彼女にもギョウム
溜まりに溜まった業務。
それを前に格闘していたのは何も、隊長であるレオンやその手伝いをしているセイシュウだけではない、彼女もだった。
カタカタと端末の文字盤に指を躍らせ、各世界の崩壊率の調査や、他の隊員によってリストアップされた、艦内における輸入物品の個数調査。果ては艦内の監視カメラ映像まで確認している彼女もまた、隊長室で業務に明け暮れる二人と同じように全身から疲労の気配を漂わせていた。
「疲れましたわね……ですが、これで…一、段落ですわ」
微かに肌に滲んだ汗が下着を濡らし、肌に密着させる。
決して心地良いものではないのだが、可能ならばこのままベッドに沈み込みたい彼女は席を立つと、研究室へと向かう。
その道すがらのことだ。
「……」
彼女は、幽鬼の如き足取りで前方から歩いて来る存在を見付けた。
「弓弦……」
紫紺の髪に夜空を思わせる瞳の色ーーー知影だった。光の無い瞳で、必死に光を求めるように手を伸ばして歩いている様は彼女でなくとも恐怖を覚えるものであろう。
「弓弦…弓弦……」
彼女の口から何度も零れる弓弦の名前に、リィルは今朝の記憶を思い出す。三人で仲良く艦を離れた弓弦達を見た時、知影がこうなる気がしたのだ。
彼女の依存度は以前よりも増している。そんな彼女を放ってどこかに行こうがものなら、最悪血の雨が降る可能性すらあるというのに、それを行った。
故に内心リィルは弓弦を少しだけ糾弾した。少しだけというのは、彼女の心の内の殆どが、やるせなさに支配されているためだ。
ハーレムは作るよりも維持する方が大変だ。いかなるその場凌ぎでも、遠くない日に限界は訪れる。例外こそあるが、それは定義上の問題だ。実際にそれを実行し、為し得ている存在を彼女は知らない。
ーーー故に、弓弦が現在の状況のままにしていることの、限界が近付いているような感覚に囚われた。
「見てられませんわね。少しだけ付き合ってくださいまし」
「…?」
痺れを切らしたリィルは知影の腕を取ると、研究室へと連れて行った。
「…っ!!」
研究室に入った彼女は、奥の部屋にある自身のベッドに知影を放り出した。
意識が戻ったのか知影が眼を見開くが、お構い無しに彼女は、その動作を止めない。白衣のポケットからキットを取り出すと、そこから一本の注射器を抜き放って構えた。
「へ?」
素っ頓狂な声を上げる知影に見詰められ、注射針が照明を反射した。
彼女は最初、弓弦弓弦と寝言のようなものを繰り返すばかりの知影の意識を明瞭にさせようと、『セイシュウスペシャル』を使用するつもりだったのだが今は、
「巨乳は死っ、ですわぁぁぁっ!!!!」
知影の女性らしい体格への、怒りから電気ショック道具を使用しようとしていた。
「え、ちょっと待っーーー」
「…ん?」
遠くから悲鳴のような声が聞こえたような気がしてディオは、部屋の外を見遣った。
彼の息は上がり、肩は上下している。先程まで剣を振るっていたのだから当然ではあるのだが、「まだまだ鍛錬が足りないな」と息を整えてから隣に立つ人物に向き直る。
彼の隣に立っているのは淡い緑髪に紫の瞳が特徴の、姿を見るだけでリィルが発狂しかねない程の豊満なスタイルを携えているのは、お留守番悪魔シテロ。レイアの下を離れここ、『VR2』にやって来ていた。
さて、彼女が何をしに来ていたかというと、一言で述べてしまうのならば暇潰しだ。
弓弦からお小遣いはもらっているのだが、どうにも使う気になれない彼女は、適当に艦内を散策していた。そしてここを通り掛かった時にディオを見付け、運動がてら彼と一戦交えた。
