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俺と彼女の異世界冒険記   作者: 仲遥悠
第二異世界
93/411

魔法習得!?

 何だろう…夢…かな…? 子どもが2人、森の中でお話ししている…。 ふふふっ…楽しそうだなぁ…仲の良い兄弟って感じがして。 …小学校低学年…ぐらいかな? あぁ…お勉強をしてるんだ。 どんな勉強かな…感情? 人の気持ちについて勉強しているんだ…偉いなぁ…いつか私に弓弦との子どもが出来たら私も育児を頑張らないと。 きっとお父さんに似て超絶的な美形になるんだろうな(※個人の感想)…似すぎるあまり夫を重ねる母と子の恋愛が…キャ♪


 場面が切り替わった。 視線の先では子どもがもう片方の子どもを森の中で待っている。 あの子の雰囲気は何と言うか…昔の私に似ている…? ロボットみたいだけどロボットじゃない…そんな子。 そうか! だからあの子は人の気持ちについて教えていたんだ…弓弦が私の心の氷を溶かして錠を解いたように…? 


 …!!!!!!!!


 見つめる先で、突然子どもが…撃たれた。 …駆け寄った子どもも…撃たれた。


「止めてっ‼︎」


 …声に出しても無駄だと分かっているけど…っ。


「誰だッ!!」


 木に隠れて見えなかったけど、突然出てきた男が十分に周囲を警戒しながら誰何の声を上げる。 男と目が合った瞬間、私は傍観者から当事者へと変わったことに気づく。 さっきまでは確かに夢を見ているみたいだったのに…今私は自分の足で森の中に立っていて、銃口を向けられている。


「…まだいやがったのか。 悪いな、この場を見られた以上死んでもらう!」


 ダンッ!


「モードシフト…っ!」


 弓弦のように…短剣でいなして…弾く‼︎


 …キィィィンッッ‼︎


「…え?」


 銃弾が空中で静止していた。 それだけじゃない…男も、子どもも動かない…まるで私以外の時間が止まっているかのように。


 銃弾の上に数字が現れた…10、9とそれは少なくなっていく…なので私は無意識的に男の銃を叩き落として首元に短剣を当てる。


 2、1…0。


「…っ貴様いつの間に! …っ‼︎」


 私が口を開く前に男が倒れる。 息は…無い。


「嘘…舌を噛み切った…? 今はそれより…‼︎」


 先に撃たれた子どもの方へと急いだけど息は…っ。


「……いよ…っ」


 もう1人の子はまだ息がある…っ!?


 子どもの瞳から涙が頬を伝っていた…黒色の涙が。


「悔しいよ…憎いよ…ぉ」


 譫言うわごとのように繰り返すその息は既に…その子も助からないということを私に痛感させた。


「…誰? 何で…泣いてるの?」


 ハッとして目を拭う…拭ったけど、止まらない…。


「君が…泣いているからだよ…」


「何で…僕が泣くと…泣くの…僕は…憎いんだ…分からないけど…憎いんだ…」


 …こんな小さな子が憎しみという感情を抱きながら死んでいくなんて…そんなの…絶対にイヤ。 弓弦だってきっとそう思う。


「…憎いの? 憎いから…泣くの…? 憎「違うよ」」


「…君が人を憎みながら死んでいくのが悲しいの」


「…悲しい? 悲しくても…涙は…出る…」


「憎いなんて言わないで…絶望なんてしないで…」


「……でも…」


「…笑って。 涙は私が拭いてあげる…だから、笑って?」


「…笑うって…何?」


 溢れる涙を必死に堪えながら全力で笑顔を見せる。


「…それが…笑う…?」


「うん…これが…笑うってこと…だよ…。 楽しいって気持ちを表しているの…そんな悲しい顔なんて止めて、楽しいことをしよ…ね?」


 その言葉は既に息の絶えてしまった子どもがこの子どもに言った言葉と似ていたような気がする…だからかな。 伝わった…。


「笑う…こう…?」


「うん…! それが笑う…だよ…ちょっとだけど…楽しくなったでしょ?」


「…分からない…だけど…温かい…」


 ふと気がつくと、その子を抱きしめていた。 …弓弦が私にあの時してくれたのと同じように。


「……これが嬉しいってこと…? うん…分かった…よ…あり…が…」


 最期までその言葉が紡がれることが無かった…けど、しっかりと私に伝わった…気がする。 











「…これで良い…よね」


 2人の子どもの身体を土の中に埋葬して簡単なお墓を作って少しの間黙祷する。 名前、知らないから彫ってあげることは出来ないけど…少しは報われると良いな。 …勿論ここから離れた位置にあの男の死体も埋めた。 複雑だけど…弓弦なら『よくやった』って褒めてくれる…よね? 


