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スーツ姿のパートナーって、唆るよね。うむ、眼新しいな。by知影&ユリ

 ──前回までの、あらすじ。


 自らが学園内で待機する準備室について説明された弓弦。

 彼は冷蔵庫の存在や、所謂伝説の樹という今後何かしらありそうな存在について予感を募らせていた。

 準備室の説明が終わった後も、ディーの案内は続く。

 彼は続いて、高等部の教室へと足を運ぶのであった。


* * *


 鐘の音が鳴り響く空は、青い。

 長い雲の連なる空は、しかし空を染めることなく所々を彩っている。

 そんな抜けるような蒼さの下、向かった先は高等部の教室。


「初、中、高で棟が分かれているのですね」


 既に初、中等部の案内が終わっていた。

 残すは高等部となり、高等部の校舎まで足を運んでいた。


(き〜み)が担当するのは、主に高等部なんだな」


 高等部の教室が並ぶ四階の廊下で、簡単な説明が行われる。

 八つのクラスがある高等部ともなると、生徒達もそれなりに戦えるようになる。

 魔法も使えれば、武器の扱いも個々に適正を見出せている。いわば、隊員見習いといったところだ。

 卒業後の生徒達は、隊員になったり自分の世界に戻ったりするため、自分達の身を守れるようにする必要があるのだった。


「(高等部…か)」


 個々の実力差はあるものの、少尉としての実力は最低限備えさせる。そんな目標が高等部に存在していた。

 因みにクラスは、八属性に基づくネーミングがされている。

 「サラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノーム、トール、フェンリル、ルクストブライ、ダクルフィアルス」──それぞれ、火、水、風、土、雷、氷、光、闇に基づいている。


「(ルクストブライに、ダクルフィアルス…な)」


 前者六属性に対し、残りの二属性に耳覚えのない弓弦。

 何かの固有名詞だろうか。考えども、答えが出るはずもなく。


「(…それよりも、明日からの教え子達の顔を、しっかり見ておかないとな)」


 思考を切り替えて、校内見学に集中する。

 四階では、手前に「光」、奥に「闇」のクラスがあった。


──。


 その光のクラスから声が聞こえた。

 聞き覚えのある声なので、弓弦が視線を遣ると。


「ユリ・ステルラ・クアシエトールだ。分からないことばかりだが、楽しみたいと思っている。よろしく頼もう」


 今日は良く鉢合わせる人物が立っていた。

 自己紹介中なのだろう。クラスメイトに向かって、自らのことを簡単に話していた。


「(…アイツ、まだ眠たいのか)」


 少し眠そうにしているのは、先程眼が合った途端に眠剤を飲んだためか。

 そうまでして顔を合わせたくないのかと、弓弦は少し呆れていたが──


「っ!?」


 案の定、眼が合った。

 途端に、彼女の顔が赤くなる。


「ん゛んっ」


 咳払いした彼女から放たれる、「どこかへ行ってくれっ」という悲痛な訴え──かどうかは分からないが、そんな言葉が聞こえた気がした。

 強く訴える瞳が、揺れている。

 今日のユリは、ずっと動揺気味だ。


「(はいはい、分かりましたよ〜っと)」


 受け取った言葉通りに従い、その場を後にしようとする。

 直後教室内から、賑やかな雰囲気が漂い始めた。

 転校生が、突然顔を赤らめ、扉に釘付けになっている。ならば、当然のように気になるというもの。

 思わず弓弦は、耳を澄ます。


──クアシエトールさん、誰を見ているんだろ?


──きっと好きな人よ! 彼女がこの学園に来たのは、その人に会うためよ…!


──え、マジ? 恋人持ちか…。狙ってたのに。


──恋人待ちかもしれんぞ。


──お前天才か…!?


──お前等、狙い定めるの早過ぎだろっ。


 そんな声も聞こえてきた。

 何ともお花畑というか、馬鹿馬鹿しい会話というか。懐かしい感覚を覚える会話だった。

 美女転校生といえば、大体クラスが騒めくと決まっている。

 どこか微笑ましく思えたのは、感慨深さがあるためか。


「ん〜? (あれは〜、クアシエトール大佐か…)」


 騒がしくなり始めた教室に、先を行こうとしていたディーの足が止まる。


──!


 クラスを任されている担任らしき人物が、ギョッと固まった。

 ディーはこの学園の長だ。そんな人物が、いきなり扉の向こうで立っていたら驚くのも当然かもしれない。


「ど〜れ。時間(じ〜かん)もあるし、ちょっくら覗くか」


 ディーはさらに、教室へと入って行こうとする。

 その口元が、僅かに吊り上がっていた。


──!?


