新しい仲間!
やる夫たちが降臨した場所はどうも中世の西洋みたいだった。通訳なのか日本語を話せる兵士もいるが
上級騎士らしき人達は外国語を話していて、何を言っているかわからない。
遠くの方から馬の蹄の音が聞こえてくる。それはどんどん近くなってくる。
黒鉄の鎧を着た勇ましい騎士が近づいてきた。
「ドゲンシタトカ」
「ハッ、こやつらがそこの木を一瞬にしてなぎ倒したのでございます」
「オイハホガナカネ、ソゲナモンウッコロセバヨカ」
「しかし、ヨシ・ヒッサーシュミット公よりタレント持ちの降臨者は保護せよとのお申し付けがございます」
「コンヒューガモンガ、ヒッカブイノオッゼ・ギバッイウナ!」
「ハハーッ!申し訳ございません、イーエ・ヒッサーシュミット様」
その騎士は青ざめてその場に平伏した。
「テセ、イケ」
そう言うと精悍な黒鉄の騎士は背を向けた。
「ハハッ!」
騎士は立ち上がってやる夫たちに剣を向ける。
「ついてこい!」
「どうもあの黒い鎧の人、外国人みたいですね、言葉が通じない」
ユーベルトートがやる夫の耳元でつぶやく」
「そうだな」
騎士についていくと途中で三十人ほどの日本人と遭遇した。どうもこの世界に降臨したのはやる夫だけじゃなかったようだ。
「おい、お前ら、自分たちの能力を確認したか?」
やる夫は一人の青年に話しかけた。
「あ?能力?なんだそりゃ?」
「この世界に降臨したものは誰しも能力を持ってるはずだ」
「何いってんの?ガキの妄想かよ、そんなもんあるわけねえじゃん」
「たしかめたのか?」
「たしかめなくっても、そんなもん、あるわけねーんだよ!バカか!」
吐き捨てるように言ってその青年は去って行った。
「おい」
やる夫の後ろから誰か声をかける。
振り返ると、そこには金髪青目の白人の少年が居た。やる夫とほぼ同じくらいの学年の子だ。
「おい、お前ら日系人か?どこのアメリカンスクールだ?普通日本人がこんなに流暢に英語を話せるわけねえしな」
「お前何言ってんの?お前、日本語話してるぜ?」
「は?いや、じゃあ、この世界はお互いの言葉をテレパシーか何かで感じ取ってるってことなのか?」
「でも、上級の騎士みたいなのは、何言ってるかわかんなかったぞ」
「そりゃ、魔法かなんかで暗号話してんだよ、きっと」
「そうか、じゃあ、お前自分の能力もう分かってるか?」
「能力って何だよ」
「この世界じゃ、自分の望む能力を手に入れることができる。それをたしかめとけ」
「俺はボブ。大人になったらアメリカンヒーローになろうと思ってるんだ」
そこにもう一人、東洋人の子供が割り込んでくる。
「お前ら、さっきから広東語話してるな。中国人か?」
「何だよお前?」
やる夫はその子供の方を見る。
「どうやら俺たち以外は日本人だけみたいだな」
「どうしてそれが分かる」
「おとなしくバカみたいにこいつらについていってるだろ?日本人はバカだから」
「なんだよそれ」
「こんなもん、一つに集めて連れてくるって事は皆殺しにきまってんじゃん」
「マジかよ」
「こいつら日本人はバカだからすぐ人の言うことを信じるし、相手の命令に従って騙され続ける。いつまでもカモられるバカの集団だからな。俺たち頭の良い中国人はそうはいかねえ」
「逃げるのか?」
「ああ、誰かオトリを使ってな」
「ところでお前、能力はためしたか?」
「能力?なんだそれは」
その時である。
「うわっ、俺飛べるじゃん、すげえ!俺の夢だったんだ!」
ボブの体が宙に浮く。
「おい、ボブ、飛ぶ能力があるんならすぐに逃げろ、こいつの言うには、俺たちすぐに皆殺しにされるみたいだぜ!」
やる夫がボブに告げる。
「ばか、何外人に話してんだよ!」
中国人の少年が叫ぶ。
警備の兵士が騒ぎに気づく。
「おい、何やってる!」
「早く逃げろ!」
やる夫が叫ぶ。
「わ、分かった!」
ボブが空に飛び上がる。
「おい、捕虜が逃げるぞ!あそこだ!」
中国人の少年はボブを指さして大声で叫ぶ。
「逃亡者だ!弓をもて!」
兵士たちがさわぎだす。
「わわっ!」
ボブは空にとびあがって逃げようとするが何本か体に矢が当たってしばらく飛んだが森の中に落ちた。