 …でもここ、どこだろう…夢…じゃないよね…抓ったら痛いし…あの時を止める魔法も…現実味が…。


 そうだよ! あの魔法の名前考えなきゃ…何が良いかなぁ♪ やっぱり決め言葉は『そして時はとは一体…? うごご…』…混ざったような気がするけど、これで良…。


「痛っ!?」


 ハリセン。 でも叩いてきた相手は弓弦ではなくて…。


「キシャアッ!」


「…えぇと、どちら様でいらっしゃいますか?」


 蟷螂かまきり…何でお腹の方に殴られた痕のような傷があるんだろう…しかも何故かハリセン二刀流…?


 あれ?


「キシャ!?」


 …変だなぁ。 この傷から弓弦の匂いがする…まさか弓弦に殴られた……トカ。


「…すん。 やっぱり間違い無い、弓弦の匂いだ」


「キシャアッ!? …キシャ!」


 何かどこかに走って行っちゃったけど…付いて来い…ってことかな。


「ま、待って‼︎」











「キシャ!」


 不思議なハリセン蟷螂かまきりは空中に浮遊している穴の中に消える…まさかこれは…王国の千年祭を祝う町の広場の奥、とある幼馴染のとある実験によって開いてしまい、広場でぶつかった拍子に落としてしまったペンダントを拾ったことでたまたまお祭りを回ることになった女の子が吸い込まれちゃったアレだと…言うのかな? 手元に門保持機が無いのが心配と言えば心配だけど…大丈夫! 多分…。











 *


 …んん、揺れるようで揺れない…この何とも言えない絶妙な感覚と胸に当たる硬い感触…それにこの匂いは…間違い無い。 弓弦の背中だ♪ つまり…おんぶされてる!? キャッ♪ あ〜…頑張った甲斐があったね…うん♪ 幸せだよぉ…。


「あらあら…知影さんが目を覚まされたみたいですよ?」


「…そうか。 知影、起きてるか?」


「…うん。 起きてるよ」


「どうする? 降りるか?」


「ううん…このままでいさせて」


 私を背負い直す弓弦。


「そうか。 しっかり掴まっとけよ?」


「よろしいのですか、ご主人様?」


「…気分、さ」


 あれ? 今日の弓弦は何か優しい…。 


「私が言うのも何だけど…どうしたの急に?」


「別に…気分だ。 特にそれ以外の意味は無い」


『何と無く褒めてやりたかった…なんて言ったら絶対に調子に乗るからな。 まぁあながち間違ってはいないからこれで良いだろう…だが…』


 私が経験したさっきの謎の光景について知っているような素振りは無いけど…本能的に何かに気づいたのかな…さっすが未来の旦那様♪


「これからどこに向かうの?」


 あれ程の地震があったにも関わらず、殆ど崩れていない神殿内を歩いている理由は何だろう?


