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流石師匠。ツッコミの切れ味が上がっている!byアデウス

 ──前回までの、あらすじ。


 大切な「家族」に暇を与えてから学園見学に赴いた弓弦は、 偶然立ち寄った保健室で同僚のユリに出会う。

 しかし彼女は弓弦の姿に動揺し、彼を突き飛ばすと消えてしまう。

 その後用務員姿のトウガと出会ったが会話している内に時は流れ、一時間の学園見学を終えて学園長室に戻るのであった。


* * *


「ど〜うだった、こ〜の学園は」


 学園長室から講堂を目指す途中のこと。

 ディーの問いへの返答を弓弦は思案した。


「そうですね…」


 これから向かう講堂から、かなりの数の声が聞こえる。

 多くの生徒が集まっているようだ。男女を問わない若々しい声は、実に賑やかなもの。

 彼等を前に話すのかと思うと、やはり緊張を覚えずにはいられない。

 だがそれよりも今は、感想だ。

 ついつい緊張に向かいがちな気持ちを方向修正し、弓弦は言葉を続ける。


「雰囲気に活気があり、良い学舎です。何より、居心地が良い」


 あまり見て回った訳ではないが、それが素直な感想であった。


「そ〜れは良かったんだな。ど〜んどん、好きになってくれると良い。いつかは、正式に赴任してくれても良いんだぞ?」


 突然の勧誘に苦笑いしつつ、足並み揃えて講堂へ。

 目的地は体育館の隣らしい。


「そうですね…。ですが自分は、それ程出来た人間ではありませんので…」


 果たして、教師をしても良いのだろうか。

 緊張から忍び寄る不安が、心を鷲掴みにしている。

 何故緊張するのか。それは、自身が褒められたことをしている人間ではないためだ。

 人を殺めたこともある。想いを寄せてくれる女性陣に、不誠実な態度を取ってもいる。

 甘えか。確かに、甘んじているだけなのかもしれないが。だがそれでも、彼女達を傷付けたくない一心で、自分のしていることが最善であることを納得させてこれまで歩んで来た。

 しかし、いざ人を教え導く立場に身を置こうとすると、このままで良いのだろうかと自分を見詰め直してしまう。


「(…いや。見詰め直す機会として、活かそうとしているのか。俺は)」


 考え直してみると、自然と答えが出た。

 案ずるより産むが易し。何事も挑戦だ。

 そう、挑戦しかない。


完璧(かーんぺき)な人間なんて居ないんだな。だ〜からこそ、(だ〜れ)にでも成長の余地がある」


 ディーの言葉が、背中を強く押した。


「…そうですね。前向きに検討してみようかと思います」


「…(な〜ん)か、面接みたいなんだな」


「まだ始まってもいませんので。いつか先にある進退は、これから始まる日々の中で考えていこうと思います」


 今回の教師生活で、自分を見詰め直す。

 そのために、兎に角自分らしい行動に取り続けよう。

 そんな決意を胸に宿せば、自然と足並みが軽くなった。

 今なら、自由に空も飛べるはず。


「(って飛べるか…魔法で)」


 魔法とは、便利なものである。

 今は使わないように自制しているが、やろうと思えばやれる。

 真面目な返答を返しながらも、心の中では茶目っ気を混ぜて。

 近付く講堂の裏口に、弓弦の胸はこれからの期待で満たされていた。


「さっきよりも、さらに良い顔付きなんだな。ま〜すますこの学園に欲しくなった」


「…教師、不足しているのですか?」


有望(ゆ〜うぼう)な若手を集めることは、いかなる時でも重要なんだな」


 強い意欲を覗かせるディーとの会話は、講堂の中に入るまで続いた。


「(へぇ…広いな。ドームみたいだ)」


 『ティンリエット学園』の講堂は二階建てで、半円状構造をしている。

 中には座席がズラリと並び、円の端へと向かうにつれて高さが上がっており、階段のようである。ある程度階段が続くと、一段と高さが変わっている。そこが二階部分ということだ。

