準備期間中
隣で、男のモノを突っ込まれた女性は痛みで嘆いていた
それを見ていた少女は絶望し、生き残ることを諦めていた
諦めかけていた
“街をよこせ“
問いかけてきた男の、この質問の意味はわかっていた
自分の父親は市長だ
お爺様のあとを継ぐようにして立候補し、当選したのだ
市長になるために血の繋がりは関係ない
人望、カリスマ、心意気
まだ沢山あるが、その中でも父は笑顔を得意とし、回転の早い頭で市長になったと、母から聞いた
父から私に向けられた笑顔は、市の人達と同じものだった
仕方ないのはわかっている
屈託のない笑顔から、愛情も感じとれた
だから独占欲が生まれた
だから家を出た
だから捕まって今に至った
後悔しかない
自分のものにしたかったから
自分だけに向けて欲しかった
子供にはよくある欲望かは知らない
自業自得、それが頭に浮かぶ
静寂が頭の中で埋まる
“市長に直談判しろ“
声がした、幼い声だが性別の区別がつかない
地に向けていた顔を上げると、肩まで伸ばした金の髪の少女が1人、佇んでいた
隣では、いまだ乱暴に犯されている
目の前の男は声がした方向に顔を向ける
「んぁ?子供じゃん、しかも女の子。迷い込んできたの?お兄さん達ね、仕事中だから外で待っててね?」
「聞こえねぇのかゲス野郎、直談判しろっつってんだよ」
「あのさぁ、最近の子供は敬語とか習わないの?孤児院でもマシな言葉使うよ?」
「そうかい、まぁ市長に直談判は今は別にいい。俺が来た目的はその人質だ、よこせ」
なんとも乱暴な言葉を使う少女だろう
着ている服にも少女らしさがない
本当に迷い込んできたのではないだろうか…?
で無ければ助けに…?
いやいやいやいや、それは無いでしょ!あんな子供に何か出来る訳でもないんだし
でも、本当だったら…父やお爺様が心配して助けに来てくれたのなら
私はどうすればいいんだろうか
「あのね?この捕まってる子達は仕事で必要なの、わかる?というか君なんなの?俺らの相手でもしてくれるの?悪いけど俺はロリコンじゃないから」
「ふん、これから死ぬ奴に正体明かす馬鹿なんて俺の思いつく限りじゃ…一人いるな」
「は?俺死ぬの?どうやってだよ、隕石でも降って死ぬのか?」
「今じゃねぇが、死なんざ平等に訪れる。それが先の未来か今なのか…てめぇがすぐ後なことに変わりわねぇが」
「へぇ、興味あるね。俺どうやって死ぬの?」
「あぁ、その前に確認したいことがある。“luckyF“!!」
少女が叫ぶと、無線機からだろうか?声が聞こえた
『なに!?今、必要な数の男揃えてる最中だ!』
「アァ!?野郎一人で十分じゃねぇのかよ!!」
『一人とは言ってねぇから!んでなに?俺のテクに達されたくなったのか?』
「今なぁ!人質と鉄棒やらナタ持った男達に囲まれてんだ、品定めしてくれ!」
『お楽しみ中じゃん!混ぜろよ!』
「すぐに来い!1人盛ってんだよ!」
『男も新品がいいから中古は殺していいよ!』
「あぁ分かった!1人処分決まった!他はどうすりゃいい!」
『玉2つと、棒と、胴体と、頭が残ってたらいい!』
「わかった、そっちもキリのいいところで来いよ!」
なんとゲスな会話だろう、しかも幼い少女の口から発せられたのだ
驚愕、そして呆然
心はそういった感情が生まれ
頭は混乱し始める
「人無視して何叫んでんだよぉ、うるさいなぁ。なぁみんな、こいつ殺そうよ。黙らせようよ」
女性を犯していた男を見る
無表情だった
不自然なくらいに
「お、おい!聞こえたろ!」
「確認とったあと殺したよ、ほら」
少女は犯していた男に近づき、蹴り飛ばす
