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40・やはりルヤンペにも苦手な事はあったらしい

 ルヤンペがやってきて工房の建設が始まった。それと並行して新たに犂とディスクハロー、ポニー用ロータリーの製造もおこなわれている。


 山の民はかなり忙しいんじゃないのかと思ったが、工房に関してはナンションナーの人手がかなり入るという。

 そりゃあ、ナンションナーのために作っているのだから当然だが、それよりなにより、犂とディスクハローのおかげである。


「こんなに連れて来て良いのか?」


 そうこうしていると牛が増えた。4頭だった牛が10頭になった。そのため、犂を曳く牛、ディスクハローを曳く牛、馬鍬を曳く牛とそれぞれの作業が可能になった。

 なんで馬鍬がいるのかって?

 ディスクハローは便利ではあるが、どうしても数が少ない。そのため、これまでの馬鍬を牛ようにいくつか連結して曳かせることにした。


 そのため、遅れると思っていたピッピの畑の拡張もほぼ同時に出来ることになった。


「ウルホ、ピッピを播くのは夏って言ったけど、ピヤパと同時くらいに播く品種もあるんだけど、早く耕せた畑に夏獲りのピッピ播いても良いかな?」


 ケッコイがそんなことを言ってきた。


「ピッピは春から播けるのか?畑はかなり広くできるから別に構わないと思うが」


 そういうと、すぐさま定期便となりつつある牛便で取り寄せると言われた。


 昨年やって来た一人はピッピの栽培にも詳しいらしく、彼によると畑の準備ができ次第播いてかまわないそうだ。そして、収穫は夏とのこと。もしかしたら、そのまま収穫後に秋獲りを播いて秋に収穫が出来るかもしれないという。

 それならば約束の5倍どころではない量がとれるかもしれない。


 そんなわけで、ピヤパより先に、昨年試作していた播種機を試してみることにした。


 すると問題が発生した。綺麗に耕したはずだが、まだ粗かったらしくて、うまく種が埋まらない部分が出来てしまった。

 そこを鍬で土をかけながら、種まき列をポニーのロータリーで耕して仕上げをすることにした。


 もともとはアピオや野菜の畑用に作ったのだが、どうやらここでも活躍しそうなので、春の初便でガイナンカへ注文したポニーでは不足が出てしまうことになった。

 さらに、ロータリーにも問題が出た。


 ミケエムシが作った物より大きく高回転で土を細かくできるという触れ込みのロータリーをルヤンペが作ったのだが、見た瞬間ダメだと思った。


「ルヤンペ、ロータリーの爪の曲げは片方で良いんだ。両方に曲げを付けても車輪から得られる駆動力とロータリーの重量に合わないと思う。聞いていると思うが、下手をしたらロータリーだけが走ってポニーが怪我をすることになるぞ?」


 そう言ったのだが、ルヤンペは胸を張っている。


「嬢ちゃん、俺を誰だと思ってるんだ?大丈夫だ」


 そう言うが非常に心配だったので、手綱を持つ農夫には目一杯抵抗棒を突き出しておくように言った。


 それで行われた試運転は見事に失敗した。


 抵抗棒を突き出しすぎてほとんど耕せなかったのはまだ良かった。その後、少し抵抗棒を上げて、耕す深さを深くとってみたのだが、案の定、ロータリーが走った。

 農夫も事前に分かっていたのでほんの数歩しかポニーを歩かせなかったので事なきを得た。


「言っただろう?」


 ルヤンペにそう言うと


「なるほど、だが、俺には奥の手がある」


 そう言ってそそくさとロータリーを弄って再度実験と相成った。


 今度はロータリーだけでなく車輪までが止まってポニーが辛そうに引きずる状態となった。


「んん?何がいけないんだ?」


 ルヤンペが悩んでいるが、理由は分かっている。両方に曲げを作った爪が抵抗になっているんだ。確かに、ロータリーを逆転にしたら飛び出しはしない。しかし、抵抗が大きくなるので、車輪の回転が爪の抵抗に負けて止まってしまったのだと俺は思った。


「爪をミケエムシが作った物と変えてみてくれ」


 俺がそう、指示を出してツケの交換が行われた。ルヤンペもそこは理解していたらしく、ロータリーの規格自体はミケエムシと同じ寸法にしてくれていた。

 爪を交換してみた結果、ロータリーが動くようになった。


「やるな、嬢ちゃん」


 ルヤンペは豪快に笑っていたが、帰り際、何やらぶつぶつ言っているのが聞こえた。農具に関しては専門でやっているミケエムシに一日の長があるらしい。


 結局、その後のロータリー製作はミケエムシの図面に沿って行われている。


 ただ、俺も少しやってみたいことがあったので、ロータリーを作る鍛冶師たちに手伝ってもらった。


 もともと、このロータリーは手押し式芝刈り機をヒントにしているので、耕運爪ではなく、芝刈りローラーにすれば草刈りも出来るのではないかと考えた。


 そうして作ったローラーはひざ下くらいの草であれば刈ることが出来る性能に仕上がったので、道際の草刈りように数台作って貰った。もちろん、ローラーから耕運軸へと交換するだけで畑も耕せる。


 さて、そんなことをしている間にもピッピの種蒔きは進んだ。播種機の方もいくつかの不具合を修正しながら順調に送られてきたピッピを播ききることが出来た。


「播種機の調子も良いらしいからピヤパも同じ方法で播こう」


 ピッピが種まきの実験台となってたが、ピッピを播き終えるとちょうど、ピヤパの種蒔き時期となった。


 今年は牛が犂とディスクハローや馬鍬で一気に畑を耕していったので、必要な人数も少なく済んだ。時間もかかっていない。


 そんなわけで、男手を中心に工房建設へと回って貰った。


 一部、コンコの小さな畑や昨年のアピオの畑ではディスクハローが使えないので、ポニーロータリーで仕上げる前の畑作りに鍬が必要だったが、それは僅かな量で、俺と数人で片が付いた。


「牛が居るだけでここまで農作業が楽になるのか、これは全く違うな」


 俺たちが作業速度の速さに感心している頃、ルヤンペは暇を見つけてはまた新たな農機を作っているらしいが、俺から見ると失敗必至にしか見えなかった。


 昨年俺も考えた。牛にロータリーを曳かせたらどれだけ楽か。しかし、ロータリーを持ち上げて移動させる手段が思いつかずに断念した。

 ルヤンペは移動手段を一切考えずにロータリーを作ってしまった。


「ルヤンペ、これ、どうやって畑へ持って行くんだ?」


 鍛冶場で全長1.5メートルのロータリーを作り上げたのは良いが、運ぶ方法が無かった。

 平場であれば小さな車輪や台車という手もあるのだが、畑へ運んで、耕して柔らかくなった畑から持ち出さないといけない。持ち出す手段が無かった。


「俺らが5人行けば何とかなるだろ。人手が集まるまで放置しなきゃならんがな。がはははは」

  

 いや、笑い事ではない。忙しい時期にロータリーを数日放置とか、農作業が止まるんだから勘弁してくれ。


 結局、草刈りローラーを取り付けて、前後の大きな車輪を付けることで草原と街道沿いの草刈り機として夏には完成するのだが、それまで二か月放置されることになった。


 


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