030.積み重ねて崩して
一昨日投稿した話の続きです。
嘘も悩みも不安も全て吐き出し取るに足らない主だという根拠を示してみせて、鳳花は東馬からの沙汰を待つ。
判決を下される前の被告人の気持ちはこのようなものだろうか、と割とどうでもいい方向に思索が向くほどの時間が経った後、東馬の声が鳳花の耳に届く。
「あ-……そのですね、姫様。……えーっと……」
狼狽えているのが丸わかりの声に顔を上げると、何故か東馬は空を見上げながら所在なさげに手の指を動かしていた。『考えが上手く言葉に纏まらない』という表現を絵にしたらこんな風になるんだろうな、と頭の妙に冷静な部分が考える。
東馬はそんな状態のままひとしきり「あー」や「えー」と声を出していたが、やがて意を決したように鳳花へと体ごと向き直る。
「まずですね姫様、私は姫様が自らのお立場についてそう悩んでおられても特にガッカリはいたしません」
「……そうなのですか?」
「そうですよ。というか、皇家当主の責任の重さを考えればむしろ放り投げたいと思わない方が私としては心配になります。一度も考えたことがないのなら本当にその重さについて理解しているのか疑わしいですし、姫様のそのお心はごくごく自然なものだと私は考えますよ?」
少なくとも私は嫌です、と真顔で言い切る東馬に鳳花はつい吹き出しそうになるが、冷静になって振り返れば大体の人はそう考えるだろうな、とも思う。
今の鳳花がそうであるように、皇家の嫡子は討ち手の修行や戦闘に加えて皇家の内政・外政の一部も取り仕切らねばならない。自分が署名した書類や交わした言葉によって数万・数十万の人間の生活が左右されるのだ。今でこそ程々に慣れてはきたが、父より仕事を任され始めてからしばらくはその重圧で眠れない日々を過ごしていた。
もちろん傍付きの東馬がそれを知らない訳がなく、
「ですが姫様は逃げずにお役目を果たされてきた。己を誇るには十分な理由だと私は思います」
「逃げるのが許される立場ではなかったし、逃げ場所もなかったから仕方なくこなしていただけです」
「だとしてもです。そもそも姫様はご自分に厳しすぎる。大きな瑕疵なく役目を果たしてきた。それでいて日々の鍛練も欠かさなかった。ご自覚が薄いかもしれませんが、姫様の霊獣討滅能力は同年代と比べても秀でている。姫様以外の誰がこれ以上を今の時点で求めているというのですか?」
「それは……」
「付け加えれば、私が姫様にお仕えしている理由に皇家のお役目云々はあんまり関係ありません。大体、元々普通の領民だった私が『どういった方が当主に相応しいか』を測る尺度を持っていると思いますか?」
東馬は縁側に立てた片膝の上で頬杖をつく。呆れているようにも見えるその姿には嘘やおためごかしを言っている様子は微塵も窺えず、だからこそ鳳花の頭に疑問が浮かんでしまう。
「それならばお前が私に仕えてくれている理由は何なのですか。お前はいつだって自分よりも私のことを優先してくれる。二心も惜しみも曇りもない忠誠を捧げてくれている。私は傍に仕えよと命じているだけで、お前の心まで変えられる訳ではない。ただの領民だったお前がそこまで私に尽くしてくれている理由は何だというのですか」
仕えるのなら優秀な人物が良いというのは一般的な人間心理だ。元は一市民でしかなかったという王家の開祖の下に人々が集ったのが良い例で、自分の能力に自信がある人間ほどその傾向は強い。
東馬が鳳花よりも優れた能力を持っているのは明白だ。元が領地にいるだけの平民だとしても人並みの矜持だって持っているはず。
なのに東馬の姿勢には鳳花への不満は影も形もない。先ほどの思い出話のように鳳花の我が儘に付き合わされたことだって何度もあるのに、かつても今も東馬は笑って自分の傍で付き従っている。
