氷魔法があると、夏の暑さも凌げる気がする。by弓弦
荒ぶる魔力を放ちながら、フラウは鋭く獲物を見詰めた。
『不浄なる者を氷結させし──』
瑞々しさに満ちた唇から、流れるように言の葉を紡いでいく。
周囲の温度が、徐々に下がっていく。
『冷たき女神の放ちし槍は、貫くモノ凡ゆるモノに、等しく終結を与え給うたッ!!』
言葉に従い、魔力が紡がれていった。
渦を巻いた氷の魔力が、彼女の手中に集っていく。
「──ッ!」
その手に握られる、美しい造形の氷の槍。
濃密な氷の魔力が結晶化した槍は、遠眼に見てるだけでも背筋が凍る感覚を催す。
おおよそ、生徒が用いる魔法ではないような印象を受ける氷槍に、イロハが口を覆った。
「嘘…上級魔法…ッ!?」
「スノウ家の跡取り…その名は伊~達ではないか~!」
個人差があるが、たとえ「名門」と謳われる『ティンリエット学園』においても、実戦経験の乏しい生徒達が扱える魔法は精々中級魔法レベルである。
初級魔法が複数の中級魔法が使える生徒すら、ほんの一握りしか居ない。
その中で、上級魔法を扱える生徒が存在しているとは。
フラウの実力は、並の実行部隊員を超えている、
階級にするなら、大尉に相当する実力だ。
「覚悟…しなさい!」
驚くディー達の視線の先で、ゆっくり投擲体勢に入るフラウ。
「…ッ!」
右手で柄を握り、左の掌に先端側の柄を乗せる。
穂先が狙うのは、吹雪の中心。
直線上に捉えている。
「何の騒ぎですかッ!」
教師がもう一人駆け付けた。
プラチナブロンドと呼ばれる色の髪を肩口で切り揃え、前髪は流している。丸眼鏡越しの黒の瞳には焦りの色が見えており、肩で息をしている様からも急いで来たのが分かる様子だ。
氷教室の専属教員でもある、サザンカ・ホワイトだ。
学園の中で一番の氷魔法の使い手でもある彼女は、校庭で猛威を振るっている氷魔力を察知して飛んで来たのだ。
「サーちゃん、どうしよっ! 皆が大喧嘩してるよっ」
因みにイロハとサザンカは友人である。
休みの日には、二人で買い物に行くぐらいには深い仲だ。
最近のトレンドを追い求めながら、流行りの店には必ず足を運ぶ。しかし年上であるはずのイロハの方が、何故だか自分よりも若いように扱われてしまうのがサザンカの小さな悩みであった。
「“フィンブルコフィン”ッ!?」
フラウの放とうとしている魔法に気付いたサザンカは、足に力を込める。
既に詠唱は完成している。後は放つだけの状態だ。
しかし──!
「でも識別性が利いてない…!」
サザンカは、今正に放たれようとしている魔法の危険性を即座に理解した。
フラウの魔法は、『魔法具』の力で魔力を増幅し、無理に発動させている状態だった。
威力は上級。だが、魔法の発動に魔力と意識を割かれているあまり、効果範囲の識別をする余裕が残っていない。
攻撃魔法の行使は本来、味方への誤爆を防ぐことを念頭に置かなければならない。強力な魔法を使うのならばなおのこと。
このまま放たせてしまっては、吹雪の中で戦っている生徒も負傷する。
そのような蛮行は、教員として断固認める訳にはいかなかった。
「イロハ、止めるわよッ!」
「おっけッ!」
瞬時に魔力を高め、魔法の詠唱体勢に入る二人。
狙うはフラウの気絶。少女の下へと向かうため、地を踏み締めた。
「待~つんだな」
そこに伸びる両手。
二人の進行を阻むようにして、横一文字に腕が出されている。
「何故止めるんです学園長っ!」
「そうだよ、危ないよ!?」
抗議する両者。
しかしディーは、気にしていないとばかりに涼しい顔をしている。
「くらいなさいッ!!」
その瞳は、魔法を放つフラウと吹雪の中心を鋭く見据えていた。
「あっ!」
「駄目っ!!」
放たれる、槍。
高速で吹雪の中心目掛けて進み、突き進み──吸い込まれた。
「(ハーウェル坊やが推すだけの実力…さ~、見~せてもらうんだな)」
──キィィィィィィン……ッ!!
