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俺と彼女の異世界冒険記   作者: 仲遥悠
動乱の北王国編 前編
210/411

東の国のカザネ

 その街のその場所に、立つのは暫く振りだ。

 見詰める先にかつての想い出は、形として残っていない。残っていると“すれば”、彼女の心の中。

 風音はこの日、任務ミッションに出ていた。


「(もののついでに寄ってはみましたが…建物一つ無いと言うだけで、こうも物寂びしくなるものなんですね)」


 その任務ミッションは、『界座標(ワールドポイント)【51694】にあるジャポンの特産饅頭を納品せよ』というもの。達成難易度(ラ ン ク)はKと、難易度としては最低であり、本来彼女が受ける必要の無い任務ミッションであるのだが、久し振りに故郷を訪れてみようと思い、こうして訪れたのだ。

 またもう一つ別の目的もあったのだが、それを後に回して街の老舗饅頭屋へと足を向けた。

 古くから和を重んじる街の風景は、一年や二年程度では変わらない。人もまた、同じ。

 歩いていると、かつて『鹿風亭』を利用してくれていた人がちらほらと見掛けられる。声を掛けてくれた者も居たが、その度に彼女は同じ言葉を耳にすることになった。


「ありがとう御座いました。また御越し下さいませ…あっ、風音ちゃん!?」


 目的の店の前で客に頭を下げた女性は、元の姿勢に戻る途中で眼を見開くと、彼女の名前を呼んだ。


「御久し振りです。凛子さん」


 風音もまた、その人物の名前を呼び微笑む。


「やだねぇ、そんな他人行儀な呼び方してくれなくったって良いじゃない。さんは要らないよさんは」


 途端口調が砕けた人物の名は、『藤ノ原 凛子』という。

 幼少の頃から自身ののことを知っている彼女に対して、昔は下の名前を呼び捨てにしていたことを思い出す。


「…分かりました。凛子」


「そうそう、それで良いのよ風音ちゃん。少し話をしたいところだけど…あー、客多いわね。おーい!」


 少しぎこちなくなってしまった言い方がおかしかったのか、表情を和らげた凛子は風音の背後の行列を見て眉を顰めると、店の中から一人の人物を呼び出す。


「はーい! お呼びでしょうかお母様」


 元気な声と共に現れたのは、お団子頭が可愛い少女だった。

 この国の人物らしい黒髪黒眼の少女は突然、


「……」


 凛子の冷ややかな視線に当てられた。


「ぃ``っ!? ぁ、つい…」


「人様の前では五十三代目と呼ぶように言ってるわよね? 五十三代目。はい、復唱」


「五、五十三代目!」


 微笑ましい遣り取りだった。

 厳しい母と娘ーーー遣り取りの中にも親子の絆が感じられたような気がしたのは、自分自身似たような経験をしてきたためであろうか。そんなことを風音はぼんやりと考えていた。


「よろしい、はい接客お願いね。と、ごめんごめん」


 そこまで言って、思い出したかのように風音に向き直った凛子は、急いで客に注文を取りに行った割烹着姿の少女を指で示す。


「あれが五十四代目予定のあたしの娘、晶子。今年で八歳なんだけど…まだまだあたしの後を継ぐのは先になりそう。娘ながら抜けた子だよ。どっちに似たんだか」


 晶子は持って来る品を間違えたのか、頭を下げているようで、店の外にまで続く行列を捌き切るのは時間が掛かりそうだ。

 

「八歳って言ったら風音ちゃん、もう一人で立派に女将やってたのにねぇ」


「…そうでしょうか? きっと皆様に支えられていた御蔭ですよ」


「そんなこと無い無い。あたしが言うんだよ? 毎晩従業員の労働時間の調整に付き合ったじゃない、覚えてる?」


 「はい……」と相槌を打った風音の脳裏にその頃の記憶が思い起こされた。

 従業員が提出する予定表と、唸りながら睨めっこをしていた風音に凛子が救いの手を差し伸べたのは、彼女が女将になったばかりの頃。

 見るに耐え兼ねた様子の女性の顔は、当時殆ど不眠状態を強いられていた彼女にとって、それはもう女神そのものに思えたものだ。


「その節は大変御世話になりました…凛子が居なければ私倒れていましたよ、確実に」


「風音ちゃんは頑張り屋さんだからね。調整し切れない部分は自分で埋めて、いっつも全員の希望に添えるよう調整してたからあの時の馬鹿共は調子に乗ったんだ。親が親だからと言っても風音ちゃん、まだ子どもだったんだからね?」


