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G魔法戦士ニグラム(黒) ~強制転生に強制特典。あとゴキ○○~  作者: erif tellab
2章。遠方より遙々やって来たGの妃
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34話。調査計画

 ルズベリー城。天翔騎士団に割り当てられた区画、ナサリオの部屋にて。内装は物寂しく、きらびやかさは必要最低限だった。上流階級に相応しい厳かな雰囲気と洒落があるのは間違いないが、それにしても質素さは拭えない。


 部屋は寝室と執務室を兼ねている。テーブルを挟み、席についたナサリオは向かい側で同じく着席している団員の部下から話を聞き出す。


「彼……シラス・スズトの方はどうなっている?」


「はい。三日経過しましたが、特に動きはありません。魔物反応も一切。あの……団長。彼、本当に魔物なんでしょうか? 聞き取りには同行していませんでしたが、ローザリーの力で看破しても人間だったんでしょう?」


 特に大した結果が実っていない報告を終えたところで、部下はふと訝しむ。その疑問にはナサリオも理解しており、質問を静かに聞いてはコクコクと頷く。


「ああ。だから彼を不当に処断したり、捕まえたりするのはよろしくない。守るべき人を誤って殺すなど威信に関わる。疑う要素はあれど、決定的な証拠がないのだから。あくまで、あのルキフィガ擬きと何らかの関連性があるだけで……」


 そこまで言って、ナサリオは一旦口を閉ざす。


 次に脳裏に思い出すのは、黒いニグラムと青いニグラムの姿だ。流石のローザリーも、魔物一体一体を細かく識別するほどの機能を持ち合わせていない。青いニグラムと最初に遭遇した時点では、会話を交わすまでは黒いニグラムと同一個体だと断定する事はできなかった。もしも別個体だとすれば、それはそれで恐ろしい。


 同一個体だとするなら、ニグラムは形態変化が可能と判断できる。特にニグラムとの二度目の邂逅に至っては、逃走の際に発揮された猛スピードの前にして、軽く振り切られてしまった。これだけでも十分な脅威だ。


 だが、ニグラムは二度に渡ってナサリオとの戦闘を拒否し、防戦と逃走に徹した。その上、ナサリオを敵ではないと発言したのだから、相手を魔物と断定て即刻殺すのは躊躇してしまう。曲がりなりにも、対話の可能性に仄かな望みを抱かされた。


 ナサリオにはこれまで魔物と対話して、互いに理解し、手を取り合うなんて経験はなかった。これはその他大勢の人々にも言える事であり、家畜化された魔物などを除けば周知の具体例は皆無である。そのため、ニグラムとの接触はまさしく未知との遭遇だった。


 また、ヒトと変わらない知能と言葉を持つ魔物は非常に珍しい。それはデビルアロマ系列の魔物に限らず、ゲジゲジ怪人であるスカウトも同様だ。いつかはニグラムとの対話を望みたいと考えつつ、ナサリオはスカウトの最後の言葉を思い返す。


「それに、あのゲジゲジの魔物の捨て台詞も気になる。アヌン、ユピル、フレイグル、ハルワリック。これらは全て、ルズベリーの街の近くにあるダンジョンだ。ルズベリー地方に存在する数の半分以上を占めている」


 ナサリオからそれを聞いた瞬間、部下は頭を閃めかせる。


「……あ! この街でやたらとデビルアロマの事件が発生するなら……」


「強力なクモの魔物がダンジョンに居着いた話もある。これを機に乗り掛かれば、デビルアロマ撲滅への道のりがぐっと縮まるのかもしれない」


 デビルアロマ事件収束の糸口を見出だして素直に表情を綻ばせる部下とは対照的に、神妙な面持ちのナサリオ。そうは言ったものの、彼はじっくりと悩んでいた。


 スカウトの言葉は単純な虚偽か罠の可能性もある。しかし嘘なら、口にしたダンジョン名が偶然にもクモの怪人が出没した場所と全て重なるのは考えにくい。出任せのまぐれ当たりにも程がある。


 ならば、例えデビルアロマとの関与が嘘でも、クモの怪人の事を知っているのは間違いないと見当つけるのは容易だった。


 今までのデビルアロマ系列の魔物と違って随分と理性的。街中で見つかった瞬間から暴れても良かったはずなのに、敢えてそうしなかった事から知能の高さだけでなく知恵の働きぶりも窺える。ともかく、スカウトは既存の魔物と一線を引いていた。


 放置や無視なんてとんでもない。リスクがあろうとも即座にダンジョン調査を踏み切るに値する。デビルアロマの根源に近づく唯一の手掛かりなのだから。例えその他のリスクなどで頭を悩ませようが、ナサリオの胸中はとっくに決まっていた。あとは覚悟を決めるのみ。


 一方でナサリオの言葉を真に受けた部下は、たちまち奮い立つ。彼の顔は明るさに満ちており、その目にはデビルアロマ撲滅に対する熱意が込められていた。


「例え虫嫌いでも貫き通すその心意気、感服致します。私もダンジョン調査に参入させてください!」


「待ちなさい。ダンジョン調査のメンバーは追って連絡する。今回は桜花騎士団との共同作戦だ。準備や手続きが早めに終われば来週中には出発する。それと、虫嫌いは余計だな」


「申し訳ありませんでした!」


「構わない」

 

 すかさず謝罪した部下をナサリオはあっさり許す。己の弱点を口を大にして言われたものの、こうも反省の意を示されれば後に引く事はなかった。


 後日、数名の団員をルズベリーの街に残した天翔騎士団は桜花騎士団と共に、スカウトが口にした四つのダンジョンの調査へと向かった。戦力は分散させず、順々にハイペースでの攻略を目指す。冒険者ギルドからのギルド員の協力も取り付けていた。


 その傍ら、ナサリオの命令でルズベリーの街に待機する事になった者たちに与えられた任務は、白須鈴斗の監視であった。長距離での観望が可能なスコープ型のゴーレムなどを用いて、鈴斗がニグラムへと変身する瞬間を収めようとする。

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