 横開きの扉に手を掛けた途端、担任の顔がさらに青褪めた。

 突拍子が無さ過ぎる、学園長の訪室。


「や〜ってるか〜?」


 ディーは引き戸を引き、教室内へ。

 何を思って覗きに行くのかは分からないが、堂々とした入室であった。


「(入るのか…)」


 一人で行かせる訳にもいかない。

 白髪混じりの男を追う弓弦。


「‘ぁぅぁぅぁ…’」


 するとユリが、明らかに動揺を強める。

 口をパクパクさせて「ぁぅ」を繰り返している辺り、絶賛混乱中か。

 依然として、顔は赤い。

 それはもう、情熱の赤だ。


「(…本当に熱、無いんだろうな)」


 心の底から、体調面が気になる様子を見せている彼女。

 気にはなったが、下手をするとまた突き飛ばされかねない。心無い言葉を言われるかもしれない。

 誰も見ていないならいざ知らず、他の生徒の眼の前で、それは嫌だ。

 何事も無かったように、弓弦は彼女から視線を外す。


「‘ぅ…’」


 切り替わる視界。こちらの様子を生徒達が窺っている。

 一瞬映った視界の端で、ユリが肩を落としたような気がした。


「(…そんなに安堵することか)」


 内心で愚痴る弓弦の横で、ディーが気さくに口を開く。


「や〜、ちょいと覗きに来たんだな」


 緊張感の張り巡らされた教室内に、緊張感の欠片も無いディーの声が響く。


「ちょっ…学園長先生…っ。急に来ないでくださいよ…」


 凍ってしまった空気の中で、頭の眩しい男性教員がディーに立ちはだかる。


「(うぉ、眩しっ)」


「良〜いじゃないか、サン教員。減〜るもんじゃないんだから」


 「サン」と呼ばれた教員は、その名の如く頭が眩しい。

 正に太陽。教室の明かりを見事に反射している。

 眩しい、眩し過ぎる。その眩しさに、眼が眩みそうだ。


「(そこはかとなく、拝みたくなるな)」


 内心で拝む弓弦。

 心の内で留めているだけマシだが、失礼極まりない行動であった。


「そうそう、この頭みたいに…って違ぁうッ! 変なこと言わせないでくださいよ!」


 そんなことは露知らず、サンが声を張り上げた。

 直後、ドワッと笑いが巻き起こる。

 笑ったのは生徒達だ。中には、腹を抱えて笑っている生徒も居る。


「…?」


 勿論ユリのように、無言になる生徒も居たが。


『おぉ…人の身で、これ程まで…』


 笑いに煩い悪魔は、謎の視点で感心していた。


「おい笑うなっ! そんなつもりで言ったんじゃないから!」


「(あ、成程)」


 こういう人物なのか。

 弓弦はノリツッコミしたこの教員の性格を理解した。

 面白い人物だ。生徒達の心を掴んでいるし、何より楽しそうな授業をしてくれそうな印象を受ける。

 優秀な生徒達を教えるにあたり、やはり教員もそれなりの実力を求められているということが良く分かった。


「…で、学園長先生。一応授業中なので、あまり邪魔しないでもらえますか。…クアシエトールさんが困っていますし」


 そんなサン教員は、少々お怒りの様子だ。

 突然名前を呼ばれたユリは、全然話に付いていけていないのか眉を顰める。だが席に戻るよう促されたので、自分の席に戻って行った。


「(一番後ろの列か…)」


 席の位置は、窓際の一番後ろというテンプレにも程がある位置だ。

 二人一組で長机に向かい合う形で座る彼女の姿は、新鮮だ。


「‘びっくりしたでしょ?’」


 隣の席に座るっているのは、女生徒。


「‘…うむ’」


 どうやら、友人関係を築きつつあるようだ。

 ユリは美女といっても良い容姿をしており性格も良い。社交性もあるため、当然の結果ではあるのだけども。

 何だか少し安堵してしまった自分に、弓弦は気付いた。


「(…何か涙腺が緩むな)」


 そして謎の感動を覚えてしまう。

 一体自分はユリに対して、何の立場に立っているつもりなのかを真剣に悩みたかった。


「(…歳か?)」


 等と考えてしまう、一応二百二十歳。


「(歳か)」


 本人としては、二十歳のつもりなのだが。


「(歳…取ったなぁ)」


 無性に感慨に浸りたくなってしまう。

 自分も、かつては学生だったのだ。

 青春の中に生きていたというのに、今生きているのは青春の外。

 嗚呼、青春よカムバック。