それが自分の今を評価しているからでも、将来を見込んでのものでもないのであれば、東馬の忠誠の源泉はどこにあるのか。
東馬は乾ききっていない己の髪を乱暴に掻き回して「あ~……」と呻く。
「説明するのが難しいんですよね……『これです』っていうような特別な理由がある訳ではないので。逆に姫様は特別な理由があると思っていたのですか?」
「それは……はい。あんなことを言われればそう思いもしますよ」
「あんなこと?」
「……お前が『洗礼』を終えて間もない時に、どうして洗礼に挑むなんて無茶をしたのかと尋ねたら、お前がその…………えっと……」
口ごもってしまったのは思い出せないからではない。逆に記憶に鮮明に焼き付いていて、なおかつ思い出すだけで顔が熱くなるような言葉だったため。嬉しさと恥ずかしさから東馬を直視できなくなってしまうような出来事だったためだ。
そんな鳳花の動揺をよそに、東馬は思い出したように右拳で左の手の平をポンと叩く。
「ああ確か、私が命を懸けるのは姫様のことだけだとか何とか言ったんでしたっけ。本心から言ったのは間違いないですが、振り返ってみると我ながら歯の浮くような台詞吐きましたねえ」
「そんな歯の浮いたことを言われてしまっては特別な理由があったと考えるのも仕方ないでしょう。お前がこういったことで嘘をつくとも思えなかったですし」
「特別と呼ぶほどでもないですが……姫様は覚えてます? 私が皇家に引き取られて間もない頃に熱を出して寝込んだ時のこと」
「……ええ、覚えています」
というか忘れられるはずがない。東馬に関わる思い出の一つである以上に、皇家の負うお役目の重さを痛感した出来事でもあったのだから。
「当時の私は“成長”という成果を出さなければ即日皇家から追い出されるのだと過剰に怯えていて、泣いている姿なんて見せてしまえば失望は避けられないと思ってもいました。けれど姫様は泣いている私を見て、失望するどころか抱きしめてあやしてさえくれた。姫様のおかげで私は“皇家は敵ではない”と思えて底なしの焦燥感から自分を解放できたんです」
「それだけで、ですか?」
「もちろんそれだけではないですよ。その後に姫様が私に傍付きになるようお命じになられたことで、私は皇家の中で“安心できる立場”を得ることができました。慰めてくれたことと安心をくれたことへの感謝は、当時の私にとってとても大きな理由になっていたと思います」
「それはお前を引き取った家の者として当然の行いです。戦いの素質があるからと同意もなく討ち手の候補として引き取り、押しつける形で戦闘技術を学ばせて鉄火場に放り込もうとしていたのですから。……主として然るべきことをやっただけなのですから感謝されるようなことではありません」
鳳花は本心からそう言ったが、東馬は特に気にした風もなく「あとはそうですね……」と虚空を見つめながら呟く。
「ああ、夏に天乃川で師匠と三人並んで釣りをした時に一人だけ釣果ゼロで悔しがっている姫様を見るのは面白かったですね。あまりに釣れないものだから師匠の体勢だけでなく表情すらも真似をして、石像のような姿で釣り糸を垂らしていた姫様に腹を抱えて笑ったのは良い思い出です」
「……んん?」
「『洗礼』の前であれば、冬に大雪が降った時にどちらが先に芸術的な雪だるまを作れるか勝負もしましたよね。最終的にどっちがどっちを作ったかを伏せた上で屋敷に居た家人に品評させて姫様が勝ちましたけど、あれは貴族と平民の教養の差を考えれば大人げない勝負でしたよねえ」
「……それは単なる私とお前の思い出でしょう。それが何だというのです」
「いや、ですから、私が姫様に命を懸ける理由なんてものはこんなものだったんですって」
東馬は困ったように苦笑すると床にごろんと寝転がった。瞳に映る景色を空から旅館の天井に切り替えて、東馬は相変わらずの軽い調子で言葉を続ける。
