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俺はいつも悪い意味で裏切る。  作者: 冷やしヒヤシンス
一章 君の従姉とその他と
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委員会を決めます

 

「翡翠碧さんとも仲良く話してたよね。昔から能動的だったけど他人の興味持ち始めたら見境ないね」

「人聞きが悪いこと言うな。自然な流れだろ」


 こんな風に、コンビニ帰りに涼歌が突っかかってきたがいつのことだ。きっと何の意味もない行動だ。

 まったくやれやれだぜ。


 翌朝、流石に昨日に懲りて朝ごはんはちゃんと作ることにした。いっても昨日の残りでちょちょいとやっただけ。

 そして、またしても涼歌は俺と一緒に登校した。

 うん、もうどうでもよくなった。


 途中で横切る公園に誰かがいることに気づく。公園なんだから当たり前だけど、見た顔だからついつい目で追ってしまっていた。


「―――眼鏡女子ね…」


 彼女は長椅子に座って空を見ていた。俺もつられて見たが、綺麗な景色が広がっている。

 相変わらず素晴らしい青空だ。海を思い出す。


 涼歌と一緒に教室に入ったから男子生徒とか女子生徒(クラスメイト全員だが)に変な目で見られた。でも、一日で盛り上がりは収まったようだ。実際そんなもんだよな。

 窓際の一番前の席―――昨日の関石さんとの会話を思い出す。

 なかなかに面白い話が聞けたな、と。


 天才の友達がいる俺としては関石さんの発言についてどう思うか、そいつに訊きたいところだった。

 教室前方廊下側に関石さんを中心とした女子グループが形成されている。その中枢付近に翡翠碧がいた。

 誰よりも近くから関石嶺華という人間を見ている彼女。しかし、関石さんからしても彼女は凡人でしかないのだろう。

 俺には友達という友達は二人しかいなかったからあまりわからないが、何か違う感じは察せた。互いに一線引いているというか、踏み込めてないというか。

 友達という言葉は相応しくないのかもしれないし、それとも関石嶺華は翡翠碧なんて友達とすら思っていないのか、はたまたその逆か。


「俺想像力豊かになってきたかも」

「関石さんを見て何想像してんだよ!」

「お前は………伊藤航太だろ!わかってるぞ!」

「ようやく覚えたな。そして質問に答えろ! 何妄想してたんだ?」


 こいつは関石さんのことが好きなのか?

 面倒臭かったけど変に勘繰られるのも嫌なのでテキトーなことを言っておく。


「関石さんにできないことあるのかなーって。あれは世界一の天才だと俺は思うよ、ええうん」

「なーる。そうか、殴る必要はなさそうだな」

「やっぱり殴る気だったのか……関石さんってなんであんなに人気者なんだろうな?」


 伊藤は「何を当たり前のことを」と大袈裟に頭を振った。わかってないなと言わんばかりのムカつく顔だ。


「理由はいたってシンプル、顔と性格」

「顔はわかるが、性格? どんな感じなんだ?」

「そりゃ自分で話しかけりゃいいじゃん。百分率は一分率に如かずって言うだろ?」

 それ、わざと言ってるんだよな?

