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大鴉  作者: 黒煙草
4/6

依頼内容:荷物運び

・・・・・

1週間なんざあっという間だ

集合場所で、俺を含めた第1部隊と第2部隊こと“猿“全員の顔ぶれを見渡す


「遅刻欠席なし、と。別に無理して集まらなくてもよかったんだがなぁ」


「何ほざいてやがるリーダー、てめぇが行くなら全員着いてくるように訓練したんだろうが」


「んー…そうだったかな?」


「リーダー、訓練ではないが俺も“猿“も全員、リーダーに対して忠誠心が植え付けられている。アイヴォリーのクソは知らんがな」


「言うねぇラットン!俺には忠誠心はねぇが、リーダーに着いていくとよォ!楽しいことがあるからなぁ!」


「だそうだリーダー、だから遅刻や欠席なんぞあれば、そいつは俺らのチームには要らない。不必要なんだ」


「そうかい、ンな忠誠心に振り回されてねぇでガキとか作って愛情振り撒けよなぁ」


まぁそんな奴がいたら除隊命じてるがな

二度と戻ってくんなって、な


「雑談はここまでだ、今回の依頼を改めて説明するぞ」


と、堅苦しくラットンが説明しようとするが、まぁ簡単に言えば荷物運びだ


西から東へ、真ん中の大陸を陸路だけでという条件のもとだ


「────と、言うことだ。質問あるか?」


「荷物の中身については?」

と、1人の兵士が質問する


「中身は見るな、との依頼主から厳密に言われたが…」


ん?ラットンがこっち見てる…


「なんだラットン?中身が気になるのか?」


「当たり前だ、以前のようなことは避けたい」


まぁ気持ちは分からんでもない。開けてやるか


運ぶものは旅行用に使われるようなケースだ


ケースに近づき、足で開ける


俺は知ってっから驚かねぇが、中身みた部隊の仲間は目を見開いていた


「そうだ、核弾頭だ。物騒なものだが衝撃さえ加えなければ安全な代物だ」


これで部隊の仲間が逃げ帰ってくれたらいいんだけどなぁ


「お、俺は残るぞ!リーダーについて行きます!」


と、ひとり声を上げる


「私だって残ります!この身を捧げた1兵士として!」


と、女性の声も

こりゃまずいな


「俺だって!」

「私も!」

「俺は元からそのつもりだ!」

「なによ!私だって!!」

「逃げるなんて選択肢昔に捨ててしまったわい!」

「僕だって!」


なんとまぁ、老若男女全員が参加希望とは


勘弁して欲しい


「あー…子供と年寄りは残ってもらうように言ったはずだ。さすがに危険だからな」


「そ、そんな…」

「わしはまだ死ねぬというのか…」


いや勝手に死ぬなくそじじい


「おい!各員、思いは色々あるだろうが残ってもらう人員に関しては伝えているはずだ。今更変更はできん、分かったな!」


「「「はい!!」」」


まーまー、返事のいいことで…


おや、Kがすごく不安そうな顔でこっち見てる

そういや、自己紹介させてねぇな


「てめえら全員に、紹介したいヤツがいる。あいつだ、Kだ、Kって呼べ。俺らのだから、顔立ちがいいからってナンパしたら殺すぞ」


