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29・森の民の食事は案外質素だった

 村へ着いてまず訪れた村長宅で部屋割りが決まった。

 村長宅はかなり広めに作られているが、それはこうした旅人を泊める為であるらしい。村長の家とあと数軒、庄屋とでもいうのか、村の名士の家がこのように旅人の宿泊に使われるという。


 当然、食事もその家が出す。宿代代わりに食料を提供するのが旅人の習わしらしいが、俺とイアンバヌは余所者であるため、「お客人」という事で、食料の提供は免除されている。

 考えても見ればそれはその通りだ。例えば、関西人が淡口醤油をもって持ち歩いていて、調味料の提供と言って、関東でそんなものを出しても相手が困るだろう。


 うん、なんだかウマい例えではないな。だが、そういう事だ。


「夕飯までに風呂でもどうですか?」


 村長の勧めで風呂へ行くことになった。風呂あるんだ。しかし、そうなるとホッコとか・・・


 などと考えていたのだが、村長に服を渡されて風呂へと向かう。よく意味が分からないんだが。


「これはなんだ?」


 聞いた相手はホッコだ。


「ハァ?何って浴着だが、何に見えたんだ?」


 と、当たり前のように返された。意味が分からなかった。


「浴着は風呂に入る時に着るんだよ。これを着て汗を流す。そして、浴室にある水を被れば良いんだ」


 なぜかイアンバヌが教えてくれたが、どこかサウナっぽいな、それ。


 ぽいと思ったが、サウナだった。そう言えば、昔の風呂はサウナだっけと思い到るが、それ以上のことは分からなかった。そもそも、カルヤラにはサウナもなかったな。体を拭くだけ、たまに湯や水を被る程度だったか。

 そして、ナンションナーへ来てからは好き勝手やっている。まず、風呂が無かったので作った。村に公衆浴場的な場所を作るほど無謀ではなかったが、俺の屋敷には風呂がある。大工が不思議がっていたが、だるまストーブみたいな装置から風呂桶へとパイプを回して温める仕組みになっている。五右衛門風呂でないのは、作ったのがルヤンペが来る前だったからだ。いや、彼が来た後でも頼みはしなかった気がする。


 まさか、屋敷にサウナがあるとは、すごい設備だ。と、思ったが、これは来客が前提だからある設備らしい。普通の家には無いという。ただ、公衆サウナはあるようだ。

 ある程度汗をかいたら水浴びをして、もうしばらくサウナに入る。浴着だから混浴だ。特にラッキーな話もなく淡々とサウナ浴は終わった。


 そして、部屋へ戻ると食事の準備が出来ていた。部屋ごとに食事が運ばれる方式らしく、俺とイアンバヌの部屋へ直接食事が来ていた。


「何だろう、これ」


 目の前にはドンと汁物らしき椀と副菜らしきお皿があった。汁物はすいとんだろうか?団子と野菜、肉が入っている。副菜は漬物だろうか?


「これはオハウだ。お皿はマンバ」


 イアンバヌはそう言って置かれていたお箸で食べ始める。スプーンもあるが、どうやらお椀を持っても良いらしいので、それに倣う。

 すいとんの団子は食ったことが無いものだった。アマムやピヤパではない。もしかして、これがピッピとかいう食材か?


「これは木の実から作られた団子でシトホという。マンバはナンションナーにもあったね」


 などと話してくれた。木の実かこれ。


 それは芋類や穀類とは違う甘みを持った団子だった。団子の割に粘りが無い気はするが、そこは気にしてはいけないとか思って食っていて思い出した。これ、栗じゃないのかな?たぶんそうだと思う。異世界なので姿かたちは違うかもしれないけど。


 そして、食事を終わって給仕の人にどんな木の実なのか聞いてみたら、だいたい特徴は栗だった。イガはないようだから、ドングリにちかいのかな?


 そんなことを思いながらその夜は寝ることになった。久しぶりに安心できる屋根があるところで眠ることが出来た。



 翌日はすっきり起きることが出来た。


 そう言えば、イアンバヌがやってきて以後、夫婦らしい関係は一切ないが、山の民というのはどういった習慣を持っているのだろうか?発情期があって、その時期しかデキないとか、そんなのだろうか?

 と思ったが、さすがに直接聞くわけにもいかないので疑問はそのまま放置している。だいたい、俺、まだ16歳だしな。


 朝食はすいとんかと思ったら違った。クッキー?みたいなものが出された。これがピッピだろうか?


「これは?」


「それはヤムの実を焼いたもので、カマドと言います」


 かまど?それって食い物?煮炊きするところではないのかと思ったが、言わないでおいた。カルヤラとは言葉の意味が違うのだろう。


 さらに話していて、朝のうちに発てば夜にはケッコナンに着けない事はないらしい。ただ、俺はこのヤムという木の実が気になったので、栽培しているか聞いたら、栽培しているというので、今夜は野宿と割り切ってヤム畑を見ることにした。


 そこは村の外れにあって、少々手入れした林と言ってよさそうな場所だった。


「ここの木は全てヤムです。すでにほぼ収穫を終えてますが、もう少し前なら足元に沢山実が落ちていましたよ」


 やはり、栗かドングリの類の様だ。木を見て種類が分かるほど詳しくないので、いまいちピンと来ないが、きっと言う通りなんだろう。それ以外にもブドウのような果物、ハトというのも栽培しているという。鳩は飼育するものではないのか?と思ったが、鳥ではないらしい。


「この村で牛は飼っていないのか?」


 と聞いたら、とんでもない事だという。畑もろくに作れない様な広さしかないので、牛は飼えないそうだ。


 村の状況を見学して、昼頃出発となった。明日にはとうとうケッコナンだ。


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