「何故か“シグテレポ”が発動しなくてな…仕方が無いから歩いて外に出ようとしているところだ。 …ん?」


「キシャア!」


 あ! ハリセン蟷螂かまきりだ…。


「…弓弦様、不思議な魔物…ですね…」


「……」


 風音さんは何とか口に出すけど、フィーナは文字通り唖然としている。


「お前…そうか。 付いて来いと、そう言うことだな」


「キシャ」


「ですがご主人様、危険では…?」


「御二方共魔物の言葉が分かるのですか?」


「…ハリセンを持っているやつに悪いやつはいない」


「「何故ですか!?」」


 驚く2人の言葉が重なる。


「キシャ」


「悪意を感じないからだ…何と無く…だがな。 ほら、見失う前に急ぐぞ」


 …あの蟷螂かまきり…一体何なんだろ? こういう魔物もやっぱりいるんだね…。











 弓弦の背中でゆっくりと癒されながら神殿を出て、ハリセン蟷螂かまきりの後に続き、私達は神殿から北にある森の中に入っていく。


「フィーナ様、この森は…」


「えぇ。 間違い無いわ…でもあの時のような感覚は感じない…心配する必要が無いわけでは無いけど…周辺の警戒を怠らないで」


「フィー、この森が昨日言っていた、ある程度進んだら戻される森…だな?」


「はい。 先程の地震の所為か少し道が変わっていますが間違い無いです。 取り敢えず今は進みましょう」


「ごめん弓弦…ちょっと待って」


 あの不思議な体験と繋がるものが…私の視界の隅に映った。 果てしなく名残惜しい弓弦の背中から降りてそこへと駆け寄る。


「キシャ」


 ハリセン蟷螂かまきりが遠目に立ち止まった。 待ってくれているのかな。


 やっぱり小さな二つのお墓があった。 古ぼけているけど…私が作ったもの…だよね…でも…ううん。 私の魔法属性は多分“時”だもんね…不可能じゃないとは思うけど…。 ならあのハリセン蟷螂かまきりは…? 同一魔物と考えるのがこの場合は妥当だけど…それだとこの魔物が時間転移が出来るとしか…考えられない。


「どうした? 墓なんか見つめて…その墓に何かあるのか?」


「少し考え事…かな。 じゃあ早くおんぶして♪」


「調子に乗るな。 一度降りたらもう終わりだ」


「えぇ〜! ケチ…おんぶしてよ…」


「断る」


『フィーにも風音にもやってやらないといけないからな…知影ばかり贔屓ひいきするのは駄目だな』


 …むぅ…こんなことなら降りなきゃ良かったなぁ…折角弓弦を独り占め出来たのに…あ〜あ…。


「下らないことを考えるな。 置いてかれても知らないからな?」


「置いてく気なんて無いく「何か言ったか?」な、何でも無い何でも無い♪」


 森の出口らしきものが見えた…だけどハリセン蟷螂かまきりは出口に並ぶ二つの木の前で止まる…まるでそこに壁があるみたいに。


「キシャ」


「…結界ですね…特殊な形式のようです。 …お分かりになりますか?」


「あぁ…だが解除方法が分からない…? そんなので良いのか? いや、確かに気づいたらあったし、望んだらすぐ出てくるからおかしいなとは思ってたんだ…じゃあ“あの時”もこのハリセンを振るっていたのか…? いや、今は良いか。 よし…‼︎」


「…何をされ…! …あら? ま、まさかその武器にそこまでの力が…っ」


「キシャキシャ」


「え? 何をするの?」


「…まぁ見とけ」


 ハリセン蟷螂かまきりと弓弦がそれぞれハリセンを構える。


「「はぁぁぁっ(キシャァァァッ)‼︎」」


 3つのハリセンが何も無い空間を叩く…切り裂く…? どっちだろ?


 バキィィィンッという鋭い音。


「…ほ、本当に結界が解除されました…凄いです…」


「俺も信じられない…まさか出来てしまうとは…このハリセンかま…ん?」


 弓弦は一瞬の間にいなくなってしまったハリセン蟷螂かまきりの姿を探す。


「…いなくなってしまわれましたね」


「…謎のハリセン蟷螂かまきり…一体何が目的で私達を導いてくれたのでしょうか」


「…いないものはしょうがない。 先に進むぞ。 ここから先はまだ行ったことが無いんだろう? なら、日が暮れる前に何があるか調査しに行くぞ」


「「「うん!(わん!)(畏まりました)」」」


 森を抜けた私達は時々襲い来る魔物を倒しながら歩みを進める。 私は殆ど戦えていないから分からないけど、この辺りの敵は若干弱いみたい。 手応えが無いって弓弦がボヤいてる。