おぉ、と感嘆の声が上がり、全員がKを見る


Kが睨んできた、そんな感謝しなくてもいいんだけどなぁ


「K、簡単に紹介しろ。3秒だ」


「えぇ!?え、えと、Kです!依頼の間よろしくお願いします!!」


うむ、元気があってよろしい


「“射洛“、てめぇからKの射撃向上を頼んだが結果が乏しいと聞いた」


射洛と呼ばれたグラサン男が立ち上がり、敬礼なんかしだす


「ハッ!この度は申し訳ありません」


「堅苦しいのはやめろ。だが、この依頼の間に仕上げろ、いいな?」


「わ、わかりました…」


あら、意気消沈しちゃった


「射洛、乏しいとは言ったが0じゃねぇ、それにほかの仕事も任せてるからな…合間ぬって教えてあげてることにゃ、こちらから頭下げたいくらいだ。ありがとうな」


と、俺が頭下げる


「い、いえ!Kさんが元々上手いので、あと一押しなのですが…」


「ふむ、そうなのか?K」


「あ、う、うん!基本的なことや応用したものは大抵身につけてたけど…」


「まぁ、それは荷物運びのときに克服すりゃいいか。さて」


腕時計の時間を確認する

朝5時か

予定では1時間後に出発、そこから丸7日移動

国境とか色々超えて相手のとこに届ける

やることは難しい事じゃねぇが…

色々と引っかかるんだよなぁ


まぁ、依頼主が変人だしな


「んじゃま、おしゃべりはここまでにして1時間後に出発するから心の整理整頓しとけ。解散」


この一言で全員が散らばり始めた


・・・・・・

長話が終わりやがった、リーダーに近づいてメスガキのこと聞くかね


「おい!リーダー!ちといいかァ!」


「うるせぇ、何の用だアイヴォリー」


俺はリーダーの肩を抱き、顔を近づける


「んなツンケンすんなや、ひとつ確認してぇんだよ」


「……」


「黙りとはひでぇな、まぁ好きに喋るけどよ。Kは殺していいな?」


Kは本名を出した、名前からして東洋の人間だ


『日ノ本』出身の可能性があれば荷物運び所じゃなくなる


「なぁなぁなぁリーダー、あのメスガキのこと気付いてんだろ?」


「あぁ、気付いてた。紋様もあったよ、ふろ場の時に確認した」


1週間前の乳くり合ってた時か、俺ぁ全体見てねぇが…完全に把握してたか


「なら確定だ。俺たちにゃ核弾頭以上に、荷が重すぎる」


「俺にゃ軽い、てめぇもそうだろ“羅刹“」


羅刹、俺の別名だ

殺し屋家業してた時に他称された呼び名だ


だが色々と面倒が起きて…路地裏で全裸で倒れた時に、リーダーに拾われた


もう10年も前の話だ、その名前をあげる意味は


「確かに軽い、俺はあの程度の“荷物“は幾度となく運んできた。だが今は違う、仲間がいる。仲間が多ければ多いほど比例して重くなる。それくらいは分かっているはずだ」


「話長ぇよタコ、要するにK殺して荷物軽くしようってことだろ」


「そうだ、面倒は減らすに限る。昔の俺はそうだった」


「だが今のてめぇは“仲間“を殺すのか?」


仲間…仲間!?Kが仲間だと?!


