人生塞翁が馬
腕を骨折してしまった。
悲しんだ。
戦争に来いと手紙が来た。
骨折していたから行かずに済んだ。
この例えは、実際にあったと思います。
不幸は幸せへ繋がる場合がある。
全ては因果率。
『今不幸だから、この先ずっと不幸だと言い切る事は不可能』
という事を信じ、神様を裏切らない強さを持つ人だけがー。
不幸の先にある、幸福へと至る事が出来る。
不幸だからといって神様を裏切った人が、不幸の先の『絶望』という崖に落ちる。
この物語では、二人の女性が登場します。
一人は信者。
一人はなんちゃって信者。
さあ。
どんでん返しはあるのでしょうか?
〈ガタンゴトンガタンゴトン〉 夜10時22分。
ボロアパート一室。
正美「はあ・・今年で35かあ・・もう一生結婚出来ないかも・・・・駄目駄目めげない、めげない、きっと神様は用意してくれてる!めげない、めげない、頑張るぞお!さ!洗濯洗濯!」
不細工正美35歳処女。
ボロ中小企業アルミ加工、工場の事務員。
休みは無いに等しい環境。
もうすぐお勤め10年。
今まで彼氏は居たことはなく、オタクでもないが、イケメンゲームにハマっているが、課金はしない。
異世界に行きたいと思っているが、本気ではない。
料理と洗濯、アイロンは得意で、中でも裁縫は大得意。
出逢いの為に買った御守りに毎日寝る前に手を会わせる。
同窓会へ出席のお願いが来た。
どうしようか悩んだが、出逢いの為だと割り切り行く事にした。
そして、結果は。
出逢いどころか女子達からは散々からかわれ、(特に玉の輿になった美玲35歳に)馬鹿にされ、男子達からは嫌みを言われ、男子達での罰ゲームの対象とされた。
愛想笑いも限界だったが何とか耐えられた。
ボロアパートに帰り、枕をたっぷり濡らした。
そして翌朝。
誰でも良いから愛して欲しいと出逢い系サイトへ登録した。
けれど、付き合うゴールは結婚となり、結婚はないなと思う顔ばかり。
やはりイケメンはいないなとガッカリ。
自分への好意タップはゼロ。
毎日毎日ゼロ。
やはりダメかとガッカリ。
テレビ、雑誌、皆綺麗な人ばかり。
自殺。
頭をたっぷり占める文字。
貯金は512万。
パアッと使って自殺しようか。
お金はあの世に持って行けない。
神様に聞く。
自己流サイコロ占い。
正美「占いして良いですか?良いなら奇数を出して下さい、〈コロコロ〉・・よし奇数、・・自殺して良いですか?良ければ奇数を出して下さい〈コロコロ〉・・偶数・・私は結婚しますか?〈コロコロ〉偶数・・はあ・・やっぱり偶数・・私は結婚出来ないんだ・・私は死んだら天国へ行きますか?〈コロコロ〉・・偶数・・私は死んだら神様の国へ行きますか?〈コロコロ〉・・奇数・・へえ・・私は死んだら神様の国・・神界へ行きますか?〈コロコロ〉・・奇数・・へえ・・前にネットに書いてあったっけ・・魂の修行が終わる人には、最後に厳しい試練が用意されてるって・・私はもう修行卒業って事?・・私が神界に行くのは、私はこの世界での修行を終えるからですか?〈コロコロ〉・・奇数・・ふうん・・私は神様から好かれていますか?〈コロコロ〉・・奇数・・ふふ、神様が私を好きだから、男が出来ないのね、な~るほど!、・・ふあ~・・疲れたあ・・もう寝る、お休みなさい、神様」
部屋の灯りが消えた。
仮想通貨。
コインの夢。
鮮明な金色に輝くコイン。
マークまではっきり見える。
正美「え?何これ?くれるの?」 大きな金色コインが近寄って来て、両手で受けとる。
〈ガバッ〉 起きた。
正美「え?・・変な夢・・変なコイン・・あれって・・仮想通貨のやつ?・・え?買えって事?・・ええー・・仮想通貨なんて詐欺じゃん、・・・・夢の絵柄のやつがあるなら買うけど~笑、そんなんあるわけ無いし笑笑」
通勤電車の中。
〈ガタンゴトンガタンゴトン〉
正美「・・まさかね」 仮想通貨ランキング。
674位、値段0.46円。
正美「嘘・・なん・・嘘・・嘘・・嘘・・」
その電車の中で口座を申し込んだ。
2週間後。
番号が来た。
入力。
口座を登録し、口座からビットコインへ入金。
ビットコインを購入し、海外口座へビットコインを送金。
海外口座で夢で見たコインを100万円で購入。
217万3913枚分購入した事になる。
