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俺と彼女の異世界冒険記   作者: 仲遥悠
動乱の北王国編 後編
228/411

そこにあるのはエレベーター

 少女が空から降りて来た。

 最初にそのことに反応したのは、ハイエルフ達。続いて、ゼンとセンデルケン。

 最後にレガーデスが気付くと、少女は顔を上げた。


「来て」


 その視線の先に居るのは、センデルケンの隣に立つレガーデス。


「私がか?」


 自らを指差した彼に少女が頷く。


「…あなたを呼んでいる人が居「待て」…?」


 少女が来た方向を、少女の顔を見て口を挟んだのは、アリオール。

 ゼンが少女とレガーデスの間に入ると、緊迫の空気が立ち込め始める。

 ガノンフとスートルファは少女の顔を、驚いたように見ている。そして何かを察したかのように、背を向けて二人ヒソヒソと話し始めた。

 時折肩が大きく上下しているようだが、声は聞こえてこない。


「何を思っての行動かは知らんが。ガール、陛下は連れて行かせんぞ」


 威嚇だ。

 もし少女が本気で向かって来たのならば、傷付いたメンバーでは戦うことが出来ない。

 ましてや、アリオールやセンデルケンは一撃でも浴びれば命に関わってしまう状態だ。無駄な戦いは避けたいが、相手の狙いがレガーデスとあらば黙っている訳にはいかない。

 少女の背後に居る人物は容易に想像出来た。街の危機に際しても、南口に兵一人派兵しなかったあの男だと。

 そうまでして王の座が欲しいのか。

 そうまでして甥の生命が欲しいのか。

 そうまでして国に災禍を呼び寄せるのか。

 怒りの感情が、沸々と奥底より込み上げて身体を震わせた。


「バ…っ、アリオール落ち着け! 機関が熱暴走を起こすぞ!!」


「俺は平常心だ、ラモダ・グノーチェス。…去れ、ガール。俺はガールと言えども手加減せんぞ」


 アリオールの身体から上がる煙の量が、増えていく。

 限界が近い。これでは近い内にーーー!!


「ッ!?」


 男の膝が、突如として雪に沈む。


「アリオールッッ!?!?」


 そしてそのまま、アリオールは雪に沈んだ。

 ラモダの呼び掛けに彼は応えない。

 仰向けに倒れた彼は、どうやら意識を刈り取られたようだ。

 背を向けた二人以外の面々は、一瞬の出来事を引き起こした張本人に臨戦の構えを取る。

 大の男の意識を動作一つ見せずに刈り取るとは、ただの少女ではない。

 センデルケンだけは少女の足下で雪が舞ったのを見逃さなかったが、少女の眼に見詰められ口を噤む。

 どうやら謎の少女として本人は通したいようで、もし何か言おうがものなら友人の後を追うことになるのが簡単に予想出来た。


「…拒否権は無い。…来て、レガーデス」


 向けられた小さな手を、掴むかどうか。

 悩むレガーデスは、自分という存在全てを見透かされたような感覚にたじろぐ。


「…こ、断るっ! わ、私は行かないぞ!!」


 怖い。

 相対しているのは小さな少女なのに、言葉では表せない恐怖を感じた。

 自然と瞬きの数が多くなり、身体が恐怖に震える。

 逃げなければーーーそう思ったが。


「…拒否権は」


 動く前より早く、少女が肉薄していた。


「っ!?」


「無いッ!!」


 刃が走り、彼の首を目掛ける。

 ーーー逃げられない!

