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0007 代表者「NO.048」の世界

 一本の大きな国道のような車道を挟んだところに、どこまでも蒼い大空へと伸びている色彩豊かなビルの数々があり。


 そしてそれらの手前にある歩道には、青と緑の混ざった不思議な街路樹が遥か遠くの先まで綺麗に配列され、その木々の間にはガラスに包まれた様々な電光掲示板のような物が立ち並び、歩道と車道とを分け隔てている。


 これだけをみれば、色鮮やかで綺麗な近未来風景にみえるだろうが……歩道には血の海、そして車道にはタイヤのない近未来な車がいたるところに汚く止まっており、その惨状たるや凄惨なものだった。


 ここから見える範囲の車が一台の例外もなく、歩道に突っ込まずに車道で全て死んでいるのは……もしかしたら、車道と歩道とを見分けるようなそういうプログラムが車に組み込まれた高度なシステム形態を成しているからなのかもしれない。


 こんなにも発達した文明が一瞬で……この化け物機械音の奴のせいで滅んだっていうのかよ。


「うぐっ……」


 歩道にある赤い血の海の数々は言うまでもなく、車の中を覗くとどこも赤いそれが内窓にこびりついていて中が確認できずにいた。


 あぁくそっ……鉄臭いにおいが至るところから俺の鼻を刺激してくる。


 光景も相まって吐きそうだ。


 いったい、この人たちはいつ殺されたんだ。


 もしこの機械音のさきほど言っていたことが本当なら、さっきまでこの世界の代表者は生きていたはずなのだから、この惑星に住む人たちがもうこんな悲惨な状況になっているのはおかしいんじゃないのか。


 だって、この機械音は休むことなくずっと俺たちに向けてペラペラと喋っていたんだ。


 そして、瞬きする間もなく、俺たちはここにどうやってか集団転移した。


 こんな虐殺できる余裕のある時間なんてないはず……いやもしかして、ここに俺たちが現れるまでに、いくつかのタイムラグでも生じていた……とかか?


 それなら……そのときに、こいつがここの世界の人たちを殺していたのだとしても辻褄は合うけど……ははっ、ありえそうだな。


 もう物理法則からなにまでめちゃくちゃだもんな。


 頭で理解できる事象を遥かに凌駕してやがるんだ。


 考えることがバカバカしくなってくる。


 つーか何者なんだよコイツはマジで。


 神様レベルだろ。


 ……ま、まさか本物じゃないだろうな。


「どうですカーァ? すごく臭いでしょウ? アナタ達のニクタイは紛れもないホンモノなのデスヨォ? ちゃんと理解しましたネー、アカネちゃ~ン?」


「なッ!? なななっ、なんでアタシに振るのよ!」


 少し離れたところで一人ポツンと佇んでいる赤髪の少女から、慌てたような声が聞こえてきた。


 珍しい髪色の少女だ。


 外国人でも、染めないとまず見ないような強い赤色をしている。


 アニメのような濃い赤髪といったら、しっくりくるかもしれない。


 にもかからず、顔含めてすごく自然で三次元として全然違和感の起きていない見た目をしている。


 こういう二次元キャラが持つような強い髪色だと普通は三次元の顔とは合わず、髪か顔が浮いて奇抜な見た目になるのが当たり前だと思っていたのだが。


 まさか、こんなにも地毛だと思わせてくるほどに違和感のとっぱらった姿をしている者がいるとは……すげぇ。


 二次元のキャラがそのまま三次元に来たんじゃないかと俺の目を錯覚させてくるほどだ。


 西洋風で、美人ではなく可愛らしいタイプの方の顔立ちをしており、しかも日本語を話しているからそう思ってしまうのだろうか。


 どうみても深夜アニメにいるような赤髪キャラにしかみえない。


 それもツンデレ属性の付いたやつ。


 目が大きくつり目、いや猫目だから余計にそう感じてしまうのだろうか。


 現実の人間では二次元のような顔は表現不可能だと思っていたのに……ぱねぇな。


 あの少女も、この世に実在する異世界の住人なのだろうか……いや、十中八九そうなんだろうな。


 この機械音とメガネやおっさんの話が本当であるのなら。


「なんとナァーク、呼んでみただけデスヨォー。さテ、でハァ戻りましょうカァ!」


 その言葉を合図に、また景色が大きく変化した。




 ──さっきいた白い空間だ。




 どうやら戻ってきたらしい。


 ほんと、どうなってんだよ。


 俺たちは本当に現実でワープでもしているのか。


 やはりこれは神の力なのか。


 ……そういえば、死神がどうとか言っていたよな。


 もしかして、この声の奴が死神?