「きゃあっ!?」
極寒の衝撃波が空を薙ぐ。
イロハが顔を覆い、サザンカが身を震わせた。
凄まじい威力の魔法だ。吹雪が内側から掻き消され、辺りに漂うのは白い霧。そして静寂。
「はぁ…はぁ…っ、どう…流石に効いたんじゃない…?」
フラウは手応えを感じていた。
家に伝わる『魔法具』の力を借りた魔法は、狙い違わず命中している。貫通はしなかったであろうが、穿ちはしたはず。絶対に外さないよう、狙い澄ましたのだ。
これで気に食わない講義をする気に食わない教員に、一泡吹かせることが出来ただろう。
湧き上がる歓喜の感情に口角を緩めながら、フラウは深く息を吐いた。
積もっていた苛立ちが、一度に晴れた心地だった。
そう、彼女は強い苛立ちを新任教師に対して感じていた。
あの教師は意味の見出せない講義をした挙句、ほぼ初対面の自分を名前(しかも呼び捨て)で呼んでみせた。
「スノウ家」の次期当主として育てられた彼女は、家族以外に名前を呼ばれる機会が少なかったのである。
居ても「さん」付けはされるし、呼ぶのは決まって同性だ。異性に呼ばれた経験は、父親ぐらいしかない。
だから弓弦に名前を呼ばれた時は驚いた。彼女にとっては、自分の心に土足で踏み込まれたような気がしたのだ。
若さ故の青さだ。しかし、俗に「思春期」と呼ばれる年代の少女は、とても繊細であった。
自己のプライバシーにとても敏感なのであった。
苛立った。だから刃向かった。全力で。
そして、全力の一撃を見舞った。
不思議な程に気に食わなかったのだ。このぐらいの制裁は、あってしかるべしと考えていた。
制裁を見舞い、今に至る。
やり過ぎだっただろうか。息を切らしながら、フラウは様子を窺う。
「……?」
やがて小さな風が吹くことで霧が流れていくと、中の惨状が露わになった。
フラウは眼を見張った。
鮮明になる景色。そして、静止している氷の槍。
槍の穂先が捉えているのは、
「──ッ!」
突き出された右の拳。
「…え?」
思わず声が出た。
拳と穂先が衝突している。信じられない光景だ。
魔法によるものか。いや、その拳からは何の力も感じられない。
ただの拳だ。物理的攻撃手段の一つ。
なのに何故か、
「うぉぉぉぉぉぉッ!!」
槍にヒビを入れた。
鬩ぎ合いによって生じた衝撃波で、揃って尻餅をついている生徒達の視線を受けながら、弓弦は雄叫びを上げる。
強く地を踏み締め、右腕を押し込んでいく。
何と力押しな所業か。しかし、穂先に次々とヒビが走っていく。
やがて──!
「せいッ」
──パリィィンッ!
氷の槍は、砕け散った。
それはもう、木っ端微塵に。
氷の欠片となって、消えていった。
「嘘…っ」
氷片が舞い落ちる、景色の中で。
あまりの光景にフラウは絶句する。
渾身の魔法が打ち砕かれたのだ、無理も無い。
「さて」
拳を引っ込めた弓弦は、そのまま右腕を空へと向けた。
陽光を照らす袖の先は、素手である。だが、白い肌には一筋の傷も走っていない。
何の夢だろうか。唖然とするフラウの視線を受けながら、
「んじゃ、課外授業終了だ」
拳は一直線に地面へ。
腰の入ったパンチが地面にめり込むと、地面が揺れた。
微かな揺れだった。
しかし、その直後──弓弦の前方の大地が盛り上がった。
──うわぁぁぁぁっっ!?!?