 弓弦の元居た世界にあった、「ドーム」という建築物に良く似ている構造であった。


「や〜あ。(み〜んな)元気だったか?」


 一貫校であるこの学園の生徒数は、初、中、高等部合わせて六百人程。その全生徒を纏めて収容するとなると、当然とばかりに講堂も大きくなる。

 何百人もの視線に晒されながらも普段の調子を崩さず、堂々と話しているディー。流石は学園長といったところか。

 広々とした景色を舞台袖から窺いながら、弓弦は内から聞こえる声に耳を傾けていた。


『師匠、気付いているか?』


 頭の中に、声が聞こえていた。

 唯一弓弦の下に残っている悪魔、アデウスの声だ。

 彼は悪魔でありながら、何故か弓弦のツッコミ技術に惚れ込み、彼を「師匠」と呼んで慕っていた。


「(ん…)」


 アデウスの問いに、応と答えを返す。

 この講堂の隣、体育館。その辺りから、微かに通常とは異なる魔力(マナ)を感じていた。

 それは、本当に微かなものだ。喩えるならば、閉じられた扉の隙間から淡く漏れ出している程度の。

 これは、何なのだろうか。疑問に思わせる魔力(マナ)の属性は、「空間」。アデウスが司るものと同じ属性だ。

 その性質は、自然を司る八属性とは異なるもの。自然よりももっと、根源に近い属性の一つだ。

 最大の特徴は、空間を跳躍する魔法が存在すること。近くでも遠くでも、魔法一つ使えば一瞬で移動することが出来たりする。

 遅刻しがちな生徒ならば、誰もが求めて止まない魔法だ。


『転移の出入口がある』


 『失われた属性』と呼ばれ、使い手が存在しないと呼ばれる属性であるが、弓弦はその使い手であった。

 魔法の使い手は、自らが使うものと同属性の魔力(マナ)を感じることが出来る。それだけではないのだが、弓弦が魔力(マナ)の存在に気付けた理由の一つだ。


「(随分と薄いな…。魔法の名残か?)」


『いや。…転移の魔法具だろう。確認に向かうべきか?』


「(…そうか、魔法具か)」


 『魔法具』とは、魔法が込められた道具のことだ。

 転移の魔法が込められた『魔法具』が近くにあるため、魔力(マナ)を感じるのだろう。

 講堂の隣は、体育館。

 そういえばと、体育館の裏口にある『魔法具』の話を弓弦は思い出した。


「(思い当たることがあるし、ここは人眼に触れる。今は、別に良い)」


 真実は定かでないため、一度見に行く必要があるかもしれない。

 そんなことを考えていると。


『…了解した。しかし師匠よ』


「(ん?)」


「そ〜れでは早速。短期(た〜んき)ではあるが、君達(き〜みたち)に魔法生物を教える新任(し〜んにん)教員の紹介なんだな!」


 いつの間にやら話を振られていた。


「(おっと…)」


 間が空かないように舞台袖から登壇した弓弦へと、一斉に視線が集まった。


「(何て言うか…やっぱりファンタジー世界だな…)」


 仄かに暗い講堂内であったが、生徒達の顔は見えた。

 流石はファンタジー世界の学園である。髪の色や瞳の色等、絵の具のバレットのようにバラエティーに富んだ容姿の数々が見えた。制服こそ同じだが、皆が全員個性が豊かそうだ。


