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俺と彼女の異世界冒険記   作者: 仲遥悠
動乱の北王国編 前編
203/411

宵闇の逃走ゲキ

 ガチャガチャガチャと、照明の落ちた通路を数人の人物達が走っていた。静寂を壊していくその音は、早く、絶え間無いリズムを刻み続け、その者達が焦っている様子を窺わせる。

 ガチャガチャガチャと、そこから少し間隔が空いて、別の甲冑音がする。こちらも急いでいる様子だ。


「お逃げを」


 分厚い甲冑に身を包んだ壮年の男が、短く言う。遠くの角には既に小さな光源が見えつつあるので、両者ーーー逃走者と追跡者の間隔は狭まりつつあった。


「し、しかしッ!!」


 反論したのは若い男の声だ。いかにも育ちの良さそうな顔立ちと、明らかに質の良い装備をしているのだが、どうやらそれが重いのか息切れをしながらの言葉であった。


「わ、私だけでは追い付かれた際に手も足も出せないだろう…だからその…お前達の力が必要だ!!」


 必死に何かしら、一人ではどうこうの言葉を続ける男。彼の言葉に耳を傾ける騎士はこの場に居らず、黙殺される。

 代わりに彼の身体が軽々と持ち上げられる。男が抗議を兼ねた制止を上げるが、それもまた、黙殺される。


「良いですか、一度しか申し上げません。抜け道を抜けたら街の西、一見すると入口が無く窓も無い小屋程の大きさの建物を目指してください。辿り着いたら屋根の裏、一箇所不自然な出っ張りがありますのでそれを押して、中に入ってください。私の部下達が待機しておりますので。では、さらば」


「ま、待て…センデっ!? うわぁぁぁぁっ!!!!」


 突如として壁が回転し、男の身体はその中へと消える。

 それと時を同じくして後続が追い付いた。


「良いか、一兵足りとも通してはならん」


 足音からして、向かってくる数は三十兵程であろうか。対して向かうは九兵。若い男を退避させた騎士は先頭に立つと、柄に手を掛ける。すると残りの八兵がそれに続く。


「迎え討つぞッ!!!!」


 鞘走らせた刃が当てられた光を弾き、宵闇を照らした。


* * *


「あら……?」


 フィーナは自分の頬を伝う温かなものに気付いた。

 まるで過去に流そうとした涙を思い出したかのように。それとも、不吉な予感がそうさせたのであろうか。

 いずれにせよ彼女は今、煌々と燃える暖炉の前で孤独であった。

 薪が燃える音が小さく部屋の中を響く。揺れる炎はまるで、移ろい易いとされる人の心を表しているようだ。

 「お酒でも飲もうかしら…?」と、呟く。自棄酒とは思いたくないが、自身の心を覆っている暗い感情を忘れ、眠りに落ち易くするためには良いかもしれないと思ったのだ。

 しかし憂鬱な心境から生じるものであろうか、立ち上がるのも億劫なので止めると、眼を細めて炎を見詰める。

 妖精の瞳(セイクレッドロウ)が発動すると、火の魔力マナが跳ねるようにして踊っているが視えた。活性化しているのであろうか。

 そんな光景をぼんやりと眺めている彼女の瞼が重くなっていく。やがて首が船を漕ぎ始め、うつらうつらとする。

 そんな時だった。


「だ〜れだ?」


「きゃ…っ」


 突然背後から声と共に、彼女の視界が暗闇に包まれた。不意打ちであったため小さく声を上げてしまった彼女であったが、驚きのためだけではない拍動の増加を意識しながら言葉を返した。


