表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と彼女の異世界冒険記   作者: 仲遥悠
動乱の北王国編 前編
211/411

離れ離れのイクサ

 突然、冷水を浴びせられたような感覚に陥ったフィーナは、身体を無理矢理起こして窓の外を見る。

 外は吹雪だ。まるで渦を巻くようにして荒れ狂っている冬の結晶は、綺麗ーーーというよりも、残酷だ。嘆いているようにさえ思えた。


「…と、待たせたな」


 氷枕を持った弓弦が戻って来た。

 彼は、身体を起こしていたフィーナに身体を横にするように言うと、枕を取り替える。


「こほ…っ、ぅぅ…どうしてしたくもないのに咳が出て来るのかしらね……」


「風邪だからだろ? 無理に身体起こして…大人しく寝られないのか?」


「…仕方無いじゃない。あなたも感じたでしょう?」


 話はすぐに先程感じたものについてのものに変わった。

 弓弦もフィーナと同じように感じており、顔を真剣なものに変えた。


「良くない気配がしたな。一瞬だが……」


「えぇ…良くない魔力マナね。まるで開けてはいけない箱を一瞬だけ開けてしまったみたい……」


「みたいだな…?」


 外から、何かが聞こえた。

 窓の外から聞こえてくる音に、二人顔を見合わせる。


「おいまさかっ!?」


 不明瞭な景色であっても、ハイエルフはある程度眼が利く。

 凝らした視界、その先に映ったものはーーー


「光? まさか」


 そう。光だ。

 音と共に、光が見える。


「そのまさかだ。戦闘が始まってるんだーーー」


 街には、魔の気配は無い。

 つまり、


「ーーー人間同士の争いが、始まった」


* * *


「どう言うことだっ!? 私にも分かるように説明しろアリオール!!」


 レガーデスは、机の上の紙面と向かい合う二人の内アリオールに戸惑いを打つける。

 施設が揺れている。

 上からは凄まじい音が聞こえており、それだけで彼は不安感に苛まれた。


「どうしてここの場所が分かった? 陛下が尾けられていたのか!」


「分からん。だが、現に攻撃を受けているんだ。発見され仕掛けられた以上、迎え討つしかない」


「状況はどうなっている」


「ゼンとラモダが手勢の半分を連れて上に上がっている。俺も上に上がって加勢するが、お前も来るならば来い」


 アリオールの返事を待たずに、得物を背負ったアノンは昇降装置のボタンを押す。


「攻撃…だと? 外では戦闘が起こっていると言うのか……」


 二人の会話内容の意味が分からず、レガーデスは一人混乱していた。

 戦闘と言ってみたものの、どうして戦闘が起こっているのかが謎だ。

 恐怖によるものか、自然と身体が震えていた。

 戦闘というものを知り、見たのは城を脱出した際が初めてであるレガーデスは、人が人を傷付ける行為を嫌った。

 もし血を見たのならば彼は、失神してしまうだろう。何故ならばかつて、侍従の一人が指に絆創膏を貼っていたのだが、そこに滲む赤いものを見ただけで気が遠くなってしまった彼なのだ。血を見れば血の気が引いてしまうのは間違い無かった。

 眩暈さえ覚えている彼を尻目に、アノンの身体は上に上がっていく。


「しかし何故戦闘などしている…逃げれば良いだけじゃないのか…?」


「退路は無い。…逝く気か?」


「まさか。一度牙を向けた以上、喉元に喰らい付いてやるまでだ。ここに居る以上、その覚悟はとうに出来ている。…掲げた旗が無地であったとしてもだ」


 地上を見据えるアノンの瞳は、強い戦意に輝いている。

 覚悟を物語るその瞳に、アリオールはそれ以上の言葉を言えなかった。


「死ぬと言うのか…? 無駄になってしまう死を…一体何のために?」


 昇降機が無人となって戻って来る。

 外からの音は、地響きのように轟いており、戦闘の苛烈さをレガーデスに告げていた。


「頼む、教えてくれアリオール。何故(なにゆえ)に、無駄に戦おうとするのだ。命は有限だ。だから限りある生命は、与えられし生を全うするのが当然だろう? なのに何故に全うしようとしない? 例え魔物だろうが、お伽話で謳われるような悪魔だろうと、武器を捨て一心に逃げれば良いではないか」