周りに居た生徒一同が、空へと吹き飛ぶ。
「は…?」
地響きが強まると共に次々と大地が膨隆し、牙を剥く。
誰の眼にも明らかな、超常的な光景。
しかし、振動する空気が現実を物語る。
逃げる間も与えない、圧倒的な恐怖。
気を呑まれたら最後、最早足が動くことはない。
力を失った足が、腰を下ろさせた。
顔色が青褪めていた。唇が引きつっていた。
だが大地の刃は止まらない。
生徒を次々と吹き飛ばしながら隆起する大地が、戦意を喪失したフラウに迫る!
「きゃぁぁぁぁぁああっ!?!?」
フラウは、吹き飛んだ。
青空が近付く。日差しが眩しい。
まるで空に向かって落ちていくような感覚だ。微かに近付いた太陽に眼を細めると、徐々に空が遠くなる。
無理矢理空に向かって持ち上げられた身体が、重力に従い始めたのだ。
「づぅっ」
そして背中から着地──というより、背中を強かに打ちつけた。
息が詰まり、痛みが走る。
立つ力は──どうやら、残っていなさそうだ。
身体が動かず、苦悶に顔を歪めることしか出来なかった。
「どうしたお前達? もう終わりか?」
高等部氷教室に在籍する生徒、ここに全滅する。
総出の集中攻撃は、何の傷も付けられていない。それどころか、右腕一つで遊ばれたようなものだ。
息一つ乱していない教師に対し、誰もが感じた。
何だ、この男は。
何者なのだ──。
「…お前達、人を過小評価し過ぎだ」
注がれる視線を受け、呆れ気味に肩を竦めながら、弓弦は続ける。
「全員でなら勝てると思ったか。右腕しか使えないと侮ったのか? 油断があるから、簡単に足下を掬われる」
その言葉を聞いて、生徒の数人が項垂れた。
自覚があったのだろう。拳を握り固めて、地を打つ者まで居た。
「…特にお前だ、フラウ」
フラウの下へと歩み寄り、弓弦はしゃがむ。
彼女に対しては、個別的に伝えなければならない話があった。
クラス全員には見回しながら声を掛けたが、彼女には眼線を合わせて伝えることにした。
「…最後の魔法、識別まで意識を向けられなかったな? 俺が迎え撃たずに避けていれば、怪我どころで済まない騒ぎになるところだったぞ?」
「え……」
フラウは当初、虚を突かれた面持ちをしていた。
しかし数度の瞬きの後に、唇を噛む。
「どうして氷魔法の使い手でもないあなたに…そんなことが分かるのよ……っ」
弓弦の言わんとしていることを理解しかねたためだった。
「…一つ、大事なことを言っておく。戦いにおいては、いかに味方の損害を減らせるかが大切なんだ。そのために敵を知り、自分を知る必要がある。味方を顧みない攻撃は、大概悪手にしかならないからな
「…何よ、あなた…一体……」
「これでも教師をやっているんだ。魔法を見分けることぐらい出来る。…それだけのことだ」
因みに、教師だからといって魔法を見分けられる訳ではない。
フラウの魔法を見抜けたのは、弓弦自身が氷魔法を使えるのと──彼の体質に理由がある。
魔法を感知出来る彼は、生徒達の魔法に隠れて行われていたフラウの詠唱に気付いていたが、敢えて放たせた。
自分の実力を示すという理由もあるが、何よりも放たせたことに意味があった。
己の力を過信して奮うことの危険性を、教えたかったのだった。
「何が教師よ…。幾ら何でも、あれだけの魔法を受けてビクともしてないなんてあり得ないわよ…」
「ま、教師だからな。強くて当たり前だ」
自慢気に胸を張る弓弦に、フラウは小さく首を横に振った。
何故、そうなる。
教師だからといって、誰もが生徒全員の攻撃を片手で捌けたりはしない。
まるで規格外という言葉を、教師に無理矢理置き換えただけのようにちぐはぐだった。
こんな人物、見たことがない。
そう思えたのは、圧倒的な強さを目の当たりにしたからだろうか。
いやそれだけではない。
「必要な実力は示した。約束通り、今日以降の講義は受けてもらうからな~」
生徒達一人一人の返事を確認してから立ち去る弓弦の背中は、何故だか頼もしさに満ちていた。
「良いか! どんなに弱い魔物でも、脅威となる可能性は大いにある。レベルアップしたければ、ちゃんと予習して授業に臨むように! じゃ」
片手を上げながら、弓弦は校舎へと戻って行く。
