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G魔法戦士ニグラム(黒) ~強制転生に強制特典。あとゴキ○○~  作者: erif tellab
2章。遠方より遙々やって来たGの妃
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36話。女子三日会わざは

 アレックスとの遭遇から三週間ぐらい経過した。ティナとの接触から、およそ一ヶ月を迎えようとしている。

 

「えぇっ!? スズト、ウチを出てくの!?」


 そんな本日、アローズの店内にて。俺の話をじっと聞いていたリエは、大きなリアクションを披露する。まだ客は一人もいないので、彼女が騒いでも迷惑にはならない。


 何を隠そう、俺は近い内にアローズを出ていく事を決心した。そこまで至った経緯は様々だが、一番の理由はリエたちにいつまでも迷惑を掛けられないからだ。ナサリオさんたちに何かしら目をつけられているのもある。十中八九、ニグラムの事だろうけど。


 長くここに居座るのを決め込もうにも、ナサリオさんたちの存在のせいで気が引ける。あれから三週間近く経過したと言うのに、何も行動を起こしてこなかったのが不気味だった。どんな行動をしでかすか、もはや予想できない。


 そんな時、いつまでもリエたちの元に居てみろ。相手が俺を異端者として捕らえに来た暁には、物理的・風評的な被害が彼女たちにも振り掛かるのは想像に容易い。恩人に道連れになる事を求めるなんて、俺にはできなかった。


 疑われている奴がいきなり一人暮らしを始めた方が怪しまれる? 別にいいよ。それは元々、日本人で半ば強制的に転生された俺の持つハンデだ。海外に一人放られる状況と大して変化はない気がする。苦ではない。


 だが、居候脱却からの一人暮らしはまだ当分先の予定だ。その旨をリエだけでなく、ベクターさんとイリスさんにも聞こえるように声量を上げて告げる。


「まだ考えてるだけだよ。いつまでも居候してる訳にはいかないし。ただ、部屋借りて一人暮らししようにも敷金とか用意しないといけないから、その分も稼いでおかないと。他の準備もあるし」


あと、賃金も安いし。部屋借りの相場もわからないし。


「全然迷惑じゃないよ、私は。居候してていいじゃない!」


「いや、良い心掛けだぞ、小僧! 俺は賛成する」


「ベクターさん……」


 反対するリエを押し退けて、ベクターさんが乱入してくる。彼の纏った雰囲気は和やかで、その筋骨隆々のおっかない身体に見合わず優しい印象を受けた。笑顔も自然で、恐怖の先入観を払拭させる。こんなにも人の良さそうな彼を見たのは初めてかもしれない。


 しかし、俺はベクターさんから今まで受けた仕打ちを覚えている。普段ならば、こんな風に俺に賛同して温厚になってくれるはずがないという確信さえあった。とどのつまり――


「唐突な手のひら返しはちょっと……」


 きっと何かの魂胆がベクターさんにあるのだろう。その魂胆がとっくにわかりきっているから、全然嬉しくなかった。むしろ困惑する。


「もう! お父さんったら、スズトを追い出したいだけでしょ!」


「もちろんだ。ついにこの日がやって来た……我が家から悪い虫を追い払う大義名分を得る日を!」


 リエから指摘されても、ベクターさんは己の本音を一切包み隠さない。そんな事だろうと思っていた。その清々しさには呆れを通り越して尊敬する。


「ダメ! ダメったらダメ! とにかくダメ! スズトは悪い虫じゃない!」


「ちょっ、リエ! 急にどうしたの!?」


  駄々をこねていたリエが唐突に俺の腕へと抱き着く。ぎゅっと渾身の力で掴まれているせいで、全然振りほどけない。


 女子に抱き着かれて役得だと考えるよりも、これから来たるであろう戦鬼に気が気でなかった。不味いぞ、このままではベクターさんが覚醒して……。


「小僧!! リエから離れろぉぉぉぉ!!」


 間髪入れず、怒りに満ちたベクターさんが駆けつけてきた。そのまま俺の空いている片腕を掴み、リエとは反対方向へ引っ張る。


 ちょっと待って欲しい。愛娘を俺から引き離す選択をしないのはどういう事?


