意志を継いだオイ
翌日、レガーデス・ヴァルクロベルセの戴冠式は、盛大に行われた。
人々は新たな王を祝福し、街は歓喜に包まれた。
「ーーーその空を見てほしい! 快晴の天には我が父ゲオルグと我が母ミレーヌを始めとした歴代の国主が、祝言と共に見守っているだろう!」
即位演説を行うレガーデスの傍らには、センデルケンとアリオールの姿がある。
「私は誇りに思う! 天よりの祝福があることを! 私は誇りに思う! 我が敬愛する国民に祝福されていることを! そして私は誓おう! この国に繁栄をもたらすことを!!」
ーーーベルクノースに栄光あれ!!
ーーーレガーデス陛下、万歳!!
堂々としたレガーデスの演説に歓声が起こるが、どこか言わされている感が否めないのは所謂決まり文句でも言わされているのだろうか。
良く良く見ると眼が充血していることから、みっちり両隣の人物に一夜漬けを強いられたのだろう。即位の演説ともなるとセンデルケンも厳しくならざるを得なかったーーーといったところか。
アリオールは手に誰かの剣を持っていた。「アノン」と柄に彫られているのが見えるが、剣の本来の持ち主だろうか。
そんな王城前広場の様子を少女は眺めていた。
彼女の親は現在遥か東の大陸の故郷に居り、少女ーーーイヅナは今一人だ。
本当は彼女も付いて行く予定だったのだが、「戴冠式を見たい…駄目?」と彼女が訊いたために弓弦もフィーナも折れたのだった。
「…さて、皆も良く知ることではあるが、つい先日までこの国では内乱騒ぎがあった」
広場が静まる。
アリオールがセンデルケンに押さえられているところを見るに、レガーデスのアドリブか。
「兵の声、戦の音に怯えた者も居るだろう。だが内乱は終わった! 主謀者ウェンドロ・ヴァンベルはこの手で討ち取った故にーーー」
噛まないように、自分の本心をしっかり届けるようレガーデスは続ける。
「ーーーだが世が…いや、私が王位に就けたのはウェンドロを討ち取ったから…だけではない! 内乱を起こし、私に反意を抱いていた者達が口を揃えて私の即位を祝福してくれているのは、他ならぬウェンドロ‘おじ’…ウェンドロが居たからこそなのだ!」
民の間でどよめきが起こり、広がる。
何を言っているのか。何が言いたいのか、今日よりこの国を治める者の真意が分からないのだ。
レガーデスは自分の中で言葉を必死に探し、必死にその訳を説明した。
曰く、自分の臆病さが原因で兵の一部が不信を抱いていたこと。
曰く、その兵達は逃げることばかりで自主性に欠け、次の王としての資質にも欠けていたレガーデスの代わりにウェンドロを推していたことを。
内乱は、遅かれ早かれ確実に起きていた。それを見越したウェンドロは、自身が率先して兵達を纏めることで内乱の時期を調整した。
調整した理由は、二百年前の『レザント・ヴァルクロベルセ』の物語に準じさせるため。王の資格に欠け、悪魔に操られてしまい災禍を引き起こしたことを、先の魔物襲来と重ねて話した。
そして他者の力を借りて悪魔の支配を打ち破ったこと、その後世界を闇に包もうとしていた悪魔を討伐したことを、ウェンドロに国政を取って代わられていたことと、ウェンドロを倒したことを重ねた。
レガーデスは必死だった。
ここまで話しての説明不足は、自身への不信に繋がる。非常にリスキーな話題だが、彼は口を閉ざさない。
「かつてレザントは、悪魔討伐の前に自身が行うつもりであった政治を一枚の紙に認めた。その政治を代々行った結果は、正に聖賢が行う政治だったと伝えられている! もし私がかの王に瓜二つで、起こってしまった出来事もまた瓜二つとするのならば! 私がこれから行う政治もきっとそれを裏付ける政治であるだろう! 歴史こそが証明だ! 亡きウェンドロは歴史の再来を図ったのだ!」
ウェンドロの擁護ともとれる発言。
点火され、走る火花が向かう先にあるのを決めるのは、レガーデス。
「故にウェンドロにもかつての悪魔のように野望があった! 私に勝ち、王の座に就いた暁には世界を統一すると言うの思想の下、他国への侵略を詠ったのだ!」
