本に遊ぶ
「寝る」と言った弓弦が横になってから暫くして、寝息が聞こえるようになると、小さく噴き出す声が空間内に微かに、木霊した。
それは口、それとも、別の部分かそれは、存在毎に異なってくるのだが、明らかな反応を見せた一人の存在は自らに集まる視線に耐え切れずにそれを強くしてまた、一人距離を置いた。
「わ、私…頑張ったの! 凄く…凄く頑張ったの! だから…ぅ〜っ、きゃっ!?」
その過程で背後に設置してあった本棚に、背中の龍翼が打つかると彼女は驚いて頭を手で庇うのだが、数秒経過しても衝撃の兆候は無かった。怯えの色を見せながら頭を上に上げていくとそこで、ようやくの衝撃が彼女の、優しく整えられた風采を直撃した。
「にゃははははへぶしっ!?!?」
堰を切って笑い始めた存在に落ちてきた本を飛来させると、仄かに赤腫れした額を摩りながら涙眼で他二体を睨むと、既に視線は逸らされていた。知らぬ顔で、素知らぬ様子を貫き通そうとする二体に、怒りの視線を向けてから落ちた本を拾おうとすると、開かれていたページの内容が飛び込んできた。
「『眼の前に、熟睡している男の人が居ます。どうしますか?』」
本のタイトルは『ときめくメモリアリー外伝』だ。どうにもタイムリーな質問であるので興味を惹かれ、文章を読み上げた女性ーーーシテロは隣のページにある三つの選択肢へと視線を向けた。
1.隣で寝ちゃう♪(キャッ、乙女)
2.襲っちゃう♡(キャッ、大胆)
3.掘ってもらう♂(ウホッ、素敵)
「…二、ううん、い、一なの…っ」
三方向からの好奇の視線に気付いていない彼女は、生唾を飲んでから指定されたページを捲る、
「…。ちょ、ちょっとだけ…なの」
前に、別番号で指定されたページへと捲っていく。勿論好奇心からだ。
「おぉ…」「ほぅ…」「ふむ…」
『夜。街灯と月明かりが薄暗く照らしている公園で少女は、ベンチに身体を横たえている男性を見つけた。見た目から歳の頃、二十代から三十代前半と言ったところだろうか。着ている服は街で見掛けるサラリーマンが着用しているようなカッターシャツにスラックスであるのだが、非常に顔立ちが整っておりまるで、芸能界に居てもおかしくない。寧ろ、居て然るべしであると少女は考えながら、少々逡巡を見せる。
こういった類いの空間に居を構えている男性に見られるような無造作に生えた髭や、防寒装備は見当たらない。シャツも、皺こそ所々見られるものの、清潔感を損なってはいない程度。頭髪は若干乱れているものの、これは寝ている間に乱れたのだと考えれば頷ける。纏めると、おおよそこの夜の公園に似つかわしくない人物であった。
その時少女はーーー
反射的、否、本能的で取ってしまった行動なのか。少女の思考回路は混乱の様相を呈していた。いつの間にか取り出しいつの間にか力を込めていた右腕に伝う、何か。
それは生温かく、溢れて地面に垂れていく。
その色は、深紅。
「…っ」
誰かの声が聞こえた。
おそらくこの光景を見られてしまったのだろうか。いや、そうでなくとも、何者かに操られたかのように行為に及んでしまった彼女は、どうやっても抜け出せない袋小路に迷い込んでしまったようだ。壁は徐々に狭まり彼女を押し潰そうとしている。遠耳に聞こえるサイレンの音が奏でるのは彼女の鎮魂歌であろうか。
既に事切れた男性を見つめ少女は、歓喜に打ち震えるのでも惻々とするのでもなく、ただ呆然としていたーーーDead end』
「……」
無言で元のページへと戻ったシテロは、小さく鼻を啜りながら本来、見るはずであったページへと進んだ。恐る恐る開いているのは、先程のような内容を警戒しているのであろうか。
強く閉じた瞼へ徐に視界情報を入れていくと、その内容が頭の中に入ってきた。
『何をどうと考えた訳でもないのだが、少女は男性の隣で横になりたいという衝動を覚えた。
寒空の下、一人寂しく横になっている男性に対するそれは彼女の優しさなのかもしれない。そして幸いなことにこの公園のベンチは、背凭れが無い代わりに奥行きがある形状のものであったので、丁度彼女が求めているニーズに応えていた。
「……」
熟睡している男性の隣にある人一人分のスペース。