「ベクターさん、引き離し方がおかしいです!! アダッ! に、人間綱引きぃ!?」


 リエも対抗して、俺がベクターさんに連れていかれないようにガッシリと掴んで離さない。逃げようにも両腕が二人によって拘束されている。


 だが、戦況は徐々にベクターさんの方へ傾いていた。俺だけでなく、リエも引き摺られる始末だ。やはり力勝負ではリエに部が悪い。


「お姉ちゃんも見てないで助けてよー!!」


「そうねぇ。可愛い子には旅をさせよって言うし、スズト君が自分の意志で決めるなら何も言わないわ。弟分がいなくなるのはちょっと寂しいけど」


「どうしよう! 味方がいない!」


 イリスさんから助け船がない事にリエは嘆く。だが、姉から暖かい目で見守られながらも諦めはしなかった。今度はぐいぐいとベクターさんごと俺を引っ張り始める。


 その一方で、イリスさんの非参戦に安堵してしまう自分がいた。状況的には全く安心できる要素がないのに。ほんわかと過ごす彼女の雰囲気に当てられたか。


「引っ張るのダメ! 引っ張るのダメ! 肩抜けそ……ッ」


 そして俺の肉体が断裂の危機に陥る。イリスさんの操るガーゴイルたちが仲裁に入るのは、その数秒後だった。





 そんなこんなで人間綱引きが強制終了してから一時間。俺は冒険者ギルドへと真っ直ぐ向かっていた。散々リエが言っていたので、道案内はもう必要なかった。


 しかし、本当なら俺一人で行くところを何故かリエもくっついてきた。かといって普段の明るさはなくなり、静かに俺の後ろを歩いている。まるで餌を盗られて怒るハムスターのような目をしていた。可愛いけど怖い。


 リエと一緒にいるのに、彼女から話し掛けられないのは普段と異なるので調子が狂う。居心地はあまり良くなかった。改めてリエの方を見てみると、今度はそっぽを向けられた。


「機嫌直せよ。別に一生会えなくなる訳じゃないし」


「やたら戦い方とか知りたがってたから、何だと思えば一人で暮らす準備だったのね。ふんだ」


「あのな……」


 フンスカと怒るリエに俺は呆れ果てる。


 どういう訳か、彼女は俺の居候を望んでいる。これは説得にも骨がいりそうだ。その親切心は純粋に嬉しいが、俺だって散々悩み抜いた挙げ句に将来の道筋を導き出したんだぞ。


 冒険者ギルドの利用は簡単な依頼をこなすだけの副業扱い。本業はアローズ以外の店に仕事を求める事以外はまだ考え中。人生送りバント志向だ。普通の幸せを目指すなら、なかなか悪くないと思う。


 それにしても、ここまでリエが怒る理由は何だ? 同じ屋根の下で暮らす人が減って寂しくなるのが嫌だから、という理由なら可愛い程度で済むけど……多分、これは違うな。もう少し踏み込んで推測しても良い気がする。


「そもそも、なんで俺に居候してもらう事に拘るんだよ。ある意味、家族だけの空間を邪魔してるんだぞ?」


「スズトなんて知らない」


「おい」


「つーん」


 勇気を出して聞いてみるものの、リエに敢えなく無視を決められた。まともな応答がない。


 その状態のリエは、冒険者ギルドに着いた後でも続いた。時々こっちをじっと見ては顔を逸らすの繰り返しで、れっきとした挙動不審ぶりを見せている。子どものおつかいを見守る親とも呼べない様子だ。


 冒険者ギルドの玄関をくぐると、中は酒場と言うよりも日本の郵便局や銀行のように、受付や事務仕事が主な雰囲気だった。窓側には幾つかテーブルと椅子が並び、複数人がそこに座って会話しているが、そこに酒や食事なんてものは出されていない。


 酒場は道中に冒険者ギルドの隣にあるのを見かけたから、きっと分け隔てられた形になっているのだろう。まぁ、意外性はあるにしても驚くに値しないな。 インパクトならナサリオさんが魔導鎧を装着する瞬間が勝っていた。


 ここでリエと別れて、単身で受付席へと進む。窓口は複数存在し、小さな看板に書かれた案内を当てにして、よその受付席と比べて列が閑散としている方に向かった。登録手続きなどはここで間違いないはずだ。窓口のテーブル脇にある看板の文字が達筆ではないのが、非常に助かる。


 それから受付嬢との話はトントン拍子で進み、遂に登録作業へ移行する。その前に受けた説明をまとめると次のようになる。


 冒険者ギルドの登録は無料。登録証が完成すれば、ギルドに寄せられた依頼を受諾できる。ただし受諾できる依頼は制限が掛けられ、その人の実力とランクに見合ったものしか受けられない仕様だ。


 また、ランクとは大まかに見習い・一般・親方の三つに分類される。一般への昇級は見習い時代に一定数以上の依頼を完遂させる事で可能となる。一般からは細かいランクが多く存在するが、割愛させてもらう。俺に関係ないので。


 なお、親方への昇級は筆記試験、実技試験、面接、研修とてんこ盛りである。ここまでランクを上げてしまえば、もはや準ギルド員の扱いだ。これも俺に関係のない話だな。


「では、こちらにお名前を記入してください」


「はい」


 受付嬢から差し出されたのは、一枚の小さな用紙。質感は名刺やカードに似ていた。続けてペンも受け取ると、埋める必要のある空欄へ自分の名前を書き入れる。二ヶ月近くも文字、単語の読み書きをしていた甲斐あって、滞りなく書けた。無論、筆記体で。