 こうやって、人は過ぎ去りし過去に涙するのだろう──と、弓弦の思考は謎の迷路に突入し始めた。


「う〜んうん。減〜る必要の無いサン教員の頭部について一笑いしたところで、行くとするんだな」


 再び起こる笑い。

 数人椅子から転げ落ちた音で、弓弦は帰還した。


「(…笑い過ぎだろ)」


 余程受けているのだろう。

 微笑ましいというか何というか、最早ワザとらしい域だ。

 だか見たところ、苦しそうにしている生徒も居る。

 心の底から笑っていると、簡単にわかってしまった。


『師匠、ここで…高座をしたい…!』


 謎の意気込みを見せるアデウス。

 簡単に笑ってくれる生徒達が、彼の背中を押しているようだ。

 ゴソゴソと、何かを用意している物音も聞こえた。


「(駄目だから)」


 このままだと授業の邪魔をしそうなので、弓弦は釘を刺した。

 アデウスは不満そうに唸ると静かになり、それ以上喋ることはなかった。


「じゃ〜、(つ〜ぎ)行くんだな、次」


 そして二人は、「クラス・ルクストブライ」を後にした。

 続いて中を覗いたのは、同じ階にある「クラス・ダクルフィアルス」。


「転校生の神ヶ崎 知影です。趣味は読書で得意武器は弓です。短い間ですがよろしくね♪」


 またもや知った声が聞こえたので、弓弦の意識は声の主へ。


「(知影…)」


 すると、紫紺髪の美しい女生徒と眼が合った。


「お〜、あの子が神ヶ崎 知影ちゃんか。別嬪(べ〜っぴん)さんなんだな」


 まるで理想が現実となったかのような容姿から、分け隔てなく人々に向けられる笑顔の何と可愛らしいことか。

 快活に話す彼女の姿に、教室内は大盛り上がりだ。


「(知影…か)」


 普通に生徒らしくしている姿は、とても好ましく思える。

 ある一点を除けば、彼女は完全無欠なのだ。

 しかし、その一点が故に何とも勿体無い人物なのである。


「(変態じゃなければな…)」


 彼女は席に戻ったのか、扉から見切れた。

 代わりに教壇に上がった教師と眼が合うと、微笑み掛けられた。


「さ、(つ〜ぎ)行くんだな」


 今度は、教室内に入らないようである。

 さっきは嬉々として入って行ったように見えたが、今は逃げ出そうとばかりの様子だ。


「……」


 弓弦はもう一度教室を覗く。

 女性教師は既に、生徒達に向かって何事かを話していた。

 横顔の美しい人だった。

 これも、異世界クオリティか。元々居た世界だったら、男子達の好意に晒されるだろう。

 意外と、胸もあった。


「(胸か…)」


 中々のサイズだ。

 間違い無い。ファンクラブが居るレベルである。

 弓弦はディーの後を追いながら、そんなことを考えていた。


「……」


 何故だろうか。

 妙な程、身体に突き刺さる視線を感じる。

 周囲を見回したが、自分に視線を向けている人物は見当たらず、不思議なものである。

 だがいつまでも気にする訳にはいかず、その場を後にした。












* * *


 挨拶かぁ。何だか久し振り。

 どんな感じで挨拶しようかな。

 人との関係って、大体第一印象で決まるんだよねぇ。

 ここは、オーソドックスに…。


「転校生の神ヶ崎 知影です。趣味は読書で得意武器は弓です。短い間ですがよろしくね♪」


 …あ、弓弦の気配だ。

 弓弦どこ? 弓弦弓弦…あ、居た!


「っ」


 あ〜♡ 心がゆづゆづする。

 何アレ!? スーツとか、スーツとかぁぁっ?! もうさ、似合い過ぎ。と言うか、似合い過ぎてる!

 あ、幸せ♡ 私今、天国に居る気分。天国はここ? ううん、ここ学校。学園なのさ…それは分かるけど。分かるけどぉぉっ。

 さっきもあまりのカッコ良さに倒れちゃったし…。それで戻って来てまた倒れたら疑われちゃうじゃん♪ 先生と〜? 生徒の〜?? イケナイ、か、ん、け、い♡

 そう、禁断の愛! 禁断の果実に手を付けた、罪深き存在なんだよ私達は!

 これはもう、『ティンリエット学園』のアダムとイブ的な感じ!

 きゃ〜♪ 一杯子作りしようね弓弦♪ あなたとの子どもが沢山欲しいの〜♡。

 …はぁ。ここまで滾らせちゃうなんて。弓弦のスーツ姿、半端無いって! あんなカッコ良い人居らんやん普通!