「…そんなこともありましたね」


 当時は地獄のような毎日であったとしても、思い返せば楽しい一時であったように思えるのは、時間のなせる技であろうか。


「それに手伝ってなくて、あの二人に、夢枕に現れた日なんざ、絶対悪夢でも見せられる羽目になるし、それだけは避けたかったんだ。‘本当にあのコンコン夫婦…容赦無いんだから’」


 凛子の眼は遠い。

 以前何かあったのだろうか定かではないが、何をされるにも相手が悪いので、親への悪口に対する気持ちよりも、凛子に対する同情の気持ちが勝った。風音の両親はそれ程に茶目っ気があったのだ。


「…あぁそれで? わざわざここに何の用で来たんだい? あたしと話すためだけに戻って来た訳じゃないでしょ?」


「あ、はい」


 一言話せば、二言三言、言葉が増えていくのが凛子の特徴だ。

 彼女が懐かしそうに話しているものだから、つい話を切り出すタイミングを見失っていた風音は、そこで自身の用件を告げた。


「ウチの饅頭を差し入れに…要はお使いって訳か。良いよ良いよ、そう言うことなら好きなだけ買って行ってよ。少しだけなら値引いてあげるから」


「宜しいのですか? 確かここは……」


 凛子の言葉は嬉しいものだったが、風音は思わず訊き返してしまう。

 この店の饅頭は味の他に、一日に決められた個数しか作らなく、超過して販売することはないことでも有名であったためだ。

 納品に必要とする饅頭の数は十個。それは、一日に販売する数の実に一割であった。

 更に、外に並んでいる人の数からしてその数を用意してもらうのは明らかに無理がある。精々、一個買えるかどうかだ。


「良いの! どうせこれ知り合いに贈るやつだし、ま、気にしないで」


 思いっきり気にする風音だ。

 知り合いに渡すのならば、なお更出し渋りをしても良いのだが、それが凛子という人物なのだ。

 断ったり何か無駄口を叩くよりは、素直に受け取っておくべきだと考えた彼女は、折れることにした。


「…。分かりました。その好意に甘えさせて頂きます」


「はいほい。じゃあちゃちゃっと持って来るから奥に入っておいてよ」


 促されるまま、店の奥に入って行く。

 幼い頃から何度も訪れた饅頭屋は、既に勝手知ったるものであり、店の奥の玄関口に立った風音は、そこに腰を下ろした。


「…相変わらず…と言ったところでしょうか?」


 昔と変わらず、家の中は生活臭で溢れ返っていた。

 しかしゴミ屋敷のように汚いという程ではなく、あくまで程々に生活臭がする程度だ。

 もう少し付け足すのなら、周りがしっかりと整理整頓をするため、清潔な室内に慣れていた彼女だからこそ気にする程度といったところか。


「はいお待たせ! 十個で良かったんだよね? 袋に入れたから。念のため確認しとく?」


「はい…。ありがとう御座います」


 事前に換金してあったこの世界の通貨を渡し、品物を受け取る。

 袋にはちゃんと十個の饅頭が入っていた。だが、風音は一つ、疑問に感じることがあった。


「ですがこの袋…御客様に渡していた物とは違うような気がするのですが……」


 凛子の店は、昔から竹の皮で饅頭を包んで渡していたのだが、風音に手渡された袋はその竹皮を、布が包んでいた。


