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俺と彼女の異世界冒険記   作者: 仲遥悠
女二人湯煙客旅編
296/411

湯煙旅にて調査の始まり

 仁がどこかに行ってしまったので、風音は一人になっていた。

 彼女は暫く、番台で待っていたのだが。


「(…戻って来ませんね)」


 暫く経っても戻って来ないので、オルレアが駆けて行った方へと向かった。

 道中小梅と擦れ違ったが、会話は無かった。会釈だけして廊下の奥へと歩いて行った。


「(…一体どうされたのでしょうか?)」


 歩みを進める傍ら、風音は擦れ違った小梅のことを考えていた。

 何やら思い詰めていた様子だった。何か悩み事があり、心配で心配で仕方が無いと。そんな表情だった。

 それ故に話し掛けることは止めた。思案の邪魔をするのが憚られたためだ。

 旅籠屋を切り盛りする立場である女将。彼女は何代目の女将だろうか。旅籠屋の趣からして五、六代目だろうか。一番若くて、だが。


「(…私は、何代目なのでしょうか)」


 小梅が何代目の女将かを考えていると、自分のことが気になった。

 母から継いだ『鹿風亭』。先代が母で、その前は誰だったのだろうか。そういえば聞いたことがない。

 老舗旅亭と呼ばれていた程なのだ。それなりに昔からあるはずなのだが、具体的にはどれぐらい前から存在するのだろう。

 母は、何代目だったのだろう。そして自分は何代目だったのだろう。何番目の女将が良いというのはなく、単純に気になったことだった。

 どうせなら、聞いておけば良かった。自分の下から居なくなってしまう前に。


「(…いけませんね)」


 考えが沈み込もうとしていた。母のことを考えるのは止めることに。

 風音は暖簾を潜って脱衣所に入る。


ーーー!!


ーーー。


 人の声が聞こえるが、脱衣所の籠のどこにも脱がれた衣類は無い。

 となると、中に居るであろう人物達の目星がついた。

 女湯の中に男が二人居る。片方は一応女だが、それがおかしくて小さく笑ってしまった。笑うのをそれまでに止めたのは、自重してのものだ。

 戸を一枚隔てた先は、所謂現場。昨日の夕方には見受けられなかった死体が、そこにはある。

 浴衣の裾を膝下まで上げ、結ぶ。

 風音が戸を開けると、硫黄の香りが鼻腔を衝いた。

 視界に湯煙が入る。

 湯に入らないよう注意しながら浴場の奥へと行くと、そこに二人は居た。


「…ん、あ、風音」


「嬢ちゃんも来たのか」


 死体を前に、二人は難しい顔をしていた。


「(この方は……)」


 遠くから見ていた際は良く見えなかったが、見覚えのある顔をしている死体だ。風音は記憶を手繰り、誰であったかを思い出そうとした。

 ーーーそうだ。確か街で見掛けた遊女だ。まさかこんな所でもう一度相見えることとなるとは。これも、何かの縁なのかーーー?


「何をされているのですか?」


「殺人事件の現場調査っす。ボク達は今、捜査をしているんすよ」


「はぁ」


 オルレアによって、ここに至るまでの出来事を話される。

 眼の前にある死体は自殺ではなく、他殺ーーーそんな啖呵を切り、小梅から現場の捜査を許可されたものの、早速捜査が行き詰っていたところだそうだ。その理由というのがーーー