 レガーデスの望むところ。それはつまり、物事の平和的解決だ。

 外で起こっている戦闘の相手をまだ知らない彼は、戦闘の相手を魔物と考えていた。

 ーーー普通ならば、自身がこれまでにされてきたことから相手を察することは容易であるはずなのだが、床に(うずくま)る彼はそこまで思考が至る程利口ではなかった。


「逃げれば傷付かずに済む。逃げれば傷付けずに済む。だから逃げれば全て丸く収まるはずだ。なのにどうして死に急ぐのだ……」


 父である先王が死んだ際、多くの者が涙を流していた。

 その者達を見ていると、レガーデスは余計に悲しくなったものだ。

 悲しみの伝播ーーーそれは彼が、最も望まぬものだ。

 一つの悲しみが次の悲しみへと繋がってほしくない。ましてや、自分がその一因となってしまうこと。そんなことは絶対に嫌だったのだ。

 故に、“逃げる”ーーーそれが何よりの解決策だと信じていた。

 だがやはり、


「臆病者めが」


 それを否定する今日二度目となる言葉が返ってきた。

 自分の考えを頭ごなしに否定されたことだけに、やはりレガーデスは反発感を覚えた。


「何故私を臆病者と呼ぶ。逃げることのどこが悪い? 平和的解決の手段ではないか」


「臆病者を臆病と言って何が悪い。逃げれば平和になると、平和に繋がると、本当に思っているのか?」


「思っているからこそ言っている。アリオールこそ生命を無駄に費やすのは、意味の無いことだと思わないのか?」


 施設が揺れる。


「…押されているか。そろそろ行かなくてはな、レッツゴーバトルゾーン。…陛下、逃げたければ逃げるが良い。逃げるのならば、陛下は俺達とは何の関係も無くなるだろう。もっとも逃げられればと言う仮定は付くが」


 アリオールも昇降装置に足を乗せた。

 レガーデスを除き、この施設に居る最後の人間が、戦地に赴こうとしている。

 もう誰も居ないーーーそのことを何となく理解したレガーデスは、必死に自分の中で思考を巡らせた。


「逃げられる場所が…? あ、そうか」


 出入口は一箇所のみのこの施設。逃げるとするのならば、戦場を抜けるか、奥にある極寒凍土に隠れて遣り過ごす他無いのだった。

 そのことに気が付いた時、アリオールの姿は既に消えていたのだった。


「…逃げれば良いのではないのか? しかし…最初から逃げることが可能と言う訳ではない。逃げるためには時に事を構えなければならないと…そう、アリオールは言ったのか……?」