最初から決まり切ってはいたのだが、結果はディオの敗北で終わった。
シテロは女性の姿をしているが一応【リスクX】だ。ディオが勝てる見込みなど無いのだが、彼はシテロが悪魔龍であることを知らなかったりする。
「ディオルセフ君、弱いの」
「うぐ…分かっているけど直接言われるとキツい言葉だね。その通りだけど、その通りだから強くなりたいんだ。今の弓弦に勝てるぐらいには…ね」
立ち上がると、剣を握る。
この空間で再現された、使い続けている彼の愛剣は、初めて剣を託された日より、傷付き、これまで潜り抜けてきた戦闘の数々を物語っていた。
「今のユールを? 凄い目標なの」
「笑うかい? 無理な話だって。弓弦、凄い強いしね」
馬鹿な夢物語だと一蹴されても良い発言なのだが、シテロは「そんなの分からないの」と、彼に微笑み掛けるだけだった。そしてそれは、ディオに稽古をしてくれる人物達全員に共通する動作であった。
毎回毎回、否定されるだろうと思い話した言葉は未だ、誰にも否定されたことはない。
「どうしてそう思う?」
その度に彼は驚かされるのだ。
言葉にするのは簡単だが、今の弓弦を超えるのは即ち、この部隊で誰よりも強くならなければならないので、実質不可能な話だと彼自身、自覚しているのだ。
それなのに、彼女達ーーー俗に、弓弦ハーレムの構成人物達はその自覚を否定し、さも当たり前のように彼の可能性を肯定するのだ。
それはシテロも例外ではなく、「可能性があるからなの」と、問いに対して返答をする。
「さ、構えるの。男の子なら立ち上がって、私ぐらいに勝ってみせないとユールを倒すなんて、夢のまた夢なの」
「そうだね…」
剣を構え、対峙する。
柄を握る手に力を込めると、意識が研ぎ澄まされていく感覚が彼を支配した。
「っと!?」
後ろに身を引いた次の瞬間、衝撃が彼の前方を掠めた。
スナップの効いた手首から繰り出される平手打ちだ。先程はこの一撃のみで宙を数回回転する羽目になったディオは、予想通りの位置への一撃を避け切ってから、左手を前に突き出す。
『砕けっ!!』
すると左手を中心として魔法陣が展開し、石の礫がシテロに飛来する。地属性初級魔法“ロックバレット”だ。
直線上を走る鋭い石の礫をシテロが腕の一振りで弾き飛ばすと、後続の礫がはじきのように拡散していった。
その光景に怯むことなく彼は背後に回り込むと、今度は地面に手を付け陣を展開する。
『貫け岩槍っ!!』
鋭く隆起した地面がシテロの喉元に迫るより早く、肉薄する。
相手が女性であったとしてもディオに手加減の選択肢は無い。寧ろ、選んでしまったら瞬殺あるのみだ。
相手は彼よりも遥かに格上の存在なので、一撃一撃に躊躇いを持ち込むのは、逆に失礼に当たってしまうと思い、剣を突き出す。
手応えは、無い。
代わりに彼は、自身の眼の前の存在を中心として、“何か”が集まるのを知覚した。未だ魔法に慣れ切っていない彼がそれを感じることは、即ち集まる“それ”ーーー魔力が強大であることを示している。
それはシテロが動かなかった理由だ。正確には動かなかったのではなく、動けなかったのだ。
この時彼は、放たれる魔法が自身と同じ地属性魔法であることを悟った。
だが彼はそのまま、構わずに大きく踏み込んだ。
「良い覚悟なの」
独特な構えから繰り出される、副隊長直伝の刺突技。まだ副隊長に認められるまでと、名付けてすらいないディオの奥義がシテロの胴体を狙い澄ます。