「…妻を一人で放置する意地悪な夫よ」


 棘があるのは仕方が無い。

 言い方に気を配らないと、自身の感情が筒抜けになってしまうからだ。ピコピコと本心のままに動いてしまう犬耳以外でも。


「酷いなその言い方は…まぁ間違ってはいないが、もう少し別の言い方は無かったのか?」


「無いわ…無いいから期待するだけ無駄よ…!!」


 手が離されることはなく、暫くそのまま時間が流れていく。


「…早く手を退けてほしいのだけど、何も見えないじゃない」


「そう言われるとな、反抗したくなっちゃうものなんだがなぁ…ははっ♪」


「…お願いだから退けて?」


 現れた彼の息は酒臭いーーーという訳ではないようで、単にテンションが高いだけのようだ。


「…何のつもり?」


「ん? 気分だな。たまには良いだろ?」


 手が離される。フィーナが振り返ると、弓弦が微笑んでいた。

 気紛れの行動というよりは、何らかの意図が見え隠れしていてもおかしくない様子であったが、気には留めなかった。


「…まったく、こんな所で寝たら風邪引くぞ? 寝るならベッド、な?」


「…別に寝ようとしていた訳じゃないわ。あなたが勝手に勘違いしただけよ、もぅ」


「ん、まぁそう言うことにしとくか」


「…何か腑に落ちない言い方ね。けどまぁ良いわ。早く寝ましょう」


「あぁ、寝よう」


 本心としてはもう少しお話をしたい彼女であった。しかし、瞼が片方閉じている弓弦の顔を見て我慢することに。

 彼が布団に入ったのを確認してから、暖炉の火を消す。そして自分も布団に入ろうとして、


「…占領されているわ」


 ベッド上で、布団に包まるようにして寝ているイヅナを見てそれを断念した。少女の名誉のために述べるのならば、決して彼女は寝相が悪くはない。

 代わりに隣のベッドで寝ようと、弓弦の頬を突いた。


「…あなた、そっちで寝ても…良い? こっちじゃ寝られなくて……」


 指で突かれて頬を凹ませること数回、夢中になっていた彼女は思い出したかのように彼に声を掛ける。


「…あぁ…好きにしてくれ……」


 先程布団に入ったばかりだというのに、今晩の弓弦は寝付きが良かった。声も今一つ声帯を震わせ切れていないものだ。

 元々貰う必要性はあまり無いのだが、許可が下りたので彼の隣に入る。分厚い窓に仕切られているとはいえ、暖炉の火を消したので徐々に部屋の中は冷え始めていたが、彼の体温によって布団は温められていた。柔らかいベッド、布団の感覚は彼女を一気に夢の世界へと誘おうとしてくる。

 眼の前から微かに漂ってくる、ホテルのシャンプーの香りが鼻腔を刺激した。意識して嗅いでみると、混じるようにして弓弦の匂いも。

 それはとても心地良い香りだった。さながら魔法の薬のように、彼女の心を拘束して離さず、意識を絡め取っていく香り。

 ようやく落ち着きを取り戻してきた鼓動が早まっていく。息は徐に荒さを帯びていき、肩と腹部の上下運動が大きなものになる。


「〜〜っ!!!!」


 まさかと思い指を顔に添えると、頬が指先よりも熱くなっていた。きっと今頃自分の顔は真っ赤なのだろうと、どこか他人事のように考える。緊張を落ち着けようとでもしているのだろうかーーー考えれば考える程に他人事のように思えてしまうのだ。

 彼に背中を向けて寝ようと、身動ぎをした。だが弓弦の寝姿を見れないのは寂しいと思ったので、結局元の体勢に戻ることに。

 次に彼女の視界に入ってきたのは彼の背中ではなく、彼の顔であった。恐らく彼女が一人悶々としている間に寝返りを打ったのであろうか、完全な不意打ちだ。反射的にギュッと閉じてしまった瞼を恐る恐ると開けると、整った顔立ちが視界一杯に現れる。


「‘……ん``んっ’」


 そっと顔に触れてみると、擽ったそうに頬が綻んだような気がした。フィーナもまた、彼の口から微かに溢れる寝息という翅が、肌を撫でているような感覚に小さく咳払いする。


「‘…デイル…ガノンフ…レティナ…スートルファ…’」


 今日は昨日、二人で盛り上がってしまった結果昼まで寝てしまったので、翌日のためにも早く就寝しようと思った。が、ふと昔のことを思い出したからか、最期を看取った四人の同胞の顔が思い浮かんだ。更にもう一つとある人物が死ぬ間際に遺した言葉も、今更ながら思い出す。

 ーーー翌日の目的地に、行かなければならない場所が生じる。今もまだ残っているかどうか、そもそもあるのかどうかでさえ定かではないが、折角この街を訪れたのだから行ってみるのも悪くはないと考えたのだ。


