湯煙旅の事前談参
アスクレピオスが面倒なので、弓弦が謝罪の言葉を発しようとしたその時、
「折れると調子に乗ってしまうわよ? こう言うのは先に、力関係を明確にさせておかないと」
翼の隅から伸ばされた手によって、眼隠しが取り除かれた。
「なっ、私はただ主に間違えを訂正してもらおうと思っただけだ!」
視界に羽以外の光景が飛び込んできた。
もがきながら抵抗するアスクレピオスを、両手で包み込むようにして捕縛した女性は反論に対して溜息を吐く。
「その忠言とやらは耳に逆らい過ぎるのよ。そもそも忠言かどうかも怪しいわ」
「何…?」
「飛べない鳥も居るのよ。空を飛ぶことよりも、大地を駆けたり海を舞ったりすることを選んだ素敵な鳥達が…。鳥を貶めているのは寧ろ、あなたのような気がするのだけど私の気の所為かしら? 神鳥さん」
「(…確かにな)」
キウイやペンギンが該当する。
鳥だからといっても、その全てが空を飛ぶとは限らない。
彼女ーーーフィーナの言っている鳥が、弓弦の知っている鳥と同じ訳ではないであろうが、飛べない鳥が存在するのは確かだ。
「…高貴なる森の妖精よ。嘘はいかんな。私は数多の異世界を旅して来たが、見たことも聞いたこともない。鳥とは空を飛ぶもの。故に空を飛んでこその鳥と私は心得ているのだ」
「駄目ね。その数多の異世界からの見聞は、全くの役立たずってことだわ。全知を気取るのは結構だけど、知ったか振りを押し付けないでほしいわね」
容赦の無い言いようだ。
フィーナが畳み掛けるように言葉を重ねていくので、
「私が…知ったか振りをしているだと?」
「(あ、ヤバい)」
アスクレピオスがネガティヴになり始めた。
自分はあれやこれやと言うが、一旦自分が言われ始めるとすぐに打たれ弱さを発揮する。途轍も無く面倒臭い。
「意見を言うのは構わないわ。勿論、持論を展開するのも。ただ相手の気持ちを考えないような、押し付けるような善意はどうかと思うわ」
「私が…要らない。私は要らない存在なのか」
「…。私がいつ、あなたが要らない存在だって言ったのかしら」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
深い溜息。
抵抗するのを止めたアスクレピオスは、息を吸っては深く吐き出すことを繰り返し始めた。
「……」
まさか、ここまで落ち込まれるとは。絶句した様子のフィーナは、視線で助けを求めようと顔を上げる。
「……っ」
だがその瞳に弓弦を映すと、上げられた顔は横に向けられた。
「…どうした? フィー」
「…別に何でもないわよ? 気にしちゃ負け、分かった?」
「…?」
心なしか頬が赤いように思える。
気にしたら負けとはどういう意味なのか。
「…フィーナ、照れてる?」
「えっ。て、照れてる訳ないわよ?」
どうやら照れてるらしい。
セティ相手にタジタジになっている姿とは珍しいものだ。
「ははっ、可愛いな」
フィーナの頭を撫で、弓弦は笑う。
手櫛で髪を梳いてから、その手は犬耳へ。
「…イヅナが見てるし昼間よ。自粛して」
伸びようとしていたのだが、途中で中断させられた。
「(昼間じゃなければ見られていても良いのか)」
眼線を合わせないまま冷めた声音で呟くフィーナの犬耳は、力無く垂れている。
犬耳は触ってほしそうな、甘えているような素振りを見せているので、恥ずかしがっているようだ。
「はいはい」
「もう…っ」
彼女の頭から離れた弓弦の左手で光る指輪が、陽の光を反射してキラリと光る。
「…仲良い」
セティは指輪を眩しそうに見詰め、頬を緩ませるのだった。
* * *
もう…っ。どうしてこの人はこう…ほんの暫く見ない間に顔付き変わってるのよ。
「…ん?」
それに、一段と強くなったみたい。…魔力も大きくなって…とても眩しい。
ふふ…眩しいわ。とてもとても…眩しくて、素敵。
「何だ、フィー。落ち着きが無いが」
あ、あら。私、落ち着きが無かったかしら…?
