愛に奮う
結界の中へと進んだオルレアはジェシカを背後に庇いながら、魔力を感じる方角へと進む。
薄紫の靄が立ち込める空間は、同時に禍々しい気配も立ち込めており、彼女は肌にピリピリとするものを感じていた。
「居たっす! ジェシカさん!」
ジェシカには光属性初級魔法“プロテクト”が掛けられている。
自分自身が反応し切れなかった攻撃に対する防御策の一つで、勿論、それなりの強度になるように魔力が込められていた。
「ハンさーんっ!!」
視線の先で油断無く槍を構えているハンが、一瞬だけ二人に視線を向けて「来るな!」と叫ぶ。
『唸れ轟槍穿て、大気ごと!!』
直後に詠唱を叫ぶと、ハンの足元に展開した魔法陣からもう一振りの、炎の槍が現れる。
それが投げ構えられると、魔力の余波が地を揺らす。
『守護の光陣、我らを護り給え!』
合わせるようにオルレアが光属性中級魔法“バリア”を使用して、ジェシカの周囲を囲む光の壁を形成した。
「そこで身を守っててほしいっす…どうやら危険そうっすから」
自分の中で鳴り響く警鐘にオルレアは警戒度を最大にする。
そして、放たれる火属性上級魔法、“ピアースインフェルノ” 禍々しい魔力が一際強い位置に刺さった炎槍を中心に空気が吸い込まれていくと、
「っ!!」
次の瞬間に起こった、大爆発の轟音が周囲に轟いた。
仁王立ちするハンの服が衝撃に靡き、続いて襲ってきた熱波にオルレアは眼を細めた。
『凄い衝撃…やっぱり大将ってだけはあるんだね。 風音さんよりも強いんじゃない?』
『あらあら…そうかもしれませんね。 ですが、いずれ届いてみせますよ…うふふ』
「いや…まだっす」
焦げ臭い煙を見つめオルレアが呟くと、ハンは驚いたように彼女を見つめ、再び詠唱せんと、集中を始めた。
「っ…分かるか」
「…。 相手の見当は付いているっすか?」
「いや…だが、確実に分かることがある」
眩い閃光が一つ、二つ、三つ。
「…『リスクX』だ」
滅ぼせんと周囲を駆けた。
直線上の一撃をハンが二つ、オルレアが一つ弾き飛ばし、その存在と対峙する。
ハンが眉を顰めた。 現れた存在に先程放った魔法の痕が見受けられない。
「…ッ! 喰らえぇぇぇッ!!」
再び放たれる“ピアースインフェルノ”
詠唱短縮を行ったため、込められた魔力は一発目には劣るが、それでもなお激しく荒ぶる炎槍が、一直線にその存在に向かう。
【良い一撃だ。 だが】
しかし、槍は空中でその動きを徐々に、徐々に、やがて制止させられる。
【当たらなければな…】
「何…ッ!!」
声と共に進行方向が逆転し、発動者の下に肉薄しようとする途中。 槍はオルレアの“プロテクト”によって動きを阻害され、発動者の手によって消し飛ばされた。
『…うわ、もうヤバい相手、決定なんだけど…』
知影のうんざりしている声が聞こえる中オルレアは、ハンに「大丈夫っすか! ボクも加勢するっす!」と呼び掛けると「構わん、俺が守る」とハンは力強く言葉を返し、得物を構え直した。
『自分一人で相手をするから、ジェシカさんを守れとの指示ですね。 如何致しましょうか』
「…分かったっす」
本当は加勢したかったのだが、オルレアはそれに従うことにする。 勿論理由として、ハンの実力を確かめると同時にジェシカを直接守れるというものがある。 危なくなったら加勢に入るが、それまでは様子を窺おうと静かに柄に手を添えてその場に立つ。
【ほぅ…私に一人で挑むか】
返答として槍を構えたハンが槍で煙を凪斬ると、これまで彼を苦しめていた悪魔の姿が垣間見える。
【その勇気は賞賛に値するもの】