「…あ!」


 東の空をふと見たフィーナが足を止めて指を指す。 


「どうした? フィー」


「村です! あちらに村があります!」


「…はい! 確かに村が見えますね! この世界に来て早くも一週間が既に過ぎましたがやっとこれで…っ」


 私には遠過ぎるのか見えないけど…3人の目にははっきりと村が映っているみたい。 目良過ぎだよ…野生の力…風音さんは兎も角弓弦とフィーナは正に犬だね。 その内機械仕掛けの天使様が出て…「知影」…ごめん…。


 急いで村に入った私達を迎えたのはやはり村人Aさんと言うべき男性だった。


「…旅のお方、ようこそ。 ここはあちらの方にある森を守護する守護者達の村、テトです。 どうかごゆっくりと滞在してください」


「あぁ。 感謝する…良ければ、なのだが…村長に会うことは出来ないだろうか? 色々と聞きたいことがあってな。 いや、会えないのならばそれはそれで構わないのだが」


「村長の家は村の一番奥です。 よろしければご案内致しましょうか?」


 弓弦は私達を見る。 それぞれが頷くと「頼む」と言って村人Aさんに村長の家まで案内してもらうことになった。


「こちらです。 では取り次いで参りますので」


「すまない」


 そして数分後、家から出て来たAさんに案内されて私達はこの村の村長に会う。


「ようこそ旅の方々。 私がテト村の村長を務めさせてもらっているモアンだ」


 優しそうな人だなぁ。


「弓弦だ。 後ろの女性達はあなたから見て右から順に知影、風音、フィリアーナ。 突然伺いに上がったことをまずは謝らせてもらう」


 因みに弓弦とフィーナはハイエルフということがバレないよう帽子を被っている…お揃いの帽子…を。 何でも弓弦が被っている帽子はフィーナのお母さんの形見だとか…うぐぐ。


「若いのに中々出来ておる。 して、用事とは?」


「不躾で且つ失礼に値するかもしれないが、この村や周辺の歴史について知っていることを教えてほしい」


「歴史研究家かの?」


「近いようで遠いですがそう受け取っていただいて構わない」


「……………すまぬがの、お主らが“ある者”ではないと証明できねばそれは教えること出来ん」


「…ある者とは?」


「…少し前に起きた地震。 聖地の神殿の封印が解かれた。 同時にこれまで一度として繋がることのなかった聖地への森道も繋がった。 仮にお主達が聖地からやって来た人間だと証明出来たのならば教えよう。 だが証明出来ぬのなら、教えられぬ」


「証明…か。 具体的にはどうすれば認めてもらえる」


「この家に語り継がれし『憎しみの双童ふたわらべその憎しみのわけすべてを語れるのなら…あの神殿の封印が解けたということはそれを理解出来たということじゃからな」


「…知ってるか?」


「…申し訳ありません」


「…御力になれないです…」


 憎しみの…子ども…これってアレだよね? あれ? まさか私の出番…? 私の春が来たんだ…!


「知影は何か…「知ってるよ」…そうか! 任せても良いか?」


「うん♪ 憎しみのわけだよね? 結論か言うと憎しみの意味を分かっていなかった。 …だけじゃ足りないかな?」


 私が見た感じだとそれが一番簡単な答えだと思うけど…。


「……本質は捉えておるな。 よろしい。 認めるとしよう。 して先程の質問への答えじゃが…」


 モアンさんの話を纏めると、テト村より東に行ったところに大きな街があるみたい。 歴史については『憎しみの双児ふたわらべが遠い昔に本当にあったことや、聖域と呼ばれる地帯が閉ざされていたわけを教えてもらった。 何でも深い憎しみが時を経ていつしか事象にまで干渉するようになり、それが所謂無限ループを作り出していた…みたいだけど、どうしてそこまで分かるのかがそれぞれ引っ掛かった。


「…こんなところか。 もう、今日は遅い。 今晩はこの村で休まれると良いじゃろう」


「そうか…感謝する」


 口々にお礼の言葉を言って私達は村人Aさんに案内されて今晩の宿へと行くのだった。 …言ってみたかったんだこういう言葉♪











 *


「…何だ、来ていたのか」


 弓弦達を見送ったモアンが自らの背後に視線を向ける。


「…シナリオが狂ったね。 まさか『支配の王者』に続いて『空間の断ち手』まで彼等に味方するとは…面白いね」


「確かに。 彼奴らがここを訪れるのはもう少し先であったな」


「…今回は色々と可笑しい。 “イレギュラー”もそうだけど…それよりも“イレギュラー”なのがいる…君も気づいただろう?」


「…あぁ。 “イレギュラー”は?」


「僕が見た限りでは干渉した形跡は無いね。 最初のあの時ぐらいかな…あとはあの2人の無意識だ。 片方気づいちゃってるしね。 …でもそれだけじゃ説明出来ない点もある。 これは別のもう1人にも言えることだけど」