「いつまでも家にしまっておくのもどうかと思っていたんだけどさ。まさか時期良く? 風音ちゃんが訪ねて来てくれたから良かった。受け取って?」


「…あの…受け取ってと言われましても……」


 それは一見質素な布だった。

 だが注意深く見てみると、初見の印象は一瞬にして変化した。

 特徴的な織り方で織られているその布は、注意深く観察しなければどこにでもあるような布と大差無いのだが、例えそうしなくても手に取れば違いがハッキリと分かった。


「…っ!?」


 布が、ほんのりと熱を帯びた。

 ただ持っているだけなのに感じる、不思議な温かさ。

 自然とその布に心を奪われていた。それがどこか風音には懐かしく思えたのだ。

 どこかで、確かに、間違い無く、彼女はこの感覚を知っていた。だが、思い当たる節が無い。知っているはずなのに知らないーーーそんな既視感にもどかしさを覚える。


「それね、あたしが昔預かった風音ちゃんのお母さんからの預かり物」


「は…? えっ!?」


「そんな物をあたしがいつまで持っててもしょうがないって。だからつべこべ言わずに受け取る!」


「は、はい」


 勢いで頷いてしまった風音であったが、脳内は疑問符で溢れていた。

 しかし、母が使っていた布だとすれば妙な懐かしさにも納得がいった。


「思い出すねぇ。その布に包まれ抱かれていた風音ちゃん…もう、十九年ぐらい前になるっけ。良くもまぁ、ここまで大きくなってくれたよ」


「…あの…凛子? 視線が些か、下の方を向いていている様な気がしますが」


 視線の意味は分かっていたが、敢えて濁した上での疑問で意思を伝える。大きさは風音の方が上だ。どことはいわないが。


「何て言うかさぁ。風音ちゃん、暫く見ない内に色々と変わったね」


 『ジャポン』を訪れてから何度も聞いた言葉は、凛子にも掛けられた。


「いつの間にか若くなったよねぇ。昔はあたしよりも老けてるんじゃないかってぐらいに、若さの欠片も無かったのに。…あ、一時期少女らしい時期もあったか。えーと確か…あれ、あの人誰だっけ? あの…そう、職人さん! 覚えてる?」


 一時期しか少女らしくなかったと言う凛子にわざわざ教える気など、一切無い風音は笑顔で「さぁ」と返す。


「そのようなことがあったのですね。職人…となると父の知り合いでしょうか」


「あー、それは無い。あの人、そっち方面では一子相伝だとか言って一人でこっそりとやっていたものだから。職人としての知り合いなんて一人も作りやしないよ。寧ろ作っていたがものなら、皆が皆跳び上がるから」


『重いだろう? 鉄って言う材料から作られた仕事道具だ…父さんはこれで副業をしているんだよ』


 思い出したのは昔、初めて父親に鉄槌を握らされた時に訊いた言葉だ。

 ある日突然地下室に連れられ、鉄槌を握らされ、何故か懇々と説得され、鍛冶術を教えてもらう約束をさせられ、外に出てみると母親が満面の笑みで立っていたこと。

 その後説教をされていた父の姿は、今思い出しても面白いものだと思ってしまうのは、彼女の性格によるものだろうか。


「…にしてもあの男、教える相手に事欠いてたかどうかは別として、まさか娘に教えるだなんてね…。あの男の考えていたことなんてあたしには分からないけど、折角教えてもらったものだから活用した方が良いんじゃない?」