 戦いは嫌いだ。

 剣技はからっきしで、戦うことなど不可能以外の何物でもない。

 もし地上に上がろうがものなら、十秒と生き残れない自信があった。

 極寒凍土で息を潜めるか、戦いをするのかーーー


「…私は」


 身体は恐怖に素直であった。

 足を向けた先にあるのは、昇降機ではなく施設の通路。

 踏み出した足に迷いが無いのは、それが正しい行動だと確信しているためであろうか。


「…っ」


 隠れたところで、意味が無いように思える空虚感に囚われる。

 アリオールから渡された防寒具を着ていたとしても、あの場所の寒さは尋常ではなかった。

 奥に行けばより寒くなるのは間違い無いのだが、奥に行かなければ発見されてしまうリスクを背負うことになる。

 想像を絶するであろう寒さを予想し、レガーデスは躊躇する。

 あの寒さに耐えられるのか。また、もし入口の扉が凍り付いてしまっている際に脱出することは可能なのかーーー全てが、心配だった。

 だが生きるための手段を、逃走にしか見出すことの出来ない彼に、選ぶことの出来る選択肢は限られていた。

 既に氷が張り付いている扉を力一杯押すと、微かに回転する。

 レガーデスは護身用に持たされていた剣を生じた隙間に挿し入れると、無理矢理扉をこじ開けて奥に入った。


「…(奥に…奥に行かねば……)」


 扉を開けるだけで体力が無くなってしまった彼は、手や足を弱々しく動かしながら、全てが氷に覆われた通路を一人逃げて行くのだった。


* * *


 ーーー時はそこから少し遡る。

 昇降機で地上に上がったアリオールが見たのは、赤く染まった雪の上に立ち対峙する多くの兵だ。

 一体どこから潜伏場所の情報が漏れたのか、敵兵であろう人物の死体が転がっていた。

 地面が振動していたように聞こえたのは、兵達の足音だった。

 剣戟の音と、銃声。

 相手がどれ程の人数で攻めて来たのかは定かではないが、今この時も一人、また一人と白の絨毯を赤く染めて沈んでいるのだろう。


「アリオール!」


 先行していたアノンが彼の姿を認め、寄って来る。

 その剣に赤いものが伝っているのを見るに、既に何回もの戦闘をこなしているのであろう。

 アノンはアリオールの後ろに彼以外の人物を探したが、そこには誰の姿も求めることが出来なかった。


「…あぁ、やはりこうなったか。やはり来なかったか。クソっ…俺達は何のために……」


 表情を曇らせたアノンーーー否、アノンだけではなく“彼等”には、どうしても達成しなければならない目的があった。

 それは、廃位される寸前であるレガーデスを玉座に戻すこと。

 彼を玉座に戻すことによって、彼等はある計画を阻止しようとしていたのだ。


「見下げ果てたとはこのことだ! 幾ら何でも…幾ら何でも、これはあんまりな答えじゃないのか! …ガトルナフ将軍が報われなさ過ぎる!」


「…それも一つの選択の結果だ。だから」


 兵達が向かって来ている。

 その手には一様に銃を携えており、接近を許せば蜂の巣にされる未来が訪れてしまう光景を前に、自身の背中に手を掛けたアリオールは掴んだ物を前方に向けた。


「レッツデストロイ」


 向けられた手に握られたのは、大きな筒だった。

 引鉄が引かれると、大きく閃光が爆ぜる。

 続いて轟音が響き雪が大きく跳ね上がると、雪が雪崩の如く兵達に降り注いだ。


「…変にゴツい武器だ。ラモダ作か?」


「あぁ。かつて存在したとされる魔法…風の中級魔法、“エアバズーカ”を再現したとのことだ。殺傷性は低いが、威力は見ての通りだ。俺好みの武器ではあるが」


 雪に埋もれた兵達は、顔を覗かせる度にアノンの手で断末魔の声を上げさせられる。


「…さっきに殺ったのはそっちだ。悪く思うな」


 呟いた彼が剣を振るうと、赤い雫が雪を濡らす。


「…ラモダとゼンは居場所が分からない。ラモダは兎も角、ゼンの奴は誘い込まれでとしたのだろう。どちらでも良いから合流する。…例え俺達に大義が無くても、俺は先代陛下の仇を取る。絶対にだ」


 先代国王の死の真実。

 レガーデスに伝えられていない真実こそが、彼等の行動理由の一つであった。


「……」


「…戦争は起こさせん。起こさせて堪るものか! そのために俺は行く。ウェンドロ(義兄殺しの男)にこの剣を立てるまで、俺はこの道を往かねばならない。…陛下が逃げ、アテにならない以上、血塗れの道を歩むしかないのだとしてもだ」


 向かう先から兵達が走って来るのが分かる。

 その奥に居るのは指揮官だろうか。他の兵とは異なり銃を携帯しているように見えないが、周りの兵と放つ雰囲気が明らかに異なっていた。


「…あれが指揮官…か! 指揮官にしては見ない装備をしている…木製の杖…あんな装備を見たことなど一度も無いが……」


 言葉通り、杖を使う人物を城で見たことは一度も無かった。

 杖はあまりにも前時代的な装備でしかなく、銃や機械を携帯するという機械装備が主流となっている現在、その装備はあまりにも浮いていてーーー不気味であった。

 いや、武器だけではない。

 その指揮官は、存在が異質だった。

 遠眼から見ただけでも分かる、兵なのに兵らしくないような違和感ーーー気味が悪かった。


「恐らく存在を秘密にされていたのだろう。得体の知れない相手だが、俺達の背後には陛下が居る。…あまりに優し過ぎる存在であったとしても、俺達が守らなければならない人物であることには変わりない」