「…あー。新しくこの学園に赴任した橘 弓弦だ。研修で学園を空けられる前任の代わりに、戻られるまでの間だが魔物生物学の授業を受け持つことになった…」」


 簡単に挨拶を済ませながら、生徒達の顔を見ていく。


「(お、ユリだ)」


「っ!?」


 その中で、見知った顔を見付けた。

 先程どこかへと逃げて行ったユリだ。


「(あ、何か食べた)」


 遠眼だが、自らその口に何かを放り込んだ。


「…zzZ」


 そして首をカクつかせた。


「(おい…っ!?)」


 睡眠薬を飲んで眠ったのだと気付くのに、時間は要さなかった。

 それだけではない。


──ぅ…っ。


 ある所では、女生徒が一人倒れた。


──あぁ…っ♡


 ある所では、恍惚とした視線を送る女生徒が。


──あらあら。


 ある所では、そんな彼女の首筋に手刀を落として気絶させ、音も無く連れ去る女生徒が。


──じー。


 ある所では、静かにジト眼を向けてくる女子生徒が。


──うっうっ…。立派になって…っ。


 ある所では、手拭い片手に涙ぐんでいる女生徒が。


──皆の前で挨拶とか、凄いなぁ弓弦。


 またある所では、妙に屈強な男に周りを囲まれた友人の姿を見た。


「(ちょっと探してみれば、簡単に見付かるものだなぁ……)」


 全員が全員、知り合いであった。

 そんな生徒達を順に見回し、弓弦は徐に口を開く。


「学園内で見掛けたら、橘先生か弓弦先生かで、気軽に呼んでほしい! 教師としては半人前だから、教える傍ら、色々と学ばせてくれ! …以上だ!」


 起こる拍手。

 まるで声援のような音量が、心地良い。


『師匠…!』


 大して上手いことを言った訳でもないのに、何故かアデウスが感動していた。


『是非今一度、師匠の講義を受けてみたいものだ。…そうすれば、もっと…鋭いツッコミが…!』


 何故この蟷螂かまきり悪魔がツッコミを追い求めるのか。

 かねてからの謎を思い浮かべながら、しかしそれを外には表出せずに弓弦は身を翻した。


「お〜。上手くまとめたもんなんだな」


 背後に控えた弓弦に、ディーは感心していた。

 新人教師は、どうやら生徒達に受け容れられたようである。

 顔立ちは整っているし、身体付きも良い。この調子だと、遠からず人気を博しそうだ。

 彼の存在が、この学校にどのような影響をもたらすのか。そんな未来に期待を寄せながら、ディーは式の終わりを告げた。












「お〜疲れさんなんだな」


 式典が終わり、学園内は賑わっていた。

 談笑の聞こえる空は青色。

 抜けるような青空に見下ろされ、弓弦とディーは学園の二階を歩いていた。


「いえ…。十分務まっていたでしょうか?」


「そ〜りゃも〜う、バッチリなんだな。そ〜のまま講演でもやってほしいぐらいだ」


「ははは…。遠慮しておきます」


 まずもって、何を話せば良いのか。

 話すとして、そもそも話せるのか。

 人に聞かせるような話術に疎いために、弓弦は即答していた。


「…それで、今はどこに向かっているのですか?」


 同時に疑問も口にする。

 講堂を出て二階へと上がり、奥へ奥へと進むこと数分。いつしか、学園の外れにまで場所を移していた。


「取〜り敢えず、(き〜み)が管理責任を負わないといけない場所に行こうと思っているんだな」


「管理場所、ですか」


「こ〜の扉なんだな」


 足を止めたのは、見た目からして重そうな金属の前。

 壁に埋め込められている正方形状の金属は、確かに扉のような形をしてはいる。しかし、取手がどこにもない。

 引戸でもなく、そのままではどうやっても開きそうになかった。


「…あれ、ど〜こに入れたんだったか」


「‘…銀’」


 何かを探しているのか、ディーがスーツのポケットに手を入れる。

 ゴソゴソと探り、無いと判断すると別のポケットへ。

 暫く時間が掛かりそうだ。そんなディーの様子が横眼で窺えた。

 弓弦は視線を金属に戻すと、材質を呟き眼を凝らした。

 すると瞳に魔力(マナ)が集まり、視覚情報が増えた。

 “妖精の瞳(セイクレッドロウ)”。空気中の魔力(マナ)を、全て視覚化させる妖精に許された特殊能力である。

 弓弦の視界では、複雑な紋様が金属を覆っているのがハッキリと見えた。

 文様から金属に無数の光が伸びており、それぞれが波紋のように揺らめいている。

 どうやら、紋様を挟んで内側と外側を隔絶する結界のようだ。