「‘お休みなさい。あなた…♡’」











ーーーろ…きろ……


 微睡みの中に浸る彼女の耳朶を、柔らかく、優しくて、最も愛しい声音が打つ。


ーーー起きろ…お〜い……


 「幸せ…♪」と内心呟く。囁くような声をもう少し聞こうと、寝たふりを決め込む。深い呼吸を繰り返し、寝息を立てているように見せていると、


「ん…っ」「んっ!?」


 とある感触によって一瞬で現実世界に引き戻される。イヅナが寝ている横でそれをするのはどうかと思ったが、チラリと横眼に見た少女は眠っているようだった。

 間近に迫っている彼の顔が離れる。恥ずかしかったのであろうか、相当に真っ赤だ。自分からしてきたのに拘らず、そんな反応を見せる彼を「可愛い」や、「愛しい」と思ってしまうのは彼女の思考回路が自然とそうさせてしまうものか。

 僅かに物足りなさを覚えつつも、欲望を満たそうとはせずに乱れた館内着を整える。


「おはよう、あなた。今日“は”良い朝ね」


 皮肉をたっぷりと込めた言葉に弓弦は苦笑する。

 自分の言わんとしていることが正確に伝わったことと、不機嫌を隠そうとしない態度にそれぞれ、二つの感情の笑みが混ざったような苦笑だ。


「おはよう。面倒事出現だ」


 彼は言外に伝えたことを改めて、口に出した。

 窓から見下ろせる眼下の街では、正に彼等にとっては面倒極まりないことが起こっていた。

 まず、街の雰囲気が重苦しくなっており、通行人の姿は一切見えない。代わりに別な通行人が居るには居るのだが、その人物達を通行人と称するには少々無理があり過ぎる。

 また歩いているそれとは別に、街路に等間隔で立ったままの通行人も居る。

 一様に武器を手に持っているそれはまるで、彼等以外の存在を逃さず監視するために配置されているようであった。


「…本当に面倒事よ。わざわざ私達が滞在している時にやらなくても良いじゃない…もぅっ」


「…それは仕方が無いことだ。外が落ち着くまでは大人しくしているのが吉だな」


「…そうね」


 そんな光景を見詰める二人の表情は、揃って心底嫌そうなものだ。旅行を楽しむ気満々でこの街を訪れたというのに、興冷めも良いところ。

 イヅナを交え三人でのんびりと過ごすのも決して悪いとは思わないのだが、「折角の旅行」というフレーズが二人を憂鬱にさせていた。


「…昨日の今日でこうなってるとはな。包囲網っぽいから、ありそうなのは囚人の脱獄とかか。…昨日少し感じたような気はしたが魔獣の気配は感じられないし。探し人ならすぐに捕まるなどして収まるはずだから、それまでの辛抱じゃないか。な?」