「Kは、もはや俺たちの一部だ。殺すならてめぇを先に切り刻む」


睨んでくるリーダーの目は金に輝いていた

最近は直視を控えていた。この瞳は特に、だ


「そ、その目は、本気なんだな?」


「本気だ…はっ!何びびってやがる、てめぇの身体は硬ぇからナイフも拳も傷めちまうよ」


「な、ならいいがよ…」


「それに、仲間に危機が訪れる時は」





「俺が殺す」


金の瞳の中にある黒の瞳孔が、細く、薄く尖る


・・・・・・


「こちら第1部隊、森抜けて砂漠地帯に入るぞ」


『ラットンさん了解です!2両目“猿“続きます!』


言っても、車2両しかないけどな

雰囲気は大事か


軍事用に使われるような深緑のジープには俺と、Kと、luckyFが後部座席に座り


運転席にラットン、助手席には望遠鏡を覗くアイヴォリーがふんぞり返っていた


ちなみに荷物はKに持たせてる


「平和だなァ!リーダー!遮蔽物なしの砂漠地帯で現地人どころかモンスターまで見えねぇぞ!」


「そうかい!だが警戒を怠るなよ!」


「分かってらァ!」


返事の良さには誰にも負けねぇよなアイヴォリーは


ところで気になるのがひとつ

「なぁluckyF、その薄い機械はなんだ?」


「なに?リーダー機械に疎過ぎない?ノートパソコンだよ、これは。電池は太陽光使ってるけど、ヤバくなったらブレーキから貰うから」


「これが、パソコンか…俺の知ってるのより小さいな」


「そら昔のはでかいよそりゃ、計算式の答え出すにも1時間はかかったんだっけ?」


「でも今じゃこの薄くて小さいのでぱぱっと答えでますからねー」


と、Kが言う


「お前らが何を喋ってるのかさっぱりだが、すげえってのは分かった」


「ドローンの時もそうだけど、リーダーは機械の類知らないの?」


「どうもそこら辺は苦手でな、ラットンがよく使ってるのを触らせてもらおうと思ったが」


「絶対に!触らせんぞ!俺はリーダーが4つの指先で、パソコンを完全初期化させようとしたの忘れんからな!」


運転中のラットンが叫ぶ


「悪かったってあれは、変に知識を持った俺が悪かったんだ」


「いーや!あれはリーダーが悪いね」


と、アイヴォリーが望遠鏡を覗きながら言う


「変な知識教えたのアイヴォリーだったろうが!元凶が!死ね!クソ野郎!」


「お、言ったなぁてめぇ!オラァ!」


望遠鏡を右手で持ち、覗きながら左手で殴るとか器用なことをしているアイヴォリーに対し、ラットンは左手で運転しながら右手で止める


「オラッオラッ!」


「おいやめろ馬鹿野郎!ひっくり返るだろうが!」


「うるせぇ知ったことか!オラァ!」


あ、右頬に入った

と同時にキレたラットン


「てめぇやりやがったな!ふん!」


ボディに右フックが入る、んな狭いところでようやるわ


あ、蛇行し始めた…2人とも降ろして反省してもらうか


「おいクソ2人、喧嘩なら広いとこがあるぞ?……降りろ!!」


・・・・・・





進んでいく2つの車が見えなくなるまで、黙ってたラットンとアイヴォリー


「なにか話すことがあるんだろ?」


「まぁ待てや、ケリつけてからでも遅くはねぇ」


その言葉を皮切りに、2人は構え攻撃し始める





弱10分経ったろうか、大男ふたりは地面に倒れ伏している


「満足か?クソ野郎」

「あぁ、悪いなラットン様よ」


白い男は満足したのか、空に向かって笑顔を作る


「きたねぇ笑顔だ」

「人のこと言えるかてめぇ」

「これでもモテるほうだとは思ってる」

「…次の勝負はハーレム作ってどっちが多かったかだな」

「後処理に困る勝負はやめろ」

「それもそうだな、喧嘩の方がサッパリする」


2人は立ち上がり、歩を進める


「車のタイヤ痕を追って、合流だな」

「それが早い」



「…」

「…」


ザッザッと、砂の上を歩く大男2人


炎天下でもあった為、たまに水を飲み、熱中症対策に塩の入った袋から塩を舐める


「いつまで黙ってるんだアイヴォリー」

「なぁ、“神楽坂 円“」

「その呼び名はやめろ、転生前のことは思い出したくない」

「だが重要なことだ、“神楽坂 巴“のこともある」


「…聞くだけ聞いてやる。正直、姉のことは忘れたい」


「そうか、俺はあいつ…Kを殺す」

「同じ国の出身だからか?」


「……あぁそうだ、俺も転生して男の体になっちまったが…あの国の出来事は己の身体がよく知っている」


「俺だってそうだよ、忘れたいくらい体に刻まれてる」


ふつふつとアイヴォリーは過去を語っていく


「転生前の“あの国“は他国に対抗すべく『人間兵器』を作り出しやがった。首謀者は当時の首相だったが、今思えば裏で操ってる人間が居ただろうな」


「そこら辺、俺はリーダーに聞いた。やはり裏で暗躍するテログループがいたらしい、そいつらが『あの国』の市民の血に核兵器なんざ混ぜやがって…」


「…俺の記憶には残っちゃいねぇが、何も知らねぇ老若男女、女子供構わず兵器に仕立て上げやがった」


「まぁ移住してきた海外の人間達には、拒絶反応が出て排泄物として流れる仕組みだったから、純粋な国出身者じゃなければ兵器として成り立たなかったがな。胸くそ悪いことには変わりない」