「そんなことないわよ」
ベランダから部屋に戻ると、ユヅルは部屋の半分に結界を張った。
丁度ベッドルームに物音が聞こえないように張られた“シャルフェアタイディゲン”…防音の結界は、きっと知影対策ね。
…。布団の中でモゾモゾと…。気にしない方がきっと、良いはず。お盛んで羨ましいわ。
「…あのな。チラチラと見られるぐらいなら普通に見てもらいたいんだが」
「…え。そうね」
いけない。この人の言葉通り、これじゃ挙動不審じゃない。
駄目よ私。しっかりしなさい。そうよ…少しばかり、男前になっただけよ。そう、少しばかり。
大体、『契り』を結んだ相手の顔もまともに見れなくなるなんて、少女趣味にも程があるもの。…一体私、どうしちゃったのかしら。
「……」
「…見詰められるのも見詰められるので、照れるな。はは、困ったもんだ」
私達は椅子に座った。私の隣にイヅナ、正面にユヅル、その隣に…バアゼルが見える。
…隣でも良かったのだけど、どうして私の正面に座ったのよ。…顔見ないと…いけないわ。
「……」
神鳥さんの息が手に当たる。
この神鳥さん、新しくユヅルの中に宿った悪魔…と言うべきなのかは微妙なところだけど。性格は悪魔みたいに面倒だわ。
「癒しの神鳥」の名は書物で読んだことがあるけど…まさかこんな存在だったとはね。ちょっと…期待外れ…と言うか、夢破れたと言うか。「神鳥と呼ばれる存在なのだから、きっと厳格な存在なのだろう」って私が、勝手なステレオタイプに当てはめていただけと言うお話になるのだけど。
本当の「アスクレピオス」は今、遠い眼をしながら時折深い溜息を吐くような、そんな存在みたい。
凄い卑屈な神鳥さん。…まさかさっきの遣り取りでここまで打ち拉がれてしまうなんて。私が少し言い過ぎたのはあるかもしれないわ。でも…それにしても大変な性格をしているみたい。
「…おーい」
…ねぇあなた、大丈夫? 疲れたりしていない? さっき凄い困ったような顔してた。これからも自分の中でこんな卑屈な態度を取られ続けていたら、相当に気を使うんじゃないかしら。
…いけない、何だか凄く心配になってきた。
「おーい」
風の悪魔としてこの人の中に住まうことになった、新しい存在。神鳥さんのお蔭で、ユヅルは強くなった。風属性魔法の適性が高まったことで、魔法の効果が向上した。…いいえ、それだけじゃないみたい。
「聞いてるのかー」
…属性の垣根を超えた、何か。そう…この人の中に強く宿った…光がある。その光は優しくて…温かくて…誰かを癒してくれる光。
神鳥さんを迎えて風の力が増したのなら、その光を迎えて増した力は…癒しの力。
多分この人が用いる回復魔法の効果も向上している。属性の理は違っても及ぼす事象の理は似ているのだから…? あら、ユヅルの手がいつの間にか、
「…そらっ」
いつの間にか私の方…にっ。
「きゃうんっ!?」
耳を掴まれた瞬間、身体の中を魔力が一度に駆け巡った。痺れるような、甘い感覚に身体をビクつかせてしまう自分が恥ずかしい。
「もうっ、どうして急に耳触るのよっ」
犬耳が弱点だなんて、我ながら難儀な身体ってつくづく思う。…変な声が出ちゃったじゃない。
「いや、幾ら呼び掛けても上の空だったからな。つい」
…気が付かなかったわ。