『吼えよ大地、轟いて呑み込んで、万物を回帰させるの』
魔法が完成する。
地面が罅割れ、大地のエネルギーが解放されていく中、彼はその中に踏み込んで行った。
* * *
「…え、あれ?」
いつの間にかディオは、VR空間の外に投げ出されていた。
何が起こったのか分からずに彼が周囲にシテロの姿を探すと、キョトンと首を傾げる彼女を見付けた。
「…やり過ぎちゃったの」
全く訳が分からない彼がその理由について訊くと、「手加減間違えちゃったの」と、謎の返答がもたらされた。
「…えっと…どんな魔法を使ったんだい? 凄い地属性魔法って言うのは分かったんだけど……」
「“グランドクラッシャー”って言う魔法なの。ディオルセフ君に地属性魔法の凄さを伝えようと思って、久々に発動してみたの」
「グラ…? 訊いたことのない魔法だけど…地属性魔法?」
「なの。私が使える魔法の中でもとっておきの魔法なの」
自身の属性が地属性と理解してから、様々な地属性魔法の名前や効果を勉強していたディオだが、聞いたことのない魔法なので疑問符しか浮かばない。が、次の彼女の言葉を訊いた瞬間彼は、思わず鸚鵡返しに訊き返してしまった。
「…た、大陸を破壊する魔法……? シテロさんって一体…?」
「内緒なの」
シテロが自慢気に豊満な胸を逸らすと、突き出された双丘に視線が釘付けになってしまうディオ。悲しき男の定めである。
「秘密がある女性は素敵そうに見えるって言われたの。だから内緒なの」
揺れるそれに吐きそうになってしまった溜息を、既のところで飲み込むと、突如として疲労感に襲われ、景色が揺らぐ。
「…疲れた?」
膝が笑っている。
VR空間の性質によって傷こそ残らないものの、痛みは少なからず現実世界にも生じてしまうので、向こうで相当なダメージを受けたことが簡単に察せられた。
しかし、大陸を破壊する程の衝撃を直接その身に受けてしまったのだ。内心で自身の膝に喝を入れて立とうとするも、上手く歩けそうにはなかった。
「あはは…ちょっとね」
「部屋まで送ってくの」
「いやいやいやっ、良いよ別に!!」
声音こそ元気なものの、身体は疲れ切っていた。シテロの提案を断ったディオだったが、肩を貸すと強く申し出されてしまい、断り切れなかった。
「こっ! ここまでで良い…です」
結局自室の前まで連れて行かれてしまったディオは、ひたすら無心に努めようとしていた。肩を貸されるということはつまり、彼の腕に彼女の胸が時折触れてしまうことを意味していたからだ。
肩を貸されて隊員室の前まで戻って来たディオの、この時の脳内は邪念で溢れ返っている。なので部屋の中まで送ると言い出された場合はどうしようかと、必死に考えていた彼だったが、簡単に腕が解放されたので少しだけ落胆してしまった。
「…えっと、今日は訓練に付き合ってくれてありがとう。まさか『失われた魔法』が見れると思わなかったから、凄く勉強になったよ」
本心からの言葉であったが、視線がシテロから外されてしまうのは、煩悩が働いているためだ。
彼女の一部分を見てしまうとどうしても、血の巡りが良くなってしまうのだ。
「じゃ、じゃあまた……」
逃げるようにして扉に手を掛けてしまうことを悪いと思いつつも、早鐘を打つ心臓がそれ以外の行動を許さない。
「ゆっくり休むと良いの」
「う、うん」
「地属性魔法についての訓練をしたかったら私に任せてほしいの」と言葉を残して、シテロはステップしてその場を離れた。
ーーー痺れりゅるるるるるるっ!?!?