「『洗礼』の時の私は今よりもずっと子供で、純粋でしたからね。感謝しかなかった幼馴染の可愛い女の子と楽しい思い出がいっぱいあるってだけで、その子のために命を張る理由としては十分だったんですよ」
「……え? か、かわ……って、……私がですか?」
「え? いや、姫様は昔からずっとお綺麗ですよ。当たり前じゃないですか。少なくとも私は傍付きになった頃からずっとそう思ってます」
「そ、そうでしたか……」
「まあ流石に今は昔ほど純粋ではないので、それだけが理由という訳ではないですが……でも結局のところ、私が姫様にお仕えしたいと思う理由に何か特別で大きなものというのは無いんですよ」
ある意味では胸が冷えるような東馬の言葉だったが、今度は鳳花は目を背けなかった。
東馬の声は温かく、その顔は微笑んでいた。
「姫様がどれだけ私を過大評価しているのかは知りませんが、私は他の人より戦うのに大分向いているだけのただの成人前の男子でしかないので、思い出一つで命を懸けられるほど盲目的にはなれません。それに一つ特別な思い出があったとしても嫌な思い出がそれよりも遙かに多かったら、『あれはただの偶然だった』といつかは見切りを付けていたかもしれない。……もしかしたらその一つだけで変わらぬ忠誠を捧げられる人も世の中にはいるのかもしれませんが、残念ながら私は自分をそこまで一途な人間だとは思えない」
「お前を奴隷のように扱う主だったら、お前の私への仕え方も今とは変わっていたものになっていたかもしれない、と?」
「ええ、きっとそうだったと思います。従者になる前に抱いた感謝はとっくに薄まって、護衛の仕事も義務感や惰性でこなしていたかもしれません。そうでなかったとしても、仮に姫様が今のような自慢の主ではなかったのなら、私は討ち手の役目に今ほどの熱意を持てず従者の立場に強い執着を抱かなかったでしょう。従者の立場を譲りこそしないでしょうが、もしかしたら天武八達に登り詰めるまでには至らなかったかもしれない」
「……自慢の主、ですか。過大評価にも程がないでしょうか?」
「――いいえ。嘘偽りも誇張も無く、姫様は俺の自慢の主です」
苦笑すら浮かべて卑下をした鳳花に、斬り返すような否定の言葉がかけられる。同時に変化した東馬の主語にも鳳花は思わず瞬きした。
驚く鳳花とは対照的に、東馬はあくまでも穏やかに理由と根拠を並べ上げる。
「俺はずっと見てきた。優しくて、責任感が強くて、ちょっと夢見がちだけどそれだけに高い理想を持っていて、その理想の実現のために頑張り続けることができる貴方を。間違いを犯しても誰かのせいにせず正面から向き合って、どれだけ傷付いて倒れそうになってもまた立ち上がって歩こうとするひたむきな在り方を。何千年と続く皇家のお役目の重さから逃げ出したい気持ちがあっても、みんなのために歯を食いしばって責任を果たそうとする尊い生き様を、俺は十年間ずっと、ずーっと見続けてきた」
東馬は体を起こして鳳花を見た。十年分の鳳花の姿を焼き付けてきたその透き通る瞳には、いかなる勘違いも貼り付いていない。
十年間を付き添ってきた幼馴染は着けていた色眼鏡をとっくの昔に外していて、故に東馬が抱えている感情は真実、等身大の鳳花が種を蒔いて育て上げたもの。
「確かに能力的にはもっと優れている人はいるでしょう。けれど俺は貴方ほど己の役目に誠実であろうとする人を他に知らないし、貴方ほど俺を必要としてくれた人もやっぱり知らない」
だから東馬が心から望んで鳳花の傍にいることは、鳳花のこれまでがもたらした結果でしかなく。
「貴方が立派な主でいようとしてくれていたから俺も貴方に相応しい従者でありたいと思うようになったし、貴方が俺のことを必要としてくれていたから俺も貴方のために尽くしたいとずっと思い続けた」