 こいつの阿呆は警戒しておいた方が良さそうだ。意味不明過ぎる。

 何に巻き込まれるかわかったもんじゃない。


「――って押すな押すな!」

「ほらよっ」


 席から無理矢理押し飛ばされ女子軍団に突っ込んでしまった。

 言わんこっちゃない。

 警戒するのが遅すぎた。

「げっ」

 関石さんグループの女子共にガン見されているけどいつも通りテキトーに流す。その中に従姉の筑波音涼歌が紛れ込んでいるが唯一の問題だ。


 何か仕掛けてくるのは間違いない。それも悪意九十九パーセントで構成された言の葉で。

 まず前提として俺は関石嶺華と話すために送り込まれた。

 それを正直に言うのはまずそうだから代替の理由をでっちあげる必要がある。

 関石さんなら上手く乗ってくれるかもしれない。

 適当な話題。それもこの女子高生が不快にならないもの。

 えっと…。


「皆さんは委員会どうするんですかね?」


 つい敬語を使ってしまった。地味に屈辱的。

 今日の午後に決められるであろうそれはホットでマルチな話題。

 五人の女子に囲まれながらに怯えながら切り出したけれどしばらく沈黙が続いた。別に会話ができない訳ではないんだけども……。

 冷や汗が流れてきたよ。女子コミュニティ怖いわ。そもそも男子一人で女子複数人と話すという状況からさて無謀というやつだ。

 けれど流石は自称天才、関石さんは乗ってくれる。


「一学期に関しては学級委員長かな。二学期は生徒会長に立候補するつもりだし」

「流石嶺華、見てるところが違うねぇ~」

「当然の流れって感じというか~」

「…」


 知らない女子のお世辞発言は置いといて、翡翠さんは思うところがあるらしい。

 もしかしたら……いやまさか、な。俺の予想が当たる訳がない。


「へー」

「自分と訊いといて反応薄くない?」


 モブ女子が突っかかってくる。なんか恨まれるようなことしたっけ?

 してないはず。視界内にいれることも避けてたっていうのに。


「感情が表に出てないだけで内心すごく驚いてるよ」

「そんな驚くようなこと?」

「何故俺に対して当たりが強いんだ……」


 誰だが知らないけど。

 それはそれとして話は続いた。


「私はめんどくさいからやらないかな~」

「だよね~」


 義務じゃないから拒否するのもダメではない。むしろ推奨と俺は勝手に思っている。


「内申書に書かれるならやって方がいいのかなぁ……そんな変わらなそうだけど」


 その考えはいささか即物的だとは思うが、確かに使命感でやってるやつはおかしい。

 俺としては面倒なので絶対やらない。


「そう考えたら嶺華ってスゴいことになってるよね~。あらゆる一番を総なめにしてるっていうか」

「一番ねー。実は二番だったー、みたいなこと無かったのか?」


 関石さんを試してみた。

 すると、微量ながら彼女は眉をつり上げた……剣呑剣呑。

 昨日のことを連想させるようなことを言ったからだろう。直ぐに八方美人を纏い答える。


「昔は一番でも二番でも無かったんだよね。中学生の頃は中の中だったよ」

「へー、まぁ、そうだよな」


 笑顔に圧されるけど確実に嘘だ。関石さんは昔から一番以外を取ったことない。勝手に断定しているけどこの可能性は多分にある。

 そうでなければ飽きるなんてないだろう。


「―――えっ? 何その視線」


 この質問をしたら取り巻き共に変な目を向けられたのでこれくらいにして自席に戻った。

 それにしても涼華が何もしてこなかったのは意外だった。教室内では話さない的なあれなのかもしれない。そういう所、筑波音家は拘ってる。


「ふぅ、疲れた」

「お前……何関石さんと仲良く話してるんだよ!? このたらし野郎!」

「お前が俺を送り込んだんだろうが!」


 流石に怒るよね。気持ち程度には。


 そして例の委員会決定の時間。

 の、前の話。それは昼休み。

 何故か担任先生に職員室に呼び出された。

 心当たりはない。完膚なきまでにない。


「失礼します、一年天風です………先生に用があってしました」


 名前はまだ知らない。言っていたような気もするけど覚えていなかった。


「来たね天風」

「まだ何もやらかしてませんよ?」

「まだって何か起こすつもりなのか……じゃなくて」


 一応、などと前置きをしてから先生は告げる。「天風……筑波音とのことだけどな。今現在同棲してるんだよな?」


「それすか……別に同棲するくらい今の高校生事情的には普通なんですよね?」


 そんなことを涼華が言っていた。こういう非実用的な知識について嘘を吐くとは思えないので大丈夫。

 だったはずなんだけど。


「普通じゃないでしょ! 従姉だからってそれはまずいって!」

「なっ、騙された!」


 と、いうのは冗談で。

 先生の反応を試してみたという極悪非道行為に及んでいたというどんでん返し。

 楽しめた所で暴露と警告を。


「先生、あれ涼華が言った付き合ってるとかは真っ赤な嘘ですから」


 血だらけな嘘だから!


