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G魔法戦士ニグラム(黒) ~強制転生に強制特典。あとゴキ○○~  作者: erif tellab
2章。遠方より遙々やって来たGの妃
33/57

33話。逃走後

 あの後、ナサリオさんから這う這うの体で逃げ切れた。変身解除した後にやって来た全身筋肉痛は軽かった。帰宅直後に心配してきたリエが記憶に新しい。


 その翌日には、剣士団の人がカエル怪人の事で事情聴取しに来た。予想していた事なので心の準備はできていた。時間と猶予さえあれば、嘘や誤魔化しを考えるのも苦にならない。


 当然、他にも事情聴取された人はいたらしい。カエル怪人が出た現場にいた人たち全員だ。ニグラムの事を問われなくて安堵したのはここだけの話。テッちゃんたち三人組から告訴されなくて助かった。仮にされても、俺が勝てるだけの自信と材料はある。


 どうして現場に居たのかと尋ねられた時は、直感で向かったの一点張りで貫いた。G魔法については相手の方も既に耳にしていたようで、何か勝手に納得されて聴取は終了した。良いのだろうか、それで。


 まぁ、そもそも証明するにしても、超能力の存在を実演以外で示したり、その人の運動神経の良さを言葉だけで伝えて納得させるぐらいに難しい。まず、証明が成り立たない。目の前で変身してみせるならともかく、直感の是非はどう足掻いても因果関係の結びようが……。うん、詳細を教えるのは無理だな。


 それから三日後の今日。暇な時間ができたので、俺は辞書片手に街の図書館へ赴いた。目的はG魔法の参考となる情報だ。全然進展がなかったから、今度こそは見つけたい限りである。いい加減、人狼とかの単語を目にしたい。


 リエは女友達と一緒にどこか遊びに行ったので不在。わからない単語が出てきたら、もはや頼れるのは手元の辞書だけだ。覚悟しておこう。


「あっ、ウィリーさん」


 図書館に入った矢先、長々と連なっている本棚とにらめっこしているウィリーさんを見つけた。彼もどうやら、何らかの本を探していたようだった。


「おや、スズト君ではありませんか。三日ぶりですね。図書館で何か調べものでも?」


「はい。魔法関連でちょっと。毎日が忙しいから全然進まないんですけど」


 事情聴取の時に擦れ違って以来の再会だ。俺は快く返事をする。


 ちなみに、カエル怪人の一件で俺の聴取を担当したのは別の人だった。とても顔が怖かったのが印象に残っている。一時はヤクザかマフィアではないかと疑ったものだ。


「奇遇ですね。僕も魔法について調べたい事がありまして。何分、魔法にはどうしても学が浅くてですね。暇があればこうして」


「え? そうなんですか?」


 知的な雰囲気に反してそう告げるウィリーさんを、俺は思わず不思議に感じてしまう。


「ええ。魔法も突き詰めようとすると専門分野になりますからね。機会と興味がなければ、日常で専門性の高い魔法を使うなんてほとんどありません」


 ウィリーさんは楽しそうにニコニコと言葉を続ける。今にも隣の棚から本を手に取り、パラパラとページを捲っては読み込みたがりそうだ。この部分だけ見ると、やたらと子どもらしい。


 魔法にはゲームや映画などで俺も惹かれた時こそあるが、自分の置かれている状況や抱えている問題と冷静に向き合ってみると、あまり嬉しくない。詳細不明というのは、本当にモヤモヤして仕方なかった。それが魔法の持つ神秘性、素晴らしさなのだろうが。


 だからG魔法って一体何なんだよ。異形の姿へ変身できるぐらいにイカれた魔法なら、一つや二つは似たようなものがあって良いじゃないか。絶対に有名になっていてもおかしくないレベルで。地球でいうところの狼人間などの変身タイプとどこが違う? どうして変身に関する記述が一向に見つからない? 注意喚起の意味で記載されてもいいはず。


 それこそ、今はまだ黒魔法の初級しか習得していない俺に魔法の把握にやたら専門性の高い知識が要求されるならば、心が軽く挫けてしまう。もしも初心者お断りの分野であるなら尚更だ。普段から魔法を使うにしても、街中なら白魔法とかの非攻撃系に限定される。それから先は学者のやる事になるだろう。

 

「まぁ、確かに……使うのは白魔法ぐらいですよね」

 

 また、よりによってウィリーさんと魔法が話題の会話を繰り広げるのは、己の知識不足を痛覚しているおかげで気後れした。それでも何とか言葉を返す。すると――


「それも使う場面が限られますが。後は……装備魔法ぐらいでしょう。ところで君の調べものとは、先天魔法の事でしょうか?」


「え? えっと……」


 ウィリーさんの一見して唐突すぎる質問に、俺は一瞬困惑する。そして先天魔法と聞いて、徐々にウィリーさんから随分前に言われた事を思い出した。


 疑問がすんなりと解決して、ついつい頷く。ウィリーさんの方を見てみれば、彼は本棚から何かの本を探していた。


 その様子を黙って見守っていると、ウィリーさんは本を探しながら口を開く。


「君からG魔法の事を聞いた時、ついつい気になりましてね。確か、ここら辺りに……」


 しばらくして、一冊の分厚い本が取り出される。それをウィリーさんはパラパラと捲り、とあるページを見つけてや否や俺にも見せてきた。


 当然ながらその本の文章量は、英語の模試の長文が可愛く見えるくらいにぎっしりと詰まっていて、まだ俺ではスラスラと流し読みができない。その上、わからない単語が早速発見されたので、速効で辞書を開かざるを得なかった。