そう、ウェンドロの目的は世界統一国家の樹立だった。
他国を従わせるために武力を用いる。そのためにレガーデスを排して玉座に座る必要があった。
「…しかし、ここで何故だか考えてほしい。何故、世界を統一しなければならなかったのか、と。それも力に頼ってまで」
声音を落ち着かせたレガーデスは俯かせた顔を上げ、先を続ける。
「これは私の憶測かもしれない。しかし、ウェンドロと言う人物を知る者からすれば、至って当然の予測だ。あの人は優しい人だった。…きっとウェンドロは国を、民を統一することで国家間の頑強な協力体制を築こうとしていたのだろう。そうすれば、いかなる敵が、かの二百五年前の悪魔のような存在が再来しようと、人の力で打ち破ることが出来ると、きっと信じていた」
少女は小さく頷いていた。
そう。ウェンドロの目的は正にそれであった。
北大陸と東大陸の国境付近で魔物の襲撃を受けた際、援軍を要請しに東大陸の王都に赴いたのに、門前払いされ、結果姉を始め多くの兵を死なせてしまった。そんな経験から二度と悲劇を起こさせまいと、武力で他国を従える。
言葉をもってして通じなかったのだから、頼みを願う機会すら与えられなかったのだから、己が身で機会を作り出してみせようと、その結果の世界統一への野望だった。
「…? …東大陸の王…?」
ところで、東大陸の王都である『ジャポン』では、一年程前まである存在が王位に就いていた。
街を訪れていた弓弦達によって退けられたその存在こそが、今彼女の肩に停まっている蝙蝠だ。
つまりウェンドロの要請に耳すら傾けなかったのはーーー?
「我ではない。恐らく我の前に、鎖国政策とやらを胸三寸でどうにでもなるとばかりに推し進めていた人間だ」
「…その人は?」
「我の障害となった故に隠れさせた、其れだけのこと」
この悪魔、優しい言い方になっているのはイヅナに配慮でもしたのであろうか。
「優しいな。『支配の王者』……」
イヅナを挟んで反対側に座る狼に当然突っ込まれた。
蝙蝠と狼が揃って沈黙したが、レガーデスの演説は続いていた。
「だがここでもう一つ考えてほしい。どんなに理想が高くても、徳の高い人間であったとしても。力に頼り、己の正義と言う言い訳を理由にして、罪の無い他者を殺めることは本当に良いことなのか。己の正義を貫くための最後の手段を力とすれば、どうして最後の手段を用いようとするのか」
「…ほぅ」
感心したように蝙蝠悪魔ーーーバアゼルが喉を鳴らした。
かつて似たような言葉を言った男は、「理由が何であれ人殺しは罪」とした。
無論その姿が重なった訳ではないが、自分の行為を正当化しない考え方は、バアゼルからしてみれば非常に興味深い考え方なのである。
「『ベルクノース』騎士団の存在理由は、力を用いること。つまり剣を振ることで魔物を倒し、祖国を守ることにある。しかし人との戦に剣を振るう者は、その剣で他者を殺し、祖国を守ることにある。…こうしては魔物も他者も同じかもしれない。だが、他者と言うことはつまり、敵は同じ、人。祖国のために、または己のために力を振るうのは同じ人である以上変わらない。単に国家と言う思想の違いの下、力を振るわねばならない状況に置かれてしまったのだから。…そう、思想が違うだけでやはり、何も変わらないのだ。愛する者を守りたいと言う気持ちも、悲しむ誰かが居る立場も。何も変わらない」
国民よ、その振るう力で何を守る。
その剣で何を切り拓く。
平和を求めるのならば、平和を壊す方法を用いるべきではない。
力を振るう前に、道を模索せよ。
最終手段は、使わないために存在するのだから。
しかし、意味無く逃げることなかれ。
意味無く逃げることは、問題を先延ばしにして災禍を引き寄せるだけだ。
「国の安寧は、道の模索の後に約束される。だから、逃げることなく立ち向かうことが重要なんだ」と、レガーデスは思い至ったばかりの持論を展開する。