素晴らしく滑舌の良い女性の声が聞こえてくる研究室付近の通路を通過しーーーようとして引き返し、
「おろ。お帰りシテロ」
506号室に戻った。
昼食を食べている途中のレイアの視線を追うと、ちゃんと彼女の昼食が用意されていたのでそれを机に運ぶと彼女は手を合わせた。
* * *
分厚く覆われた空からは、白い粒が風によるものか、不規則な軌道を描いて落ちてくる。
空間を埋め尽くす程の銀景色に足跡を残して、弓弦達はその場所を訪れていた。
「雪だーっ♪」
先行しているイヅナは、満面の笑みを浮かべ楽し気だ。
そんな彼女の背後を並んで歩いている弓弦とフィーナも、そんな彼女を微笑ましそうに見ていた。
「ふふっ、あの子ったらあんなに燥いじゃって…体力保つのかしら?」
「ははっ、子どもは風の子と言うし、多分保つだろう。寧ろ俺達の方が保たないかもしれないぞ?」
「…保たなかったらあなたの所為よ? 幾らハイエルフの私でも…あんなに…激しいの……♪」
一人何かに悶えているフィーナと、所在無さ気に視線を彷徨わせ、頬を掻く弓弦の前方。サク、サク、サクと足取り軽やかに鉄製の門の前に立ったイヅナが、両足で白く染められている地面を蹴り中に入り、振り返る。
「…二人共急いでー♪」
「…ご主人様駄目…こんな開放的は場所でそんなこと…っ「おーい、戻って来ーい」…はっ!?」
「はは…まったく。さ、家の姫様がお待ちだ」
二人は手を振る彼女に促され、歩幅を広げた。
ーーー界座標【51694】『ベルクノース』
「…家の姫様って面白い言い方ね。その言葉私も貰っちゃおうかしら」
鉄製の門を潜り抜けた弓弦達が入った『ベルクノース』は北王国だ。
北方に永久凍土の陸地を有しているこの国は、一年の実に半分期間において、空が雪雲に覆われている。
建造物も他国と比較して独特の形状をしているのだが、ふと、妙に冷たい印象を弓弦は受けた。そしてそれは、町中を埋め尽くす雪によるものではないと、そんな予感があった。
「一先ず先に、宿だけ取りに行かないといけないか。良さ気な宿を取って来ようと思うがどうする? 先に市街地回るか?」
「ううん…そうね。一緒に行くわ」
イヅナの名前をフィーナが呼ぶと、少女が戻って来る。
「先にチェックインだけしておくわよ。その後沢山見て回れば良いから」
「…は〜い。…ん」
「ん? あぁそうか」
伸ばされた手と自分の手を繋いで、宿に向かう。イヅナの左にフィーナ。右に弓弦が並んで歩く。
「ふふ…逸れないようにするのは大事よね、イヅナ」
「…コク、大事」
旅行者が絶えることのないこの国の街路は多くの旅人が往来している。
道の端々に見えるのは、雪達磨であろうか。それぞれ製作者の個性が反映された彼等の前で燥ぐ子どもが、数人。いずれも、これでもかという防寒具に身を包んでいる。旅行者の子どもだ。
彼等と比較して薄着しているのは、この国の子どもだ。普段から寒さに慣れている彼等にとって、自国の寒さなど取るに足らないものであるのだろう。雪合戦をしている子ども達も居た。
そんな様子を見守っている大人達は、手袋を着用した手で白煙立つ飲食物を掴み、談笑するなどして楽しんでいる。三人共朝食を食べているので、腹の虫が騒ぐということは今のところ無さそうだが、それも時間の問題であろう。視線を自然と向けていたのだ。
「賑やかな国だな。(熱燗か? 冷えた身体に丁度良さそうだな。後で飲んでみるか)」
「ふふ…あっ、今顔に当たったわね。大丈夫かしら…(そう言えばここの国お酒は強かったわね。何とかしてこの人を酔わせられないものかしら?)」
「…雪合戦。(…後でやりたい)」
三者三様の考え方をしながら三人はホテルの中へ。
すると、寒気が一瞬にして暖気に変わった。
チェックインを済ませた三人が案内されたのは、全五階あるホテルの三階だ。
閉じられたカーテンを開くと、離れた所に王城がある街が見渡せる。掃除の行き届いた部屋の隅には暖炉が設置されており、暖を取る場合はそこに薪を焼べれば良いようだ。
明かりと電話らしき物が置かれた台を挟んで並べられたベッドは二つあり、そこにダイブしようとしたイヅナだったが、二人に止められた。
