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G魔法戦士ニグラム(黒) ~強制転生に強制特典。あとゴキ○○~  作者: erif tellab
3章。ようやく始まる冒険者活動(遅い)
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41話。ポメラニアンとヒマワリ

 フルツロスの皮を被ったポメラニアンと目線が合う。見た目だけなら十分に可愛く、愛でたい衝動に駆られそうになる。だが、フルツロスが巨体であるのがその衝動にブレーキを掛け、尚且つ巨体ゆえの威圧感と不気味さから身動き一つ取る事すら億劫になってしまう。


 単純に言って、異様すぎて怖い。


 ナイフは切っ先をフルツロスに真っ直ぐ向けると即座に襲われる気がするので、軽く下げている。どんなに話を事前に聞いていようが、ほとんど未知との遭遇だ。慎重にならざるを得ない。視線を外すのもダメだ。その隙を突いて強襲してくるかもしれない。


 そもそも、素人がいきなり銃や機関砲、ロケットランチャー、ミサイルを手に入れたって、ライオンや虎などの猛獣たちとタイマンで百パーセント絶対に勝てる訳じゃないんだ。エイムが下手なら勝率は大幅に下がるだろうし、一発も当てられずに弾切れを起こせば負ける。


 そして、それは黒魔法を習得している場合も該当するに違いない。火球を撃てるからと言って、相手にとって威力不足の攻撃なら話が一気に変わる。銃弾と違って、放つ魔法の威力や効果には個人差があるのだから。魔法の心強さが瓦解していく。


 俺は一人で勝手にフルツロスとにらめっこを続ける。今のところ、フルツロスに何も動きがないのが幸いだ。


 そんな中、リエが無言を貫いたままフルツロスの元へ近づいていく。蛇光剣は鞘から抜いておらず、魔物相手に素手で挑んでいた。おいバカやめろ。


 しかし、リエから恐怖心なんてものはこれっぽっちも見受けられなかった。むしろ、気軽に近くのコンビニへ赴くような軽い雰囲気だった。


「よいしょ。ちょっとごめんね。実が欲しいだけだから」


「クゥ~ン」


「うっそだろ……」


 瞬く間に繰り広げられた光景に、俺は唖然とする。リエはフルツロスの頭をよしよしと撫でて、大した苦労もなく二つの実を颯爽ともぎ取る。


 フルツロスの空いた首には実の跡が目立つが、ヤツは別に怒りもせずリエに頭を撫でられて心地良さそうにしていた。リエの用事が済んだ後も上機嫌のままで、やがてその場から立ち去っていく。


 それを見送ったリエは、腕の中にフルツロスの実を抱えながら俺たちの元へ戻ってきた。実演をこなした達成感からか、明るく微笑んでくる。


「ね? 簡単でしょ?」


「いや初見にはキツイよ、これ。だってポメラニアンなのにデカイんだもん。フルツロスってあんな感じなの?」


「うん」


 リエの一切の迷いもなく頷いて肯定する様に、俺は思わず頭を抱えそうになる。何から何まで、予想していたのと全然違っていた。


 フルツロスが実質的な巨大ポメラニアンってどういう事だよ。飼い犬に分類されるものがモチーフの魔物がケルベロスの親戚枠? いけない、俺の常識が何億光年もの彼方へと飛んでいく。今まで積み重ねてきたものが、せめてもの情けで少しの応用もされる事なく崩れていく。


「フルツロスは光合成もして実を育てている。取れた実の使い道は多様で、薬にも用いられるわ。あらぁ、良い子ねぇ」


「ワウ!」


 その時、ティナがさりげなく説明をした直後に犬の鳴き声が聞こえてきた。声がしたのは背後からと理解してしまったので、嫌な予感を覚えるだけで手一杯だった。


 それでも、怖いもの見たさでついつい振り返ってしまう。すると、そこには――


「手懐けてるぅ!?」


 先ほどとは別個体のフルツロスをすっかり飼い慣らしているティナの姿があった。フルツロスはすかさず仰向けに倒れて、無防備な腹をティナに見せる。


 これにはリエも驚いたようで、目を丸くして固まっている。どうやら、目の前で起きている現象は彼女にとっても驚愕に値するらしい。俺の常識がまだ死ななくて良かった……。


 そろそろフルツロスが立ち上がれば、ティナがニコニコと頭や背中などを撫で回す。フルツロスはティナの手の動きを拒む事なく、目を細めて享受していた。丸い尻尾が激しく揺らされている。


 フルツロスに生えている実は二つ。これを取れば依頼の目標個数が到達し、後は帰るだけの簡単な仕事になる。


 そのため、俺が早速行動を起こそうとすると、ティナが先んじて口を開いた。


「これでフルツロスの実は四個ね。依頼が早く終わりすぎるかしらぁ?」


「あっ、待って! 俺に取らせて! 魔物の相手するの慣らしとかないと」


「ええ、いいわよぉ?」


 咄嗟に制止して、フルツロスの実を取る役をティナと交代してもらう。そうしてティナが取得済みの実をリエから受け取っている間、俺は改めてフルツロスと対峙する。ほぼゼロ距離で。