 次に用紙を受付嬢に提出すると、「少々お待ちください」と彼女は一言残し、受付席の奥の方へ向かっていった。別の事務員と何やら話をし、手分けして幾つかの細かい作業をこなしていた。


 そして受付嬢は用紙を革のケースに納めると、それを持って再び俺の前にやって来る。


「次に、このケースに軽く触れてください。文字が青く光りましたら本人証明がなされた状態となり、冒険者ギルド登録証の完成です」


 そう言って登録証を丁寧に手渡される。ケースを開示した状態のまま指示通りに触れてみると、書き込んだ名前が青く発光した。


 名前が青く光るのは、現代における身分証明書の写真の代わりだ。仕組みとしては本人の魔力に反応するらしく、他人が持っても反応しないとの事。


 こうして、俺の冒険者ギルド登録は完了した。登録証を懐に仕舞って、適当なソファで腰を降ろしているリエの元へ戻る。


 近づいてみてわかったが、リエは相変わらず不機嫌なままだった。その上、彼女のずっと後ろにはこちらをじっと見つめている女子二人組がいる。どう見てもリエの友達だったので、何故そんな下手くそな変装をしているのかが気になった。二人とも、露骨で典型的な魔法使いの格好をしていた。


「できたんだ?」


「うん。てか、後ろに隠れてる二人……」


 ぶっきらぼうに聞いてくるリエに頷き、ダメ元で二人組がいる方を指し示す。すると今度はきっちりと応じてくれた。


「え? あ、キャロとアニタ」


 振り向くや否や、リエは二人組の正体をあっさり見破る。名指しされたキャロたちはあたふたしつつも、懸命に素知らぬ振りをする。お互いの交わしている会話も、声を無理やり低くしているようだった。


 いや、もう無理だろ。その羽織ってるマントとローブ、帽子、素直に全部外せよ。


「何か、すっごく別人のフリしてるんだけど。見苦しいんだけど」


「どうしたのかな?」


 俺と一緒に二人組の下手な演技を見ながら、リエは小首を傾げる。


 そうしてリエがソファを立ち上がった直後、途端に周囲から妙な騒ぎが生まれてきた。ざわざわと耳障りになり、喧騒は止む気配を見せない。


「おい。あの嬢ちゃん誰だ?」


「貴族様か? どうして冒険者ギルドなんかに」


「赤いゴスロリ娘……堪らんな」


「お巡りさん、この人です」


 何気なく出入口の方に視線をやれば、一人の少女がこちらに歩いてきていた。その足取りは優雅で、周りへ振り撒く微笑みも受けた教養の深さをしみじみ感じさせる。


 年は十代後半に差し掛かるぐらいだろうか。容姿端麗で、赤いゴスロリ服は肌の露出を徹底して防いでいる。更には手袋のオマケ付きだ。唯一気になるのは、履いている靴が運動に適したものという点である。徒歩で主に移動するならわかるが、例え彼女の身分が貴族階級だとすれば少しちぐはぐだ。普通なら馬車などの乗り物で来てもおかしくないはず。近くには従者らしき人影もない。


 また、その容貌は非常に見覚えがあった。触角のような二本のアホ毛に、揃えられた茶髪のセミロング。一瞬、ティナが思い浮かぶが、彼女と比べると幼さは随分と消えていた。


 しかし、赤いゴスロリの少女が近づいてくるに連れて、特に理由もない謎の確信を得てしまう。


「……ん? ん? もしかして、ティナ――」


「会いたかったわぁ! 鈴斗ぉ!」

 

 その瞬間、一気にニコニコと嬉しそうに笑ったティナが俺に抱き着いてきた。背中に両手を回して、金輪際離れたくないと言わんばかりに力を込めてくる。そのまま彼女の顔が、俺の肩の上に乗っかってきた。


 正直に言って、女の子の身体の柔らかさを実感するよりも、ティナがとんでもない急成長を果たした衝撃で頭の中は一杯だった。夏休み明けかよ。



魔物図鑑その七。トンボ怪人。


ローザリーに瞬殺されたヤツ。といっても制空権とは恐ろしいもので、飛べない黒のニグラムが遊ばれるほどに強い。加えて、人型なのに飛行時のマニューバがトンボの動きそのもの。物理法則? 魔法を科学で解明できれば息を吹き返します。


特技は足技。得意な黒魔法は風属性。


弱点は翅。本体と比べて脆く、柔らかい。まずは翅を狙撃銃などで撃ち抜くべし。飛べないトンボはただの虫。



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