直後空間内に響く遠吠え。 三つの閃光が今度は全て、ハンの視界を焼き尽くす。
【しかし非力なる身ではそれも、蛮勇となるか…!!】
意思を持っているかのように、全方位から襲来する閃光を掻い潜り、次はハンが攻撃に転じた。
「非力かどうかは、その身で味わうが良いッ!!」
地を蹴り風を焦がす赤の軌跡が滑るように舞う。
「うぉぉぉッ!!」
何かと衝突する。 しかし彼を止めたのは一瞬だけであり、雄叫びを上げながら手元で槍を操り放たれる一撃が、豆腐のようにそれを斬り裂く。
「『ヴェアル』その名、この地墓に焼き付けてくれようッ!!」
【が、時として恐ろしくもある…それが】
障壁が展開される。 先程まで光線を放っていた三つの物体がそれぞれたち憚ったのだ。
【人が持ち得る可能性か!】
「ぐぅ…!」
【弾き返せ…!】
「っ、穿ち焦がせ!」
光と炎が鬩ぐ。
“バリア”によって、ジェシカにその余波が届くことはないが、オルレアは肌に焼けるものを覚えていた。 力と力の衝突とはこれ程のものかと、これが、大将足る者の実力なのかと。
だが同時に怪訝に思っていた。 それは知影も風音も同じようで、「手加減…してるっすか?」との言葉に困惑気味の同意を返してきた。
そして、その声が届いたのかは分からないが、ハンが突然槍を下げ、大きく距離を取った。
【これを避けるか】
彼の居た位置を広く包み込む閃光が放たれ、回避出来たように思えたがしかし、回避した位置を狙っていたかのように、物体がもう三つ現れた。
【しかし油断とは、気抜きの際に生じるものだ】「っ!!」
全方位からの攻撃がハンを襲うーーー前に、彼自身によって囲う物体が破壊された。
『呑め爆炎吼えよ、渦と成れ!』
ハンを中心に燃え上がる、炎の竜巻。 圧倒的な熱量に周囲の温度が上がっていく。
【防いだか、ならば】
『成れ炎蛇燃えよ、燃え上がれ、煉獄這いて飛翔せよ、翼を抱け、天上までも焦がし…』
展開される巨大な魔法陣から炎が漏れ出る。 直感的にそれが、ハンの最強魔法だと察したオルレアは自らにも“バリア”を掛けて衝撃に備える。
ハンの槍の動きに合わせて炎が塒を巻いていき、形を模す。
ーーーそれは、翼の生えた炎蛇だ。 姿が捉えられない悪魔に向かって大きく顎を開いた、獰猛な牙が無窮の久遠へと誘う門の役割を成していた。
『消炭とせよォッ!!』
そして、灰塵とせんばかりに荒れ狂う炎が放たれる。
「っ…す、凄いっす…」
オルレアは細めた眼を思わず閉じてしまった。 瞼の裏に映る、魔力の流れ。 奔流を後に伴って激しく襲い躍る鎌首が悪魔を喰らおうと加速した。
【抜け落ちてなお、これか…!!】
悪魔から莫大な魔力が発せられ、炎蛇の正面に立ち塞がったのをオルレアは、視た。 けたたましい音を上げて両者が拮抗する。 背後でジェシカが小さく声を上げるが、彼女はそれが気にならない程に、力と力の衝突に圧倒されていた。
【リスクX】である『ヴェアル』の魔力の強大さは既知であったが、よもや人の身でこれまでの魔力を誇っているのが、凄いと感嘆させられたのだ。
ハンの身体は火の魔力により赤く輝いており、それはとても力強い波動だ。 穢れた魔力とは対照的な温かな魔力ーーーそれは、ハンの心が優しく、とても温かいものであることを雄弁に語っており、オルレアは自身から笑みが零れるのを覚えた。
ヴェアルから再び、強い魔力が放たれると炎蛇は、その動きを鈍化させられていく。 炎槍の時と同じように反射するつもりなのか、その動きが徐々に逆転していく。
「あ…」
【何だと…ッ!】
驚いた声を上げたのはヴェアルだ。
動きを鈍化させられつつあった炎蛇は、その動きを倍加し、障壁を突き破ったからだ。