「確たる根拠も無いまま、啖呵を……」


 何というか、思い切ったものである。

 いや、思い切り過ぎではないだろうか。もう少し根拠を持って切ってほしい啖呵だ。

 風音は額に手を当てた。

 頭痛がしそうだ。もしこれで自殺に過ぎないという結論に達してしまおうがものなら、赤っ恥である。

 だが何故こんなことになっているのかというと、世話焼きな「彼」の性格が災いしたのだろう。

 そう考えると、例えどんな結果になろうと協力するしかない。


「…私に、何か出来ることはありますか?」


 一人よりも二人、二人よりも三人。三人の方が、出来ることは分担出来るはずであった。


「うーん…何かあるっすかねぇ……」


「嬢ちゃんに手伝えることって言やァな…。応援ぐらいか?」


 それでは体の良い戦力外通告である。

 そんならことを言われるとは思わず、ショックを受ける。

 自分は役立たずなのか? もしかしたら、檜加工の際の仕返しだろうか。

 そうは思いたくないが、人が死んでいる事件の捜査だというのに応援しか出来ないはずがないのだ。

 出来ることは、きっとある。それが何かは分からないが。


「やっぱ気になるっすね、このチラホラとある死斑の色。普通こんな色にはならないはずっす」


 そんな風音を他所に、捜査は再開されていた。


「…死斑か。出現条件は死後二時間以上の時間経過と、特定の部位に重力が常に掛かっているってことだったなァ」


「…何すか、それ?」


 突然難しい話をされたので、少女は眉を顰める。

 風音も驚いたように仁を見た。そんな専門的なことを知っているとは思っていなかったからだ。


「そんな話を昔聞いたことがあるってだけだ。長いこと旅しているから…あん?」


 変な声と共に仁はメモを取り出した。

 パラリパラリとページを捲っていく。


「…何してるんすか?」


「ちよっとした調べ事だ。チビは気にせず無い知恵を絞っているんだな」


「なっ、チビ…っ。悪かったっすね、チビで。むむぅ…っ」


 しゃがみ込んで死体を凝視する少女。

 何故だろうか。事件解決の気配が全くしない。死体を見ているだけでは解決出来ないように思えた。

 それどころか、まさかだとは思うが、少女の姿を見ていると不安になってくることがあった。


「…ところでオルレア様。この方…見覚えがありませんか?」


「…あ! 言われてみれば!!」


 弾かれたように顔を上げるオルレア。

 やはり、気付いていなかったか。


「不思議なこともあるもんっすねぇ…」


 その一言で片付けても良いものなのか。良く分からない。

 風音の脳裏に、例の二橋雲が浮かんだが、嫌な予想を振り切る。雲の形で人の運命が表されていたとはどうしても考え難い。


「因みにオルレア様は、この方のどこを見ているのですか?」


「どこって…うーん。全体っすかね。全体的におかしな点が無いか探してるっす」


 全体的とは便利な言葉だ。

 どこも注視していないようにしか思えない。

 「弓弦」ならばそんなことをしないように思えるのだが、魔力(マナ)の流れについて語った一件以来どうやら馬鹿を振舞っているようだ。

 振舞うというのは悪意があるのではなく、所謂その姿での設定を尊重した結果なのだろう。無意識なキャラ作りという訳だ。

 いずれにせよ、その馬鹿っ振りの所為で悩まされているのだが。


「……」


 短く黙祷を済ませた風音は、オルレアに倣うようにして死体の全体を見る。

 浴槽に座るようにして死んでいるこの女性。浴槽に浮かぶことなくこの体勢を維持しているのは、浴槽内の出っ張りの中に上手く入り込んでいるからであろう。

 出っ張りの存在は確認済みだ。ここの存在を知った時に足が当たったために、事故的に確認した。

 それ故、まるで臀部からから出っ張りの中にはまり込んでしまっているのが奇妙でならない。これを誰かに押し込まれたためーーーと根拠を持って証明出来たら、一つの証拠にはなりそうだ。

 例の緑褐色の死斑は、首の辺りに生じている。死体の顔が、俯向くように下を向いているので先程の仁の説明とも一致した。浴槽内なら未だしも、浴槽より出ている首の部分ーーー重力がかかっているはずだ。


「うん? 何でこんな座り方をしてるんすかね」


 オルレア、今気付く。

 気付いたのは良いが、もう少し早く気付いてほしかった。


「…あ、この出っ張り…ふむふむ。ポケットみたいになってるっすね。でもどうしてこんな体勢に…? 犯人に押し込まれたんすかね? となると…犯人はここに座っていたこの人を押し込んで殺した?」


