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G魔法戦士ニグラム(黒) ~強制転生に強制特典。あとゴキ○○~  作者: erif tellab
3章。ようやく始まる冒険者活動(遅い)
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49話。戦いとは数で決まるものではない。戦う集団だ。烏合の衆では意味がない

 ワイルドスケルトンと会敵した瞬間、俺とリエ、アレックスはそれぞれ自分の武器を手に取る。唯一丸腰なのがティナだが、依然として悠々な態度を取っているのに関わらず俺の背中に回させる。リエと言い、危険な状況下でもなかなかの図太さだ。


 その間にもワイルドスケルトンたちは疾走し、俺たちをぐるりと囲む。必要以上に警戒してか、奴らの作る包囲網は随分と広い。だが、主な機動力を担っているのが四足獣である犬なので、例え骨であっても油断ができない。奴らが本気を出せば、一気に間合いを詰めるなんて余裕だろう。


 一方の俺たちは、フォーメーションが自然とお互いの背中を守り合うようになる。三角形の陣の内側にはティナが位置している。


 咄嗟に状況を整理してみるが、こちらが背を向けて逃げる暇もなかった。伊達に大きなワンコではない。素早く囲まれたおかげで、逃げ道が空を飛ぶ以外に限られている。敢えて取る戦法としては、一点突破だろうか。


 せめてもの救いは、ワイルドスケルトンたちが一切の武器を持っていない事だ。他にも魔法が使える可能性などがあるかもしれないが、今は頭の片隅に留めておくだけ。結局ピンチである事には変わりなく、俺は舌打ちをしてしまう。


「ちっ! ヤッバイ!」


「大丈夫だよ! ワイルドスケルトン、めちゃくちゃ弱いから!」


「ごめん! お前ら基準はちょっとやめて!」


「兄貴! 弱いのは本当ッス!」


 リエの信用しづらい励ましを跳ね除けると、すかさずアレックスの意見も加わってくる。いくら弱いと言っても、それはお前たちベテラン冒険者からの視点に過ぎないと思うんだ。ティナは一応、例外にしておこう。


 初見の恐怖。初見ではない恐怖。ワイルドスケルトンが魔物だとわかっている以上は、否応なしに危機感と緊張感をガンガン募らせてしまう。


 とにかく常識に囚われるな。人が予想できる未来や展開は全て、絶対あり得ないと断じる事ができない。相手がこちらの範疇を越えた行動を必ず取ってくるつもりで、常に最悪の状況を予測しろ。死んだら負けだ。


「Obutu ha shodoku daaaaa!!」


 一体のワイルドスケルトンが、人語のような雄叫びを上げながら飛び掛かってくる。その先にはアレックスがいた。


 迫り来る骨の牙。跳躍したワイルドスケルトンの位置は、ちょうどアレックスの目線と同じ高さだった。牙や爪が彼に降りかかるのに秒も満たないのは確かだ。


 だが、終始無言のアレックスは両手剣を軽々と扱い、目に留まらぬ速さで一閃する。


 両手剣は御世辞にも切れ味が良さそうとは思えない。ただ、鈍器として見るなら威力に不足なし。その重量が刃と合わさりあって、ワイルドスケルトンは鈍い斬撃を受けながら地に叩きつけられた。


 乗っていた骨犬の頭は脳天からパッカリ両断。騎手のガイコツは肋骨から顎にかけて両手剣に大きく抉られ、パラパラと骨粉が砕け散る。地に伏せてもがくのも束の間、主従共々力尽きた。失われた生命の光は両者の目に二度と戻らない。


「「U、uwaaaaaaaa!!」」


「なんて言えばいいかわかんねぇ!!」


 まさしく瞬殺された出来事に周りのワイルドスケルトンたちは悲鳴を上げ、俺は戦慄する。アレックスが手慣れた様子で淡々と敵を倒す様子が少し恐ろしかった。


 すると、唐突に前に出てきたティナが手のひらをワイルドスケルトンたちにかざす。そして、何の容赦もなく黒魔法の絶え間ない連射を始めた。そのままぐるりと旋回するので、射線に入らないように俺たち三人は急いでしゃがむ。


