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絶世の美女は権力がほしい  作者: 黒木香乃
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絶世の美女は学院に行きたい

亀更新です。亀の形したメロンパンが食べたいなぁ。

コロナが猛威を振るっております。皆様ご自愛くださいませ。

「やったわ!ハンナ!女学院に入学できるのよ!」


スキップでもしそうな足取りで、今にも踊り出すのではないかとも感じさせるほど上機嫌に部屋に戻ってきた花のような顔を持つ少女、リーゼロッテは心からの笑みでお付きの侍女、ハンナに報告した。


花がほころぶような笑顔を見せた少女は彼女に懸想している世の男性をいともたやすく遙か高みにあげられそうなその笑顔でさらに言った。


「お父様からお許しをもらったのよ。女学校に入れるわ。女の子のお友達ができるかもしれないわよ!」


「一応、花嫁修業をするための学校なのですからお友達ができたとしてもすぐに嫁がれてしまうのでは?」


リーゼロッテが入学しようとしているノッテルダム女学院は花嫁修業をするために良家の娘が通う全寮制の女学院である。卒業をまたずして結婚してしまう令嬢も少なくはない。


「それは些細な問題よ、ハンナ。殿方がいない、いい?ここ重要よ?男子禁制の花園で迫り来る変態にかまうことなく!学校生活が送れるのよ!やたら無駄に顔が整っているせいで男という名の変態は寄ってきても、女の子の友達はひっとりもできなかったわたくしもついに!ぼっちを卒業できるのよ!一人とは言わず、2,3人友達を作ってみせるわ!」


うれしさのあまりリーゼロッテはその場でくるくると回り出した。


「たとえ嫁がれたとしても、お手紙を交換できるわ。文通よ!ぶ・ん・つ・う!一方的に血文字で書かれた愛してるや、相手の名前だけが書かれた婚姻届や、よくわからない家族計画ではなく、近況を報告し合う文通よ。おすすめの焼き菓子とか好きな観劇とかそういうたわいもないお話ができるのよ!こんなうれしことってないわ!」

さらに満面の笑みで未来に思いをはせるリーゼロッテをハンナはかわいそうな子を見る目で見つめた。


(お嬢様のなかでは一日に何百枚と届く血文字の手紙に分類されるのですね…)


リーゼロッテは以前仲良くなった男の子と手紙を交換しようといって楽しみに手紙をまっていたことがあった。いざ手紙を開けてみると、中には血で書かれた愛してるの文字。それが一日に何枚も何枚も届くのだ。立派なリーゼロッテのトラウマになった。


そのようなことがありつつもいまだにリーゼロッテは手紙に夢を見ているようだ。いまだに届くリーゼロッテへのラブレターは家人一同が焼却処分をしている。一応、中を執事や侍女たちが確認するのでオーゼリア伯爵の使用人は鋼の心臓と気持ち悪さを消化する態勢がついてきた。


「男性が入り込む隙間のない女学院なら伸び伸びと悠々自適に生活ができるわ!」


リーゼロッテは女学校に通うのを心待ちにしていた。





女学校の入寮日。顔が影になって見えないほどつばの広い帽子を深くこれまたピンでとれないようにかぶったリーゼロッテはうきうきと馬に飛び乗った。


「行ってきますわ。お父様、お母様、フリードリヒ、ハンネローレ。ルイス、お父様たちをお願いしますね。長期休暇には帰ってきますわ。」


リーゼロッテは護衛に先導されて、全速力で駆け出した。なぜ、馬車ではないのか疑問に思う方もいるだろう。単純に馬のほうが速いと言うこともあるが、以前馬車で出かけたさい馬車の扉に張り付いたまま窓の外からこちらをのぞいてくる変質者に会ったことがあるのだ。もちろん御者は速度を落とす。そのすきに馬車の中へあろうことかその気持ち悪い笑みを浮かべた変質者は入ってきたのだ。それからリーゼロッテは家紋付きの馬車に乗ったことはない。


領地から女学校までは馬車だと3日以上かかるが、全速力で駆けていけば夜には着くだろう。リーゼロッテは変態から逃れるためだったら、嫌いな運動だってやってのける根性がある。


このあたりは農村しかないので人通りも少なく思いっきりかけても事故を起す心配はない。途中の町で馬を変えれば問題ないペースで進むであろう。ちなみに護衛はリーゼロッテ御用達のスピード狂の女性冒険者である。腕は立つが、スピード狂で護衛依頼がないと嘆いていた女性パーティをリーゼロッテが拾ってきた。


たいていの人は夕食を終えて、静かに趣味の読書とか就寝の準備をする頃、リーゼロッテはノッテルダム女学院に着いた。


厳かな雰囲気のある教会のような学院で白が基調となっている。講義を受ける棟、寮の他に運動場、道場、中庭や森と見間違えるような豊かな自然。暗くなっているのでわからないが素晴らしい学院だとリーゼロッテは思った。


護衛と別れてリーゼロッテは寮へと足を進めた。荷物はすでに送ってあるため、リーゼロッテが持っているのは帽子と小さな手提げだけだ。新境地へとリーゼロッテは心躍らせた。


寮の中は壮観だった。木目調の壁にふわふわとした赤色の絨毯。足をふみこんだら沈んでいくかのように錯覚するほどのものだった。中央には見事な螺旋階段。見事なカーブにリーゼロッテはため息を漏らした。


寮母に挨拶をし、鍵を受け取って自室に行く。リーゼロッテの部屋は北側の3階だった。この寮はどうやら2人部屋らしい。寝室は別だが、2人で風呂やトイレは共同で使う。掃除や洗濯は授業の間にしてもらえるそうだ。食事は食堂で食べるか簡易的だが自室にキッチンがあるらしいのでそこで作って食べるらしい。


リーゼロッテはこれから自室となる部屋のドアをノックした。はい。短い声が聞こえたのでドアを開き中に入る。これから卒業まで同室となるルームメイトにリーゼロッテはできるだけ優雅に挨拶をした。


「はじめまして。リーゼロッテ・リリー・オーゼリアと申します。これからよろしくおねがいします。」


「ご丁寧にどうも。カタリーナ・レニ・シェーファーです。よろしく。疲れただろうから、お風呂に入っておいで。」


青みがかった銀色のストレートの髪を肩につくかつかないかぐらいの長さで切りそろえた長身のルームメイトは蜂蜜色の瞳を細めてそういった。


顔を上げたリーゼロッテは固まった。


「そうですね。お言葉に甘えてそうさせていただきますわ。」


が、なんとか持ち直して風呂に行った。


湯船に肩までつかったリーゼロッテは


(焦った。一瞬、男の人かと思ったわ。ちゃんと挨拶できていたわよね?!)


と考えていた。


お付き合いいただきありがとうございました。評価していただけるとやる気につながります。

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