「逃亡者を逃がすな!捕まえろ!」
兵士数人がボブが落ちた方向に走る。それと同時に中国人の少年も逃げる。
「チバケルナ!」
先頭を進んでいた黒鉄の騎士、イーエが自分の剣を投げる。
「げほっ!」
剣は正確に中国人の少年の頭に突き刺さって絶命する。
「逃げるぞ!」
やる夫が叫ぶ。
他の日本人たちはポカーンとそれを呆気にとられて棒立ちのまま眺めている。
やる夫の後を追って朝比奈とユーベルトートが逃げる。
「待て―!」
森の中に入っても敵の兵士が追ってくる。
ユーベルトートが立ち止まって後ろを振り返る。
「何してんだ!」
先頭を走っていたやる夫が立ち止まって引き返してくる。
「ボクが本当のユーベルトートなら光の剣が使えるはずだ!」
ユーベルトートが手をかざす。しかし剣は出ない。
「危ない!」
やる夫がユーベルトートの前に立ちはだかる。
「死ね!」
兵士のふるった剣が胸のあたりをかする。
鮮血が飛び散る。
「うおおおおおおお!よくもボクのやる夫お兄ちゃんをおおおおおおおー!」
ユーベルトートがその兵士に手をかざすと、兵士は空に飛び上がり、バチン!と音を立てて粉々に砕け散った。
「う、うわああ、化け物だああああ!」
恐れをなした兵士たちが逃げ惑う。
「逃がすかあああー!」
叫ぶユーベルトートの手から光りの剣が出てくる。
「であああああ!うおおおおおー!」
叫びながらユーベルトートは追っ手の兵士を全員斬り殺した。
「お兄ちゃん!」
ユーベルトートはやる夫に駆け寄る。
「おい、おまえ、俺を担げるか」
「担げるよ、大切なお兄ちゃんだもん!」
「すまねえな、重いぞ」
「大丈夫だよ、お兄ちゃんのためならへっちゃらだい!」
「俺はお前の本当のお兄ちゃんじゃねえぞ、お前にはお兄ちゃんがいるだろ」
「あんなのお兄ちゃんじゃないやい!」
「バカ野郎!本当の血をわけた兄弟が本当の兄弟なんだぞ!身内を粗末にするな!命令だ、分かったな!」
「ご、ごめんなさい、お兄ちゃん!」
「よし、分かれば良いんだよ、お前は良い子だから特別に俺の弟にしてやんよ」
「はいはい、ゴタゴタ言ってると出血多量で死ぬわよ、黙ってなさい。それより、どっか手当する場所を探すわよ」
朝比奈が話しに割って入る。
「駄目だ!ボブを探そう」
「は?アンタ自分が死にそうなのに何言ってんの?バカ?」
「ボブも俺たちの仲間じゃないか!仲間を見捨てるわけにはいかないだろうが!」
「仲間じゃないでしょ、一回話しただけなんだし」
「一回話してわかり合えたんなら仲間だ!」
「何がわかり合えたっていうのよ」
「ボブは俺の助言に従って能力をためした。それだけで十分だ」
「はいはい、面倒だからボブ探しに行くわよ」
三人はボブが墜落した方向に歩いていった。
しばらくすると、脇腹に弓が刺さったボブを発見する。
「ううう……なんだボクを助けに来てくれたのかよ……」
「仲間だからな。朝比奈、こいつを担いでやってくれ」
「いやよ、アメリカ人なんて、あんた、この前、アメリカンスクールの子に嫌がらせされてたでしょ。ユーベルトートだってイジメられてたし」
朝比奈は眉をひそめた。
「そんな事しないよ!」
ボブが強い口調で言った。
「あんたがしてなくっても、同じアメリカ人の子がやってんの!」
朝比奈はきつく言い返した。
「アメリカ人じゃないよ!」
ボブが怒鳴った。
「は?何言ってんの?」
「あの三人組だろ?アレはメキシカンマフィアの子供だよ。日本のヤクザにコカイン売るために親が日本に来てるんだよ。俺たちだってお金取られたり、殴られても我慢してるんだぜ!反撃したら人権派弁護士が告訴されるし、被害を訴えるだけで、先生からはポリティカルコネクトに引っかかるから黙れって言われるんだ!ボクだった殴られてたし、ずっと嫌な思いをしてたんだぞ!」
ボブは目に涙をためて叫んだ。
「そうだったの……ごめんね」
朝比奈は頭をさげた。
「さあ、それじゃ、俺たち仲間でどっか治療してもらえる処をさがそう」
やる夫は苦しそうにしながらもニッコリと笑った。
新しい仲間、ボブも一緒に冒険が始まる!