「振るった剣は、確かに眼の前の敵を倒すことが出来る。だが剣を振るって得た平和は、剣を振るわれることによって破られる。何故か? 至って簡単な話だ。力に虐げられ、復讐を誓った者が頼るのもまた力。結局はその繰り返しだ。得ては失い、失っては得るの……だから!」
声高らかに、かつて臆病者と蔑まれた王子は今、後の世に賢王として名を馳せることになる最初の目標を叫んだ。
「だから私は! 東、西、南の王国との協力体制を再び築きたい! 国主同士が国家間の垣根を越えて、一友人として接することが出来るような、人同士の争いを過去のものと出来るような、そんな友好関係を、強き絆、信頼の下に築き上げる! 他国が困ったら我が国が率先して助け、我が国が困れば、助けの手を伸ばしてもらう! 力による命令ではない! 友としての頼みだ! 友が、仲間が手を取り合い脅威に立ち向かえば、あらゆる闇を打ち倒すことが出来る! 故に国民よ! 私の愛する国民よ! 友を見捨てるな! 助けを求める友の手を取り、共に往け!」
『見ろ。必死な顔が似ているだろう? …俺にあの顔を見られる機会を与えてくれて、ありがとうーーー』
イヅナの脳裏に、昨晩息を引き取った男の最期の言が響いた。
あの男の志を継いだのだろうか。それとも、似た者同士だったのか。
力に頼るか頼らないかの一部分を除けば、叔父と甥の思想は一致していた。
「道を拓こう! 続くか、新たな道を開拓するかは皆次第! だが繰り返し言う! 考えることを止めるな、逃げることを無意味に終わらせるな! 無意味に逃げれば、考えを止めれば、全てが無駄に終わる! 行いはどのような形であれ完遂させることに意味があるのだ!! そうだ! 私は成してみせよう! 今ここに約束しよう! 人と人とが手を取り合う恒久的平和の実現を!!」
再び歓声が上がる。
応援する声が、祝福の声が、賢王の御代の到来を喜ぶ声がレガーデスに向けられ、広場は拍手に包まれた。
「…戻るのか?」
「…コク。…きっともう…大丈夫」
ヴェアルの言葉に頷き、イヅナは足先を北西に向ける。
その方向には、昨晩密かに埋葬された男の墓が立てられている。
他の王族と同じようにその地で眠る男に向けて少女は言葉を伝えた。
「…!」
するとその方向から魔力の光が天に昇り、消えた。
逃げ延び隠れていたと思ったら、そこに居たのか。
イヅナは手を握り締めていた。
あの男の動きを把握せずして、どうしてウェンドロから眼を離してしまったのか。それだけが悔やまれた。
もしあの時眼を離していなければ。ウェンドロの身体が一刻を争う事態になるようなことにはならなかっただろう。
『かくれんぼはな、隠れた後に見付けられなくても、隠れ続けていても意味は無い。「そこに隠れていたのか」…と、相手を驚かせることで初めて意味を持つんだ』
男はそう語った。
そしてその言葉はそのまま、皮肉となったのだ。
「…ローランド・ヌーフィ…!!」
思い出したくもない。油断が許してしまった失態。
とんだ勝手を許してしまったと、終わってしまってから何度も悔やんだ。
『もう良い。例え伝説の魔法であっても癒せないものもある』
いや、そんなことはない。
『…それは一般的な認識。…身体からあらゆる毒素を取り除く魔法は存在しているはず…!!』
否定したかった。
少女は、否定するに値する材料が存在することを知っていたのだから。
だが。
『…どの道俺は長くなかった。…これはきっと天命だ。甥と決着を着けよ…とな』
そんなはずはない。
今しがた他の世界に帰って行った者が男に猛毒が塗られた短刀を突き立てなければ、男は今も生きていたはずだ。
『…頼む。そこの紙と筆を渡してくれ』
闇に紛れるようにして襲撃し、闇に消えるようにして逃げて行った男を追わせることなく、男は少女に紙と筆を持って来させた。
『甥をここに連れて来てくれ。決着を着けたいんだ』
そして少女に頼み事をした。
文字が震えないよう「必死」に命令書を認めながら。
本当は兵士に連れて来させ、決着を着けたかったはずだ。少女に頼んだのは、他に手が無かったから。