フラウはその背中を見送ろうとして、彼の進む先に他の教師が居ることに気付いた。
「──」
何事か言葉を交わしているようだが、距離があるため聞き取ることは出来ない。
程無くして三人の教師が校舎に戻り、サザンカがこちらにやって来た。
「皆大丈夫だった? 怪我してないわよね」
生徒達を集めた彼女は、一人一人の身体や衣服を簡単に確認する。
そして誰も怪我一つしていないことに気付くと、怪訝に眉を顰めた。
「(…どう言うこと?)」
多少の砂埃は被っている。
魔法を多用したことによる疲労も見受けられる。
しかしそれだけだ。
派手に吹き飛ばされた生徒も居るというのに、やはり怪我一つ負ってない。
どのような手段を用いたのか、詳細は分からない。しかし怪我一つ負わせることなく、「橘 弓弦」という男は実力を示したということなる。
その、圧倒的過ぎる実力を。
──彼なら、大丈夫だ。
自分とイロハを止めた学園長は、自信に満ちた発言をしていた。
恐らくは、実力を良く理解しているが故の言葉だったのだろう。この結果を見越していたのはいうまでもない。
──流石なんだな、橘教員。
──いえ、何とか出来たみたいで何よりです。
しかし何故だろうか。
親し気に接しているように見えて、言葉の裏では探っているようにも見えた。
サザンカとしても、弓弦が見せた実力を怪訝に思っていた。
「(あそこまでの実力を持った人が、どうしてこの学園に…)」
教室に戻ってからも、疑問は湧き続ける。
一緒に戻って来た生徒達に教科書を開いてもらいながら、自らも同じように開きながら。
何らかの目的があって学園に来た人間が、あからさまに実力を見せた訳を考えていた。
「……」
考えている人間は、ここにも一人。
フラウだ。教科書を広げながら、ぼんやりと窓の外を見詰めていた。
サザンカの行う講義は、自らが使う魔法理解が深まるために最大の関心を持って臨んでいたのだが──今日の彼女の思考は、別のことでもちきりだった。
「(橘 弓弦…)」
自分の持ち得る力の全てを放っても、倒すことは出来なかった。
どうすればダメージを与えられるのか、どうすればあそこまで強くなれるのか。
知りたかった。その強さの訳を。
そのためには、もっと興味を持つ必要がある。
「(あの強さの秘密と弱点…絶対に見付けてやるんだから…!)」
もっと興味を持って、もっと知って。もっと、もっと──強くなる。
闘志を燃やす彼女は、そのまま上の空で一日を過ごすのだった。
「…はい。始まりました、『なにそれ? 教えてリィルお姉さん!』…今回は内容を少し変更して、しめやかに行おうと思いましてよ」
「……リィル君、最近部屋に籠りがちだと思ったら、こんなことをしていたんだね」
「えぇ。…本来あなたを呼ぼうとは考えていませんでしたが、少し疑惑が生じてまして…。十七回目にして初の登場、八嵩 セイシュウ博士ですわ」
「ん、僕の前にテロップが出る感じかな? 見えないけど…どうもどうも」
「あ、因みにこんな感じで出ると思いますわよ」
──逮捕 何かをした疑い。
「博士」 八嵩 セイシュウ容疑者(32)
「へぇ…こんな感じのね……」
「ってどう言うことだいッ!? 何か僕逮捕されているんだけど!?」
「どう言うことと言われましても…博士には、何かをした疑いが掛けられていますの」
「それが何なのかを訊いているんだよ、リィル君……」
「何なの、と言われましても…まずは両手を出してくださいまし」
「え、嫌だよ。リィル君手に鞭持っているじゃん。縛るつもりだよね、それで縛る気満々だよね?」
──逮捕 何かもした疑い。
「博士」 八嵩 セイシュウ容疑者(32)
「何でッ!? 何か『も』って何!? 何もしてないよ!?」
「…博士、これ以上罪が増える前に観念した方が良いですわよ。…私も、したくてしているんですから……」
「したくても、しないでほしいんだけど……」
「…私だって、本当はやりたいんですわよ? でも博士がそう言うから、泣く泣くやるしかありませんのに……」
「うん、その涙はきっと違うよね。どっちかって言うと喜びの涙だよね」
「…ぐすん」
「…本当に泣けるんだ」
──ズドンッ!!