スライスされたトマトをまな板に並べるように、男はだるま落としのように崩れ落ちた
「はぁ?いつやったんだよ!」
「喚くなゲス野郎、喋ってる時にぱぱっとやって終わらせたよ」
「喋ってる片手間で殺ったって言うのかよ!他の奴ら!殺ろうぜ!!」
声をかけられ、全員が動き出そうとすると両手両足がバラけ、胴体と頭だけになる
テント中に響く男達の声
改めて侵入してきた少女を見ると、耳を塞いでいた
「やべえ、うるせぇ」
この子、怖い
それと同時に、舞い散る肉片の中を立つ姿に
美しいとも思えた
・・・・・・・・
やべぇ、どっちが酒場の孫娘かわからん
俺の自信に祈って、無事な方が酒場の孫娘だと思いたい
「おいおいおい!友達になれたのに死んじまったら意味ね〜じゃん!」
「クズにしては友達思いか、いいことだ」
「だろ?人類みな兄弟、だけど仕事と割り切らなきゃいけないからねこういうの」
一人、五体満足の男がヘラヘラと笑いながらも鉄棒に突っ込まれた男を親指を立てて指す
「仕事ね、そりゃ大事だ」
「話がわかる子じゃん、君に興味湧いたわ。いくつ?」
「次の年で30だ」
「へぇ、俺より年上じゃん。年相応に見えないね」
「よく言われるよ。話を戻すとして人質寄越せ」
俺は優しく問いた、これでダメなら殺そう
「だからダメだって…っ!」
男の首にナイフを投げるが身体をそらし、避けられる
お、反射神経と眼はいいな…薬でもやってんのかな?
「あぶねー!本当見た目とは違うな!物騒すぎ」
「はぁ、めんどくせぇ」
ふと、通信機から声がする
『ちょいリーダー!殺してないよね新品!?』
なんでバレてんだよ殺そうとしたの
「もしかしたら中古かもしれんだろ?」
『確認とってからにしろよ!』
「わーったよ!…んで?兄ちゃんあんた童貞か?」
「あぁ?俺の事かよ、もちろん卒業済みだ。舐めんなよ?」
「じゃあ死ね」
ナイフを2本投げる
1本目は避けられるが2本目は額に直撃する
「グゥエ!」
倒れる間際に10本投擲し、首、心臓、腹と、全て命中させ、息の根を止めた
おし、終わり
・・・・・・
酒場に帰ってきてから状況を確認した
人質は全部で50はいたそうな
そのうち46の死体は見つけたが、2は見つからず
助かった2人は意気消沈していた
「リーダー!ありがとうな!」
声の主は新入りのluckyFだ
「そりゃどうも、2人殺したが中古だったから」
「うん、いーよ別に。リーダーの戦い方も見れたし」
「うん?俺ぁ見せた覚えねぇけど」
「リーダー、ドローンって知ってる?空中に浮かぶカメラ」
天井を見上げると確かにドローンが浮いていた
「だがあれだけじゃ中なんて見えねぇだろ」
「熱探知も搭載してっからな?それだけでだいたい把握出来たよ」
「そうか、まぁ見られて減るもんじゃねぇしな」
「色々参考にしてもらうわー」
と一言つけてluckyFとドローンは酒場から出ようとする
「おいluckyF!1週間後、頼んだぞ!」
「はいよー!」
店の外から聞こえた了承を聞き、俺はマスターと向き直る
「で、だ、マスター。報酬は頂くぞ」
「……嫌だと言っても、持っていくのだろう!好きにしろ!」
さすがに付き合い長いだけあって理解力もある、いい奴を持ったなぁ俺
「ウォッカひとつ持っていくぞ、じゃあな」
「ふん!地獄に落ちやがれってんだ!」
マスターの文句を聞き流し、店を出た
外では車が待機していた
ドアの窓をノックし、開けてもらう
「待ったか?」
「俺はさほど待ってないぞリーダー」
「俺ァ待ったがな!リーダーよォ!」
「そうか、じゃあ帰るか」
2人の言葉に俺はそう答えた
「リーダー、孫娘の件は良かったのか?」