 どこかで見たような刀が間近に迫り、


「ぬぅッ!!」「くっ!?」


 鋭い音を立てて弾かれた。


「陛下に刃を向けるのならば捨て置けんぞ、貴様!!」


「…ッ!!」


 剣戟の音が響く。

 瞬ぐ間にも数回打ち合われ、二人は距離を取った。


「俺の名はゼン! 交えずして預けた勝負、ここで決する時!」


 打ち合えば、風が生じる。火花が散る。

 レガーデスの視界には捉え切れない速度の、次元の対決だ。

 更に数度の金属音を響かせると、剣と刀を挟んで、両者が睨み合う。


「貴様、名を名乗らんのか!」


 ゼンの持つ『零式斬鉄剣』が、輝きを帯びる。

 まるで彼の闘志に呼応したかのようだ。鋭い光を帯びた剣は、少女の刀との鍔迫り合いを優勢に導く。

 流石に大の男と少女では、力に圧倒的な差があるもの。レガーデスは、ゼンの勝利かと喜びを見せる。


「…おお、凄いな。あの娘…あの男と渡り合っている」


 傍観のハイエルフ達。

 眼の前で起こっている戦闘は彼等にとって、どこ吹く風の出来事だ。

 心持ちとしては、若い世代の成長に感嘆している爺婆に近いだろうか。

 二人の眼には、眼前の光景が眩しいものに見えてならないのである。


「ふ…くくっ。ガノンフ…あの娘にもう負けているんじゃないですか? あの剣捌き…あなた以上ですよ?」


「馬鹿言え。まだまだ、俺に勝てるような腕前じゃないだろう。お前よりは上だろうけどな、スートルファ」


 「私の専門は弓です」と、スートルファが愚痴る。

 ハイエルフも、魔法の他に各々の得物を持ち歩いているが、実際の戦闘で使う場面は少ない。

 大体の魔物は魔法で倒せるし、倒せない魔物とは戦わないためだ。

 かといって、武器での戦闘が苦手かとなると、そうでもない。

 ハイエルフの中でも、物理戦闘中心で戦う者は居た。

 彼等は殆どが、魔力マナで形成させた武器を用いて戦ったが、中にはその魔法すら不得手な者も存在した。

 そんな彼等が用いたのが、剣であり、弓であり、杖といった極一般的な武器だ。

 一口にハイエルフといっても、様々な者が居たのだ。


「…名乗らんとは! 最早問答無用ッ! 我が斬鉄剣の錆にしてくれるッッ!!」


 ゼンが押し勝った。

 大きく弾き飛ばされた少女は、驚いたように眉を上げ眼を見開くと、瞳を輝かせた。

 その様子は戦いを喜んでいるようだ。

 まるで強さに対する期待に応えてくれたことを喜んでいるその姿は、強者の気配を彼に予見させた。


「往くぞォッ! 斬鉄剣…! 大、切ッ、ダァァァンッッ!!!!」


 振り下ろされた剣の衝撃が、直線上に雪を穿ち、容赦無く少女を襲う。

 本気で生命を奪いに掛かった全力の一撃だ。


「マジかっ!?」「なっ、子ども相手にあぁも全力でっ!?」


 衝撃と舞い上がる雪に少女の姿が、雪に呑まれた。

 放たれた一撃の威力を、身を以って知っているスートルファが声を裏返す。

 建物の屋根に積もっていた雪が雪崩を起こす。

 大通りに轟音が響き渡る中、一際鋭い音がそれを遮った。


「…イヅナ」


「むっ!?」


 肉薄を許した。

 刹那の間に距離を詰められたのだ。


「イヅナ・エフ・オープスト……」


 少女が自らの名を告げる。