「そんで、裏で動いてやがったテログループが作動させた、と」


「その頃には首相も死んでたそうだ、生首だけ残してな」


「だがテログループには誤算があった」


「あぁ、上手く作動しなかった少年少女達もいたらしくてな。原因は今も分かっていない」


「だから“K“こと“神楽坂 巴“は生き残ったって訳か?…いや、今も歩く不発兵器と化してるのか」


「姉のことはあとだ、記憶を擦り合わせることを考えろ」


「そうだな、それで?俺や“円“、作動した適合者は爆発して“あの国“の大陸は3/4蒸発したんだったな」


「そこらへんは過去のニュースで取り上げているから“アイヴォリー“でも知ってるか」


「今はその名前じゃなくてもいいぜ?互いが辛いだけだろ、転生前の俺は“新道 紡“だ。忘れたわけじゃねぇだろ」


「新たな道を紡いでいく、か。今のお前とは正反対だな」


「うるせぇ、周りの環境もあってか荒れてたんだよ」


「その性格は昔からだったのか、笑えるな」


クツクツと、黒い大男は笑う

不貞腐れる白い男は、話を変えようと質問をする



「そういやリーダーと会ってたのか?最初見た時、何だこのアホは英雄気取りかよと思ってたがな」


「リーダーも兵器のひとりだったが、政府の裏に対抗できた唯一の男でもあった」


「あの強さにゃ俺も当時は憧れてたよ。兵器となった自分を上手く制御して、迫り来る敵をちぎっては投げちぎっては投げ」


「あの映像を見たのか?正面ゲートから堂々と侵入した過去のリーダーを」


「映像じゃねぇな俺は、生で見たよ。今思い返しても震え上がるほどの圧迫感あるぜ」


「今やあんな小さな娘になったが、それでも俺は恩義がある。だから──」


と、黒い男は話を一瞬止め、白い男を睨む


「──リーダーの意見に反すれば俺は全てを排除する」


怒気混じりのオーラを受け流す白い男は、やれやれ顔で返答する


「でかいこと言うねぇ、出来もしないこと語るのは嫌いじゃねぇが」


「はぁ…言っておくがKは殺させんぞ?」

「なんだ、出発前のやり取り聞いてたのか?」

「憶測だったが、確定に変わった。それだけだ」

「チッ、いけ好かねぇ」

「俺はもとよりお前のことは嫌いだ」

「知ってる」

「じゃあ聞くなバカ」

「バカで結構だよ」

「…?なんだ、喧嘩腰になると思ったが素直だな」

「んな事で切れても仕方ねぇよ、さっさと依頼終わらせようぜ」


その言葉を皮切りに、歩を早める白い男に足早とついていく黒い男


「Kが気になるか?アイヴォリー」

「離れ離れになっちまって気が気じゃねぇんだ、察してくれよ」

「話したいことがあるから無理やり降りたのだそ?呪うなら自身を呪え」

「へいへい、しかし一面砂地だと敵わからねぇな。九時方向でけぇサソリだ」

「“ビッグスコーピオン“か、色で強さが変わるが…何色か」


呟いた次の瞬間、地面から這い出てくる大きなサソリは黒色をしており、大男ふたりは嬉嬉として喜んだ


「少し早いが昼飯決定だなァ!1番ダメージ与えたやつが料理番な!」

そう言って白い男は突進し、攻撃し始めた


「待て!ずるいぞ卑怯者!!」

続く黒い男も、腰に装着していたダブルバレルショットガンを持ち、サソリに攻撃し始めたのだった



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