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G魔法戦士ニグラム(黒) ~強制転生に強制特典。あとゴキ○○~  作者: erif tellab
2章。遠方より遙々やって来たGの妃
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31話。「やったか!?」「勝った! 第31話完!」「あっけない……」 「これを食らえばヤツも生きてはいまい……」

 大体は遠慮なく暴れるスカウトのせいで、倉庫内は大惨事になっていた。モノが置かれた棚は床に倒れ落ち、木箱とその中身が床に散乱する。足場の酷さは語るまでもない。


 ここの倉庫で主に仕舞われていたのは、魔物やダンジョンから取れた素材ばかりだ。液体や、割れ物、食料となるものは他の倉庫に仕分けされており、散らかされても比較的に損害は小さい。そもそも、ここに行き着いた素材たちは冒険者ギルドが受け取った余剰分であった。


 むしろ、穀物や葡萄酒などを納めている施設をスカウトが選ばなかったのが、ナサリオたちにとって幸運だった。そこが主戦場となれば、いかに相手を外へ引き摺り出すかと余計に策を張り巡らさなくてはならなくなる。貯蓄している貴重な食糧を少なからず損失させる真似は、例え言い訳が効くとしても避けるに越した事はない。


「はっはっは! 大変だねぇ、騎士様は! 建物の被害にも気を使わないといけないんだから!」


 しかし、いくら気が楽になれても倉庫を吹き飛ばすなんて蛮行は彼ら騎士たちにはできなかった。どこの誰だって、一人のこそ泥を捕まえたりするのにミサイルやロケットランチャー、空爆支援といった過剰すぎる手段を取りやしない。散々と煽るスカウトの言う通りだ。


 現在、天翔騎士団の四名はスカウトを半包囲していた。主力はローザリー、残り三名は彼の援護だ。この間にも外にいる増援が倉庫街にて包囲網を築いており、万が一があってもスカウトを逃がさないようにしている。


 だが、その三名は疲労困憊に近かった。剣の刃はところどころが欠け落ち、鎧も数ヶ所に凹んだ部分があり、切り傷が生身に付けられている。ローザリーも一見して損傷はないが、掠り傷はいくつか見受けられた。


 スカウトは両腕に生えている節足を刃代わりにして、ローザリーと果敢に斬り結ぶ。独楽のような回り方で両腕を振りかぶり、ローズカリバーで捌かれる。その時、ガキィィンという金属音が鳴り響いた。


 れっきとした剣技を持つローザリーと異なり、スカウトは全身の節足を余さず武器にしつつ体術を混ぜていた。敵の攻撃を真正面から受ける事は一切せず、基本的には回避に徹する。


 ローザリーが目に留まらぬ速さで横薙ぎと突きを順に繰り出すが、スカウトはギリギリで避ける。そして間髪入れず、腰を一気に落としてローザリーに足払いを掛けようとした。


 蹴りに加えて、単体でもかなりの切断力と強度を誇る節足刃。その上、手足としての機能も併せ持つ。それにローザリーはしかと注意していた。軽く跳び、足払いを辛うじてかわす。


 直後、ローズカリバーを下から上へと素早く振った。それに反応したスカウトは節足による緊急回避をおこない、足払いを終えた後のやや寝転がり気味の姿勢のまま、後ろに大きく下がる。だが、ローズカリバーの切っ先がスカウトの右手首を跳ね飛ばした。

 

「うおっ。斬られちまった」

 

 右手首が綺麗に損失したにも関わらず、平淡としているスカウト。立ち上がって右腕を前にかざすと、床に落ちた手首が瞬く間に引き寄せられていった。斬り落とされた手首が元あった場所へ戻ろうとしている。