「(封印結界…だけだが、魔力(マナ)と親和性の高い純銀を用いることで効果を高めている…。学園の中にしては、厳重だな…)」


『師匠、「視て」も良いのか?』


 自らに備わっている力を発動させた弓弦に、アデウスが疑問を言う。

 魔法を使わないと律していたのは、先程のこと。早速、自らで決めたことを破っているように思えたのだ。


「(…。これは魔法じゃない。特技だ)」


 間違ってはいない反論に、アデウスは唸った。


「お、あった」


 ディーが目的の物を探り当てたようだ。

 恐らく、結界を解く物に違い無い。

 一体どんな物を取り出すのか。


「ほい」


 丁度掌に収まる程度のサイズ感。

 黒い小さな箱に見えるが、質量がありそうだ。


「(ん?)」


 心なしか、見覚えがある気がした。

 首を傾げる弓弦の眼の前で、扉が透けていく。

 やがて下へと続く階段が露わになった。


「じゃ〜あ、下に降りるんだな」


 ディーに続くように、弓弦も階段を降りて行く。


「それは何ですか?」


 扉の先は、螺旋階段だった。

 一階部分へと続いている階段は、日光こそ射さないが照明に照らされている。そのため仄かに明るかった。

 香りはどうだ。肌で感じる微かな風に鼻を鳴らすと、少々曇った香りがひた。


「…こ〜れか?」


 螺旋階段を降りて行く中、話題はディーが手に持つ物体に。

 道具をしまおうとしていたディーは、弓弦に手渡しした。


「……」


 閉口する弓弦。

 ディーから手渡された黒箱には、金色に輝く三葉葵紋が。


「……」


「『イン・ロウ』と言うんだな」


 どこからか、重厚な音楽が聞こえてきそうだ。


「印…籠…」


 思わず手が震えてしまう。

 何だ、この、無性に叫びたくなる感じは。

 言いたい。もの凄く言いたい。「静まれぃ」から始まる例の言葉を。

 弓弦の脳裏に、決まり文句として有名な音声が続いて聞こえてきた。


「こ〜の学園に古くから伝わる、大事な合鍵なんだな。紋様の意味は分〜からないが、と〜ても良いデザインをしている。さ〜ぞ、高名な画家が関わっているんだろう」


「…確かに」


 恐らくこの文様は、知らない方が珍しい程度には知名度がありそうである。

 しかし問題はそうではない。何故この紋様がファンタジー世界に存在しているかである。


『師匠』


 そんな弓弦の悩みを他所に、アデウスが実に素朴な疑問とばかりに口を開く。


『「イン・ロウ」と、妖精の瞳(セイクレッドロウ)には、どのような関係が』


「(いや、無いから)」


『今頭に浮かんだ「ヒカエオ・ロウ」とは妖精の瞳(セイクレッドロウ)とどのような関係がある?』


「(関係無いから)」


『では、「ゴ・ロウ・コウノ・ゴ・ゼンデアル」とは、妖精の瞳(セイクレッドロウ)と何の関係が』


「(関係無いからなっ!?) ん゛んっ! ありがとうございます、お返しします」


 思わず声に出してしまいそうになったのを堪え、何事もなかったように印籠を返却する。

 早くこの話を終えてしまいたい。

 早く一階に着かないものか。

 これ以上、アデウスの質問を許すと危険な香りがしそうだ。


「ほ〜い」


「(く…っ)」


 純粋な疑問とは、時に鋭すぎる程の切れ味を誇る。

 思わずツッコミを入れてしまいそうな切れ味に、弓弦はアデウスの成長を感じるのであった。


「(いや、感じてないから)」


 感じるので、あった。


『おお師匠、何と勿体無い感想を…』


「(感じてないっ!)」


 ディーに気付かれない程度に肩を落としながら、階段を進む。

 一階への道が、果てしなく遠いように思えた。

──チャッチャカチャ、チャッチャカチャ、チャッチャッチャッカッチャ!


「さぁ、始まりますわよ〜! ネクストミュージック、スタート!」


──教えて! それは何? 教えて! お姉さん♡ そのお悩みを解いてあげます♪


「…ポン」


──タヌキさん? 違うよ! 妖精さん? そうだよ! ユリタヌキって言うんだよ♪

 綺麗な、お姉さんと可愛い、ユリタヌキ♪ 二人が楽しく教えてくれる〜ぅ♪


「「集まれ〜! 皆〜!!」」


──皆でおいでよ〜♪ 笑おうよ〜♪


「ミュージック、ストップですわ!」


「…ポン」


「学園と言えば勉強! 勉強と言えば、解説ッ! さぁ、『なにそれ? 教えてリィルお姉さん!』の始まりですわ! ‘…ほら’」


「っ、ぱ、ぱちぱちぱちぱち〜ポン!」


「はい。三回目となりましたこのコーナー。次なるお題は…」


──ダカダカダカダカダカ…! ダン!!