そこに少女が身を滑り込ませると彼女の心を謎の高揚感が支配した。あまり異性に触れたことが無い彼女にとってそれは、未知の感覚であると共に、より追求したいという知的好奇心を刺激するものとなった。
知りたいという欲求は時の経過と共に留まりを知らず増加していき、思わず身をそっと寄せる。
ーーーどれだけ経過したであろうか。息を飲む気配に少女は、微睡みに身を浸すのを止めて視線を巡らせるとそこに新たな、しかし、彼女か良く知る人物が立っていた。
身体を起こすとその人物は、安堵に表情を染めてすぐ、あの男性に視線を向けた。
怒られると少女は思った。当然だ、まだ成人に満たない女性が見知らぬ男性と夜を共にするのなど、非常に宜しくないことで、大目玉を覚悟して身を縮めると、いつまで経っても何も言われない。
流石におかしいと考え瞼を開けていくと、そこには談笑している両者の姿があった。会話内容から仲が良さ気だと分かり、どうも付き合いの長い知り合いであるようだった。
やがて話に区切りが付くと、とうとう事の追求となった。深夜の公園で抱き合うようにベンチで眠っている男女だ。どう考えても何も無いとは結び付かない状態であるが、困ったように頬を掻く人物ーーー少女の母親はその男性について彼女に教えた。
その男性はやはり、十数年間とそれなりに母親との付き合いがある人物だ。小さな会社に勤めており、人格もそれなりには優れているのだが、週に一日、こうして外で一夜を過ごす謎の癖がある人物なのだと。
「へ〜」と納得を示した少女はそこで、ふと脳裏に浮かんだ疑問を口に出そうとした。
1.質問を口を出す。
2.質問を口を出さない。
3.ゆさぶる』
そこでシテロは本から眼を離して深呼吸をする。先程選んだ選択肢は間違っていなかったのか、物語が続いて次の選択肢があったので一呼吸置こうと思ったのだ。
「……どうして皆眼を逸らすの」
すると一瞬の内に、三方向から向けられていた視線が散開する。
先が気になるシテロであったが、こうも視線を向けられていると戸惑いを隠せない部分がある。しかしかといって掌で踊らされるのも好きではないのだ。それが選択肢にもあった行為であり、炬燵で寝ているのが弓弦なのならば、なおさらといえるであろう。
確かにしたい、したいのだがーーー
「…もう寝るの」
といっても抗う理由等は特に無く、謎の本を本棚にしまった彼女は最初に自分が居た位置に戻り、そこに身体を横たえる。
この空間では暑い寒いの気温の概念は無く、炬燵とて一つのオブジェでしかないはずなのだが、彼女は自分の身体が熱を持ち始めつつあるのを自覚する。
彼女に対し最初こそ意味深な視線を向けていた三体の悪魔はその様子を暫く眺めた後、気を遣ったのか場を離れていく。
「……すっかりその気になっちゃって皆酷いの。そうなったら良いなとは思ってるけど…急過ぎるの…」
こんなことになったそもそもの始まりは、ある日銀毛の猫の姿をしている悪魔猫クロが話した、自身の疑惑追求欲求の内容が端を発している。
普通ならば、以前ならばそれは、「不可能」の一言で一蹴されるべき事柄であった。しかし、可能性の一つとして提示出来るだけの根拠の無い確信があの猫にあった。
そして頷けるだけの要素は揃っており、それらは全て、シテロが有しているものだ。有しているというより有していたが正しくはあるのだが、それは以前の彼等には決して分からなかったことであり、お伽話、絵空事のようなものであった。が、それが今のこの、「弓弦と存在を共にしている」で現実へと化する緒となっているのだけは、間違いようの無い事実だ。
その現実、否、未来の一つはシテロとしても是が非でも掴みたい可能性だ。既に数多の時を過ごしている彼女にとって、人の一生とは瞬きの間に終わってしまうもの。
当然、彼女が傍観者としてそれを眺めていたのなら、瞬き一つの間に当人の曾孫が生まれているようなものであろう。が、それは当然傍観者であればの話だ。当事者となれば必然とそれは変わってくる。