「どういう意味だ、そりゃ」
「報酬とはいえ、マスターが嘘を着けば、下手したら拉致監禁騒ぎにもなるぞ」
「それは、おいどうなんだ?えーと、孫娘さまよ」
俺の隣で縛られて、口にガムテープをしているマスターの孫娘はこちらを睨みつけた後、そっぽを向いた
「だ、そうだ」
「運転中だから何をしていたかわからないぞリーダー」
「扱いが雑で嫌われてんだなぁ、俺らぁ」
「リーダー!言っておくが車に乗せたのは俺で、縛ってガムテしたのはアイヴォリーだからな!?」
「ハッ!なんだとてめぇ!?乗せる時ラットン、てめえもノリノリだったろうが!!」
「なんだぁてめえ!戦闘はあくびしてて何もしてねぇくせに!ぶん殴んぞ!」
「うっせぇ!殴り返してやらぁ!!」
喧嘩するほど仲がいいってことか
「やめろテメェら!事故ったら元も蓋もないだろ」
「リーダー、それ言うなら『元も子もない』だぞ。『身も蓋もない』と被ってる」
「頭冷えたようだな」
「俺はいつでも殴れるぞ!」
「クソアイヴォリー!てめぇは黙ってろ!」
やれやれ、狂犬二匹の扱いは苦労する
改めて孫娘を見ると…まぁ何だ、怯えていらっしゃる
「孫娘さんよ、今からてめえは俺たちの預かりもんだ。掃除洗濯炊事のほとんど、頼んだぞ」
俺の言葉を聞き、目を見開く孫娘
そんな無茶な要求じゃないんだがな…水場の作業は苦手かな?
まぁ、なんとかなるだろ
・・・・・・
なんということでしょう、この私と同じくらいの少女が家事全般を頼んできたではありませんか
無論、一通りこなせますが…お気に召さなければ下世話なんてことも…
嫌だ嫌だ!!前に座る二人の男の世話なんて最低最悪極まりない!
なんで私を報酬にしたのよお爺様は!許さない、あのジジイ!
取り敢えず逃げれるか確認を!
両手両足の拘束は…うん、解けないね
窓の外は、ものすごいスピードで景色がすぎていくわ…
え、これスピード違反じゃないの?運転手の男は何してるのかしら?
あ、助手席の男と殴りあってる…
さっきの少女は止めたんじゃなかったの!?
ふと、横から声が掛かる
「逃げる算段立ててもいいが、てめぇは綺麗なまま返したいからな。怪我でもされちゃ困る」
なんで身勝手なこと言ってるの?この子異常よ?
「おいクソふたり!いい加減にしろよ、ドーナツ屋が捕まえに来る」
あ、警察のことをドーナツ屋って略したわ
すると黒髪の男が右手で白髪の男の拳を止める
「フんッ!…分かったよリーダー」
「おぉ!止めやがったなこいつゥ!」
「片手運転はやめたいからそろそろ落ち着け、俺は言いすぎたよ」
「…なんだよ、俺が馬鹿みてぇじゃねぇか!帰ったら決着付けっぞ!」
その言葉を皮切りに、運転手はスピードを落とし安全運転を
助手席の男は窓側に顔を向けた
そして、沈黙が訪れた
・・・・・・
隠れ家とは程遠い、車が5台停めれる倉庫の中で、ガムテープだけ剥がされた私は、少女と顔を向き直す
「改めまして、俺は“死を求める傭兵“たちをまとめる“リーダー“だ」
と、少女ことリーダーさんが自己紹介をする
「好きに呼んでくれて構わん、んで白髪白肌の大男がアイヴォリーだ」
1台スペースの空いた場所で右ストレートを放つアイヴォリーさん
「そいで黒髪黒肌がラットンだ」
身体を斜めに逸らし、避けるラットンさん
「まぁ二人と俺は長い付き合いだ、宜しくな」
とリーダーさんが平然とした顔で応える
「んでぇ!嬢ちゃん!!名前教えろや!!」
と、アイヴォリーさんはボディに左フックを仕掛ける
「え、えと、わ、私は」
「オラァ!」
アイヴォリーさんの回し蹴り、その際の叫び声で遮られました
紹介させる気はあるのでしょうか?