「(…押し込んだだけで人の命を奪えるとは思えませんが)」


 それに、抵抗するはずだ。

 抵抗すれば何らかの痕跡が残るはずーーーなのに、残っていない。

 つまりこの人物は無抵抗で殺されたことになる。

 そこで問題なのは、抵抗せずに(・ ・ ・)殺されたか、抵抗も出来ずに(・ ・ ・ ・ ・)殺されたか。このどちらかだろう。

 風音は、後者だと考えた。自殺でないとするならば、その方が自然だからだ。


「…押し込んだ…よりは、吸い込ませたが正しいだろうな」


 調べ物を終えた仁が、口を挟む。

 すぐにオルレアが変な顔をするが、仁の視線はまだメモに注がれていた。


「…何、変なことを言っているんすか」


「人の話は最後まで聞けって。これを見ろ」


 そう言うと、仁はメモの開いたページを見せてきた。

 そこには独特な形状をした図が書かれている。その奥には丸と四角の印が一つずつ記入されていた。


「…何すかこれ。変な絵っすね」


「…。嬢ちゃんはこれが何の絵か、分かるよな?」


 オルレアからの視線を受ける。

 「分かる?」と、その視線が問うてきた。

 分かる。このタイミングで見せてくる絵で、ここまで独特な形状をしているのだ。間違ってはいない自信がある。


「…浴槽の全体絵、ですね」


 メモには、真上から浴槽を俯瞰した図が書かれていた。

 お世辞にも上手いとはいえない絵だが、特徴は捉えている。


「…流石は嬢ちゃん、良く分かってるな。そう、これは浴槽の大まかな絵だ。四角が湯の注入口で、丸が排水口を示していてな。それが丁度、コイツの下って訳だ。…背中の辺りを見てみな」