 というか、今思い出したけど、メガネが死神の遣い魔がどうたらこうたらって言っていたような。


 ってことは、こいつは死神の遣い魔なのか。


 それとも死神なのか。


 いやいや、そんなこと今はどうでもいいだろうが……いや、どうでもよくはねぇよ。


 けどまぁ、そんなこと気にするよりも前に気にしなきゃいけないことがたくさんあるのは確かだ。


 一旦、この結論の見えない議論は頭の隅に保留して、しまっておこう。


「今ここにハァ、合計で97名もの者達がオリマァース。人族の男性が45名、人族の女性が42名、あとは全員その他……かナ?」


 97人。


 さっき殺された3人も含めたらこの空間には100人いたってことだよな。


 キリのいい数字だ。


 明らかに偶然じゃないんだろう。


 その他ってなんだよ……。


「いいデスカー? サキホド、ワタシはデスゲームと言いましたガー。アナタ達97名は皆、敵ではなく仲間なのデスヨー。なのデ、ムカツク者がいても絶対に殺さないでクダさいネー」


 敵ではない……のか。


 なら、殺し合わなくてもいいんだよな。


 よかった。


 とりあえずひと安心だ。


「ついでに言うト。他の代表者を殺したカタにハァ、「死」というペナルティーが発生しマスのデー。なのデ、意見の食い違い等で殴り合いの喧嘩をしちゃう時ハァ、十分注意してクダさいヨー」


 意見の食い違いで殴り合いって……なにそれ怖すぎだろ。


 どんな民度だよ。


「ソレニ、ここにいる人たちの肉体強度は様々なのデスからネェー。自分の世界基準で考えちゃダメデスヨォー。できるだけ一緒に仲良くキョウリョクしテ、この楽シイィィ楽シイィィデスゲームから生き延びてクダさいネェー」


「あぁん!? 一緒に仲良くだと!? てめぇ俺を騙したのかぁ!?」


 重低音のある、低く力強い男の声が耳に流れ込んできた。


 少し離れたところで一人、ポツンと胡座をかいて座っている、顔に大きな斜め線の切り傷があるイカついスキンヘッドの男からだ。


 袖のない白いワンピース姿のため、筋肉まみれのスゲェぶっとい腕が存在感をこれでもかと強調していた。


 あれに殴られたら一発アウトだろうな……。


「オヤオヤァ、ガングさン? 担当者から聞いておりませんでしたカァ? これは、チームデスゲームですヨォ?」


「他の奴と協力するなんて話、いっさい聞いてねーぞ! ふざけんなッ!!」


「でハ、アナタの担当者がセツメイをハブいたのかもしれませんネェー」


 担当者……?


「冗談じゃねえ! そんな話があるか!」


「いやはヤ、担当者はいろいろなカタがおりますからネェ。細部までセツメイするのが面倒くさかった、カタなんでしょうかネェ。まぁ、しょうがないデスヨ。だって、アナタみてるとアツクルしいデスシィー」


「んだとおぉ!?」


「アナタには期待しているんですヨ……「ここで死にますカァァァッ!?」」


 ま、また声のトーンが……。


「てめ……ちっ。くそっチーム上等じゃねえか! やりゃあいいんだろ、やりゃあ!」


「ホホホォ。いいデスネェ。いい心掛けデスネェ。アンシンしましたヨォー。オホホホホッ!」


 機械音のヤツ。


 わざと不気味なトーンで脅したな。


 あんなに筋肉男に煽られても殺さないあたり、おそらく全く殺す気なんてないくせに。


 あの男には何かしらヤツが期待しているだけのものを持っているのかもな。


 ヤツにとって、これから始まるデスゲームを楽しませてくれる何かを……多分。


 って……いかんな、デスゲーム漫画や小説の読みすぎでああいう、いかにもなキャラを危険と認識して疑心暗鬼になってるぞ俺。


 否定的に考えるのはやめよう。


 それにしても気になる単語がいくつか聞こえてきた。


 どういう意味なんだ、担当者って。


 やはり、あの機械音以外にも仲間のような奴が複数いるってことなのか。


「さぁテ! でハ、セツメイの続きをサイカイしましょうカー! チームデスゲェームのネェー☆」


 チームデスゲーム……。


 なんだか……嫌な予感がしてきた。



 俺の予想が当たらないといいんだが……。

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