「そ。なら、許してあげるわ」
考え込む私も悪いけど。一番悪いのは、あなた。素敵過ぎるあなたが悪いの。…ふふ、とんだ暴論ね。
そんな暴論は一旦忘れて、お互いの魔力を混ぜたい…けれど、今回は必要無さそう。
この人の中に宿っている多くの魔力は、悪魔を宿す度に荒れ狂っていた時と違い、まるで何かに包み込まれているかのように落ち着いているのだから。
「ふふ」
今回の外出…色々と良い形で実になったみたい。荒ぶる魔力を鎮められないのは…寂しいけど。
「何だよ、突然笑い出したりして…」
「別に何でもないわよ」
だって、あんなことよ。私と、この人の共同作業。…出来ないなんてやっぱり、寂しいじゃない。
「…なら良いんだが」
…でも、あなたの健康が一番よ、ユヅル。私…そこまで自分勝手にはなれないもの…。
「それはそれとしてだ。訊いてほしい話がある」
ユヅルの眼に私が映っている。
…綺麗な瞳…と、いけないいけない。
「あら、何かしら」
お風呂を作るために外出する。確か風音がそんなニュアンスのことを言っていたわね。
帰って来て早々外出させるなんて私としては賛成し難いところだけど、この考え無しご主人様…風音を散々焚き付けて外出しているものだから。困ったものよね。頼み事のお礼だったら私からあれこれ言う訳にもいかないし。…自業自得ね、もぅ。
「風音と一緒に外出することになった」
「そう。それは良かったわね」
既知の情報に、あまり驚きの気持ちは生じなかった。
「災難だったわね」と言っても良かったのだけど、それは風音に悪いものね。皮肉が入っていないと言えば嘘になってしまうのが複雑だわ。
「いや、これがな。複雑なんだ」
あら、意外。この人のことだから、「それなりに楽しんでくるさ」って言うとばかり思っていたのに。
「…どうして?」
ユヅルは頬を掻いている。
…照れてる証だわ。一体、何を照れているのかしら。
「…はは、まぁ複雑なんだ」
「だからどうして?」
その理由を訊いているのよ? 誤魔化さないでそのまま言いなさい。
「後で話す。取り敢えず、何も言わずに付いて来てくれないか?」
イヅナを一瞥してからの発言。
「…?」
この子の前では言えないような話…と言うことね。
…。何となく、察しが付いてきたわ。
「…じゃあ場所を移そうかしら。イヅナ、お留守番お願いね」
私は神鳥さんを机に乗せてから立ち上がった。
神鳥さん…さっきからずっと溜息を吐いてばかり。溜息を吐きたいのは、あなたの溜息を延々と聞かされている私の方よ。もぅ。
「…コク」
「ありがとな」
ユヅルも立ち上がった。
私の予想が間違っていなければ、向かう先はきっと、「あそこ」ね。
「はぁ……」
「溜息吐かないの」…とは、言えないわね。
「…良いじゃない。これも…経験よ♪」
ユヅルが私を連れて行ったのは、掛軸に畳と卓袱台がわびさびを感じさせる戦艦『アークドラグノフ』居住区、502号室。
実行部隊副隊長であるイヅナの部屋であると同時に、風音の部屋でもあるこの部屋の中に置いてあったのは、やっぱり私の中で予想出来ていたものだった。
「経験済みだっ。経験済みだからもう十分だっ」
マスターキーを用いて入室した私達の視界の中で、ひっそりとした存在感を放っていたものがあった。