もっとも、弓弦と存在を共にしている以上、体感している時間の流れは彼と同じになるので今そのようなことはないのだが、故に悪魔達によって、人での一日の時間感覚は未知のものであった。要するに、時間を持て余し過ぎて暇なのである。
「…こう言うのはちゃんと、外堀を埋めるのが大切なの。だから自分のペースは大事、大事なの。だから今はこれで…」
時間は何者にも変え難いものだ。
ましてそれが人の一生ならば。
「…んん…すぅ…」
「良いの……えへ…っ♡」
シテロにとって、弓弦は自分を照らしてくれた唯一無二の太陽だ。
闇の中で生きてきた彼女を照らし、温める陽溜まり。太陽故に、そこには人が集まり、惹かれる。
それは強い力の下に強い力が引き寄せられるのと同じ原理である。無論どのように引き寄せられるのかは多様であるが、彼女の場合は、その、温かさに惹き寄せられていた。
「「…zzZ」」
人の感覚で十分程経過した頃であろうか。シテロからも寝息が聞こえてくるのを確認してから三体の悪魔は息を吐いた。
「にゃあ…『紅念の賢狼』は彼女のこと、どう見ているのにゃ?」
『紅念の賢狼』とクロに呼ばれた金毛の狼悪魔ヴェアルは、少し考えた後に首を振る。
「例え長く生きていたとしても全能ではない。ましてそれが、今まで理解しようともしなかった人の熱ならばな。分からんよ……」
「にゃはは。『支配の王者』は?」
「変じつつあるのは確かであり、また、其れが悪い変化でないのも確かだ。個々に頓着する必要性を感じないな」
「何でにゃ…僕達が希望を掴めるにゃんて良い機会、滅多に無いのに。連れにゃいのにゃ…」
つまらなそうに呟いたクロは、尻尾を左右に揺らす。野次馬根性に付き合う気性など、ヴェアルもバアゼルも持ち合わせていないのである。
基本悪魔は見返りを求める存在なので、見返りがあるのならば動くかもしれないが、これは当人の問題であるのでどの道動くつもりはない。
「恋のキューピッドににゃるのって面白くにゃいかにゃ? シテロもきっと喜んでくれると思うのにゃ。ほら、こう言うのは協力者が必要だってよく言うのにゃ。彼女は一番抜け駆けが出来るのだから、その利点を活かすためにも…にゃ」
「…斯様な事をして何になる」
「君は…舟盗人を徒歩で追うと言う言葉を知っているか。仮に私達が何か、下手な方法で手助けするようなことをしてもそれは、彼女のためにはならず無駄になると言うことだ。傍観することも一つの協力と言うものではある。何も悪戯に手を出すことではないのだよ」
「そんにゃことを言っても本当は『黙れ』…っ!?」
何かを喋ろうとしたクロであったが、バアゼルの『サイレント』によって声を出すことを封じられる。
魔法を解除しようと口に手を当てて、もがく猫を放っておくことにした二悪魔は話を聞かれないように、さらにそこから離れた場所、ダンボールの側に腰を落ち着ける。
「…賢狼。斯くも躍起になるものか? 其の…其れは」
「…熱を奪うことしか能の無かった私達だ。それが今度は熱を与えようとしている。私とてその一員、吝かではないと言うものだよ」
「ふむ。…蜜柑でも食すか?」
ダンボールから橙色の丸い食物が取り出されると、ヴェアルの魔法によってバアゼルの手を離れ二悪魔の前で宙に浮く。
「戴こう」
皮が剥かれ、口へと運ばれる。
弓弦に頼んで購入してもらった高級蜜柑の酸味が、噛むと口の中に広がる。
「理はあるか。然し…実現するのは遠い未来になってしまうのではあるまいな?」
「さて…決めるのは彼女なのでな。私には分からんよ」
「ふむ…確かに。善事は疾く、重なれば尚良いとはあるが…」
言葉を切ったバアゼルが視線を向けた先には、布団に入るかの如く炬燵から顔を覗かせて熟睡する一組の男女が在る。
それは、常日頃の夜、彼等が外の光景で窺えるものと同じであり、弓弦の背中にそっと顔を寄せているシテロは悪魔でなく、まるで人間の女性のようであった。否、人間の女性のようではなく、人間の女性なのだ。無論背中の龍翼を除けばとなるが、それ以外の部分は人間だ。
バアゼルも、ヴェアルもクロも、アデウスも、今の悪魔としての姿の他に、人間体の姿を持っているがそれは、現状この『炬燵空間』限定となり、外の世界で人間として活動する人間体では、弓弦の身体がベースとなるため、一見すると彼の血族であるかのように見えるのだ。