「…すぐに終わらなそうな気配がするのよ。昨日の今日でこうなって、今日の明日で元に戻るなんてそんな…都合の良いことは考えられないわ」


「なら解決するか?」


「隊員として行動している訳じゃないもの、嫌よ絶対。人間の問題は人間自身に片付けてほしいわ。それに」


 冷たく見下ろすフィーナの視線や、立てられた人差し指は街路を歩く人間が持っている物を示した。


(あんな物)を持っている人間同士の争いに介入しても良いこと無いわ。疲れるのがオチだもの。それに欲を言うのなら……」


「ん…?」


 腕に柔らかいものが当てられる。

 頬を赤く染めたフィーナは、外の光景を見ていた時とは正反対の視線を弓弦に注ぎながら、彼を自分の下へと引き寄せた。


「部屋の中でずっと、こうして居た方が何十、何百倍も楽しい。外に出られないのは残念だけど…三人で恙無く室内で過ごすのも別に悪いものじゃないわ」


「はは…嬉しいことを言ってくれるな。俺も面倒事は嫌だから、 お前の意見を尊重するよ。万が一お前やイヅナの身体が傷付けられでもしたら、眼も当てられないしな」


「ふふっ、平和が一番…と言うことかしら?」


「んん…自分達から好んで争い事に首を突っ込むようなことはしたくないってことだな。パ〜っと酒でも飲んで過ごすさ…っと、姫様が起きたか」


 背後のベッドに視線を向けると、身体を起こしたイヅナが瞼を擦っていた。


「さ、顔を洗って歯を磨いたら飯行くぞ。腹が減っては何とやらだ」


「分かったわ。イヅナ、先に洗面台使う? 使わないのなら先に使うわよ?」


 コクリと頷きつつもまだ眠たいのか、首肯がまるで船を漕いでいる状態の少女は顔を洗いに向かう。なので、彼女は改めて窓の外に視線を遣った。

 光を反射することにより、鏡のように薄く背後の光景を映している窓には、ワインのラベルを見ている弓弦が。帰って来てから飲む気満々の彼に向ける鏡越しの笑みは、微笑と苦笑、二つの感情が込められていた。

 窓から窺える外では、武装した兵のみが闊歩している。旅人の姿が無いところを鑑みるに、全員ホテルの中に居るのであろう。

 ホテルは朝から賑やかな様相を呈そうとしており、それを頷けるように他所の宿泊施設や家でも、こっそりと外の様子を窺っている人々が居た。

 一体誰を探しているのだろうかと疑問が湧いたが、自分達には関係無いことであるのでそれを打ち消す。無関係な人間の捕物劇に興味を持つ程、物好きでないと彼女は自負していた。


「…終わった」


 やがてイヅナが部屋に戻って来ると、今度は彼女がポーチ片手に洗面台の前に立った。

 髪を縛ってから歯を磨いて、顔を洗う。蛇口から出てくる水を冷水にしてあるので、水が顔に当たる毎に気持ちが引き締められていく感覚を覚えた。

 普段ならば朝からシャワーを浴びる等をする彼女だが、急いでいる時はその限りではなく準備を簡略化している。

 ゴムで縛る前に髪を梳いていくと、抵抗無く櫛を受け入れる美しい金糸のような髪が整えられ、まるで淡い輝きを放っているようだった。


「‘あ、そうだ…たまには気分を変えてみるのも、悪くないわね……’」


 ふと思い至り、ポーチから取り出したゴムを口に咥えたまま髪に手を掛け、結っていく。鏡を見ながら、同時に指先の感覚を使って右側から結っていく。

 スムーズに右側を結ってゴムで留めてから、次は左側を結っていく。髪を三叉に分け、中央が常に下になるよう右と左を編むようにして結っていくーーーおさげの三つ編みだ。

 左側もゴムで留めると、最後に左右のバランスの違和感が無いことを確認してから双方の髪を前に垂らして鏡を見る。


「‘ふふ…後はこれを……付けてっと。完成ね♪’」


 そして最後にあるグッズを着けて部屋に戻る。一体何を思ったのか。どうしてそうしたのか、気紛れなものである。


「(ちょっと恥ずかしいけど…喜んでくれるかしら? ふふっ、だと良いのだけど♪)」


 上機嫌に犬耳をピコピコさせて戻って来た彼女に対して、弓弦がどんな反応をしたのかというと、


「……」


 無言であった。どこぞの青髪の男を彷彿とさせるような無言、無表情を見せた彼を放置して、少女の姿を探そうとして止める。彼女は弓弦の側に居たので探す必要は無かったのだ。


「……」


 どんな反応をしてくれるのか楽しみであったのだが、返って来たのは弓弦と似たような反応であった。

 あんまりな反応に彼女は、ポーチの中から手鏡を取り出して自分の姿を確認するが、謎の反応を促してしまうような違和感は見受けられない。

 寧ろ、結び方に関していえば、違和感を見付けることは不可能と評しても良い程には、しっかりと結ばれていた。暫く振りにここまで結ったが、中々どうして手が覚えているものである。


「「……」」


 しかし、無言である。

 まるで時が止まってしまったかのように、瞬き一つせず彼女を見詰めているだけの二人に、痺れを切らした彼女が口を開こうとした時、事件は起こった。


「…フィーナ…年甲斐も無い」


「っ!?!?」


 まさかの批評に思わず息を飲まされる。

 まさか、まさかだ。イヅナから年甲斐も無いも言われようとは露程も思わなかったのだ。

 それ故にダメージも大きく、逃げるようにして、且つ懇願するような瞳を夫に向ける彼女だが、


「って弓弦が小さく呟いた」


「あっ、こらイヅナ!?」


 その瞳は一瞬にして落胆の色に染まった。

 少し冒険してみただけでこんな反応を取られてしまったこと、それがかなり響いたのか、あれ程までに高揚していた気分は真逆に転換される。


「……っ!!」


「お、おいフィー、思っていないからな? 俺はそんなこと思っていないからな…っ!?」


 ギロッという擬音が今にも聞こえてきそうな眼で睨む彼女に、あれこれとフォローの言葉を口にする弓弦であったが、一度完全に傷付いてしまった乙女の心は往々にして簡単には癒せないものだ。