 何故このタイミングで告げるのか。彼女の考えが読めない面々は怪訝に思った。

 それはゼン自身も同じだ。

 名を名乗るに相応しい相手として認められたか。それとも、単に今告げたいと思ったのか。

 ーーー答えは、すぐに現れた。


「何…ぃっ!?」


 見えてしまったのだ。

 黒髪に隠れる、動くモノを。


「それは…っ、ぬかっ!?」


 斬鉄剣の刀身を、彼女の刃が滑る。

 そして悟った。彼女は超近距離で自分優位になる状況を待っていたのだ。剣を押さえ付けられる、この瞬間を。

 しかし力で上を許す彼ではない。

 斬鉄剣を振り上げ、押さえ付ける剣を逆に押し返すと柄を持つ手を変える。


「「ッッ!!」」


 少女の身体を薙ごうとする返しの刃だ。その剣速は疾風。唸るのは空気が斬られる音か、それとも剣が吼えているのか。


「斬鉄剣・一文字斬りィッ!!」


 横一閃。

 その鋒を阻むものは無い。


「…甘い」


 ーーーそう。阻むものなど、無かったのだ。


「もらった…ッ!!」


 下方からの強撃。

 身をしゃがませて攻撃を避けた少女の刃が、斬鉄剣を捉えた。

 反応は、出来ない。

 強く打ち付けられた剣は男の手を離れ、宙を舞う。そして数度の回転の後に、雪に刺さった。


「ーーー無念…!」


 痺れる腕。

 こんな腕では、少しの間ではあるが剣を握ることは出来ない。

 少女ーーーイヅナの、勝利であった。


「わ…っ、な、何をするっ!?」


「…レガーデスは連れて行く」


 突如として生じた水の縄が、レガーデスの四肢を縛る。

 刀を納め、抵抗の出来なくなった彼を担いだ彼女は、地を蹴り北に消えた。


「陛下……」


 青褪めた表情の理由は、レガーデスの拉致だけではない。

 脂汗が滲み、頭が重い。

 止血はされているので出血は収まっているものの、奪われた体温と血に身体が警報を鳴らしていた。

 そろそろ、危険だ。


「っ、追うぞラモダ・グノーチェス!!」


「馬鹿を言うな! そんな身体で何が出来る!? …ゼン、あの少女を追ってくれッ!!」


 頭に血が上り、センデルケンの状態が見えていないアリオールを押し黙らせ、一人唸るゼンの尻を叩く。

 少女の目的は分からないが、あの少女が向かう先に居るであろう人物の下にだけは、連れて行かせてはならなかった。


「…承知」


 弾き飛ばされた斬鉄剣を握る。

 甘く見ていた訳ではない。だが、小さな身体を活かした戦い方で少女に遅れを取ってしまった。

 自分の至らなさを噛み締めながら、ゼンは少女の向かう先であろう王城へと急いだ。


「…アリオール、ガトルナフ将軍をホテルに運ぶから手伝ってくれ」


 その姿が小さくなるより早く、ラモダは自分の痛みを堪えてセンデルケンの身体を支える。

 同士が息絶えるのは、悲しいことだ。今はあまり考えないようにしているが、アノンの死の衝撃は、計り知れない爆弾となって身体に内包されている。

 他事を考えている今だから成せる芸当だ。「今はまだ、立ち止まる時ではないと」無意識の内に導火線を伸ばし、起爆の時を延ばしているのだ。もし爆発したら、深い悲しみが襲ってくるーーーが、襲われるのは今であってはならない。