「…“20番目”」


「そう。 知り過ぎてる…色々と。 彼女は本当に21番目なのかさえ不安になってくるほどに…ね」


「…だがそれは」


「あの時殺したよ。 殺した…はずだけど、数人は生きてるね。 だったら殺したはずの20番目達も何らかの形で生きている可能性が否定出来ない。 まぁでも当人同士が逢うようなことがあったら絶対に分かるから」


「あの男はどう説明する」


 その言葉に背後に立つ存在は呻る。


「…魔法については誰かが授けた…としか。 そんな全て把握しているわけじゃないし。 でも、そうだね…? 仮定は幾つかある」


 疑問符を浮かべたモアンに一拍の間をおいてその存在は言う。


「クク…ッ。 まぁだとしたら干渉どころの話じゃないねこれは。 これ以上揃えさせるわけにはいかないよ」


「…まさか」


「君もそこに至ったということはそのまさかかもしれないね。 存在を捻じ曲げているから誰が誰かは特定出来ないけど…少なくとも1人は確定だね」


「手を打つのか?」


「様子見だよ。 でも少しちょっかいをかけてみようかな…フィリアーナ・エル・オープストに」


 その存在は嗤うと消える。











「…掃除をする身にもなってくれんか…まったく」


 漆黒の羽を残して。


 *


「………」


「嫌な予感がする…だろ?」


「ご主人様…」


 ふと思うことがあって外に出てみたらご主人様が木の上から私を見、降りて来られた。 


「どうした?」


「いえ…どうも嫌な予感がして…」


「…俺もだ。 何故か分からんが…酷く寒気がする…まるで誰かに見られているみたいでな」


「…ご主人様、最近不思議な夢を見ることは無いですか?」


「…あると言えば思い当たる節があるが…急にそんなことを聞いてどうかしたか?」


 ご主人様の心をこっそり覗き見る…風音と2人きりで不思議空間に行ってらしたのは果てし無く気になるけど、私が見ている夢とは全く違うものだとは分かるから今は言えない…駄目な雌犬をどうかお許しください…。


「ご主人様が夢の中で何をなさっているか気になっただけです。 深い意味はありませんよ」


「そうか…俺は先に戻るが…フィーはどうする?」


「ふふ…まだ少し風に当たってます。 私に構わずお休みください」


「…分かった」


『話したいと思った時に話してくれ…待ってるからな』


 覗いていること…バレていたのね。


「…はい。 いつか時が来たら…きっと、必ずお話ししたいと思います。 待たせてしまいすみません」


「俺は200年待たせたんだ。 気にするな」


「…はい」


 軽く私に手を振ってから戻られるご主人様。 その姿が家に入ることで見えなくなってから私は周辺の魔力マナを探り…。


「誰!!」


 禍々しい魔力マナを感じた木を刀で斬る。


「…へぇ。 良い太刀筋だね。 ちょっと危なかったよ」


 ご主人様の仰っていた視線の主はこいつね。


「今度は何をしに来たの? 返答次第では…」


「返答次第では…どうするつもりだい? どうすることも出来ないくせにさ」


「く…っ」


 圧倒的な魔力マナを叩きつけられる。


「まぁ良いよ。 何となく分かったから」


「…何が分かったというの」


「さぁ?」


「惚けないで‼︎」


「じゃあね♪ 無理だと思うけど、見つけられると良いね」


 振った刃は躱された。 


「見つける…か」


 知っているのね…夢の意味を…その答えを…私が知りたいのに…。


「ふぁ…ぁ」


 時が答えに導いてくれると信じて…今は寝た方が良い…わね。 ご主人様をお待たせするのも悪いから…。











 …そう。 今はまだ…。

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