「クス…あの男呼ばわりですか」


「へ? あぁ、うん。何かそっちの方がしっくりくるからさ。許可は貰っているから気にしないでおいて」


 別に気にしていた訳ではないが、許可を貰っていることには驚く風音だ。

 彼女の父である人物は、食えない男という表現を体現化したような人物であり、何を考えているのかは娘である風音にも理解出来ない部分があった。

 彼の妻である人物、つまり彼女の母親ならば全てを察することが出来そうだが、それは本人達に訊かない限り謎のものだ。


「そうそう忘れてた。茶でも出そっか」


 凛子はどうやら、饅頭と一緒に急須も持って来ていたようで、茶を注ごうと急須に手を伸ばす。


「お母さんっ!」


 しかし、慌ただしく飛び込んで来た晶子の声に、


「だから五十三代目って言ってるでしょうがっ!! それで何?」


 ピシャリと反応してしまったことによって急須が傾けられる。

 反応したのは風音だ。

 倒れそうになった急須を支えて元に戻した彼女は、二人分の拍手に戸惑いつつも二人の会話を促すと、思い出したかのように晶子が口を開いた。


「もう無理です手伝って下さい……」


 チラリと窺える店の光景。

 品物を待っている客は、未だ外にまで続いていた。


「しょーがないか。助けてやろう。…風音ちゃんはどうする?」


 これ以上客を待たせるのはいけないと判断したのか、思案するまでもなく凛子は立ち上がる。

 途中から話がズレてしまい、既に布の話はどこへやら状態であったが、元々あまり長居する予定でもなかったので帰る旨を伝える。

 この街を訪れた目的の片方はこれで達成された。後は、残りもう片方だけだ。


「折角ですが、私は御暇させて頂くことにします」


「あー、そう? 長居してくれても構わなかったんだけど…じゃあまた今度、おいでね。いつでも来てくれて良いから」


「はい、ありがとう御座います」


 凛子と晶子に見送られ、客の横を通り抜けて店の外に出る。

 空の頂に昇った日は徐々に傾き、時刻は昼を過ぎたあたりであろうか。風音はかつて、自身の居場所であった更地に戻って来ていた。

 先程は眼の前を通り過ぎただけなので、その一歩は彼女に、久々の実家の土を踏まさせることになった。


「……」


 特に思うことは、無かった。

 思い入れが無いという訳ではないのだが、換言するのならば、特に感慨深くは思えなかったのだ。

 月日の所為もある。この国を、この場所を去ってからの時間経過が少ないがために、懐古の念を覚えない。この要素も、一因ではあった。


「(ですが一番の原因はきっと…もう…いいえ。まだ私の、帰るべき場所ではないからでしょうか……)」


 以前(指揮訓練の際)、初めて『玄弓 楓』という存在が誕生した代償ーーー的なもので、「彼」に知られてしまった彼女の秘めた願い。

 ここはその、願いを叶えた場所の一つでしかない。

 その場所はいうなれば、単に知っっているだけである場所の一つなのだ。他人事以外の何物でもないのだが、そうとしか思えなかった。

 どうしてそうとしか思えなかったのか? そんな疑問が湧いたが、もう一つの用件を終わらせるために地下室へと向かう彼女はそれとは全く異なる、謎の感覚に襲われた。

 懐古の感覚だった。

 少なくとも、この場所に対して覚えた訳ではない、未知の懐古の感覚ーーー否、懐古の念を覚えるというと、それは既知でなければならないのだ。が、不思議なことに、覚えが無いのだ。