「あいつの嘘には気をつけた方がいいですよ。先生ですら罪悪感も感じずに騙しますから」

「そんな生徒だったのか? 何考えてるかわからないやつだったけど……ってもしかして天風……」

「おっと、別に俺は騙してませんよ」

「その発言からして騙してたような気がするのは私だけか」

「とにかくあいつは普通に従姉ですから」

「……私はショックだよ。こんなんなら注意しない方が良かった」

「そう気にしないで。こういう生徒もたまにいるでしょう?」

「いる訳ないでしょう!」

「とにかく先生、一つの失敗に懲りないで頑張ってくださいよ。俺GTO好きなんですよ、そんな感じで。生徒を土の中に埋めるくらい俺はいいと思いますよ?」


 すると突然、先生は手を口に当てて震えた。そんな面白いこと言ったつもりはなかったんだが。


「いや、実はGTO、ごくせん、ウォーターボーイズを見て教師を目指し始めたから思い出しちゃって」


 この理由が不純なのかそうじゃないのかは議論が巻き起こりそうだが。


「ウォーターボーイズは見ましたよ……GTOはアニメ版ですけど」

「ああいう青春っぽいの好きだったんだよね私。ジャンプとか王道バトル物も勿論だけどね」

「それはわかりますね。昔近所の人に漫画とか借りて読んでましたよ」


 意外なことに盛り上がった。アニメとかは好きなので俺も久し振りにテンションが上がってしまった。


「―――っと脱線してたらこんな時間に!」


 予令のチャイムが鳴ったのでそろそろ教室に戻る。その前に。


「天風……何があったか知らないけど更正できたんなら委員会やってみたら?」

「面倒ですね」

「私を騙して反応を楽しんでたやつの言い種?」

「……強制ではないですよね?」

「誰にも決まらなかったら私が独断で決めることになるから……覚悟しとけよ」

「……冗談キツいっすよ」


 そして六時間目、委員会決めの時間。

 担任先生がまず「学級委員になりたい人」と訊くと間髪いれずに関石嶺華が手を挙げて決定。その後の仕切りは関石さんになる。その際も先生はチラチラと俺の方を見ていた。ガチでやる目だあれは……。

 俺には祈ることしかできないようだ。


「体育委員やりたい人手挙げて」


 誰も挙げなかった。

 いきなりデッドエンドかよ! 一番やりたくない面倒な委員だわ!体育祭参加したくないよ!

 けれど関石さんが急かすとバラバラと挙げるクラスメイト。


「…えええ」


 あなた達脳内構造単純過ぎません? 関石さんが困ってるからってここまでしますか?

 彼女のカリスマ力は俺に度肝を抜かせる程だった。

 けれどありがたい。今だけは。

 順調に委員が決まっている。その代わりに先生の、席の目の前からの睨みが強くなっていた。

 これくらいで折れるもんか。

 俺は絶対に委員会に所属しないで乗り越える! なんて明確な意思はなかったけれども、やってたまるかってんだ。

 学級委員、学級副委員、書記、会計、体育委員、図書委員、風紀委員、美化委員等々続々と決まった。

 そして最後の最後。


「男子で保健委員になりたい人いますか?」


 これだけやったのに淀みない声が教室に響き渡る。声帯すら人間超えなのか。

 けれど、いない。誰も手を挙げようとしない。

 先生が見てくるよ。それも目だけが異様に笑ってるし。


「天風君はどうかな?」

「!」


 な、何ィ!?

 まさかの関石さんからの指名だと!

 おかしい、なにかがおかしい。先生と関石さんがグルの可能性があるだと……または関石さんが先生の思考をトレースしたのか。

 落ち着け俺。ステイクールだ。ステイアンドクールだ。


「いや面倒だから俺は止めと―――」


 先生が尋常ではない圧力を加えてきた。怖い、普通に怖いんですけど。

 どちらにしろ誰もいなかったら俺がやらされる。拒否しても意味はないかもしれない。

 けど、誰かが、意見を変えて手を挙げるかもしれない。救世主が現れる可能性だってある!


「―――くと見せかけて実はやりたかったんですよ」


 拒否って先生に睨まれるのも選択肢としてありだったけど今回は譲歩しておく。

 流れでこんなことするのは俺の欠点かもしれない。


「先生、全員決まりました」


 書記が黒板に書かれてることを日誌に書いてとりあえず委員決めは終了。

 無事に関石さんの仕事は終わった。

 俺は机に突っ伏して現実から目を背けた。



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