そうめんのインスピレーションを受けたからだろう。
この家にはある気がする。
なんせ祖母はくずきりが大好きなのだから。
(後で聞いてみよ……)
とりあえずは、このそうめんを何とかしなくては。
いい加減、飽き飽きしていたのだが、くずきりのことを思うと、その苦痛も耐えられる気がする。