存在感を放っていたもの、それは部屋の卓袱台の上にあった風呂敷。少し時代を感じさせるようなデザインの中に、美しさ…雅やかって言うのかしら。気品のある意匠性を感じるわね。
「良いじゃない♪ これを着用したあなた…きっと素敵だと思うわ♪」
それは中身にも共通して言えるもの。
丁寧に和式畳みされていた中身を広げた結果、ユヅルは溜息を吐いた。
憂鬱そうな溜息…。気が進まないことが伝わってくるわ。…喜んで着用しようとしたのなら、それはそれで困るのだけど。
「…そりゃどーも」
ユヅルの眼が据わった。
覚悟が決まったのね。虚ろな瞳には、見ていると吸い込まれてしまいそうな魅力がある。
…虚ろな瞳に魅力を感じるなんて、私…まださっきまでの動揺が冷めてないのかしら。はぁ…困ったものね。
…私も溜息吐いてしまったわ。駄目ね、幸せ逃げちゃうじゃない。
「…ここに連れて来た理由、言わなくても良いよな?」
…ここは、逃げる前に眼の前の幸せを掴まないといけないわ。
「えぇ勿論。あなたの恥じらう姿を存分に瞼に焼き付ければ良いのよね?」
イヅナからカメラを借りてこれば良かった。
そうね…ひたすらシャッターを切り続けなければいけないから、指が疲れちゃうかも。でもそれが良いのよね…ふふ。
今更取りに行くことは出来ないわよね…。その隙にユヅルに着替えられてしまうもの。ここは自分の眼で、よね♪
「なっ!? いやそう言う訳じゃなくてだなっ。お前には着替えた後の服を持って帰ってもらいたいと思って…っ」
この用意された着物を着る姿もきっと悪くないとは思うの。だけど、着替えている最中を見る方が特別感があるはず。
さぁ、バッチリ記憶しないといけないわ♪
「服は勿論持って行くわよ。でも着替える姿を見たいの、良いわよね? 着付けの確認もするからあなたにとって、悪い話じゃないはずよ」
「何で損得の話になるんだ。俺はただ、まじまじと見られるのが恥ずかしいであってだな。…別に見られるのが嫌な…って違うっ!!」
ふふ、今日の突っ込みもキレがあるわね。素敵よ、あなた。
「…見たければ勝手にしてくれ。俺はもう知らないから」
別に見られるのが嫌じゃない…か。そうね、私もそれには同意しないといけない。…ユヅルに見られるのはもう慣れているもの。今更嫌な感情なんて起きるはずもないわ。…夫婦…だものね。ふふ…頬が緩むわ。
「なら勝手にさせてもらうわね、ご主人様兼あなた♪」
「混ざったな。…楽しそうで何よりだ」
素早い突っ込みを入れながらも、ユヅルは慣れた手付きで畳まれた衣類を広げる。
「さて…じゃあさっさと着替えて行くとするか」
「えぇ、そうね。さっさと着替えて」
『在らざる霧よ、我が身を包みて不可視とせん』
あ、ズルいわね。“イリュージョン”で私の視界から隠れるなんて。
姿も見えない、音も聞こえない。魔力が視えない訳ではないけど、とても勿体無い気分だわ。
せめて衣擦れの音ぐらい立てても良いじゃない。こうも無音だと本当に着替えているのかさえ不安になってくるわ。…視えてはいるのに。
「‘…良し、覚悟を決めろ…!’」
ユヅルのそんな声が聞こえた。
えぇ、そう。覚悟を決めなさい。覚悟を決め…?
『真なる幻、其は理を捻じ曲げ我が身を化せん』
…あら?