「…分かっている。だがどうこうするも、どうこう言うより前にーーー」


 銃声が遠くから聞こえてくる。

 ラモダか、ゼンのどちらかの戦闘の音なのであろうか。


「ーーー打ち勝たねばならない」


 第二戦が、始まった。


* * *


 鉄の穴から放たれる鉛弾は、一撃が当たってしまうだけでも致命傷に至る可能性を有している。

 故に、一撃でも命中を許す訳にはいかないのだ。

 当然、立ち回り方も限られてくる。

 飛来する無数の銃弾の被弾を零とするには、壁を用いて弾除けとする等、受身の立ち回り方をするしかないのだ。


「(随分と離された…可能ならば向こうに援軍が来る前に片付けたい。だったら…!)」


 建物の壁に隠れていたラモダが、壁際から向こう側の様子を見ると、火花が散る。

 どうやら発砲されたようだ。


「(これでも、くらってみろ!)」


 衣服のポケットからボール状の物質を取り出すと、その先端を口で咥え、引っ張る。

 ワイヤーが引っ張られ、カチッという音がした。すると空かさず彼はそれを壁の向こう側に向けて投げる。

 程無くして、爆音と共に硝煙の香りが漂ってきた。


「(良し…どうやら粗方吹き飛ばせたみたいだな。先を急ぐか)」


 ラモダの戦い方、それは合理的な戦い方といえる。

 今のように少数人数で戦うことによる機動性重視の戦い方は、身動きが取り易いのだ。

 どうして少数なのかというと、部下の兵士を殆どゼンの下に付けたからである。そうでもしないと、色々と問題が起こってしまうからだ。

 それがどのような問題なのか?

 ーーーそれはまた、別の話。


「(は~、我ながら凄い威力だな。後…四個か。こっちは…装填したのが六発と…ポケットに十発。節約していかないと弾切れは否めない…か!)」


 手持ちの武器を確認すると、人の消えた通りを駆けて行く。

 爆発物を投擲する際、街の建物を破壊しないかその威力が心配であったが、通りが広いお蔭かどうやら建物まで衝撃が及んでいないようだ。


「(…こちら側は例え、誰であっても圧倒的に数で押される。一人で動いている分、周囲の確認を怠れば最悪、囲まれてお陀仏か…。注意して城を目指さなければいけないと言うことになる……)」


 周囲を警戒し、城への道を走る。

 日頃からあまり運動をしていないためか息切れをし始める彼だったが、こうして走ってみると、一人で城から隠れ処まで辿り着けたレガーデスの運の良さが分かる。

 今更事の原因など考えても意味の無いことなので思考を打ち切り、今し方大きな音が聞こえた方角を見る。

 空気を圧縮し、放った際に生じる独特な音に近かったので、恐らくその方角ではアリオールが戦闘しているのだろうと判断する。

 ウェンドロの軍と戦闘を行った味方は今現在、どれ程生き残ってるのであろうかふと疑問になる。


「(…陛下には結局、伝えなかったのか。はぁ…折角用意した舞台が無駄になってしまったのは残念だが、それはそれで良かったのかもしれない)


 レガーデスの王権を主張させるために用意した舞台ーーーといっても、子ども騙しの演出のようなものではあるが、ウェンドロの取った昔語り染みた方法によって、敏感に反応するようになってしまっている国民の心に働き掛けるには、十分な効果が見込めると考えていた。

 そしてそれは、最も穏便に事が済まされる可能性が高い方法でもあった。

 彼等の目的は、ウェンドロの目的を阻むため、彼を今の地位から引き摺り下ろすことだ。

 反乱軍に身をやつしてまで各々が行動をしていたのは、その一点にも尽きた。

 もっとも今の彼等の行動は、その目的に対していわば矛盾した行動であるーーーが、戦わなければ志半ばで倒れてしまう以上、この行為は正当防衛であった。

 一体先程の爆弾でどれだけの人物が黄泉路に送られることになってしまったのだろうか。それを考えると、良心の呵責に苛まれる。

 今は敵対しているといっても本来は同じ城の兵士。つまり、同士だ。

 先に攻めて来たから殺めたそれでは、形の無い理由でしかない。それどころか、この街に住む者の大半からすれば、ラモダーーー反乱している者達の行動は、非道極まるものでしかないのだ。