 …。ちょっと、古いかも?


「(…あれ?)」


 何か弓弦…、先生のこと見ているんだけど。

 壁越しだから良く分からないけど、何か分かる気がする。だって弓弦の視線だよ? 私の知影アイ! だったら可視化出来るのさ! ふふん。

 …うん。やっぱり弓弦……先生のこと見てる。

 顔まじまじと見たし、次に胸見たし。何? そんなにあの女のことが良いの? 出会ったばかりの女に釘付けになるなんて…。

 …ううん、弓弦は悪くない。

 だって弓弦だよ? 私のことが一番大好きなんだもの。アレはきっと…あの女が弓弦に色眼使ったんだ。うん、間違い無い。そうに決まってる。


「‘はぁ…’」


「‘わぁ…神ヶ崎さん、何か小さく溜息吐いてる’」


「‘きっと影のある人なのよ。元気に振舞っているけど、心には傷があるんだわ’」


 …。こうなったら、あの女が近寄れないくらいに、さり気無く弓弦との間に割って入れないと。そう、ギンギラギンにね。

 …え? 弓弦のが…ギンギン?

 やだ弓弦、そんな…ギンギンだなんて…っ。私のそんなの見せられたら、興奮しちゃうっ。あぁぁ…唆る…。


「‘あのミステリアスな感じ…あぁぁ、俺恋に落ちそう…’」


「‘バッカお前止めとけって。いきなりは早過ぎだろ!’」


「‘…はぁはぁ…はぁ…’」


「‘お、おい…お前どうした。止めろよこんなところで、ここは教室だぞ…’」


「‘…はぁ…うつ伏せで寝てたら息苦しくなった…はぁ…’」


「‘おい…っ’」


 滾る…唆る…ぐへへ。

 はぁ…弓弦…好きぃ…♡

 後で愛しの知影が会いに行くからね? 待っててねっ。

──チャッチャカチャ、チャッチャカチャ、チャッチャッチャッカッチャ!


「さぁ、始まりますわよ〜! ネクストミュージック、スタート!」


──教えて! それは何? 教えて! お姉さん♡ そのお悩みを解いてあげます♪


「いぇい♪」


──タヌキさん? 違うよ! 妖精さん? そうだよ! ユリタヌキって言うんだよ♪

 綺麗な、お姉さんと可愛い、ユリタヌキ♪ 二人が楽しく教えてくれる〜ぅ♪


「「集まれ〜! 皆〜!!」」


──皆でおいでよ〜♪ 笑おうよ〜♪


「ミュージック、ストップですわ!」


「いえ〜い、ぱふぱふぱふ♪」


「学園と言えば勉強! 勉強と言えば、解説ッ! さぁ、『なにそれ? 教えてリィルお姉さん!』の始まりですわ!」


「わ〜い! ドンドンドドーン!!」


「はい。五回目となりましたこのコーナー。今回は何と、スペシャルゲストの登場でしてよ!」


「は〜い♪ ご紹介に預かりました、レイアです!」


「彼女は当コーナーのテーマソングも担当してくださっていますの。言うなれば、二人目のお友達ですわ! では意気込みを!」


「皆のアイドルなユリタヌキじゃないけど、マスコット魂燃やして頑張りま〜す! いえい♪」


「元気がよろしくて結構ですわ! 変私わたくしも頑張れましてよ! さて次なるお題は…」


──ダカダカダカダカダカ…!