「…ふぅ」
ユヅルは別の覚悟を決めていたみたい。
「…とんだ無茶振り…っす」
“エヒトハルツィナツィオン”の発動と共に“イリュージョン”が解除された。
私の前に姿を現したユヅルの姿が、声が、変わっている。
帯がスルリと落ちてはだけた正面に見えるのは、下着を押し上げるようにして膨らんだ二つの丘。
…ブラは着用しているのにどうして襦袢を着用していないのかしら。
「ん…ちょっと緩く締め過ぎちゃったっすね」
オルレア・ダルク…か。アンナ直属の部下って言う設定で、ユヅルが変身した姿。…身体は歴とした女の子になれるのだから、魔法って不思議よね。
あられもない姿を見られるなんて、これはこれで眼福だけど、もう少し恥じらいがほしいわ。
「もぅ…締め直してあげるからそのまま立ってて」
「…えっ、別に良いっすよ! そんな、フィーの手を煩わせる訳にはいかないっす!!」
「黙って締め直されなさい。ほら、まず、それ脱いで」
「えっ、どうして脱がないといけない
っすかぁ!?」
「襦袢を着忘れているからよ」
「あ」
着物の着方、知っているはずなのに。襦袢を着ない? 初歩的なミス過ぎるわ。
…私との遣り取りで動揺していたの? あなた。だとしたら…ふふ、恥じらいあったわね。
その恥じらいはユヅルとしての恥じらい? それとも、オルレアとしての恥じらい? …どちらにしても、可愛いわ♪
「はい、おしまい」
オルレアは両手を広げて自分の姿を確認している。
薄く水色掛かった白を基調とした着物が、とても良く似合ってる。所々に描かれ、強調されている紫陽花の紫が、見ていて飽きさせない。
風音、良い着物を選んだわね。仕立ても良いし…中々の着物だもの。
「ぅぅ……」
オルレアの顔が真っ赤になってる。可愛いわ…♪
「…ありがとっす。じゃあそろそろ行って来るっす」
「えぇ」
私としては満足出来たわね。着替えさせられてなおかつ、恥じらう姿を見れて。
後は、この人を見送らないといけない。…今度は一日だけだけど、寂しいことには変わりない。…温もりが恋しくなってきた…。
「待って」
「何すか? んっ」
だから口付けぐらい、許して…ね。
「「……」」
柔らかい…この感触が本当に堪らない。一度すると、二度三度としたくなってくるから酷い唇。犯罪よ。
「行ってらっしゃい」
「ぅぅ…行って来るっす」
名残惜しいけど、一度で我慢しておかないと止められなくなるから、我慢よ…っ。
ユヅルの姿が、魔法陣の中に消えた。
あまり艦の人に見られたくないから、直接転移した…と、言ったところかしら。
「…ふぅ」
…さ、私も部屋に帰らないと。朝一番で知影が洗濯をしてしまったから、今日は部屋の掃除をしなきゃ。
…少し外で涼んで来ようかしら。
こんな顔…知影やイヅナに見せられたものじゃないわ。
…本当に…あの人は罪な人なんだから。
「一人称かぁ。そう言えば、弓弦以外で一番最初に一人称視点があったのって僕なんだよね、僕」
「そうなんだよねぇ。私を差し置いて」
「…知影さん、本編に出なくて良かったのかい?」
「んん…。寝ちゃったから」
「…そうなんだ」
「ふふふ、どうしたの? そんな探り探り話しちゃって」
「…緊張してるんだよ。暫く知影さんと話す機会が無かったから」
「緊張? そんなのしなくて良いのに。もっと気さくに話し掛けてよ」
「…が、頑張るよ」
「いつ頑張るの?」
「…つ、次にここで話す時かな」
「今でしょっ、今頑張ろうよ…っ言っても難しい?」
「…心の準備が必要です」
「難しいかぁ。残念」
「あはは」
「女の子と話すのが苦手?」
「え」
「じー……」
「…な、なに?」
「女の子耐性、無しと」
「へ」
「顔、赤くなってるよ。照れてるのが丸分かり…初だね♪」
「良いなぁ、初々しくて。…じー」
「う」
「決めた」
「…?」
「ディオ君から初々しさを学ばせてもらいおうと思います」
「へぇ?!」
「ふふふー。次回をお楽しみに、だね! さてさて! 『我こそは希望の運び手が一人にして癒しの神が遣い、アスクレピオスだ。大変だ。主が何故か暴走を始めてしまった。主に同行する想われ人の一人が何やら吹き込んだようだが…くっ、主よ止まってくれ! 止まらないのならば、このアスクレピオス、一肌脱ぐしかない! 全霊の力で止めてみせよう! ーーー次回、湯煙旅の始まりは森の中』…次回をお楽しみに♪」
「…弓弦…助けて……っ」