荷物を隅には置いて、貴重品のみをポケットに入れていく。ここの鍵もカード式らしいのでカードキーも忘れられない。
「中々悪くない部屋だな。寛げそうだが、まさか電話があるとは驚いたな。この世界の文化水準はどうなっているんだ?」
「あら、そんなの国によってまちまちに決まっているじゃない。さ、折角の旅行なのだから、羽を伸ばすわよ〜?」
必要な物を所持していることを確認してから、妙に納得がいっていないように首を傾げつつも少女と部屋を出る弓弦。その背中を見て、
「‘…確かにそう…二百年振りだとしても、印象変わり過ぎかもしれないわね……’」
心の内からほんの少しだけ言葉を零すと、彼女はその背中を追い掛けて行くのだった。
* * *
バアゼルはテレビに映し出された画面を凝視しながら、蜜柑を食べている。
弓弦によって新たに補給された今回の蜜柑は酸味よりも甘味が強い品種であり、彼は苦目のお茶と共に悠々と時間を過ごしていた。
「成る程、王者にとっても思い出の場所か」
その反対側に座って同じようにテレビを見ていたヴェアルも、蜜柑を齧っていた。
『ベルクノース』ーーーそれはフィーナにとって思い出がある場所の名前だが、それは彼にとっても同じだ。
「…人の身で悪魔に干渉しようもする者。我等の力を得ようとする愚物は常に存在するものだな」
呆れの感情が込められている言葉を呟くと、息を吐く。
「…人の性か。確かに愚かだな…が、愚か故に恐ろしくもある。素知らぬ顔で暴挙を行う…赤児にも通じるところがある」
「ふむ…暴挙か……」
蜜柑の段ボールが一つ空になった。
「…歯痒いな」
テレビを見ながら寛ぐ二悪魔は、静かに己達の主が感じた違和感について、思いを巡らせるのであった。
「っとこしょ、どっこいしょ…っと、おらよっと。ふぅ、お前の得物って中々重いよな、メライ。こんなのいつも、どうやって振り回しているんだ?」
「貸してみろ」
「あぁ」
「…ここを持って…ッッッ! こうだッ!!」
「おぅあっ!? 危ねぇな。しかも動作が遅いから隙だらけになるんだが、これで戦えているんだよな。素直に凄ぇって感心出来るな」
「俺の得物は魔獣を押し潰すため重さに重点を置いているからな。振り回すのは力が居るが、威力はお墨付きだ。ま、土属性魔法使いは肉体を硬化させる魔法もあるし、そうなると必然的にハンマーとかを使う使い手は多くなる。受けることを前提とした戦いが出来るからな」
「そりゃあその肉体を見れば頷けるが…って、おい動かすな気持ち悪い。筋肉付ければ良いって訳じゃないんだ、そんなので女の子にモテると思っても土台無理な話だし」
「…モテたいって気持ちはあるが、取り敢えずは一人の人物に振り向いてもられえば良い。あの方とのゴールインこそ俺の目標だ」
「…おい待てよ。それは俺の台詞だぜ? 俺が楓さんと結婚するんだよ。これはお前にも譲れない話だぜ、メライ」
「ロイ、そんなことを言ってもお前みたいな、ひょろい奴じゃあそれこそ振り向いてもらえないな。あぁ言った出合いの人は、自分よりも強く、包容力のある男性を求める傾向が強いんだとさ」
「ハン、言ってろ。そんな話……‘詳しく訊かせろ’」
「‘…あぁ、実は最近この本を買ってな。まぁ楓さんみたいな女性の攻略方法とか書いてある訳だ’」
「‘…ふむふむ’」
「‘つまりこの本に従えば…楓さんを攻略出来る、必ずな’」
「……」
「‘裸エプロンの楓さんが見れるぞ’」
「メライッ! お前天才だろ!? 最高じゃねぇか!」
「っははは! だろ?」
「良しじゃあそれ向こうで読もうぜ、今すぐにだ!」
「良し来た。じゃあキール、予告を頼むぞー♪」
「……。さっさと帰っとけば良かったよ。…『…光の届かない空、それを覆う毒々しい雲……あの時の光景が甦ったのは、やっぱりこの街に戻って来たことに起因するものなのかしら。…あの頃はまだ、若かったわねーーー次回、外見と実年齢のサイ』…何だか痛い人みたいじゃない。……あの二人は一体どこに行くんだろう? まぁ良いや。はい、じゃあ次回も宜しく」