「んだよ!名無しの嬢ちゃんかぁ!」
「お前が叫ぶからだろ?象牙」
「そっちで呼ぶなや!クソラットン!!」
「クソは余計だろうがァ!」
ラットンさんが回し蹴りした脚を掴み、投げの姿勢に入ります
しかしそれをアイヴォリーさんは、跳躍し、片方の脚を首に引っ掛けます
「ハッハ!絞め殺してやらぁ!」
「っ、冗談じゃない!」
ラットンさんが締められる前に、前のめりに姿勢を倒します
「ウォォァアア!」
アイヴォリーさんは両手を地面つけて、地面とのキスを避けます
「テメェ!」
「まだだ!」
ラットンさんかそう叫ぶと、首を引っ掛けられた状態と言うにもかかわらず、低い姿勢のまま蹴りを繰り出します
見事に鳩尾に入り、アイヴォリーさんが嗚咽しました
「おごぇ…!」
「蹴りをくらってなお脚を締めるかてめぇ!ふん!」
ラットンさんは身体を回し、上を向きます
そして、飛び跳ね、アイヴォリーさんを支えに宙返りして、両の足裏を顔面に突き立てます
これも入りました、痛そうです
脚の締めが緩くなったのか、ほどき、離脱し、距離を取るラットンさん
「ハァッ!ハァッ!懲りたか馬鹿野郎!」
「良い蹴りだクソ野郎!俺のイケメンヅラが台無しじゃねぇか畜生!」
大の字に寝転びながらも天井に向かって叫ぶアイヴォリーさん
この人、耐久力はあるんだなぁ
「懲りたか?クソ野郎」
とリーダーさん
「勝てねぇ!悔しい!もう1戦やろうぜ!」
とアイヴォリーさん
まだ立てるのこの人!?
「勘弁してくれアイヴォリー、てめぇの歯で俺の足裏ガッタガタだわ」
と、スマートシューズを履いていたラットンさんの靴底は無くなっていて、足の裏が血まみれになっていた
うえぇ…このアイヴォリーって人なんなのよ…
「孫娘さんの自己紹介させてやれ。日にちはまだあるが、依頼の装備を揃えておきたい」
「っとぉ!悪ぃな嬢ちゃん、名前なんだ?」
「え、えと、酒場のジジイ…お爺様から聞いたと思うけど」
ついジジイって言っちゃった!
「いや、ジジイに変わりはねぇよ。孫娘譲る精神はどうかしてるぜ」
「俺らが言うことじゃねぇがな!」
と、リーダーさんとアイヴォリーさんが言う
「お、お爺様の息子さんが私のお父さんで、その子供が私、神楽坂 巴と言います!よろしくお願いします!」
「んじゃ、Kな」
はい??