鋭い音を立てて粉々に砕け散った障壁は消炭と化し、突き抜けた炎蛇は悪魔を呑み込む。
「貰った…ッ!!」
その中心には、槍を握ったハンが在った。 尾を引いて彼方へと征く炎蛇の中心で突き出された槍が、悪魔を捉える。
「消えろ、悪魔ァァァァァァッ!!」
体躯に槍を深々と刺したまま、ハンに纏われた炎蛇は速度を上げ、
【ちぃ…ッ!!】
彼方に消える。
暫くすると、その方角を見つめる二人の視界に赤い線が映った。 線は徐々に中心部分が膨れ上がり、弾ける。
結界までを破壊してしまいそうな轟かんばかりの大爆発。 その眩さたるや、直前にオルレアが「眼を逸らして閉じるっす!!」と叫び、その通りにしてなければ失明してしまう程のものであろうか。 衝撃によって“バリア”に罅が入り、やがて、砕け散る。
灼熱に見舞われた空間が暫くして、静寂を取り戻さかのように冷やされていく中、思わず座り込んでしまったオルレアは緊張が弛緩したためかゆっくりと息を吐いた。
「凄いっすね…ハンさん」
まさか【リスクX】を退けてしまうとまでは予想出来ていなかったので、ただ「凄い」としか言葉で表せれなかった。
力が抜けた彼女はふと、背後に温かなものが触れるのを感じる。
「…怖くないですか?」
横を向くとジェシカの、真剣そのものの表情がそこにあった。
オルレアが怯えているのかと思っているのか、優しく頭を撫でてくれる彼女からは、母の温もりを感じ、意識せずとも安心してしまった自分にオルレアは赤面する。
「怖くないっす。 寧ろ…凄くカッコ良かったっす」
「良かった…」
安堵の息を吐いた彼女は微かに潤んだ瞳を細めると、言葉を続けた。
「あの人、昔から怖い人だと、不器用だから誤解されやすいんです…ですから戦闘の後は本当に、凄く怖がられたりなんてこともありますから…本当に」
「そんなものっすかね…?」
『うーん…そんなものなのかな? 確かに圧倒的な実力を見せ付けられるとそうなるとは思ったり思わなかったり…』
『不器用な方だからこそ、支えてあげたい気持ちになられるのですね…あ、戻って来られましたよ』
「う〜ん…あ、戻って来たみたいっすよ!」
勝者の凱旋だ。
手を振るオルレアに片手を上げて応え、ハンは身体を少しだけ重たそうに引き摺りながら二人の下に戻る。
「…大丈夫っすか?」
「あぁ」
ハンの表情は僅かに暗い。 「逃げられたみたいっすね…」と心の中で呟きながら彼女は、“ヒール”を彼に掛けて傷を癒す。
「…オルレアは光魔法の使い手か」
やがて、結界が崩れ始めた。
途端に日常を取り戻そうとした周囲に従って、三人は元のカフェの席に座る。
そして戻る、穏やかな日々の喧騒。
「ふふ…お恥ずかしながら…っす。 まだまだ半人前も良いところっすよ」
「…精進の心か」
「そんな大層なものじゃないっす♪」
まるで最初から何事を無かったかのような雰囲気が三人を囲んでいる。 新しく注文して運ばれてきたコーヒーに手を伸ばすオルレアの表情は笑顔で、どうしてかもう一度コーヒーを頼んで苦い顔をしているハンの顔にも笑顔が窺える。 そしてそんな二人にジェシカも微笑んでいた。
穏やかな時間。
この一日、三人はまるで家族のように『エージュ街』で遊び歩いた。
* * *
「……っ」
外は綺麗な茜色。 窓の外から差し込む光が部屋を照らしていて、暫くはまだ電気を点ける必要は無さそうだが……
「…オルレアはまだ帰らんのか」
あいつ…こんな時間だと言うのに遅い。 まだ仲良く遊び歩いていると言うのか…っ。
大体何なんだ! 先輩を差し置いていつまでも外を歩くのは! 早く、早く帰って来いあの馬鹿者……