「…何かチェーンみたいなものがあるっすね。あ、先っぽもあるっす」


 栓の代わりとなっているために、こんな変な座り方をしている。これで体勢については説明がついた。

 だがこれではまだ、他殺の証明にはならない。これだけでは。少女もそれが分かっているので、特に喜ばなかった。

 しかし仁は、まだ調べがついたことがあるようで別のページを見せてくる。


「でだ。この死斑の謎も解けた」


「えっ!?」


 開かれたページの隅には確かに、「緑褐色の死斑」と書かれた小見出しがあった。

 下には雑な字で説明が書いてあり、曰く「源泉地帯で時折見られる」とのことだった。


「こいつはな、硫化水素中毒で死んだ奴に特徴的な死斑だ。硫化水素…つまり、この浴場の環境が直接の死因って訳だ」


「え、じゃあこの湯気が原因…? それってボク達もヤバくないっすか!?」


「ヤバくはねぇ。そこまで濃くはないからな」


 この環境下で致死量ならば、ほぼ全ての天然温泉が危険地帯となってしまう。そんなことはない。

 キョロキョロと辺りを確認し、慌て始めたオルレアが足を滑らせないか、風音は心配だった。


「でも、実際に死んでるんすよ? それって濃いってことじゃないんすか?」


「…周りを見ろ。天然の温泉を使ってる風呂ってのは、大概換気が出来ている。濃過ぎる硫黄が人体に有害ってのは、そっちの方面の人間からしちゃ常識みたいなものだからな」


 オルレアの言葉ももっとも。仁の言葉ももっともである。

 硫黄が人体に有毒で、風呂は換気が大事。それは風呂に携わる者として常識。男のそんな何気無い言葉に、少女はグッとダメージを受けたようだ。

 視線が風音に向けられる。

 「本当っすか?」。そんな声が聞こえてきそうな視線だった。


「(…檜の浴槽も、定期的に乾燥させなければなりませんからね)」


「うぐ…」


 肯定され、オルレアは軽く涙眼になった。


「で、でもっ、こんなにお空空してるのに中毒死してるんすよ!? どうやって説明しろって言うっすか!!」


「お、お空空……」


 頭の悪い言い方だ。

 だが、ここまで開かれた環境にあるのにも拘らず、害者は硫化水素中毒死している。そこが疑問でならない。


「おいおい…そりゃ随分とアレな言い方だな。もう少しマシな言い方は無かったのか?」


「う…な、何すかっ」


「だが一理あるな。この環境下で中毒死させるのは難しい。それこそ自ら望んで硫黄を吸い込むぐらいしていないとな」


「でもそれって、自ら命を落としにいってるみたいじゃないっすか!」


「あー、ま、そうなるな。そうじゃいけないんだろうが、そうなるな」


「何なんすかぁっ、頭グルグルするっす…っ」


 例によって仁に発言を弄られ、弄ばれた少女が呻く。

 そんな二人の遣り取りを見ていると、ふとこのままで良いのかーーーそんな疑問が湧いてきた。

 埒が明かない。そんな答えがすぐに出た。

 風音は頭の中で、明らかになった情報を纏める。

 害者はこの浴場の湯気に含まれる成分によって中毒死した。

 死亡した時間は不明、容疑者は不明。害者については、会ったことのある人物としか認識していない。

 やはり、幾ら何でも、情報が足りない。

 自分はどう行動に出るべきか考えていた風音は、ようやく決心した。


「…オルレア様、私は皆様から御話を伺って参ります」


 主にオルレアが足を滑らせないか大いに不安があるが、こちらはもう二人に任せて自分は別行動を取るべきだーーーそんな思惑の下、風音は踵を返した。


「え、風音っ!? 置いて行かないでほしいっすぅっ! わっ!?」


 大きな声。


「ッ!?」


 まさか、と思い振り返ると恐れていたことが起こっていた。


「わ、わわ、わわわわっ!!」


 手をバタバタとさせ、バランスを取ろうとしているオルレアの姿がそこにはある。

 「オルレア様っ」。急いで風音が支えに戻ろうとするが、間に合いそうもない。

 スローモーションのように動く光景に、無力感を抱く風音。背後から湯に落ちようとする少女に対し、せめてもの願いを込めて手を伸ばしたが、物理的な距離がある状況で届くはずがなかった。