結果として、争いは綺麗に落ち着いた。毒に倒れなければ、このような結果にはならなかったのかもしれない。
許せなかったのは、水を差したことだ。
ローランドが行ったことは、この国に混乱を呼ぶこと以外の何物でもない。
どうして、『崩壊率』を上げることをしたかったのか。そして、何故この国を訪れたのか。
ーーー答えは少女には、分からなかった。
「…娘、解せぬ事象に時を費やすな。大概に此処を発つべきだ」
「…コク」
「感傷に浸るには早い。答えは自ずと明らかになるはずだからな……」
「コク」
少女が地を蹴ると、冷たい風が肌に触れてくる。
小さくくしゃみをした。季節外れの雪の残り香だ。
東大陸は今『花盛』の季節ーーーそう、所謂四月だ。
始まりの季節であり、終わりの季節でもある。
レガーデスの王子としての物語は終わりを迎え、王としての物語が始まる。
それは同時に、旅行の終わりも意味していた。始まるのは、いつもの日常。
「ふぅ…緊張したな」
「見事でした、陛下」
「…大分勝手をしてしまったが…アリオールは怒らなかっただろうか」
「最初こそは、です。アイツも後半は納得したように頷いていました」
「そして、それはあの少女も」と、背後を見るよう促されたレガーデスの視界に、空を駆ける少女の姿が映る。
「賢人…か。あの少女が、あの男が居なければ、この国はまだ混乱のただ中にあったのだろうな。…私も、未だ変われぬままで居ただろう」
逃げていただろうか。
いや、逃げる前に『古の氷魔獣』に殺されていただろう。そんな確信があった。
だがこれからは変わってみせる。
『二人の賢人』のような救世主に頼らずとも、この国に住まう人々の力で乗り越えてみせよう。
きっとそれが、国を救われたことに対する恩返しになるのだから。
「今の陛下ならば大丈夫です。間違い無く歴史に名を残す賢王となるでしょう」
「過剰な期待はよしてくれ。まだ私は、何もしていない。全てはこれから次第だ」
「えぇ、無論これからでしょう。ですが私は信じています。ゲオルグ様、ミレーヌ様…ウェンドロ様の意志を全て継がれた陛下ならば…きっと」
少女の姿はすぐに東の空に消えてしまうが、その後も二人は暫く陽が過ぎた後の青空を眺めていた。
「…おぉ、ヘタレ陛下が……立派になられている」
「…あぁ」
「なっ!? あ、アンタ……っ!!」
「…抜く物も無いだろう。この場では」
「い、いやだが…って、ここは……?」
「ここは生も死も超越した何かの空間だぜ」
「「っ」」
「…ったく、二度目のお呼びって…俺ァどんな待遇を受けてるんだ? どこかの誰かさんよ。…大体序盤で殺しておいて、こんなことさせるぐらいなら生かしておけよっ。…『闇堕ち』した俺の方が悪いってのは分かるけどなぁ…」
「…ハイ…エルフ……」
「死人か」
「あぁそうだよ…? あっ、んの男!」
「…あ」
「てめっ、オープストは幸せにしてるんだろうな! 同胞!」
「…幸せだと思うが…と言うか、この三人の組み合わせは一体どんな意味が……」
「あァ? どう考えても死人の集まりだろうが。この俺はあのチビッ子ハイエルフに、そこの柄悪そうな男は貰い手無しのクンティオに、もう一人の男は自分の甥に殺されてんだからな」
「…。は? じゃあ俺はどうしてこんな所に」
「生死の境を徘徊してるんじゃねぇのか? 前々々回のここでお前、殺され掛けただろうが」
「…すまん、記憶が曖昧なんだ」
「はァ? …てめぇの記憶なんざどうでも良いがよ。それ以上こっちに来るんじゃねぇよ。…本当に帰れなくなるぞ? 還れはするだろけどな?」
「…っ!? おい、こっちからは通れないのか? …どっちかって言うとやり残したことがあるんだが」
「アノン。無駄だろう」
「お前の指図なんか誰が受けるか、ウェンドロ。そもそもお前が反乱なんか起こさなければ今頃俺だってあの場に居たんだぞ!」
「だが俺の反乱無くしてこの結果にはならなかっただろう。そもそもだ、俺が反乱を起こさなければ、お前は一般兵Aとして名前すら考えられずに生涯を終えていたんだ。こうして『動乱の北王国編』の話を作らせた俺に感謝の一つでも無いのか」