0.46円が100万円に上がった。
2兆1739億1300万円。
正美は37歳にして、使い切れないお金を手にした。
オペラ。
クルージング旅行に申し込み。
豪邸は買わず、経験を買う日々。
アパートから2億のマンションへ引っ越したが、それ以外特に高い買い物はしなかった。
金持ちを隠して、ガーデニング仲間とおしゃべり、絵描き仲間と国内旅行、ダンス大会、のど自慢仲間とカラオケ大会予選へ出場、マラソン大会出場、宝石は一点モノを買い、大事に身に付けた。
この宝石だけは、苦労して手に入れたと嘘をついたが、他は特に嘘はつかなかった。
紅茶の話からお菓子作りの合同料理をやる事になり、存分に腕を振るう正美。
誉められ、嬉しい。
充実した毎日。
キラキラ輝く毎日。
そして。
友達らには、常識内で冠婚葬祭の包み。
常識を守り抜いた。
決して金持ちだとばれないように努めた。
病気になり、年を重ねたと実感した。
何か出来ないかと考えた。
日本の未来を救いたい、何か出来ないかと。
学術正美研究大学設立。
大学運営資金は投資部門という学問で賄われ、スポンサーは存在しない。
大学資金は全て無料。
手柄を横取りされそう、された優秀な助手らを勧誘したのは正美だった。
花が咲かない研究者達は飛び付いた。
豊富な資金で設備は望むままだったからだ。
先輩、後輩、階級等はこの大学には無い。
手柄は全てアイディアを発見した者のモノ。
それがこの大学の鉄則だ。
まだ実験してない事象であっても、アイディアを資料としてまとめ、正美大学理事会に提出し、前例が無いならアイディア権利は永遠に刻まれ、変わる事はない。
正美理事会のメンバーには様々な倫理観、哲学勧の試験を通過した者だけがなる事が出来、嘘をつく事が出来ない人物だけが選ばれる。
優秀で、嘘をつかない事を命に誓う者達である。
5年後。
数学、チップ開発、宇宙数学、内臓プリンター開発、正美研究大学が日本一に輝いた。
理数系と宇宙ならば、正美大学だ。
皆が口を揃えた。
応募者倍率は常に世界一。
利権にまみれた理研は様々な抵抗を見せたが、全て裏目に周り、勝手にニュースになり、自滅、逮捕者続出、解散となった。
理研は闇が深かったが、トカゲの尻尾切りで理研のお偉いさん方の不審な自殺が相継いだ。
世界は科学で出来ている。
その科学の知れ渡る『程度』を操れれば世界の経済を操れる。
しかし、正美大学が全てをぶち壊した。
隠していた技術が次々発表された。
最早、正美大学を止めるには日本を戦争で叩くしかない。
そこまで話は進んだ。
しかし。
正美大学から排出される若者らは政治に強い興味を持ち、世の中がおかしいと思う若者らがSNSを通じてどんどん増えていき、無駄に遊ぶ若者は激減した。
日本は。
《オオオオオオオオオオオオ》
強さを取り戻しつつあった。
正美塾が設立。
嘘をつかない、貧乏な総理大臣を数多く排出。
貧乏な総理大臣を国民達は応援し、本人が乗った軽ワゴンに貼られたQRコードに交差点のど真ん中で寄付金と称し、携帯を向けた。
時代は日本から変わっていき、そして変わった。
石油は製造されなくなり、代わりに電位を利用した発電システム、通称テスラモバイル発電が使われ、いつでもどこでも電気は無料で使いたい放題となった。
宗教問題も解決された。
戦争を行わない条例を日本に誓約する代わりにテスラ電位技術の製品を受け取れる。
日本、安楽死制度を2021年、導入。
それだけで老人問題は半分解決した。
正美のお婆ちゃん顔の銅像が至る所に建てられた。
教科データにデカデカと掲載され、永遠に語られる歴史上の一人になった。
正美大学建立記念日という休日が設けられ、正美が好きだった赤ワインを飲むのが通例な日になった。
2075年、正美92歳。
日本、岡山県、首都、岡京。
世界中央通信センタータワーの近くのワールドドームのステージ。
卵型のカプセルベッド。
鼻にチューブの正美。
世界中の皆が見守る中。
ワールド時間、午後14時37分、神様の世界へ旅立った。
その日は大学建立記念日と同じ日の5月18日だった。
お金の使い方という系の電子本には、必ず載る名前。
それが、彼女の名前。
永遠のヒロイン。
『里中正美』
《後半へ続く》