 記憶に無いというのが近いであろうか。凛子に渡された布に近いものがあるが、思案する必要性を無駄と思ってしまう程度には、思い起こせそうになかった。

 しかしどうしてか、一瞬懐かしいと思ってしまったのは事実であるので、彼女はふと北の空を見遣った。


「…?」


 何か意味がある行動ではなく、何気無い行動であったのだが、妙な胸騒ぎを感じた。


「(嫌な予感…と言うのでしょうか。気の所為…と思いたいのですが……)」


 良くないものが、何かを起こそうとしているーーーそんな予感があった。

 第六感というべきものが、何かを伝えてきている。


「(…死の気配…? 悲しい声が…聞こえてきたような…? それに…何でしょう、良くないものが眼覚めようとしている?)」


 そんな気がした。


「(…私が気にしても詮無きこと、ですね。さて、探し物を終わらせてしまいましょうか)」


 しかし、任務ミッション優先でこの世界を訪れている以上、寄り道をしている暇はあまり無い。

 故に、この時離れた北の国にて弓弦達の身に起こっていることを知る由は、無いのであった。

「あなた…まさか乙女の夢を覗いたの?」


「…。は? 何だ突然」


「風音の夢、知っているわよね?」


「…風音の夢? どうしてそんな話が出てくる」


「知られているような素振りを彼女がしているからよ。ほらこれ」


「…。風音が俺達のことを知る由が無いのに、俺達は風音のプライベートを覗いているって言うのは、何か不平等だな」


「本編で知らなければそれで良し、よ。ここだけの話、と言う訳ですよご主人様?」


「…はぁ、で?」


「もぅっ、本編の進行状況では現状触れられないんだから、こう言う場所でぐらい触れても良いじゃない。ケチんぼご主人様」


「…少しメタいな。どうした急に、焼き餅でも焼いたか?」


「…。そうよ、そうだけど。悪い?」


「いや、悪いとは言ってないが」


「夫が、他の女性の夢を覗き見したのを嫉妬しない妻じゃないわよ。私、そこまで心広いハイエルフじゃないんだもの。当然じゃない、悪い?」


「いやだから、悪いとは言ってないだろ? それに、どうして俺が風音の夢を覗き見したことになってるんだ。決め付けるのは良くないだろう」


「…証拠を握ってるとしても?」


「…ッ!?」


「…これ、どう言うこと(指揮訓練任務編 行方不明)」


「今更持ち出すのかっ!? それ結構前の話じゃないか」


「その前はアンナに膝枕してもらったそうじゃない。熟睡…結構なことね」


「…‘風音め、やっぱり告げ口したかっ。’…良いじゃないかそんな昔のことは…って、これじゃ俺が浮気男みたいな言いだな。はぁ……」


「どうでも良くないから話を持ち出しているのよ。…もう少し私に甘えてたって良いじゃない、甘えさせてくれるのは嬉しいけど」


「…深く考えずに、やりたいようにお前はずっとわんわんしとけば良いんだがな「にゃんにゃんはしたわよね♪」ぶっ…お前なっ!!」


「ふふ♡ 冗談よ」


「あのな、それかなり冗談に聞こえないからな。今ので大体、半分ぐらいの人が信じちゃったんじゃないか? 凄まじく心配なんだから」


「あら、だったら皆さんに向かって、『僕はフィリアーナさんと健全なお付き合いをしております!』って弁明でもしたら? 多少は誤解も解けるんじゃない?」


「…そうか? じゃあ…僕はフィリアーナさんと、健全なお付き合いをしております。…説得力無さそうだな」


「そうね」


「ならどうして言わせたっ」


「言わせたかったからよ。それを言うのなら、言う前から説得力無いってことに気付かないあなたじゃないでしょ?」


「…言いたかったから。とでも言わせたいのか?」


「さぁて、ね?」


「っ…生意気な」


「あーら、何のこと?」


「…悪かった」


「え?」


「謝ってほしかったんだろ? 知っていることを打ち明けなくて、悪かった」


「別に、謝ってほしい訳ではなかったのだけど」


「…?」


「ほら…たまにはこんな、夫婦喧嘩? みたいなのやりたくて」


「…そう言うのは本編でやろう。文字数稼げる」


「メタね。あなたそれ、多分私もよりもメタな発言よ?」


「…さぁて、な? …って、大部話し込んだな。そろそろ予告言わないと」


「どっちが言うの? …私としては交互が「じゃんけんしよう」そうね! じゃんけんじゃんけん、しましょうご主人様♪」


「それじゃあ、あっち向いてほい、いくぞ?」


「わん!」


「「せーの、じゃんけんほいっ」」


「あっち向いてほい!」「ふふ」


「「じゃんけんほい!」」


「あっち向いて? ほら♪」「残念」


「…じー」


「「じゃんけんほい!」」


「あっち向いて、そら!」「駄目ね♪」


「じーー」


「「じゃんけんほい!」」


「行くわよ? それ!」「甘い甘い♪」


「じーーーっ」


「「……」」


「じーーーーっ」


「…い、イヅナ! お前もこっちに来ていたのかいやぁ、気付かなかったー、なー?」


「じーーーーーっ」


「い、イヅナ? どうして私とこの人のことそんなに凝視しているの? それも、割りと冷めた眼差しで」


「じーーーーーーっ」


「「……?」」


「頭の中…お花畑?」


「ぐはぁっ!? な、なな、そんなことはないぞ? なぁお前」


「えぇ! あなた」


「…馬…鹿?」


「「……」」


「…私が予告言う。『手は迅速に、イッツエイサップ。…まさかこうも早く動くとはな。…陛下、お前は一体何がしたい。センデルケンから教わったことは、逃げるだけじゃないはずだがな。…味方は分散。事態は最悪だ。…切り抜けられるか…いや…結末はーーー次回、離れ離れのイクサ』…レッツデストロイ」


「「……」」


「…馬鹿夫婦。…イチャイチャのし過ぎ。…皆に…怒られても知らない。…じゃ」


「ぁ…イヅナ……」


「…はは、怒られるぞー、これは。あぁ、怒られるとも。…お互い調子に乗り過ぎたな」


「……馬鹿…そうね。馬鹿……」


「…ダメージデカいか?」


「えぇ、凄く」


「…帰るか」


「はい……」




「…あなたは一人しか居ないのに。皆にはそれぞれあなたが必要な、夢がある。…あなたは、誰の夢の叶えるの? 私? それとも他の誰か…?」

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