 その寸前、アンジェラが無言で黒魔法の氷柱を手首に向かって放つ。氷柱を受けた手首は瞬時に凍結し、氷とともにあっさり砕け散った。肉片の一つも残らない。


 有無を言わせない攻撃。油断も隙もないアンジェラにスカウトは苦笑しながら、傷口から失った手首をニョキニョキ再生させた。右手の動作を確認し、「うんうん」と頷く。


 すると、ローザリーがスカウト以外の魔物がここへ接近しているのを感知した。兜の裏側、網膜投影越しに与えられる情報をアンジェラたちに告げる。


「遠くの魔物反応が一つ消えた。デビルアロマ系列だ。残り一つがこちらに真っ直ぐ来ている」


「このままでは二対四ですね……」


「すぐ片付ける。畳み掛けるぞ」


「「了解」」


 そんな彼の言葉を皮切りにし、部下たちが一斉に火球を無言で発射した。


「半端な魔法は効かねぇぞ!!」


 高い密度まで練られた魔力で構成された三つの火球は、初級の黒魔法だとしても相当な威力と規模を持つ。それでも、スカウトは三つ全てを容易く切り払った。


 瞬間、霧散していく大量の火の粉で彼の視界が一時的に妨げられる。その隙にローザリーは突進し、擦れ違い様にスカウトの胴を斬り裂く。


「ぐおっ!?」


 割と深い一撃にスカウトはよろめいた。魔力由来の火の粉は自然現象のものとは異なる部分が多いので、木の床にホロホロと落ちても燃え移る事はない。火球の狙いは、スカウトのみ。


 すかさず二人の騎士がスカウトを斬り掛かる。構えと速度は共に申し分ない。当てられる。


 しかし、彼らの剣はスカウトに指で白羽止めされた。両手でそれぞれの剣を止めている分、力もそれほど一ヵ所に集中していないはずなのだが、剣はちっとも動かせない。完璧に受け止められていた。


 スカウトは咄嗟に後転し、背中の節足で姿勢を強く保持しながら二人を放り投げる。ほぼ腕の力と転んだ勢いだけで投げても、二人の身体は綺麗な弧を描きながら床に強く叩きつけられた。


 今度のスカウトは四つん這いの姿勢だ。節足を使い、うつ伏せになるや否や全力で身体を横に走らせる。そこに、間合いを詰めてきたアンジェラの剣が空振った。彼女が両手で握る剣が、虚しくも先ほどまでスカウトがいた床に突き刺さる。


『tsrub drows』


 刹那、白い影が駆け抜ける。スカウトの移動先を完全に捕捉している様子は、さながら偏差射撃のようだった。

 

「っ!? ちぃっ!!」


 スカウトの頭上には、ローザリーが前傾姿勢で進撃してくる姿がある。確実にスカウトを仕留める勢いだ。ブレスレットからローザリーカリバーの魔力伝導はとっくに終了し、剣身に仄かな金色の光がバチバチと走る。


「はぁ!!」


 頭だけは守ろうと両腕を盾にしたスカウトの甲斐なく、ローズカリバーに刺突されて吹き飛ぶ。繰り出された剣の切っ先が肉に到達せずとも圧力を受けて凹んだ腕には、光の十字架が貼り付けられていた。

 

「輝け、鉄乙女」


 ある程度吹き飛んだスカウトは無理やり立たされた上で光のカプセルに囚われ、ローザリーは一言詠み上げる。その後、どこからともなく出現した無数の光の針がスカウトを半包囲する。


 現在のスカウトの位置は倉庫の出入り口付近。スカウトが体当たりで扉を破った場所だ。これから爆発四散が起こるものなら、倉庫内の中心で起こすよりはマシだと言えよう。


 程なくして、ローザリーは天に掲げたローズカリバーを振り下ろす。それに呼応した光の針が一挙にスカウトの元へ押し寄せる。ルクス・アイアンメイデンが発動した。


「ギャアァァ――!?」


 結果、光のカプセルは爆発四散。爆音に混ざって、スカウトの声にもならない悲鳴も辺りに轟いた。


 やがて、倉庫内は静まり返る。爆発四散した後に残っていたのは、両腕を失った真っ黒焦げのスカウトだった。肉体の損傷具合は酷く、先ほどまでの元気な姿は見る影もない。原型は留めておらず、ひっそりと横たわるだけだった。