「呼び名だ呼び名。俺達は本名を言わずに呼び名作って呼びあってんだ」
と、ラットンさんが説明します
なるほど…ではアイヴォリーさんやラットンさんも本名ではないんですね…
「あの、では3人の本名とかは…」
「言わねぇ」
「言うわけねぇだろ!ハッハ!」
「済まないが言えないな」
ですよねー
・・・・・
巴こと“K“の自己紹介も終わったことだし、準備して以来に向けて方針決めるか
「依頼当日だが、Kは俺についてこい。社会見学兼実戦だ、銃の類は使えるか?」
「は、はい!まぁ一応は」
「どの距離をどの程度当てれる?」
ラットンさんが問いてきます
「100m前後の的を真ん中5/10です」
「低いな、依頼当日までに10/10にしろ。射撃の得意なやつに教わるよう、こちらで手配しよう」
と、そのようなことを仰ります
私の身は持つのでしょうか…
「家事全般と射撃訓練かァ!メイドでも目指したらどうだァ!ハッハ!」
とアイヴォリーさんが言います
「メイドとは…この世界だとひと握りの人間にしかなれない職だと聞きましたが」
私が問うと、矢継ぎ早に返ってきました
「んな事はねぇよ、誰でもなれる。非公式に1万くらいの人間が公式レベル並の力持ってるよ」
「公式に認定されるためには所属する会社にも影響あるからな、執事やメイドはそこら辺が面倒くせぇんだ」
「それに職安の上層部も腐ってっからなァ!俺も一時期バトラー目指してたが面接で落ちちまってなぁ!」
「その面構えじゃ誰だって落とすに決まってんだろ、しかも目的が敵対する存在をぶっ殺す為なんざ通るわけがねぇ」
「睨んで来たやつ殴れるんだぜ?正当な理由でよォ!」
「なんだアイヴォリー?うちの傭兵部隊じゃ不満だらけってか?」
「そうは言ってねぇだろうがリーダー!」
「依頼じゃ暴れ足りないんだろう、リーダーに相手してもらったらどうだ?」
「勝てねぇ相手に挑むアホがどこにいんだよ!」
はっ!と、我に帰ります
すごい会話なのに耳に入ってこず、理解が追いつきません
リーダーさんは強いということしかわかりません
未だに会話が続いています
収集着く頃には朝になってそうですね…
・・・・・・
ふと、我に帰る
場所は隠れ家兼倉庫
地べたに這うわ、アイヴォリーとラットン
倉庫の隅で拘束されたまま体育座りしてるのはKだ
確か言い合いになって…稽古のつもりで2人相手をして…
そこから記憶ないな、ブチ切れたかもしれん。たまに記憶飛ぶ時キレてるって言われてるしな
「K、拘束を解くが逃げないでくれよ?」
「だ、大丈夫です!ここがどこだか分かりませんし!」
「空見りゃわかんだろ、人間頑張りゃ星座の位置でだいたい場所把握できるしな」
「無理ですから。今じゃ“星読み“くらいしかそんなこと出来ませんよ」
「ん、そうなのか?この街も腐ったなぁ…また相手してやらねぇと」
アホふたりと部下の連中は当然として、ポリ公共にも顔出して…市役所もか、あぁあと教育機関も手ぇ付けとかねぇと
っと、思考が違うとこ行った…って、なんでKは怯えてんだ?
「何に怯えてるか知らねぇが、今は…22時か、シャワー浴びてくるがKはどうする?入らねぇなら案内だけはしてやる」
「い、一緒で!!」
「うぃ、下着とかは俺のでも大丈夫だろ。強制的に攫ってきたから荷物の類もないだろうしな」
「あ、ありがとうございます!や、優しいんですね」
「さぁてな?その言葉を覚えておくぜ」
「???」
Kの不思議そうな顔を他所に、拘束を解いてやり、案内する
倉庫のドアを開け、1階建ての家の中へ入れてやる
「う、うわぁ…」
「その反応は予想の範囲内だが…悲しいもんだな」
中はゴミが散乱しており、足の踏み場は限られるほどにしかない
あ、銃が落ちてる…管理しっかりしねぇとなぁ…
ありゃ、手榴弾もだ。危ねぇなぁ
「あ、あの、武器が落ちてるんですが…」
「今は気にしなくていい、扱い方はさっき聞いたから掃除する時爆発させんなよ?」
「ひぇぇ…」
これが今どきの女の子の反応なのか…見習うべきか?
