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黒き春の追懐  作者: 東野白亜
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空想譚


「海、沈みゆく私。」


思った程 冷たくはなかった。

穏やかな波が繰り返し

私を迎え入れては 暖かく包み込む。

心地よい音の応酬が 鼓膜を揺らす。

瞼を閉じる。

薄い膜を透して見える月明かりが

安らぎを与えてくれる。

底の砂は足の型をとっては

指先に掻かれて中を舞う。


徐々に足取りが重くなる。

小さな波の頂が手先に触れる。

白いワンピースが素肌に張りつく。

毛先が水中に踊り出す。

塩辛さが口の中を満たす。

呼吸の自由も奪われた。

目線が水平線と等しくなる。

視界が群青色に変わる。

泡の生まれる音が聞こえた

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