 涙こそ流さないものの、今にも泣き出してしまうような気がして焦る彼は、自棄気味に「俺だってほら、潜入の時とか女装してるし! 年甲斐も無く…いや、男として微妙なラインの行動をしていたりとかしていたんだから大丈夫だ! な?」と、全くフォローになっていない言葉を言うのだが、彼女の心に響くはずもない。

 寧ろこの時彼女の心には、悪魔の声(弓弦の内に住んでいる悪魔ではなく比喩的な表現)が響いていたのだ。


「なら……っ!!」


 悪魔の声を口に出そうと、息を吸い込む彼女。

 共に長く在った経験に起因するものであろうか、二人は似た者夫婦(同士)であった。

 つまり、片方が自棄気味なら、もう片方も自棄気味になってしまう。実際には聞こえていない、内心の欲望という名の悪魔の囁きをそのまま口に出そうとしている彼女もまた、自棄気味であった。


『不味いにゃ』『頂けないな』『危険か』


 弓弦の脳内にクロ、ヴェアル、バアゼルの声が聞こえるが、彼がその言葉の意味を考える暇は無く、


「ならここでっ、今すぐ女の姿になって私の前で淫らな自慰行為でもしてみなさいっっっ!!!!」


 恐るべき爆弾発言が投下された。

 その爆弾の直撃を受けた弓弦は口をパクパクとさせ、イヅナはキョトンと、訳が分からないとばかりに首を傾げるのであった。

「ありゃ…フ~ちゃんそれ…コスプレだよ……確かにユ~君の好きな部分を押さえてはいるけど…フ~ちゃんにはちょっとなぁ……」


「……何故私が呼ばれた」


「あ、アンナちゃん。珍しいね」


「貴殿か。長らく…ではないな。話数の話では当てはまるが」


「…うーん、時間はあまり進んでいないからかな。そうポンポンと時間ばかりが経っちゃっても困っちゃうけど」


「それは恐らく、その内あるだろう。そう何度も何度も面倒事が起こっても、それこそ困るのだから」


「そうだね。ところでアンナちゃん、準備は万端?」


「準備…? 何故私が準備をする必要がある」


「おろ? だって次のお話、アンナちゃんの描写があるでしょ?」


「…何の話だ」


「そう言うことにしとこっか。お楽しみにだよね?」


「…。でだ、フィーナめ何を考えている? 幾ら良い反応が得られなかったとしても、あれは自棄を起こし過ぎだ」


「…おろろ、ユ~君を擁護する立場に居るだなんてまたまた、珍しいね」


「私がいつあの男を擁護した? フィーナの発言が、女性としての発言としてどうかとは言った話だが」


「そう言うことにしとこっか。ところでそれ…付けてるんだ」


「…何がだ?」


「…ううん、何でもないよ。じゃあ久々にアンナちゃんの予告コールですどうぞ!」


「私に振るなっ! っ、まぁ良い…『まったく…あの男は何やら長閑に過ごしているようだ。フィーナと惚気に惚気けて…フン、だがこっちは大忙しだ。無能共め、一行に槌を下ろそうとしない。レオン・ハーウェルに言い渡す時は即座に下ろしたのに、だ。…だが、それももう終わりだ。終わらせてやるーーー次回、雪に躍り出すモノ』…取り敢えずは一段落…? これは私のものか。私の描写はそれ程無いと言うのに……」


「…影で頑張ってたんでしょ? それに一度で終わらせたかったんだったら、それで良いと思うのだけど。良いところだけを見せたかったんでしょ?」


「…フン、知るか。ではな、私は忙しいので去らせてもらう」


「行ってらっしゃい、頑張ってね~」




「…………………………………………」

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