「うふふ、喧嘩を売る相手を見誤ったみたいねぇ。イケない子たち……」


「「Ugyaaaaaaaa!?」」


「うおぉっ!?」


 魔法ガトリングとでも呼べばいいのだろうか。ティナの手のひらから放たれる黒魔法の量は尋常ではなく、サイズが小さい火球や氷柱、雷球が次々とワイルドスケルトンたちに降り注ぐ。


 着弾、小爆発、氷結、感電、延焼、貫徹。これだけ受けて立ち上がれるガイコツなど、一体もいなかった。


 射撃をモロに受けたワイルドスケルトンたちはまだ生きている。それでも、弾幕をもってして薙ぎ払われたために包囲網は完全に瓦解。死んでいないのはティナが情けを掛けたからだろうか。


 ティナが一回転終えたところで弾幕は止み、奴らは這う這うの体で三々五々に逃げ出す。統率なんてなかった。自慢の四足を持つ骨犬に乗り、怯えた声を出しながら遠ざかっていく。


 しかし、中には起き上がるのに手間取って逃げ遅れた個体がいた。骨犬による下敷きから抜け出したところをティナに狙われ、頭蓋骨をガッシリと掴まれながら軽々持ち上げられる。


「A……a……」


 そのワイルドスケルトンはすっかり顔面蒼白となり、お供である骨犬はティナの足下で萎縮していた。戦おうとする気概を見せず、今にも泣きそうになっているワイルドスケルトンを悲壮感溢れた表情で見守る。


 対してティナは、静かにワイルドスケルトンへ微笑み返すだけだ。そんな彼女に俺だけでなく、リエとアレックスも引いていた。


「帰ったら貴方のお仲間に伝えてくれるかしらぁ? 二度も喧嘩を売ってきたら絶滅させるって」


「Y、yes sir!!」


 実現性が地味に高いティナの脅しに、ワイルドスケルトンは宙ぶらりんのまま敬礼で答える。頭を離された後は骨犬と一緒に尻尾を巻いてさっさと消えて行った。


「へぇー、やっぱり魔物と話せるんだね、ティナ。何かすごい!」


 気持ちの切り替えの早いリエは素直に感心を見せる。先ほどの引きっぷりは既に見る影もない。


 魔物と意志疎通できるのは確かに便利そうな能力だ。自称神が俺に押しつけた特典とやらも、それぐらいのソフトで汎用性の高いものが良かったから、正直に言って羨ましいとも思えてくる。


「今、完璧に恐怖と力で屈服させてましたね。さすが、兄貴の――」


 アレックスにそれ以上言わせる前に、彼の太ももに膝蹴りを軽くかます。リエがつまらなく感じるような言葉はなるべく阻止したかった。こんなところで膨れっ面になるのも困るし。

 

「余計な事言うなし。兄貴呼びもやめろし」


「ご、ご無体な……」


  冷たく言い放つ俺に、アレックスはおずおずと情けを乞う。兄貴呼びをやめてくれるなら快く許そう。


「ねぇねぇ。前から思ってたんだけど、ティナって学者さんとかが家族なの? 魔法も連発してたし、魔物とも話せるし」


「うーん、そうねぇ……学者とは違うかしら。魔法に詳しいのは間違いないけどぉ、強いて言うなら魔導士?」


 その一方で、リエは何気ない様子でティナに質問する。それは俺も疑問に思っていた事の一つだったので、手間が省けて好都合だ。ティナは下手な誤魔化しを見せず、飄々と答える。


 魔道士と魔導士。俺も初めて耳にした時は違いが全くわからなかった。字では異なっていても、周りの人の使う言葉が日本語に聞こえるおかげで発音が同じになるからだ。


 二つの違いは、前者が魔法を一人で極めるイメージであるのと、後者が魔法を人々に教える先生といった感じだ。漢字に直して意味を考えれば、簡単に違いが覚えられる。


「ふぅ……とにかく無事に済んで助かった。見たのがユルすぎる魔物ばかりだったから、ダンジョンなのを忘れてたし……」


 こうして一難去っていくと、軽い気持ちで言葉をこぼせるようになる。すっかり油断していたから、ワイルドスケルトンの登場は見事な不意打ちであった。その時の俺の精神的揺さぶりは計りしれない。


 とにかく、今回のような強襲は二度とごめんだ。気持ちを引き締め直して、今からダンジョン探訪に臨んでいきたい。まずは背筋をシャキッと伸ばして――


「Hyahhaaaaa!!」


 ドス!