「あ…っ」


 駄目だ。そう思った。

 助けを求める少女の腕は、自分では掴めないのだから。

 悔しさに歯噛みする風音の視線の先で、素早く腕が伸びた。


「っ!!」


 武骨な腕が少女の華奢な腕を掴み、強く引っ張る。

 軽い少女の身体は引っ張られるがまま、湯船から離れていった。

 ぽふっ。そんな小さな音が聞こえる。


「え…?」


 オルレアは身体に当たる固い感触に眼を瞬かせる。

 硫黄の香りに混じって鼻腔に香るのは、これまでに嗅いだことのない不思議な香り。


「ったく…おいチビ、世話焼かせんな」


 ピコン。

 声に反応し、髪に隠れていた犬耳が立とうとしてーーーどうにか留まった。


「あらあら……」


 大の男の胸に、大の男(見た目も中身も一応少女)が収まっている。そんな何ともいえない光景に風音も固まる。

 どう喩えたものか、時が止まっているーーーが、正しいか。


「…?」


 ゆっくりとオルレアが仁の顔を見上げる。

 円な桃色の瞳は、キョトンとしているようだ。


「…俺の顔に何か付いてるか?」


 暫く見詰め、首を振る。

 どうやらまだ動揺しているらしい。塩らしい少女の様子に、仁は頭を掻く。


「…っ」


 ボッ。少女の顔がいきなり赤くなった。

 手首に動きが。まさか、ビンタを見舞うつもりなのか。


「~~~~っっ」


 動いたのは足の方だった。

 仁から距離を取ると、少女は自らの両頬を強く叩いた。


「お、オルレア様?」


 二回目。もう一度強く叩くと、犬耳が髪に隠れた。


「ありがとっす。助かったっす」


 素っ気無い感謝の言葉だった。

 仁は短く言葉を返す。言葉が短かかったのは、少女の一連の行動に置き去られたためだ。

 仕切り直しとばかりに一息吐くと、男は死体の側にしゃがみ込む。

 手を合わせて黙祷をしたのは、何故か。疑問に首を傾げた少女に対し、その訳を話した。


「気を付けろよ。後少し遅ければ、仏さんに倒れ込もうとしていたんだぜ? 縁起が悪い」


「あ……」


 慌てて少女も倣う。

 故意であろうとなかろうと、死者に対し礼を失したことに変わりは無い。


「(…弓弦様が、失礼を致しました)」


 風音も心の中で謝罪すると、止めていた歩みを進め始めた。

 礼を失しようとしていた様子を見て疑問が湧いた。

 その疑問とは、少々悠長に構え過ぎではないかーーーということだ。

 もうそろそろ見廻組が到着してもおかしくない時間だ。大概に本腰を入れて事件の調査をしなければ。


「(まずは…最初に死体を発見された方を探さなければなりませんね。その方を探すためには…!)」


 既に目的地は定まっている。

 歩速を速めた風音は、事件の情報の大部分を知っているであろう人物の下へ急ぐのであった。

「洗って来ました」


「そう。じゃあこれ、運んで机の真ん中に」


「はい。(…わっ、凄い鮮やかなサラダだ。ポテトが真ん中で…周りに花弁のようにレタスが盛られていて…まるで一輪の花みたいだ。…水滴が電気で光ってる!? 瑞々しくて…美味しそうっ)」


「置いた? じゃあ次、これをお願い」


「(サラダ以外も持って行って良いんだ。ボロネーゼ! …ボrrrルォネーゼだ! ミートな良い匂い! 香るチーズ! 輝くパァスタ!! 至高の逸品だ!! 四人前もある!! オープスト大佐と、副隊長と…僕の分! …と、まさか知影さんの!? …優しい。それにしてもこれを持って行けるなんて…!! 凄く畏れ多い気がするけど。オープスト大佐、洗い物をしていて手が離せないみたいだ)…はい!」


「終わったら、冷蔵庫から適当な飲み物を出して、そこにあるコップに注いで。あなたの分は一番右よ」


「はい。(今度は何してるんだろう。この香りは…スープかな。トマトスープ。美味しそうな香りがして…良い。それにしても僕のコップ何て物がある…訳ないか。来客用だよね、これ。…えっと飲み物…あ、お茶がある。これで良いかな)…お茶で良いですか?」


「何でも良いわ」


「(あ、トマトスープがいつの間にか並べられている。食器もだ! …洗い物は、終わってる。…凄い、冷蔵庫の中身を見ている間に、色々終わってるよ。)…何て言うか、ただただ凄いなぁ」


「…。聞こえているわよ」


「あっ、ごめんなさい」


「もぅ…。一番扉側の椅子に座って。そこに並べてある分があなたのよ」


「あ、ありがとうございます!! わざわざ僕のために」


「一人分作るのが増えるぐらい大して変わらないわ。…さぁ、そろそろあの子が帰って来る頃ね」


「え?」


「…ただいま」


「ふふ、お帰りなさい。手を洗ってらっしゃい。夜ご飯、出来ているわよ」


「…コク」


「(…副隊長、スキップして洗面台に向かっちゃった。何だか、歳相応に見えるなぁ。…と、そうだ。ご飯前にこれ、済ませておかないとね。『風音で御座います。オルレア様と俵山様。御二人の力になるためには、私も相応の働きをせねばなりません。多くの情報。それらを集めるためには、それらが集まっている場所に赴かねば。…旅籠屋内の情報が、最も集まる場所。クスッ、一箇所しか御座いませんね。さぁ、参ると致しましょうーーー次回、湯煙旅と二人の女将』)」


「あ。忘れていたわ」


「…?」


「セティ~! そこに隠れている知影も連れて来るのよ~!」


「(…知影さん、バレてる)」

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