「ダン♪」


「“フレアトルネード”ですわ!」


「パチパチパチ〜♪ ねぇねぇリィルお姉さん、“フレアトルネード”ってどんな魔法? フレア…なのに、トルネド…?」


「お答えしましょう! “フレアトルネード”とは、炎の嵐を起こす魔法でしてよ。嵐ですが、火属性中級魔法ですわよ」


「…そうなんだ〜。てっきり、風魔法に思えたんだけど…」


「トルネードの由来は、火の魔力マナが竜巻のように渦を巻く様から付けられたとされています。炎が荒れ狂っているだけですから、そこに風の魔力マナは介在していませんわ」


「属性が複合しているとかはないのかな」


「…そうですわね。でもそれだと、火属性魔法使いが一人で扱えることの説明は出来ませんわ。一方で風属性魔法使いは扱えませんし」


「ふむふむ。確かにそれだと、火属性魔法ってことになるね」


「他にも、“アクアストーム”と言う水属性魔法があります。嵐のように凄まじい水の奔流を打つける魔法でしてよ」


「それも、風属性魔法じゃないんだよね」


「えぇ。れっきとした水属性魔法ですわ」


「でも、“フレアトルネード”よりは風要素が薄いかも…? 何でだろね」


「受け取り方の違いだと思いますわ」


「あ、そっか。“フレアトルネード”は炎が風を受けて渦を巻くように思えたけど、“アクアストーム”は何て言うか…水! って感じなんだよね」


「さらにさらに、“ブリザード”と言う氷属性魔法もあります。こちらは吹雪を起こす魔法ですわ」


「あ、それも氷属性魔法のイメージが強いかも。吹雪で凍らせる魔法だからかな」


「そうですわね。雪がメインで、風は副産物…そう考えればイメージが付くと思いますわ」


「う〜ん、ふむふむ。じゃあ雷属性の魔法にもありそうだね」


「まぁ。どうしてそう思いますの?」


「火と水にあるのなら、氷の対属性である雷にあってもおかしくないかなって。それを言ったら、光と闇もそうなんだけど」


「鋭いですわね。ですが、雷と光と闇は本編未登場ですわ」


「あ、そうなんだ…。ちょっと残念」


「もしかしたら今後登場するかもしれませんわね」


「ううん。もう登場しているかもしれないよ。皆の冒険が少しだけ掘り下げられると…ね」


「…それは、どう言うことでして?」


「どう言うことだろうね」


「…?」


「それよりもリィルちゃん。三つも魔法を挙げたんだし、そろそろ詠唱例に移らないと」


「いつの間にか進行役を取られてしまった気がしますが…良くってよ。では“フレアトルネード”の詠唱例から」


「『呑め爆炎吼えよ、渦と成れ』…う〜ん、カッコ良い詠唱」


「ピースハート大将の詠唱ですわね。最早、火属性と言ったらこの人…と言った感じでしょうか。では次、“アクアストーム”」


「『起これ』…う〜ん、シンプルだね〜」


「『アークドラグノフ』実行部隊副隊長、セリスティーナ・シェロック大佐の詠唱ですわ。中級魔法をこんな短い詠唱で、しかも集中せずに発動出来るのですから、その高い実力が窺えます」


「やっぱり中級以上ってなると、少しずつ行使が難しくなるんだね。普通はどれぐらいの時間が必要なの?」


「体内の魔力(マナ)を元に、空気中の魔力(マナ)と練り合わせる集中の時間、魔法陣を形成する時間、標的を絞る時間、詠唱そのものの時間…人にはよりますが、数分を要してもおかしくありませんわ」


「へ〜意外。思ったよりも掛かるんだね」


わたくし達の周りは、実力が高い人ばかりですからね。並の隊員ならこれぐらいは掛かりますわよ」


「そうなんだ。皆凄いんだね」


「では最後、“ブリザード”の詠唱例です」


「『凍って』と『凍てつけ』の二つが、今のところ登場しているみたい。どっちの人も、中々の使い手っぽいねぇ」


「最初がフィリアーナ、もう一つが弓弦君ですわね。我が部隊を代表する、第一線級のエース達ですわ」


「誰かと思ったらフ〜ちゃんと、ユ〜君かぁ。エース…何だか私まで嬉しくなっちゃうなぁ。えへへ」


「どうしてアプリコット少尉が喜ぶのでして?」


「う〜ん。嬉しいものは嬉しいよ。嬉しいって思ったから」


「アプリコット少尉は、独特ですわね」


「えへへ、恥ずかしいな〜」


「…独特ですわ」


「それよりもリィルお姉さん、予告を言わないと」


「あぁ、そうでしたわね。では予告です。『光と闇の教室を見て回り、階段を降りる弓弦とディー。新たな教室の前に立つ二人を他所に、桜舞う道を歩く者が、一つ。桃色景色を眺めながら、人混みに紛れていった──次回、何故歩くのかと問われるだろう。ならば私はこう返そう。運命さだめだからさ…。byヴェアル』…ヴェアル…? どこかで、聞いたことがあるような…」


「ヴェルも自由だなぁ。何をしに行くんだろ」


「…ヴェアル…ヴェアル…何でしょう……どこかで……あらアプリコット少尉、穴開きのお金に糸を通したりして、どうしましたの」


「リィルちゃんこれをじっくり見ててね」」


「…どうしました…の」


「気にしな〜い気にしない」


「……」


「気にしな〜い気にしない」


「…しない…気にしない」


「おっけおっけ〜♪」


「…あら、わたくしは何をそんなに気になっていたのでしょう……」


「次回もお楽しみにね♪」

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