うぇぇ…
いや、やめておこう、俺のキャラじゃねぇ
「こっちだ、よろけて倒れるなよ?何があるかわかんねぇ」
「家主なのに分からないってどういうことですか」
「正確には仮屋だ、前に依頼受けた時の名残だな」
「えーと…その、元いた人は…」
「あぁ、死んでるよ。墓が必要じゃないくらい外道のくせに家は立派だからそのまま使わせてもらってる」
俺の言葉を聞き、びっくりした顔をしてキョロキョロと見渡すK
「あぁ、安心しろ。死体は海底に沈んでっからゴーストの類は出ねぇよ、“幽霊処理屋“には世話なりたくねぇし」
その言葉を聞いてホッとするKはなかなか乙女な反応だ
やはり見習うべきか?
「風呂はこっちだ、まぁバスは使えねぇからシャワーだけになるが」
「そ、それってどういう…」
ふろ場を見せ、顔色を伺う
案の定と言うべきか、言わざるべきか真っ青だ
「あのあのあの!ゴキブリはまだマシです!耐性はあります!」
おー、乙女にしては強いな。俺なんかナイフ1本無駄にするのに
「ですが、ですがね?赤い色をぶちまけたようなのは…ペンキですよね?」
「んにゃ、外道をここで殺したんだ。あ、あそこ色違うだろ?道ずれにそばにいた女も殺そうとした時に着いた女の血だよ。助けたが狂っちまってなぁ」
精神病院に持ってったが相当やばかったな、元気にしてっかなー
「汚れ、落ちます…よね?」
「それがKの役目だ、まぁ初日は寝るだけでいい。明日から射撃と家事頼むわ。朝飯も作っといて」
そう言って服を脱ぎ出す俺に対し、Kも急いで脱ぎ出す
「うぅ…ナンマイダナンマイダ」
「安心しろ、お化けなんざでねぇって」
「でも〜…」
「いいから、ほれ、背中洗ってくれ。裸の付き合いで仲良くなろうじゃねぇか」
「それ、口に出して言うことですか?」
シャワーから出るお湯を、頭で受ける俺。それを見かねてか石鹸でボディタオルを泡立て、背中を洗ってくるKは、慣れた手つきでゴシゴシとしていく
「……背中、傷だらけだ」
ふと、そんな一言を囁かれる
「そうでもねぇよ、前の方がひどすぎて洗うだけでも何度も血を流したさ」
「それ、治りかけで洗う時も雑にやってたでしょう?」
「バレたか、治癒能力も衰えてる時期だったしな…」
「衰えてる時?」
おっと、今のは内緒だったんだが…まぁわからんならいいや
「気にすんな、こっちの話だ」
「あ、はぁ…でも、女の子なんですから肌のケアはしっかりしてないと駄目ですよ?」
「言えてるなそりゃ。俺は、女の子だったな」
「もう、さっきからわからないことばかり言って…流しますよ」
シャワーからまた湯を流し、泡を落としていく
「ありがとうな、俺も背中流してやるよ」
「い、いえ!結構ですって」
「遠慮すんなって、胸だって俺よりあるんだから自信持てって」
「な!ななな、なんですか!ぁぅ…そこ、触っちゃ、ダメですって!」
「裸の付き合いじゃねぇか、減るもんじゃないだろ?」
「そういう問題じゃ…こうなったらこっちだって、そりゃ!」
「んぅ…!や、やるなぁ!あっ…そこダメだ…!」
「うりうり!もうやめてくださいって言うまで止めませんからね!」
「わ、分かったから…ひぅっ!人くるからやめぃ!」
「やーめーまーせー…え?」
ガラリと戸が開く
全裸のアイヴォリーだ
「はよ上がれや!乳くり合ってねぇでよォ!」
「おぅ、悪かった」
「キ、キャアアアアアア!!」
その後、隣家に怒られた
乳くり合ってる