 今は、今出来ることをやるしかないのだから。


「ぐ…ぅぅっ、すまん……」


 ホテルに入り、ラウンジにあるソファにセンデルケンの身体を横たえる。


「おい! 医者を呼べ!!」


 フロントの従業員がアリオールの声に内線電話を取る。


「ラモダ・グノーチェス、お前も横になれ。その身体で無理をするな」


「…分かった」


 ハイエルフの二人が入って来た。

 言葉の断片から、少女イヅナのことについて先程まで話していたようだが、何を話していたのだろうか。

 イヅナの名乗りは、半ば呟きに近いものだった。そのため、聞こえていたのはゼンと、スートルファ、ガノンフの三人だけだ。

 なのでセンデルケンを始めとした三人は、どうしてゼンが驚きを見せたのかが謎だった。

 剣を弾かれそうになったから。と考えれば取り敢えずの納得はいく。だが、少女が何かを呟いたから彼に隙が出来たのは事実なのだ。


「お待たせしました」


 医者が到着した。


「…訊け、ドクター。今すぐにこの男を診てやれ」


「はっ」


 医者はアリオールに一礼した後、すぐさまセンデルケンの診察を始めた。


「どうだ」


「出血は止まっています。…ですが身体の至る所に傷があり、いつ開くか分かりません」


 医者によって包帯を外された部分は、赤黒い。

 相当量染み付いているようで、包帯も赤黒く染まっていた。


「…少量の運動ならば、どうだ」


「無理です。絶対安静が必要かと」


 新しく巻かれていく包帯。

 下手に動くことのないよう、固定の意味合いも含まれた白い布は、容赦無くセンデルケンの身体を覆っていく。


「…暫くはミイラ人間生活と言うことか。これでは陛下の下へ向かえない…か」


「…。そこの男も見てやってくれ」


 ミイラ人間の完成と同時にラモダの身体にも包帯が巻かれていく。


「おい待て、まだ診察も何もしていないぞ。いきなり新しい包帯巻き始めるとはどんな医者だ」


「えぇ、私がこんな医者です」


「待て待て、待て。答えになっていない。取り敢えず包帯を巻き始めるなんて、どんな了見なんだ」


 負傷した腹部が包帯で巻かれていく。

 センデルケンとは違い、包帯を巻く必要はないはずだがーーー?


