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114・帰ると農作業真っただ中だった

 ナンションナーに帰ると草刈りが行われていた。


 草刈りといっても鎌で刈る訳ではない。モアー(草刈り機)を牛に曳かせているかポニーに曳かせている。畑の中は人が押す中耕除草機だ。

 

 中耕除草機はカゴローラーに爪を付けたモノとU型の輪っかによって浅く耕し削って行く事で除草を行っている。浅く耕すことで土が締まるのも抑えてくれるので作物の生育にも良い。


 アピオ畑の場合はイモ類なので盛り上がってきた部分に土寄せも行うが、畝を跨いで押せる土寄せ器も作ったので楽が出来ている。


 道端やあぜ道の草刈りには牛やポニーが曳くモアー(草刈り機)を使うのだが、これはロータリーを改造して作っている。


 以前製作した牛用ロータリーが失敗だったことから生まれたわけだが、今ではポニー用も作って大活躍だ。


 ただ、この開発も順調に言った訳ではない。


 ロータリーを基礎として刃をYまたはT型のフリー刃にするのが基本なのだが、思った以上に高回転させないとイケなかった。低回転だとほとんど刈り取れずにただ茎の皮を引っ掻いたり叩き折った程度の草が残るだけだった。葉の細長いモノに至ってはまさに暖簾に腕押し、多くが残っている状態だ。


 そこで、車軸とロータリー軸のギヤ比を大きく変えて回転数を引き上げる事でなんとか解決するかに見えたが、正回転での効率はイマイチでしかなかった。押し倒したものがそのまま残ってその上に新たな草が引き込まれるので軸に巻き付いたりただ倒しただけで刃が通らず全く切れていなかったりと問題ばかりが多く見つかった。


 せっかく作ったにも拘らず、一度バラして逆回転に仕上げるというのは一苦労だっただろう。手伝おうとしたが危ないので近づく事も出来なかった。


 そして出来上がった逆回転モアーは以前と違い随分効率は良くなったのだが、ロータリー同様に後板を降ろしてあるので排出がうまく行かずに負担が大きくなっていたようで、後板を開放して後ろへコマ切れにした草を飛ばす様にした。

 当然だが、人が後ろを付いて歩くわけにはいかない。そんな事をすれば草まみれ間違いなしだ。


 結局、新たに大改造をして人がロータリの上に座り、そこで手綱を引いて、さらに刈り高さの調整できるように四輪式に改めることになってしまった。


 そんな事をしていると結局、夏に間に合わずに終わり、初使用は秋の残渣細断となってしまった。

 そして、それに気を良くした結果、数の増えたポニーにも引かせようと小型モアーの製作まで始まってしまい、現在、牛用2機、ポニー用4機が存在している。製作優先順位は低いので他へ販売するまでには至っていない。

 

 ロータリー自体が犂や馬鍬に比べて複雑でメンテナンスの手間も多いので縁辺でないと整備や修理の利便性が悪すぎる。

 ただ、出来る事ならクフモやゼロの草原へ持って行けば牧草地の整備や休耕田の緑肥刈りに便利だろうとは思うが、すぐに同行できるわけではないのだから仕方がない。他の地域は大鎌での草刈りを続けてもらう事にしよう。


 草刈りは休耕田でも行われている。ここはもう少しすれば夏播きのピッピを播く畑だ。


 すでに魚肥や油粕といった肥料も存在するナンションナーではあるが、やはり基礎となるのはこうして休耕中に育った草類。マメ科植物を播いておくのは常識となっている。


 当然だが、緑肥を細断して耕すんだが、犂で反転させたのではせっかくの肥料が地中深くに潜り込んでしまう。

 まずは円盤馬鍬で細断した緑肥と土を混ぜてしばらく寝かせる。そうしないと発酵に伴うガスが蒔いた作物に悪影響をもたらすからだ。


 なので、種まきにはまだ早いが今の内に細断と混和を行い、一月ほど先により深く土を耕すカギ爪状のチゼルプラウという道具で深い部分の土を土塊にする。ただし、犂ではないので上層に持ち上げて地面の土を反す事はない。タダ締まった部分を粗く土塊にするだけ。

 トラクターじゃないから一度で深くは耕せないので二度、三度と行い、最後にまた円盤馬鍬で上層を整地してから種蒔きとなる。

 何だかんだで農業というのは時間がかかる。土魔法があれば土壌粉砕だの反転だので一気に終わるのだろうが。


 当然、使う農具も育てる作物で違ってくる。


 同じく休耕田であっても、野菜の場合、草を刈ることなく犂で一気に反転させてしまい、一月ほど放置して馬鍬で土塊を砕き、そこに魚肥や油粕を播いてまた馬鍬、ないしはポニー用ロータリーで整地していくことになる。


「ところで、アレはなんだ?」


 円盤状の熊手がクルクル回っている。そして、刈り取った草が集められていく。


「あれは昨年話に出た機械じゃないか」


 ああ、そう言えば畜産用機械にそんなのがあることを話し合たっけ。


 骨だけの傘みたいなものをいくつか取り付けて回転させることで干し草を集めていく機械、日本でも藁や草を集める光景を北海道を中心に見ることがあるだろう、それだ。


 ただし、ロール状に巻く機械は存在しないのでサイロに放り込むしかない。牛の餌とするために一部の休耕田ではそんな作業も行われている。


 集めて一列になった干し草はゆっくり進むポニー車へとフォークで山積みにして牛舎横の塔まで運ぶことになる。

 まあ、傘車を引っ張る牛が時折試食しているのはご愛敬だろう。 


 

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