バアゼルはとある裏技を使えば、外の世界で彼自身の人間体での権限が出来るがしかし、シテロはこの例にすら漏れる。
彼女の身体は、どうしても弓弦の身体をベースにしているとは、どの悪魔も思えなかったのだ。生物学で言う遺伝子配列が遠いことに相当するのであろうか。
彼女は、弓弦と存在を共にしていながらしかし、それとは全く異なった存在であり、それは互いの想いが重なることで発動する弓弦の吸収魔法の効果によって彼と、一時的に存在を共に出来る女性達の『同化』と非常に酷似していると二悪魔には思えてならなかったのだ。
そう思えているからこそ当然、奇想天外なことを考え付けられるものであり、そうでなければ思いもしなかったことだ。
「急いては事を仕損じると言う言葉もある。時はあるのだからな…」
「…時、か。其れで思い出したのだが」
新たな蜜柑が取り出される。
「『黒闇の虐者』は手を下していない以上吸収は不可能だが…其れと同条件の貴様は如何にして此処に入った、『紅念の賢狼』」
「私の力で作り出した現身を彼に倒させた。元より私はこうするつもりだったからな……」
「…『幻憶の導き手』か。ふむ…人の想いも我等の想いもさして大差無いと云うものか。…茶でも飲むとするか」
「立つまでもない。私がこのまま淹れよう」
「ふむ…頼めるか」
『炬燵空間』の棚にある茶筒にはどこから仕入れたのか、弓弦や知影が居た世界でいったところの国産の香り高い茶葉から彼のハイエルフとしての伴侶である『フィリアーナ・エル・オープスト・タチバナ』が愛飲する紅茶葉が入っている。バアゼルが気に入っているのは勿論緑茶だ。
「む?」
しかしヴェアルが淹れたのは緑茶葉でなく、その紅茶葉であった。
最初は冷めることを考慮した上で、先に自分のを淹れておく心遣いだと考えていたのだが注がれた湯呑は二。
「すまない、初めて含んだ時からこの紅茶を気に入ってな。こちらを淹れさせてもらった」
「…ふむ。確かに悪くはない香りだ」
これにはバアゼルも微かな皮肉を用いずには居られなかった。決して彼の心が狭い訳ではないのだが、蜜柑と紅茶の組み合わせに首を傾げるものがあったのだ。
何故なら蜜柑と紅茶だ。蜜柑と、紅茶なのだ。彼の舌にこのコンビはキツい。
「……」
まず紅茶。
「……ふむ、悪くない」
続いて蜜柑。
「……む、ふむぅ…」
やはり微妙なようだ。ヴェアルは気にせず舌鼓を打っているようだが、この襲い来る壮絶な違和感に思わず顔を顰めずには居られないバアゼルは、一気に紅茶を飲み干して口直しと言わんばかりに、蜜柑を齧る。
「魔石は後如何程存在しているか、此方も掴めているか?」
ヴェアルは黙し、ただ首を左右に振る。
「…そうか。可能ならば全ての回収を図りたいものだな。悪心有する存在に用いられるのが不快に感じる同胞が浮かばれん……」
「事物の明暗…私達は彼と共に明とならなければならない。先導者として、道を開拓せねばならない。…彼に強いなければならないのが虚しいがな…」
「強いるのではない。選択する余地を我等は与えるだけだ。選ぶのはあの男。我等は悪魔、あくまで力を貸すだけの存在だからな」
「成る程…面白い捉え方だ。然しまさかあの『支配の王者』が洒落を用いるとはな…つくづく丸く変わるものだ」
蜜柑の数が見る見る内に減る中、興味深いといわんばかりに細められた視線に見つめられ、バアゼルは蜜柑を丸ごと頬張る。
「…。貴様もまさか、斯様な店を開いているとは思わなんだが」
新しく剥かれた蜜柑の皮がまるで、その存在を支配されたかのように形を変え、何かの形のようになる。
「店はどうした。あのまま閉店と云う訳ではあるまい」
丼の形だ。蜜柑の皮が芸術のように綺麗な丼の形を形作ったのだ。
「後日彼に回収に行ってもらう。そんな便利な魔法も使えるのだろう? そう長くあぁやっていた訳ではないが愛着があってな……」
「ふむ…眼覚めた折に頼むと良いだろう」
「そのつもりだ」
どちらが促したという訳ではないのだが、二悪魔の視線は自然と炬燵で眠る男女に向けられる。