「…随分巻いてるな。あの人間の医術師…心配性なのか?」


「…巻き過ぎだと思いますけど。あのままですと、道行く人々に避けられますね」


 ガノンフとスートルファが眺める先で、センデルケンが沈黙している。

 動けないのだろう。ボーッと天井を見ているようだ。

 本当は今すぐにでもゼンの後を追いたいはずなのだが、動くことができなければどうしようもない。


「だが傷は身体中にあったのだろう? あの男…魔物の攻撃をかなり貰っていたからな。あの包帯の量も頷ける」


「ミイラ人間…か。アレだ、砂漠遺跡のミイラ型魔物を思い出しますね」


「あぁ…南大陸の砂漠か。そう言えば今も残っているだろうか」


 センデルケンが担架でどこかに運ばれていく。

 ソファでは人目に付き、かつ寝心地も悪いのでベッドにでも向かうのだろう。


「…何がですか?」


 医者が一仕事終えたと言わんばかりの表情で帰って行く。


「巨大魔法陣、だ。…忘れたのか? 中心部にある遺跡の祭壇にあったアレを」


「…あ。あの奇怪な……。レティナが解読しようとして、結局時間が無かったのですよね。…一体、何の魔法陣だったのでしょう」


 「レッツ、スリープモード」とはアリオールの声か。

 謎の駆動音が、熱が放出される音と混じった。


「分かる術は…無いだろうな」


「…まぁ、そうですよね」


「あれば調べてみたい気はある」


「えぇ。ですが…無理です」


「そうだな……」


 視線を向けられているような気がする。

 旅行客を始めとして、この国の住人は建造物内に避難していたようなので、ホテルの中は外の静けさが信じられない程に賑やかだった。

 その中でラウンジだけが、妙に静寂を保っている。

 怪我人が居るから? それとも物々しい雰囲気が漂っていたからかーーー少なくとも、好ましい静寂でないことは確かだった。


「…姫様の下に行くか」


 場所を移すことにした。

 どうにも居心地が悪い。


「ですね」


 魔力マナの位置から、上の階に居るのは確かなのだが、それ以外の手掛かりはない。

 階段の存在を探してみると、あるにはあったのだが、それよりも多くの人々が乗り降りしている謎の扉の方が気になった。

 二人顔を見合わせて、まずは眼の前へ。

 不思議な扉。魔力マナによるものだろうかと考える二人だが、実際はエレベーター。電気で動く昇降装置だ。


「…どうすれば良い」


「…人間の皆さんは、そこのレリーフを押していたみたいでしたが」


 恐る恐る、上向きの三角が刻まれたレリーフのようなものに触れる。


「これを押すのか…。なっ、光ったぞ」


「扉が開きましたね」


 勝手に開いた扉を見る。

 いつの間に人々の生活は進化したのだろうか。ちょっとしたジェネレーションギャップに近いものを感じていると、その間に開いた扉が閉まってしまった。


「…成程。そうやって扉が開閉するのですね」


「…スートルファお前、俺で実験したな?」


 再度押すと、扉はすぐに開いた。


「あ、この上の数字群。点灯した数字をどうにかこうにかする暗号かと思いましたが違ったようです」


「…階層を表しているんじゃないか?」


 扉が閉まった。


「それです! 一が点灯しているのは地上階つまり一階! ガノンフ頭、冴えてますね!」


「はっはっは! …いや分かるだろう何となく。それより」


 未知の文化を調べる一連の遣り取り。潜めてない声で話していれば目立つものだ。

 ーーー二人は視線を集めていた。

 とするより、二つの内の片方のエレベーターの前に立っていることで、乗ろうとしている客に迷惑を掛けていた。


「いい加減に姫様の下に向かうぞ。このレリーフを押して……」


 上向きの三角が刻まれたレリーフを押して扉が開くのを待つーーーが、中々開かない。


「…どうやら上に向かってしまったようですね」


 点灯している数字が右に擦れていっている。

 それを呆然と見詰める二人に訪れたのは、痛い程の沈黙だった。

「…まぁ、知らない人からすれば、困るよな。エレベーターみたいな文明の産物なんて」


「そうね。私も実のところ、最初は戸惑ったわよ。あの人間らしくない男の人がレリーフ押さなければ、暫く立ち往生することになったわ」


「でもレティナ。あなたのことだから興味を持ったんじゃない? 実際持つでしょ? 未知のものへの興味って」


「興味はもつけど…調べる時間がね。無いのよ」


「東の国にありましたな。確か…男子三日会わざれば何とやら……」


「男子三日会わざれば刮目して見よ。…この場合は文化二百年見ざれば刮目して見よ…だな」


「おぉ、良く分かりましたな彦様」


「それ程じゃないさ。兎も角、分からないのだったら人に訊くのも手だ。な?」


「えっと…そうね。だけど…その、説明出来るかしら? 私は一応無理よ? 人の文化だから」


「…。俺も微妙なところだな。本職である訳じゃないし。うーん、どうしたものか」


「…かっこ付かないわね彦様」


「そこも良いのよレティナ。決める時は決めてくれる人だもの」


「…。ふーん。何、姫様。ラブラブアピール?」


「えっ!? そんなのじゃ…‘なくはないだろうけど’…あなたに見せ付けるつもりなんてないわよ?」


「見せ付ける価値も無しと? えぇ、えぇそうでしょうね。どうせ私はお一人様よ。意味不明で無味乾燥で十中八九夏炉冬扇で有害無益な有象無象が虚礼虚文な陶犬瓦鶏を手に空理空論掲げることそれが、私に恋愛話を振ることねえぇそうでしょうとも寧ろそれ以外に何があるって言うのよッ!!!! 大体ね! そもそもね!? 考えたことある!? 行き遅れた女の悲憤慷慨喪家之狗「はい! 予告よ予告!」」


「爺さんここは一つ、どうだ?」


「爺のようなものに大層な役目を任せてくださると?」


「良いじゃないデイル。言ってみたら?」


「…では、僭越ながら。『…。もうすぐ…もうすぐ、終わる。どんな形であれ、結末が決まる。…決めなければならない。雌雄を決するとしよう、この吹雪のように…なーーー次回、叔父と甥、玉座の間ニテ』…いつか振りだな。…これで良かったのですかな?」


「えぇ、上手いじゃないデイル♪」


「…あの女性はどうする?」


「…気にしたら負け…だと思うわ」


「いけませんな姫様。口には気を付けてくだされ」


「…ごめんなさい」


「…やっぱり面白いな。珍しくて」


「…あなた…酷いわ」


「でもちょっぴり?」


「…感じちゃう? な訳ないわよっ、もうっ! 馬鹿ご主人様っ」


「ナイスツッコミだな♪」


「…馬鹿」


「ところで、ご主人様とは一体…? 彦様、詳しい話を向こう側で」


「…え…あ…ちょっ」


「…罰よ。もうっ、駄目ね」


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