「ちょっと待って、君の涙で白衣が撃ち抜かれたんだけどッ!? 床に穴が空いたんだけどッッ!?」
「今日の私の涙は、“ペネトレイトサファイア”仕様ですわ。…ぐすん」
──ズドンッ!!
「うわぁっ!?」
「さて今回は、“ペネトレイトサファイア”の解説でしてよ。この魔法は“ペネトレイトウォーター”を連続して放つ上位魔法…上級魔法です。一発でも強烈な殺傷力を持つ弾丸によるマシンガン…えぇ、激烈な攻撃魔法ですよ。ぐすんぐすん」
──ズドドドドドドッッ!!!!
「ひぃぃぃぃぃ……っ!?」
「と言うことで博士、縛りますので。…あまり抵抗されると悲しくて泣いてしまいますので、ご用心を」
「…気遣っているようで、遠回しな脅迫だよね…って痛い痛い…っ。ちょ…っ、無理矢理縛って……」
「…と、忘れる前に詠唱例ですわ」
『水よ、ここに集いて弾となり、撃ち貫きなさい、微塵も無く』
──ズドドドドドドッッ!!!!
「何で!? 何で魔法発動させているんだいっ! 僕何もしてないだろう!! と言うか今ので、白衣の裾全部やられたんだけど、虫食いみたいになっているんだけどっ!?」
「はい。こちらはレティナと言う方の詠唱です。実はこれ、下位魔法から発展させて詠唱すると言う少々高度な詠唱法が取られています。俗に言う、“連携詠唱”ですわね。下位魔法の詠唱に付加する形で詠唱することで、消費魔力と詠唱時間を短縮する方法でしてよ」
「無視かいっ!?」
「通常の詠唱と比較して、最低でも1.2倍は短縮出来ますわね。…もっとも相応の制御力が求められますし、下位魔法が存在する魔法限定ではありますが」
「ここだけの話だけど!」
「黙ってくださいまし! 詠唱付加には魔法を発展させるものもあれば、性質を変化させるものもありますの。例えば範囲拡大であったり、逆に縮小であったり。詠唱の役割は、イメージの補助であるからこそ可能な芸当ですわ。しかしながら、体系化された以外の魔法が周囲の魔力に与える影響は計り知れない。発動もしないのに魔力を吸い取られたり、あるいは飽和量以上の魔力が体内に入ることで回路の爆発すら引き起こしかねない。二度と魔法を扱えなくなってしまったりするから要注意なのですわ」
「…ぐ」
「博士の言いそうなことぐらい分かりますわよ。さて、予告ですわ。『弓弦だ。やれやれ…最初はどうなるかと思ったし、色々意識を割き過ぎて疲れはしたが、どうにか講義を終えられたな。これで少しは生徒達に認められると良いんだが、どうだろうな。初めての教師生活、悩ましいことばかりで仕方が無いが、こんな時は──次回、現実の学校は、大体屋上が解放されていない。by弓弦』」
「…僕は何のためにここに呼ばれたんだ」
「それはまた、次回で」
「じゃあこのまま拘束されてないといけないのかい!?」
「良いではありませんか。博士は今、罪人なのですから」
「……理不尽だ」