「ふざけんなっ! 何メタい…じゃねぇ、正当化してるんだ! 終わり良ければ全部チャラなんてこっちは思ってねぇんだ!」
「…あの少女の父親か?」
「おいこらウェンドロ! 無視するな!」
「…チッ、デジャブがしやがる。…おい人間、少し黙れ」
「なんで俺が静かにしないといけないんだよ!」
「てめぇがうるせぇからだ!」
「ヤル気か!!」
「良いぜェどんな風に切り刻まれたい!!」
「あぁ…父親だ」
「…感謝する。お蔭で全てが丸く収まった」
「俺は降り掛かる火の粉を払っただけだからな。別に良いさ」
「…賢人は流石、殊勝だな」
「殊勝と言うか、本当のことだからな」
「一国の動乱を火の粉としている辺り…か。旅行の邪魔になったみたいだな。すまないことをした」
「…謝られると対応に困るんだ。止めてくれ」
「分かった」
「だがな…まぁ、きっと会えなかったであろう人達に会えたから、その点は感謝している」
「そうか。そう言ってもらえるとありがたい」
「…勝てると思ってるのか? 人間の身じゃあ手加減無しの魔法には勝てねぇが?」
「死ぬ前に渡り合ったからな。勝てねぇと言う言葉を撤回した方が、後で負け惜しみの手間が省けるんじゃないのかよ」
「…チンピラだな。…で、今回で一つの章が終わると訊いた。後は現在の章を前後編で二分割するとも」
「うーん、五十話はあるからな。分けないとバランスが悪くなる…そうだ」
「ふむ…次章が気になる。予告はあるか」
「読むか?」
「死人猛々しくにはなりたくなくてな。主人公とやらの役目だろう」
「よし…『旅行から帰艦して、休む間も無く弓弦が赴いたのは、界座標【04771】の世界。見渡す限りの海原にそびえる巨大な崖。そこより重力に従い流れる滝の美しさに見惚れつつも、一発の銀の銃弾を握り締めて彼は滝口を目指す。
絶海の孤島にあるモノとは、そして銃弾の持ち主の真意とはーーーッ!?!?
「きゃっほ~♪ やっぱりユールに乗られるの気持ち良いの♡」
「ふむ…虹か。今となっては、斯様に生命の営みに意識を向けるもまた、興が乗るものだ」
「キシャンシャキシャンシャキシャシャ」
「扉一つ隔てただけで、これか。天使の門にしてその実屍鬼の門とは良く言ったものだ」
「そうか、だから俺を呼んだんだな?」
弓弦一人が悪魔五体と共に単身異世界に突入する!! ーーー次回、新章『04771を求めて…編』、急げ弓弦! 剣聖の乙女が待つ甲板へ!! …当分ゆっくり…は出来そうにないな。…か。何か随分サブタイトルのテンションが違うが」
「堅苦しいのよりは増しかもしれないな。…さて、俺はそろそろ逝かせてもらう。姉と兄に謝らないとな」
「あぁ。二度と会うこともないだろうが…達者で、って言うべきか?」
「フッ…少女の父親。暇があれば甥の作る国を見守ってやってくれ」
「そうだな。またいつか行くこともあるだろう」
「去らばだ」
「…ウェンドロ・ヴァンベルか。自分なりの正義を貫き通した結果の死ならば悔いはあまり無いってところだな」
「…っ、ジジイが呼んでる。時間切れだな」
「おいっ、逃げるのかよ」
「同胞」
「何だ?」
「後でジジイ達かにどんな話をしたのか訊くからな。内容によっては旋風に注意することだ」
「…苦めのコーヒの準備は忘れない方が良いな」
「言っとけ。んじゃあばよ」
「お前とはまた会うかもしれないな?」
ーーーんなこと訊かれても知らねぇよ!
「はは、さて」
「…大して関わりが無いから話すことがないんだが、何を言えば良い?」
「好きに言えば良いさ。ここは、そう言う場所だ」
「っ、ならこれでどうだ! 『ベルクノース』の北にある山は、後々の超重要スポットだ!」
「おいっ!? 大分際どいな! …まぁ、肯定も否定もしないが」
「陛下ぁぁぁッ!! 頑張れよぉぉぉッ!! …よし、スッキリした」
「…とんでもないこと言って向こうに消えたな。…まぁ、どうとんでもないかは俺は分からないが…。…と、一応言わないといけないな。次章も是非是非楽しんでくれ!!」