つまりは鏡だったのだ。鳳花が皇家当主に相応しい人間になろうとしたから、東馬も鳳花に見合った討ち手になろうと努力を重ね、鳳花がかけがえのない幼馴染として東馬を大切にしていたから、東馬も鳳花を力の限り支えたいと思うようになった。
もちろん逆のことも言えるが、遡れば鳳花が東馬へと与えた温もりと安心が事の始まり。東馬が鳳花の優しさに応え、鳳花はそれに報いようと努力を重ね、東馬はそんな主を見てさらに奮起して……そうして十年を共に積み重ねてきて今がある。
「まあつまり、姫様は私にとってこれ以上ないほど大切な主で、これからも傍でお仕えしたい方だってことです。だから……当然のことをしただけとか、逃げられなかっただけだと言って、自分を過度に貶めないで下さい。当然の行いだったとしても逃げられなかっただけだとしても、それを今に至るまでずっと貫き通している貴方のことを、私は本当に尊敬しているんですから」
照れくさそうに、優しい目で、心から誇らしげに東馬は語った。これが貴方に仕える理由なのだと、そう言外に告げるかのように。
いつの間にか鳳花の目尻からは雫が流れ出ていた。そのことに、頬に伝う生温かい感触でようやく気付いて、鳳花は反射的に両膝へ顔を埋めた。「姫様?」と様子を窺う東馬に応える余裕も無いまま脚をぎゅっと抱え込む。
開いていく差を埋めるのに必死で、好きになったせいで目が曇り、失敗が続いたことでいつしか忘れていた。自分達はいつも隣を歩いていたことを。背の伸び方が違っただけで、景色をみる角度が違っただけで、自分達は間違いなく同じ未来を見て手を繋ぎながら歩いていたのだと。
きっとお互い、手を離す機会なんていくらでもあった。そうならなかったのは東馬が変わらず大切な幼馴染だったからだと鳳花は思うし、東馬の述懐を聞いた今でもその考えは変わらない。
ただ、それだけではなかったのなら。
繋がれている東馬の手の力強さが、鳳花の努力とやせ我慢から生まれていたのなら。
「うん……そっか」
鳳花は涙を拭って空を仰ぐ。黒々と世界を覆う、果てのない空を見上げる。
今の自分に満足しているとはとても言えないけれど。
至らないところばかりの自分をまだまだ好きにはなれないけれど。
それでも皇鳳花という人間がこれまで努力を怠らなかったのは事実で、責任から一度も逃げなかったのも本当のことだ。
だったら自分が立派な主なのだと少しくらいは認めてもいいのかもしれない。何よりも、これからも仕えたいと言ってくれた自慢の幼馴染のために。
……ふと横を見ると、その幼馴染は驚いたように珍しく目を見開いていた。
「……何ですか東馬、その目は」
「その……まさか泣かれるとは思ってなかったので」
「泣いてません」
「いや泣いてましたよね?」
「泣いてません。泣いてないったらないんです」
「子供ですか」
「うるさいですよ東馬。第一私が子供なら、そんな私に熱い熱い愛の告白をしてきたお前も同じくらい子供ということになりますよ」
「ちょっ……!」
東馬は思わずといったように周りを見渡した。部屋には二人だけで誰の目もないと知っているはずなのに。
いやそれよりも、その反応と焦り様は一体どういうことか。
「東馬?」
「……姫様、誤解を生むような言い回しはお控え下さい。私は聞かれたからお仕えしている理由をお伝えしたのであって、愛の告白のつもりで申し上げた訳ではございません」
「まあそうでしょうけれどね。でもお前、さっき私のことを可愛いとか綺麗とか言っていたではないですか。今更取り繕っても白々しくないですか?」
「それとこれとは話が別です。大体愛の告白など……そんな畏れ多いことを私が姫様にするはずないでしょう」
「……何それ」
東馬の言葉にムカっ、と唐突に鳳花の胸の中が熱くなった。被っていた皮もベリッと剥がれ落ちた。