交互に口から漏れている寝息はまるで、機織のように何度も何度も重なっており、そこに絆のようなものを感じさせる。そして、彼等が頬を綻ばせてしまっても仕方の無い程にその寝顔は安らかであるのだった。
「……(だ、誰か助けてくれにゃ…)」
先程ヴェアルによって新たに魔力によって簀巻きをされた挙句、とうとう忘れ去られた。こちらの悪魔猫は、ジタバタともがいていたのだがやがて、泡を吹くかのように顔を苦悶に歪め、安らかに(?)意識を旅立たせるのであった。
「ふぅ……」
「あ、弓弦! お疲れ様!」
「ん、知影か…ふぁ…っ、眠い……」
「えぇ~っ! 折角こうして私と弓弦二人きりの次回予告なのに『眠い』の一言で終わっちゃうだなんて嫌だよ!」
「…ん? じゃあ……寝る」
「えぇぇぇぇっ!?!? そう言う問題じゃないでしょっ! そもそもさ、私の扱い酷くない!? ヒロインだよ私、最初のヒロイン! 『俺と彼女の異世界冒険記』略して、『オレカノ』の『彼女』って私のことなんでしょ!? 私のことなんだよね!! だから私だけ特別な魔法を使うことだって出来るんだから! ね!?」
「…さて、な?」
「『さて、な?』頂きました。…じゃなくてっ!! 誤魔化さずにちゃんと返してよ! イチャイチャしようよ……ぐすん」
「…泣き真似をしてもやらないものはやらない。はい、おしまい」
「冷たいよぉっ!! じゃあじゃあ、キスしよキス! 接吻!! お互いの唾液を交換することで愛を確かめ合うの! はい、しよっ! ちゅ~~っ!!」
「うわぁぁっ!? 迫るな迫るなっ! ふむぐっ!?」
「ん……♡」
「!?!?!?」
「…。よし! じゃあ唾液の交換の次はお互いの身体を繋げましょう! …じゃ、じゃあ弓弦、脱いで?」
「っ、誰が脱ぐか! 誰がっ!」
「あ♡ そっか…うん、良いよ。私が先に全部脱いじゃえば良いんだよね? …ふふふ、やっぱりちょっとだけこう言うのって恥ずかしいね、弓弦。もう私…弓弦には身体の隅から隅まで知られちゃってるけど…キャッ♪」
「…知影」
「へぁっ!? …こ、ここに来て壁ドンか…しかも両手……あ、ヤバい。鼻血出そう……っ」
「…お前が思いっ切り暴走すれば暴走する程、色々困るものがあるらしいんだ。だから、発言に危な気がないキャラばかりの会話機会が増えるらしい…って、何を言ってるんだかな、俺。…まぁ兎に角、あまりにも自由に動き過ぎるあまり、他のキャラクターの邪魔をしに行ってしまうから、正直持て余しているんじゃないか? 俺の予想だがな」
「…あ、そっか。確かにね……」
「…分かってくれたようで何よりだ」
「確かに、私と弓弦は結ばれている訳だから、このままだとその内、子どもが出来ちゃうもんね。そしたらこの物語、完結しちゃうか」
「…全く分かっていないな。…だが、別に子どもが登場したからと言っても、物語が完結するってことはないだろう? 二次元だったらそう言うのはエピローグの常套句みたいなものだが、今の俺達が居るのは現実だぞ? 二次元と一緒にしたら困るものがあると思うが」
「だってこれ二次「ハリセンだ!」っ!? …あ、弓弦のハリセンだぁ…ふぇへへ♪」
「…もう良い。次回予告するからな?」
「はいはいはいははーははいはいっ!!」
「『悩めるハイエルフ、弓弦。多くの女性に振り回され大車輪状態の彼に物申さんと悪魔が動く。流されっ放しの彼の真意を悪魔が問う。そして、まさかのあの娘がーーー次回、思いを吐露す』…自分で呼んだ予告がこれか…何か、複雑だな。ところで知影…何だそれは?」
「投稿時の流行り」
「? レオンじゃないがさっぱり分からん……」
「まぁまぁまぁ! さぁてこの次も? サービスあるかも!」
「…重なる想いが話譚になる」
「次回も」
「……」
「えぇ…合わせようよ。愛想無いなぁ」
「……zzz」
「…寝ちゃったの? え、嘘本当に!?」
「ふぁ…冗談だ」
「全然冗談じゃないよね?」
「さて、な」
「…じゃあ弓弦、向こうのベッドで寝よっか。二人きりでさ」
「…悪戯するなよ?」
「うん…今日は普通に寝る。ねぇ…手を繋いで寝ても良い?」
「あぁ。それぐらいなら好きにしてくれ……」