「やったか? やったか!」


「よっしゃ!」


  終始サポートに徹していた二人の騎士は、よろよろとしながらも喜びの声を上げる。スカウトの物言わぬ様子を見て安堵し、表情を綻ばせていた。


 しかし、一方でアンジェラだけは顔が強張ったままで、スカウトの姿をじっくりと観察しては訝しんでいた。そして、ローザリーへ進言する。


「団長、死体がいつもより残っていませんか?」


「いや、魔物反応は消えて……何!?」


 ローザリーが驚愕するのも束の間、スカウトの身体が動き始めた。網膜投影経由での情報では消滅したはずの魔物反応が復活し、スカウトは僅かに残った節足で倉庫の外に飛び出る。弾丸の如きスピードだ。人によっては気持ち悪いと思われるかもしれない。


『nugwob』


 ローザリーは自分の得物をすかさずローズボウガンへと変形させて、スカウトに向けて迷わず引き金を引く。紫の光矢がほぼ音もなく、立て続けに連射された。


 だが元より仰向けの状態で移動しているせいもあって、相手が立っている時よりも各部位への命中難易度は高い。その上、やたらと機敏に動くものだから軽々と避けられてしまった。


 丸焦げになって尚も衰えを見せないスカウトの気色悪い動作に、ローザリーたちは少し気分が悪くなる。その動きは明らかにムカデやゲジゲジの範疇に収まるものではない。もはやゴキブリに近い何かだった。


 スカウトの身体は向かいの倉庫の壁を駆け上がる。ここで光矢が幾つか命中したが、貫通せず甲殻の表面に刺さるだけで有効打は与えられなかった。


 スカウトが屋根の上まで登り終えた頃には、刺さった光矢は全て消滅する。そして、彼の身体は再び二本の脚で支えられた。黒焦げとなった甲殻が徐々に元の健やかな状態へ再生していき、綺麗な復活を果たす。


 片やローザリーたちは倉庫から出て、その光景を目撃していた。頭のネジが吹き飛んだかのようなスカウトの回復力を前にして唖然とし、誰もが言葉を失う。


「ふぅー、軽く死ねる技じゃねぇか。何が、『あなたなら死なないと思うので大丈夫です』だ。偵察のやる事じゃない」


 スカウトはそう悪態をつきながら、おもむろに首や肩などを回す。動作に不調はなく、万全な状態だった。


『drows』


 その直後、ローザリーは黙ったまま力強く踏み込み、スカウトの元へ高く跳ぶ。牽制としてローズカリバーを前に突き出し、スカウトに飛び退かせる。


 こうして両者は、倉庫の屋根にて改めて対面した。他の騎士たちは置いてきぼりにされている。彼らも一跳びで行ける訳ではなかった。位置関係は屋根の平部にローザリー、大棟にスカウトだ。じわりじわりとローザリーがスカウトに近づき、大棟の上で相対する。


「おお! 鎧のくせして、こんな高さまで跳べるのか。量産されたらヤバいねぇー。魔物を倒すのとか、戦争で勝つのとかがぐっと楽になる。おまけに薄くて堅くて軽いようだし、優れものにもほどがあるだろ」


 先ほど披露されたローザリーの性能の一端に、スカウトは素直に感嘆した。ローズカリバーが届かないギリギリの距離を保ちつつ、ニヤニヤと笑う。


 対してローザリーは、スカウトを敵として見据える姿勢を崩さない。剣先をじっと相手に向けて、攻めるタイミングを窺う。


「よく喋る。やはり、デビルアロマと関係あると見ても問題は……こちらも来たか」


 瞬間、ローザリーは自分たちの近くまでやって来た魔物の存在を感知する。兜の裏に隠れ、目線だけを動かして横をチラリと確かめれば、屋根から屋根へと飛び移っていたニグラムが急に立ち止まる姿が見えた。明らかに二人を目視できてしまった様子だ。


 端から見ればローザリーはスカウトと向き合ったまま。それでもローザリーの注意が分散した事にスカウトは遅れて気付き、自身もようやくニグラムを見つける。



参考程度に横浜赤レンガ倉庫の高さは、大体18メートル。某人型機動兵器と同じくらい。


なお、一般的な騎士たちのジャンプ力は装備重量込みで3~6メートル。二階建て家屋の屋根までひとっとび。王国剣士団員はピンキリだが、騎士と同じ装備で最低でも垂直1メートルは跳べる。




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