「“パワードエッジ”ですわ!」


「パチパチパチ〜だポン。ねぇねぇお姉さん、“パワードエッジ”ってどんな魔法だポン?」


「“パワードエッジ”とは、火属性初級魔法に分類される魔法です。その効果は…ズバリ、得物の切れ味を上げると言うものでしてよ!」


「切れ味が上がると、どうなるポン?」


「単純な話、攻撃力が上がりますわ。例えば包丁が、触れるだけでまな板を切り裂けるようになります。火属性魔法を扱う人なら、是非とも使えるようにしておきたい魔法ですわね」


「包丁で、まな板を…凄いポン」


「切れ味の鈍ったハサミを、少しだけ良く切れるようにしたりも出来ます。ただし上げられる切れ味は、物理的なものに限定されますわ」


「物理的…何だか難しいポン」


「そう難しいことではありませんわ。要は斬撃から打撃まで、幅広い得物の攻撃力を上げることが出来るだけですから。だから、トークの切れ味とか、突っ込みの鋭さ等の向上は望めませんの」


「…それはちょっぴり…残念だポン」


「詠唱例に移りますわ。『鋭き一撃鬼神の如し』…これは弓弦君や、フィリアーナの詠唱です。フィリアーナの詠唱を、弓弦君が真似した形ですわね。もっとも彼の『吸収』と言う魔法属性の性質上、詠唱を真似した方が魔法を扱い易いでしょうけど…」


「同じ詠唱…‘そう言えばクロイツゲージが…ふふ…’あ…ポンっ?」


「…。魔法自体はとても有用なものですので、使える方には是非とも愛用してもらいたいですわ。それでは──」


「あ、次回予告だポン? それならボクが──」


「“ラジェーション”の説明に移りますわッ!」


「二段構えだポンっ!?」


「“ラジェーション”もまた、火属性初級魔法に分類される魔法です。効果は対象の内側からの加熱。温度を上昇させる魔法ですわね」


「…一回につき、一種類じゃなかったポン…?」


「誰がそんなことを決めましたの? テーマは『魔法』ですが、何も一種類だけの説明で終わるとは言っていませんが」


「ぅぅ…」


「ユリタヌキ? さっきから何やら謎の言動が続いていますが…マスコットらしくしないと…分かっていますわね?」


「その言い方こそ、完全にお姉さんらしくない発言だポン…」


「そう、えぇ良くってよ。ではあなたが最近起こしてしまったとある失敗について…」


「あ、あ〜!! 早く説明が聞きたいな〜っ、ポン!!」


「おほほ、では続きを…。内側から加熱させると言う効果のため、攻撃力と言う点では正直なところ…皆無に等しいです。そのため主な用途は、暖を取る時や、食物に内側から火を通す時に使いますわね。…勿論、非常に強力な状態で発動させれば…対象の体内水分を蒸発させると言う荒技も出来ますが、あまりオススメしませんわね」


「…じょ、蒸発……」


「蒸発が出来る程の使い手なら、大概は中〜上級の魔法を使って焼き尽くした方が良いですわ。…ミイラにもなりませんし」


「みみみみみミイラだとぉっ!? ぁぅぅ…」


「さて、ちょっとした雑学に移りますが…内包された水分に魔力(マナ)を作用させて加熱させる…。似たようなメカニズムに覚えはありませんか?」


「ぁぅぁぅ…」


「そう、この魔法の原理を真似た機械が存在します。とある世界で、『電子レンジ』とも呼ばれている機械がそうですわ。“ラジェーション”が生活の中で、どれだけ便利か…十分お分りいただけると思います。因みに、本編では無詠唱での使用が多いですわね。無詠唱か…魔法の名称を言うだけか…。この魔法は、それだけ扱い易い魔法と言うことですわ」


「…ぅ…っ」


「…予告ですわ。『弓弦だ。物事に決められた約束事が、時はあったりする。今回のもそうだ。印籠を片手に持てば、例の台詞を言いたくなるのが人間と言うヤツだ。…学園と聞いてありがちなのは、アレだ。惚れた腫れた問題で約束事中の約束事。…あぁ、青春だな──次回、伝説の樹の下で告白か。経験してみたかったな。by弓弦』」




「…。ユリタヌキ…何もミイラの想像で気絶しなくても…」

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