「あれだけ可愛い幼馴染だとかこれからも傍でお仕えしたいとか熱く語ってたくせに、どうして今更畏れ多いなどと距離を取るようなことを言うの? さっきのお前の言葉は私を慰めるだけのお為ごかしだったとでも?」
「そんなことはございません。先ほどのは紛れもなく私の本心です」
「だったら――」
「ですが幼馴染みである以上に今の私は皇家の家臣です。ご理解下さい。先ほどの言葉が本心だからこそ、不用意に次期当主の配偶者に関わるような発言をして姫様のお立場に傷を付けてしまう訳にはいかないのです」
「……私の……傷?」
胸中の小火が勢いを増す。頭の前側が熱くなって、東馬に向いている目に力がこもるのを感じた。
「思い上がらないで東馬。皇家の次期当主である私の元にはこれまで数々の縁談が持ち込まれました。お前も知っての通り非公式の場で粉をかけられたことも多々あります。今更お前一人に好意を寄せられたところで私の名誉にはひっかき傷すら付きません」
「……その方々は一定の地位にある方ばかりでした。姫様と同等かはともかくとして資格は有る方々だったはずです。ですが私は違います。皇家以外に身を寄せるところがない孤児の私は、姫様と見合う身分ではない」
「身分、ですって……? ふざけないで!」
身を乗り出す。東馬の浴衣の襟を両手で掴んで目の前に引っ張り込む。突然の暴挙に東馬は目を白黒させているが構わない。
かつてなく近付いた自分達の距離をまやかしになんてさせてたまるか。
「大切だって、これからも傍にいたいって言ってくれたくせに、どうして今更そんなこと言って壁を作ろうとするのよ! 私達は確かに主従ではあるけれど、それ以前に身分なんて関係ない幼馴染でもあったはずでしょう!?」
「確かにそうなんですが……」
「だったら堂々と傍に居ればいいじゃない! それの何がいけないっていうの!?」
「だって私たちはただの主従で、ただの幼馴染じゃないですか」
襟を掴まれ前のめりになった体勢のまま、全く似合っていないへらりとした笑みを浮かべて東馬は言った。
「勘違いしないで下さい。私にとって一番大切なのは今も昔も姫様です。ですがその姫様を大切に思う気持ちを恋愛感情に結びつけるのは相応しくないという、ただそれだけの話ですから」
「――――」
その時の鳳花の感情をどう表現すればよかっただろうか。
怒りでもあったし悲しさでもあった。悔しさと呼ぶこともできるし嬉しさもほんの少しだけ含まれていた。全部の感情が一度に膨れ上がったかのようでいて、流れるように過ぎ去ったようにも感じた。
ただ一つ確かに言えるのは、その時の感情の激流が鳳花がこれまで抱いていた躊躇いを粉々に決壊させたということだ。
「――じゃあ、ただの幼馴染じゃなければいいのね?」
――どさっ、という音が不思議なほどに遠くに聞こえた。鳳花は妙に冷えた頭のまま、床に倒れ込んで固まっている東馬を組み敷き、見下ろしていた。
「私は東馬が好き」
さらりと、夜風に揺れた鳳花の髪が東馬の頬を撫でた。
「人として好き。幼馴染みとしても好き。あと、異性として大好き」
「ひ……ひめさま……?」
「ずっと好きだった。身分の差なんて知らない。何度も抱きつきたいって思ったし、あなたと口づけする妄想だって数え切れないくらいした。だから勘違いなんてさせてあげないし、そうさせないように何度だって言ってあげる」
もう黙ってなどいてあげない。相手を大切に思っているのが自分だけではなかったと分かったのだから、こっちが遠慮する理由はこれっぽっちもありはしない。
もう離れないし離さない。だから目移りさせないよう目と鼻の先にまで顔を寄せて、ありったけの愛しさを込めて言ってやる。
「貴方が好きよ、東馬。……だから聞かせて。貴方は本当は、私のことをどう思ってるの?」
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