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俺はいつも悪い意味で裏切る。  作者: 冷やしヒヤシンス
一章 君の従姉とその他と
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後悔と後悔と後悔

 

 突然のことでよくわからないと思うが俺は図書室にいる眼鏡の少女と話していた。何故こうも説明口調なのかも自分でよくわかっていない。


 簡潔に言えば、三島帆奈は図書委員ではなかった。


 図書委員ではなく『特別推薦図書委員』らしい。


 詳しい経緯もわからないが、とにかく図書室を司り過ぎて先生や司書から推薦されて特別役職を得てるらしい。この学校にそんな特別待遇システムがあるなんて思いもしなかった。

 気まぐれに三島さんに委員会について話したらそんな答えが返ってきたところのシーンのことである。


「なるほど、それで春先からここにいたって訳か。去年から引き続きってことで」

「はい……」

「それにしても特別推薦ってことは何か特別なことができたり?」

「そんな大したことではありませんよ……一応本の場所は全て記憶はしていますが……」

「はぁー、すごいな」


 全て覚えてるからって特別待遇になるとは思わない。まだ何かあるのかしれない。

 話の切り上げ方がわからないのはいつものことで「そろそろ勉強しようかなー」と棒読みで言うことになった。


 この三島帆奈という人も選ばれた人間。特殊技能を持っている。

 それは関石嶺華と同じ。


 遠い存在というやつ。

 唯一無二ってやつ。

 上には上がいるの上のやつ。


 そして、特別故の葛藤を持つ者でもある。

 やっぱり、いつまでたってもまったく持って俺には理解できない。

 以前ほど理解したくないとは思ってないけど。

 俺は単に良い人間になりたいのだ。未だに心の中では酷いことを思っているけど、いつかは。

 他人の気持ちをわかるようになりたい。

 優柔不断で女心よりも秋の空よりも変わりやすい俺がどこまで貫けるかはわからないけど。

 と、妄想の中の猫耳メイドに誓ったあの朝は忘れない。


 自習の後、校舎を出てオレンジ色に光る自分の教室を見上げても関石嶺華はいなかった。


「そういえば担任先生になんか頼まれてたな…」


 なんかもうどうでもいいけど。俺は本来何の関係もないんだから。




 昔、中学生くらいの頃。

 親戚の集まりとかで涼歌に会うことがあった。それは一年に一回、二回程度のものだ。

 従姉なので涼歌と会うのは必然。

 そういう時、その場で毎回誰かが泣いていた。

 それが涼歌の時もあれば、実の妹、実の姉の時もあった。いちばん涼華が多いけど、俺は一度もない。

 そりゃ俺が泣かせてんだから当たり前なんだが。


 当時、意味なくやっていた嫌がらせ。そうと露見しないように細工をした嫌がらせだ。だから大人も何にも言えないという狡猾なあれだった。

 内容自体はいたずら程度だったけれど許されることではないだろう。


 思い出してみるとなかなかに病んでいたと思う。それにしてもあんなに苛めてたのに何故涼歌は俺と一緒に遊んでくれたのか。

 それが原因で今の筑波音涼歌が形成されているのだとしたら大失敗だろう。

 俺に悪影響された人間の一人。けど内面自体は、わざとやってる節があるので、大丈夫だとは思う。その性格も含めて。

 涼歌はそこで慣れていただけあって発展途上の俺の言葉や行動に大した影響は無かったのかもしれない。

 人の性格を変えるようなものではないけれど、酷い言葉は酷い言葉だった。

 後悔しかない。

 しかし、誰だって後悔するものだからこれも普通のことでしかない。こんな醜悪な性格もありきたりで詰まらない普通のことだ。

 自分が唯一だと思ってる輩なんて――。


 だから俺だけ特別なんて痛い考えは殺すべきだ。だだの歯車と考えるべきなんだ。

 ただ一人の人間であろうとするべきなんだ。悪平等でも平等は平等だから。誰にでも不公平な公平。

 公平に葛藤や悩みを持っている。

 平等に選択することができる。

 だから失敗も成功も自分次第で、自分以外の誰の責任でもない。擦り付けなんて愚かも愚か愚の骨頂。

 他人に迷惑をかけないことこそが生きてく上で重要なことだと。たかが人間がどんな影響を与えられるかはわからないけど。


 しかし、人生そんなけったいなこと考えなくても何とかなってしまうのである意味無意味な考え。


 そういう即物的な考えにならないように、あらゆる事象をどうでもいいと一蹴しているのだけど。つまり精神安定でもある。それもまた即物的と言われたら返す言葉もないけれど。


「あぁ――なんて吹っ切れられたらどんなに楽だったか…」


 人生苦労が絶えない。

 それに見合うような快楽があるのかどうかは正直わからない。

 何もせずに期待してるようじゃ一生わからないだろうけど。


 そうですよね?


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