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0001 白の空間

「んっ……」


 重く閉じられていた瞼が、ゆっくりと開いた。


 どうやら眠っていたのか、俺の瞳に強い光が差し込まれてくる。


 やけに眩しい白光りだな……って。


「な、なんだここ……」


 目の前に広がるのは、蛍光灯が設置された自室の天井ではなく。


 どこまでも真っ白で遠近感のない白一色の、奥行きのわからない景色だった。


 全てが真っ白だ。


 ウエ大地シタも全てが真っ白。


 そして、そんな純白の景色の中。


 覇気のないような顔でこちらを見上げながら、どうやら突っ立っているらしい俺のすぐ眼前で、散り散りに座り込んでいる10数人程の者たちと。これまた同じようにボーッとした顔つきで、散り散りに突っ立ちながら俺を見ている4~5人程の者たちが……いた。

 

 それら全てが、俺の視界に……確かなる記憶として刻み込まれてくる。


 なんだ、この状況。


 すごいな……。


「な、なにがどうなってんだ……ってか、ここどこだよ……」


 (ウエ)地面(シタ)も全部真っ白……。


「まだガキじゃにぃぃぃか」


 そう言って俺に話しかけてきたのは……俺が佇んでいる位置から最も近い場所で、両足を伸ばしながら真っ白な地面に座り込んでいる1人のおじさんだった。


 とても小柄で身長100cmあるのだろうかという疑問が沸いてくるほどの、小さく太った見た目をしている。


 ずいぶんと小さな人だ。


 長く伸びた黒髪も黒い髭もモジャモジャで、まるでおとぎ話に出てくるドワーフみたいだ。


 他の座っている人たちも、みんな個性豊かな見た目をしているようで、とびきり太った者もいれば今にも死にそうなくらい痩せ細った顔をした者もおり、さらには白髪の生えたおばあさんまでいる。


 個人的印象だが、座っている者たちの年齢層は、みんな比較的高そうな印象をうける。


 俺より、ふたまわり以上はありそうだ。


 対照的に、立っている者たちは、みんな比較的若く見えた。


 どうして、みんな病院服にあるような白いワンピースみたいな同じ服を着ているのだろうか。


「ん? ……お、おぉ」


 その立っている者たちの中で一際異彩を放っている者に、俺の目は釘付けになってしまう。


 それもそのはず。


 なぜなら、立っている若人たちの中で恐らく唯一の女性であり、しかもその容貌が「傾国の美女クラスじゃないか!」と叫びたくなるほどの美貌の持ち主だったからだ。


 あ、いや、確かにそうなんだがそんな理由で釘付けになったわけじゃないか。


 身長170cmの俺よりも身長が少し高そうで、しかも巨乳で、長身スレンダー巨乳好きの俺にとってドストライクだったからだな。


 あぁいや、それも確かにそうだが違うか。なんかしっくりこないな……あぁそうだ、理由がわかった。


 そんな彼女がだ、なんと俺と目が合うやニッコリとした表情でこちらに優しく微笑んできたからだ。


 信じられるか?


 この人形みたいな顔をした、金髪碧眼ストレートロングの西洋風超絶美女さんは、なんと俺と目が合うやイキナリ微笑んできたんだ。


 他の者達が、不貞腐れたような表情で、変化なくいつまでもこっちを舐め回すように見続けてくるときに、彼女だけは俺に向かって優しい花を咲かせてきたんだ。


 その姿はまるで、淀みの中にいる純白天使(カガヤキ)のようだった。


 いやはや、すっかり見惚れちゃって俺の思考回路が鈍くなってしまっていたようで。


 これで俺の軽々しい一目惚れ歴は、記念すべき18回目の更新。


 ついに俺の年齢と並んだか。


 はぁ、若いって辛いな、ヤレヤレ。


「まだ若けぇのによぉ。辛かろうにぃ」


 そんな俺の心の声を読み取ったかのように、おっさんの言葉と俺の心の言葉が重なった。


 俺の止まっていた時間を動かすかのように、おっさんが言葉を続けてきたようだ。


 あぁ、もっと見つめていたかったのにな……相変わらず辛気くさい顔でこっちをみてくる。


 ん……あれ、よくみると俺もみんなが着ているような袖のない白いワンピースみたいな服を着ているんだな。


 なんだこれ、すげえヒラヒラして薄い服だな。


 つうか、パンツ履いてんのか俺……あ、なんかすげえ密着したボクサーパンツ履いてる気もする。


 でも、俺トランクスしか持ってないし服だって……あっ、そうか。


 俺は精神病院にぶちこまれてしまったのか。


 なるほど、それなら納得だ。


 ……いやいや、いつまで現実逃避してんだよ、俺。


 というか、結論が意味不明だろうが。


 落ち着け、俺。


 深呼吸だ、深呼吸しよう。


「すぅぅぅ……はぁぁぁっ……」


 さて。


 何だこの状況。


 なんだこの非現実的な場面。


 どうして俺はこんな不思議な場所で寝ていたんだ。


 しかも立ちながらという前代未聞の高等テクを駆使しながら。


 そもそもなぜ俺はこんな不思議な……というか意味不明な場所にいるんだ。


 それと、なぜ俺はこんな服を着ているんだ。


 というかだ。


 なぜこうなる前の、直前の記憶がない。


 なぜだ。なぜ。なぜなぜなぜなぜなぜなぜだ?


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