「…っ!!」
…とうとう鳴り始めたかっ! 良い加減私は限界だ…身体に力は入らんし剣を振って紛らわす気力も湧かん。 かと言って時間を潰す方法も思い付かんし…先程からずっと空腹感が私を苛んでくる! 駄目だ…いつも決まった時間に食べていた分体内時計ならぬ空腹時計と言うものが時間に正確に、空腹を訴えてくる。 っ…分かっている、息抜きは必要だ。 まして作戦決行日が近付いているのだからそれは必然的なのだ…だが、だが…もう、
「ぐううう…っっっ!!」
レッドゾーンと言ったところか…それはそうかもしれん。 もういつもより三十分は遅れているいるのだから。 それだけの時間が経っているのならばもう…っ! が、以前までは問題無かった。 任務とあっても、長時間の空腹状態でも万全に動けたのだ。 だが今はどうか。
完全にオルレアに胃袋を握られているではないか。 …っ、無意識に私までも依存させようと言うのか…あの男は…えぇいっ!!
…。
……。
………いかん、景色が霞んで見える。
…このまま帰って来るまで意識を預けるのも、良いかもしれんな。
…そうするか。
「ただいま〜っす! ってあれ先輩!?」
幻聴も聞こえ始めたようだ。
重症か、我ながら……
…ん? 心なしか良い香りがする。
「…ん、んんっ…」
…どうやら机に突っ伏したまま寝ていたようだな。 肩が凝っている…後でオルレアに揉んでもらうか。
…? 良い香り…オルレア…?
「あ、先輩、おはようっす」
身体を伸ばしてから眼を擦って朧気な視界を明確にすると、外は暗い。 陽は完全に落ちたようだな。
声がした方向へ顔を動かすと、そこではエプロン姿のオルレアが鍋を掻き回していた。 腕の動きに合わせて僅かに揺れ動く亜麻色の髪が美しい。 頭にヘッドドレスを着けているのはファッションの一種だな。 既に作業着だ。 ここに来てからメイド衣装ばかり着ているから随分と見慣れてしまった。
「すぐにご飯にするっすか?」
「頼む」
…考えるのは後だ。 兎に角私は腹が減っているのだから。
「了解っす♪」
そして眼の前に置かれる謎の物体。 …なんだこれは?
取り敢えず口に運んでみる。
「……?」
不思議な食感と味だ。
不思議なんだが…不味くはない。 いや…美味い。 ただ、食べたことがない味だっただけだ。 まさに未知の食物と言えるか。
「次っす」
次に出されたのは透き通った液体だ。 確か…澄まし汁と言う名前のものだったか。 覚えある物だ。
啜ってみると、中々どうして繊細な味だ。 そして、薄味の液と、鼻に心地良い形で通る香りの…そう、吸口だ。 椀種の風味、つまの風味、吸口の風味、出汁の風味…丁寧に整えられているが、どこか懐かしい味を覚えさせてくれる。
「まだまだあるっすよ」
身体が温かくなってきたところで、刺身が出された。 紅白二種の艶を放つ新鮮な魚介が刻まれた大根の上に乗せられ、私の視界へと入ってくる。 醤油と山葵で戴く。
身に着け乗った脂による旨味が醤油、山葵と合わさり、白米が食べたい気分にさせてくれる。
「ほいほいっと、熱いっすよ♪」
次に鼻腔を満たしたのは香ばしい香りだ。 タイミングを合わせたのか、まだ身が焼ける音が聞こえる焼魚を檸檬を絞って食べ進める。
これもまた、脂が乗っているか。 パリパリとした皮とフワリと柔らかい身…良い塩梅と言ったところか。
「意外にも先輩箸使い上手いっすね」
「…私が上手くて問題があるのか?」
使い慣れていて当然だ、フン。
「じゃあ次っす」
見た所これは…煮付けか。 香りからして味噌で煮付けたのは分かる…ん、味噌?