「辞書片手ですね」


 程なくして、ウィリーさんにそう言われる。ぐうの音も出ないが、わざわざ突かれるのは少し気分が良くなかった。


「日常生活の分には問題ないくらいに覚えたんですけど、この手の難しい本はまだちょっと……」

 

「それで辞書片手ですか。頑張りますね。ここに書いてある事をざっくり言うと、先天的な魔法の獲得とその内容は遺伝で決まるとの事です。もっと深い知識に踏み込むとなると、ここ以外の図書館に行く必要があるでしょうね。それこそ研究中の資料など」


「へぇ~、遺伝か……」


 遺伝。魔法のイメージにはそぐわない単語だ。でも、血筋に受け継がれていく魔法とかもあるなら、別に遺伝の言葉が生まれてもおかしくないのか。メンデルと似たようなポジションの人がきっといたのだろう。メンデルの法則の代わりになったものなんて、全然思い付かないけど。


 ウィリーさんはG魔法を取り敢えず、先天魔法として捉えているようだ。あくまで仮定として考えているだろうから、それは違うと言ってやるのは自分のためも含めて無粋だろう。後先を考えて、敢えて指摘しないでおく。


「スズト君の家系……と言うよりも。ニホンという国は魔法が一切発展していなかったのですよね?」


「はい。だから、先天的とか言われてもピンと来なかったって言うか、盲点だったと言うか……」


 間違いも嘘も言っていない。自称神から強制的に譲られた力だとわかっているから。


「魔法がない世界というのは、僕にはとても想像が及びません。君のその……虫の知らせとも呼ぶべき力も説明つきませんし」


 “虫の知らせ”の部分で、ウィリーさんは少しだけ言い淀める。虫の知らせというのは、俺がピンポイントで何度もデビルアロマ絡みの事件現場に辿り着くのを指した言葉だと考えても構わないだろう。


 デビルアロマ絡みで剣士団にお世話になった回数と言えば……ゾウ怪人、カラス怪人、カエル怪人の三回か。ミミズ怪人の時は気がつけば勝手に自分の預かり知らぬところで処理されたし、トンボ怪人はナサリオさんの乱入でうやむやになった。ゲジゲジ怪人も似た結果だ。


 こうして振り返ってみると、非日常な展開への巻き込まれっぶりが酷いな。しかも、ほとんどが自分の意志で介入している。逃げる方がもっと苦しくなるからと。


 いや、介入自体は後悔していない。やがて自分に降り掛かる火の粉を払い除けるためだったから。ただ、その判断元が直感でしかないのだから酷さを加速させる。まさに虫の知らせだ。


 ――G魔法。虫の知らせ――


 なにこれ、語感が締まらない。


「本当ですよね。自分の事なのに詳しい事は一切わからないとか……」


 もう慣れっこなはずなのに、改めて確認するとG魔法にはうんざりしてしまう。何度目だろうか、嫌気が差してくるのは。


「その本は他にも過去に実在した先天魔法が記載されています。どれも些細な程度の効果だったと記憶してますが、少しは参考になるかと」


 ウィリーさんがさりげなく告げた内容に、僅かでも期待が込み上げてくる。本を探す手間も省けたし、見当たらない変身系統の魔法の希少性を考慮するなら、先天魔法について調べるのもアリだ。


「ありがとうございます」


「では僕はお目当ての本を見つけたので、これにて」


 そうして本を手渡された俺はすかさず頭を下げて、感謝の言葉を呟く。するとウィリーさんは別の本を一冊手にして、そそくさと立ち去ろうとする。

 だが、その前に彼は振り返り――


「あ、最後に一つだけ」


「はい?」


 俺に言い残したい事があるようだ。そのまま距離を詰めてきて、耳元で静かに語り掛けてくる。


「魔物と戦う義務があるのは僕たち剣士団や騎士団の人たちです。君にはなるべく……危険な真似をしない事を望みます」


「……善処します」


 優しくも諭すような口調。心配してくれているのだと疑うまでもなく伝わってきたが、俺には生憎そうとしか言えなかった。魔物が近くに出た時に発動する虫の知らせを気にしていると、任せきりとはどうも怖かった。


 それからウィリーさんは、「さようなら」と一言残して去っていった。先ほどの真剣味のある面持ちとは打って変わって、柔らかい笑顔だった。


 ここは異世界。日本とは違って高水準の治安なんてものは保証されていない。アメリカなどの銃社会に名称を習うなら、さながら魔法社会だ。その気になれば黒魔法一発で人を殺せる。


 そんな魔法が日本の銃・刀規制と同じぐらいガチガチに縛られていないのは、リエから聞いた神話時代から続く魔法の歴史を読み取れば簡単にわかるだろう。銃で自由と独立を掴み取ったアメリカと軌跡が少し似ているのだ。太古より魔物に人々が脅かされてきたせいで。


 有り体に言えば、彼らにとって魔法とは魔物の脅威から身を守る盾でもあり、刃でもある。また、平和を築いた礎の一つでもある。それを放棄したり規制したりする事はすなわち、当然・普通・当たり前・常識とされるぐらいに積み重ねた自分たちの在り方を否定してしまうのかもしれない。


 これまた単純に物事が完結してくれないのが悩ましい。俺、まだ異世界に慣れてないのかなぁ……。



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