 突如として目前に発生した青い光の中から誕生するワイルドスケルトンに対し、俺は反射的にナイフを抜刀。呑気に突っ立っているワイルドスケルトンを骨犬ごと正面から蹴り倒し、素早く奴の胸に向かってナイフの切っ先を振り落とす。


 ナイフは咄嗟の判断で逆手に構えたため、繰り出しの初速は申し分ない。刃は容易くワイルドスケルトンの邪魔な肋骨を貫き、心臓部分へ深く到達する。ワイルドスケルトンはピクリと身体を跳ね上がらせた後、目の光を消失させて力尽きる。


 次に骨犬の対処だが、騎手に意識していたあまりにコイツは眼中に入れていなかった。反撃の恐れがあるので、ナイフ突き刺しでこうして覆い被さるのは迂闊すぎた。


 しかし、骨犬は器用にも俺の下から抜け出し、主人の亡骸に目をくれずにトンズラを決める。俺はソイツの後ろ姿を、何気なく見つめるだけだった。そうして己の激しくなった心臓の鼓動に気づき、大きく目を見開かせながら深呼吸する。


「「おお~」」


  後ろにいる三人から感嘆の声が上がったが、気分は複雑だ。ゆっくりナイフを鞘に納め、力なく彼らに向き合う。


「……ビクッた。めちゃくちゃビクッた」


「時々あるんす、そんな感じに湧くのが。ダンジョンあるあるッス」


 そう朗らかに言い返したのはアレックスだ。こんなアクシデントは慣れていると言わんばかりの態度だった。リエたちの方を見てみると、彼女たちもへっちゃらといった感じなのが軽く窺える。


 まるで年季が違う。割りと窮地に追い詰められてもパニックを起こさずに対応できるなんて、素直に感心する。もちろん、ティナは例外としておく。


「あ、それとね。前にも話したと思うけど、この子たちの場合は胸の辺りに……」


 思い出したかのように声を上げたリエは、アレックスが倒したワイルドスケルトンの剥ぎ取りにそのまま向かう。巧みに蛇光剣を操り、ワイルドスケルトンの胸部の奥から一つの水晶を取り出した。


「はい、マナクォーツ! ダンジョンの特産品!」


 次にリエは俺にマナクォーツを見せびらかす。生物から取れるものにしては、やたらと綺麗な水色の水晶だ。真珠みたいな立ち位置と考えて問題ない……はず。


 ダンジョンの特産品であるマナクォーツには、地水火風などの属性を一つずつ持っている。複合型はあり得ず、属性によって使い道も変わる。火のマナクォーツならコンロなどに、水のマナクォーツなら水の浄化だ。


 マナクォーツを取られたワイルドスケルトンは、骨犬と共にフワリと消滅していく。この原理はよくわからないが、試しに自分も先ほど倒した個体からマナクォーツを取ってみる。リエのように剥ぎ取りは上手にいかないが、何とか傷を付けずに入手する。


 俺が手に入れたのは、赤色のマナクォーツだった。リエのと同じく、指で摘まめるほどの大きさだ。


「これ?」


「うん。これは火のクォーツだね。私のは水。先にマナクォーツを取ると屍が消えるから気をつけないと」


「わかった」


 間もなく、もう一体のワイルドスケルトンの死体も消滅する。回収したマナクォーツ以外に何も残らないというのは、少し哀れな最期だと感じた。


 それからは、リエのガイドを受けながら第一層の道のりをトントン拍子で進んでいく。大型トラックみたいにデカイ魔物は出現せず、行く先で出会った数々の個体のサイズは常識的なものに留まっていた。尻尾の大きな綿で風に乗るウサギなど、物理法則はあったものじゃないが。




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