「よし……よしっ」


 何度も深呼吸して心を落ち着かせて、フルツロスの顔をピタッと見据える。相手の生態が大体把握できた以上、もう怖くはなかった。ナイフを鞘に仕舞っても問題ない。変にテンションが上がっていく。


「Hallo Pomeranian. How are you? I'm fine. Please give me your flutes?」


「クゥン?」


「あ、ごめん。英語はわからないか。フルツロスの実を二つください、お願いします」


「ワン」


 そんなフルツロスの一声は、俺に対して許しを出したかのように聞こえた。実を取ってもいいぞ、と。ありがとうございます。


 そういう訳で、迷わずに実を一つ掴む。ちょっとやそっとではもぎ取れず、結構な力を要した。時間を掛けすぎるとフルツロスが可哀想で気が引けるから、急がないと。


「あれ? 上手く取れな……ようやく一個目」

 

 まずは一個。フルツロスの実を両手の中で大事に収めて、慎重にティナが持つバスケットへ入れていく。


 よし、次だ。再びフルツロスと向かい合って、二個目のもぎ取りに挑戦する。感覚は掴んだから、一回目よりも素早く終わらせる自信があった。


 しかし、実をもぎ取ろうとした瞬間に手が払われてしまう。フルツロスは態度を急変させて、まさに噛みつく勢いで吠え出す。


「ワンワン!」


「え!? おい、どこ行くんだ!? おーい!!」


 まさかの展開に心臓が跳ね上がりそうになったがどうにか堪えて、いきなり逃走したフルツロスの後を追い掛ける。リエたちも遅れてついてきた。


 足の速さで四足獣に敵う訳がない。それでも見失わずに済むのは、フルツロスが適度に立ち止まっては俺たちの事を窺っていたからだ。素振りからして、単に逃走目的ではなさそうだった。


 一瞬だけ「罠?」と疑うが、走るのを止めたフルツロスが何かに向かって吠える様子を見て、その考えが変わった。


「ワン! ワンワン!」


「えっと――」


 フルツロスの吠える先には、全高二メートル越えの巨大ヒマワリが一本ある。フルツロスから吠え声を浴びせられるにつれて、巨大ヒマワリは徐々に変形をしていく。可変型ロボットのような規則正しさがない、有機物の細胞が増殖していく感じの変形だ。


 よし、危険な香りがするから逃げよう。心なしか、“虫の予感”も「とりあえず離れろ」と告げている気がする。


 だが、そう思った頃にはリエとティナは既に現場に到着していた。二人は俺と同じように巨大ヒマワリの変形を目にする。


「ううぅぅん……」


 間髪入れず、巨大ヒマワリから薄気味悪い声が発せられる。それを耳にした彼女たちは眉をしかめ、フルツロスは怖じ気ついて脱兎の如く逃げ出した。背中がもう見えない。


「逃げろ! 急げぇ!!」


 俺の咄嗟の叫びで、ようやくリエたちは回れ右をして走り出す。それに俺は大急ぎで追従し、ついでに巨大ヒマワリの方をチラリと確かめる。


 驚愕的な変身を果たした巨大ヒマワリは、ヒマワリとしての原型をとっくに失っていた。日輪の如く輝く黄色の花も、サンサンと注がれる日光を受け止める緑の葉っぱも見当たらない。奴は人の姿を取り、俺たちに向かって手のひらをかざす。


「ビィィィィィィィム!!」


 刹那、手のひらの集まった光が強く煌めき出す。それに加えて、突然のビーム宣言。丸腰なのに飛び道具を持っているとか、初見殺しにも甚だしい。ふざけるな。


 ビームの発射音はしなかったが、莫大な熱量が背中から迫ってくるのを感じた。これは当たると絶対に痛そうだ。危ない。


 前を走る二人の頭を無理やり下げて、俺も続けて伏せる。すると、一発の光弾が猛スピードで頭上を大きく通り過ぎる。相手は丁寧にヘッドショットでも狙ったのだろうか。殺意しか感じられない。


 光弾は飛行速度を少しも衰えさせず、狙いが俺たちから外れた後も直進する。そして、射線上に偶然あった一本の木に命中した。着弾した拍子に爆発炎上を起こし、自然界に尊い犠牲が生まれる。


「街には出ないでくれって思ったけど……」


 生物がビームを発射した事に、俺はほとほと呆れる。ビームに一体どれだけのエネルギーやカロリーを消費させているのだろうと疑問を覚えた次には、沸々と苛立ちがやって来た。


 このまま逃げてもビームで背中に風穴を空けられるかもしれないから、逃走から応戦へと変更を余儀なくされる。すぐさま振り返っては、巨大ヒマワリの変異体に睨み付けた。


 相手の容姿はヒトベースで、全身が葉や茎に似た緑の装甲に包まれている。また、頭部や肩、膝などの各所にヒマワリの模様があった。


 決めた。コイツの名前はヒマワリ怪人だ。


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