「(…敵かッ!)」


 ともすれば人々に、自身の行動が嫉妬に基づくものと見做されると彼は思っていた。

 人々にとっては、彼等の敵ーーーウェンドロ・ヴァンベルは、この国を発展させた張本人であり、ラモダはその補佐をした一人物としか精々認識されていないからだ。

 真実は違う。違うのだが国民は虚偽に明るく、真実に蒙昧過ぎるように、されていた。

 人々は、知らない。

 文明発展の功績が、ウェンドロに無いことに。

 人々は、影を知らない。

 先代国王は、病死ではなく、毒死であったことに。


「(一人、おかしな兵が居る。指揮官…俺と同じ、機械の使い手か? だが…どう見ても丸腰…それに何か…いや、どうも不吉な感じがする…けど、やるしかない…か!)」


 ーーー人々は何も知らないのだ。

 ウェンドロが王位に就くことが、戦争の始まりを意味していることに。

「…っ、何だこの軟弱男はっ!! あぁ見ているだけで腹立たしい! グズグズして、それが何の解決になると思っているんだ!!」


「(…お、お~? アンナちゃん、いきなり来たと思ったらいきなり怒ってる…また弓弦の奴が何かやらかしたのか~?)」


「ハーウェル、貴殿もそうは思わないか! 逃げることが何の解決になると!」


「…ん、ん~…作戦の内じゃないか~? 撤退戦術と言うのもあるぐらいだしな~」


「これのどこが戦術なんだッ!! 逃げる逃げる逃げると、逃げるしか考えていない。いや、考えていないも同じだッ!! どうして逃げるッ! どうして剣を取り、戦わないッ! あぁ苛々させられるッ!!」


「アンナちゃん…そうカッカしていると~…皺が増えるぞ~? 身体にも良くないって言うしな~。取り敢えずアレだ、まぁ落ち着けや~」


「私はまだ二十だッッ!!!! こんなことで皺が増えて堪るものかッ!」


「ん~、しかしどこかで訊いたような気がするからな~。皺が消えなくなるとかどうとか~」


「……余計なお世話だ」


「ただでさえ弓弦の奴相手に衝突するからな~。そのキツい性格どうにかしないと、リィルちゃんみたくなるぞ~?」


「フン…そもそも何故、私がそのようなことを考えなければならない。生憎とそのつもりはないのでな」


「その言い方は方便だな~。もう少し努力とかしてみれば、男が寄って来そうだと思うが~」


「興味が無い。第一、とうの昔に三十過ぎてる貴殿には、言われたくないことの数々だ」


「俺は良いんだ~。どうせ諦めてるからな~」


「フン…大元帥の孫が訊いて呆れる。まだ過去に固執しているのか?」


「あ~、耳が痛い話だな。そんなことよりも、予告だ予告。予告するぞ~」


「……」


「……」


「…。で、どっちが読むんだ」


「俺はどっちでも良いぞ~? アンナちゃんが読みたいって言うのなら、どうぞとお薦めしたいんだが~」


「…フン、好きにしろ。私もどちらでも構わない」


「…。んじゃ~、俺が読むとするか~。『む、むぅ…ほ、本当な私がこれを着ないといけない…のか? 幾ら何でもこれは…趣味が…あ、いや愛らしい姿をしているにはしているのだが…これを…な…うむ。中々勇気が必要だと思うぞ。…ゆ、弓弦殿に見られないことを祈りたいなーーー次回、遅れて来たセツメイ』…わ、わーいだ…。…これは~…アンナちゃんが読んだ方が良かったんじゃないのか~?」


「何故私が読む必要があったと思う?」


「これユリちゃんの予告文なんだから、女の子であるアンナちゃんが読むべきだとだな~……」


「…フン、どうでも良い。私は帰るぞ」


「…っと、俺も一緒に行かせてくれ~」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