そうかこの味…味噌か。
「強肴の後は…って、先輩早っ!?」
「次は何だ?」
「揚物っす。 …と。 うん、はい。 どうぞっす」
煮付けが量的に物足りなかったが、その次の揚物はやはり、揚物と言うだけあって中々重たくなりそうだ。
「…ん」
天婦羅の中のこれは…紫蘇か。 さっぱりとした紫蘇の味わいが良い意味で油揚げされた食物と合わさっている。
くどくないので飽きさせず、かつ、さっぱりとした味わいのアクセントが箸を伸ばさせる…悪くない。
さらにと言えるのは、野菜系の天婦羅か。 塩を付け足す必要をこれまで感じさせない風味と言うのは珍しい…と言うより、私の味覚と様子に合わせて適時味付けを調節しているか。 楽しそうに、暢気に調理してこそ居るがその実、立派な策士と言ったところか。
「作っといてアレっすけど、良く食べれるっすね。 ボクは嬉しいけど、お腹大丈夫っすか?」
「あぁ、だから次をくれ。 空腹で待っていたのだからな、そう簡単に膨れる訳ないだろう」
後輩が作った料理を私が残す訳にはいかん。 それに、残す必要性をまったく感じないのだから訳ないと言うものだ。 そう、残す可能性は皆無だ。
「どうぞっす」
いよいよ大詰と言ったところか、白米と漬物と、味噌汁が前に置かれた。
勿論どれも美味い。 だが、
「お代わりだ」
気が付いたら全て食べ終え口が動いているこの味噌汁は、悪魔の食物だ。 『ユミル』で食べた時もそうだが…相変わらず見事な味だ。 素朴で…優しくて…っ、何を考えてるのだ私は!!
…しかしまさか、本当に会席料理を作ってしまうとはな。 これで最後は何か水菓子を用意しているのだろう。 脱帽ものだと思わざるを得ん。 下手な料亭…いや、高級料亭に勝るとも劣らない…いや、余裕で金星を得ているか。 ここまで舌を唸らせるとはやはり、私の後輩だ。
そう…オルレアは私の後輩だ。 私の後輩は、決して男ではない。 女だ。 女…女、女だ。
「お代わりだ」
「…先輩」
「ん?」
「もう無いっすよ?」
「…そうか。 もう全部飲み干してしまったのか」
無くなるのが早かったな。 量が少ないのが少し物足りないんだが、まぁ、腹は膨れたか。
「これで最後っす」
最後の水菓子に、添えられていた爪楊枝を刺して口に運ぶ。
冷たい舌触り。 噛むと広がる果実の風味…柚子か。 良い香りだ。 弾力はあるが、不思議と抵抗されない。 まるでクッションのような歯応えと言ったところか。
…オルレアはもう、使用した器具を片付け終えている。 仕事が早い。
「流石っすね先輩。 これで完食っす…お疲れ様っす」
空になった食器も暫くして彼女に片付けられる。 後ろ姿を見ていると何故か、終始呆然としてしまうものだが…やはり悪くないな。
…大分、オルレアが居るのが当たり前になってきたが私は…いや、今は考えないでおくか。 …何はともあれ、まだ、置いておくか。
…決行の日は、もうじきだ。
サウザー…貴様達のふざけた思惑、この私とオルレアが破壊してやるからせいぜい暢気に待っているが良い…!!
「キシャ…キ、シャ」
「…私のハリセンに叩けぬものは…ない。 …アデス…まだまだ修行不足…弓弦の…足にも及ばない」
「キシャァ……キシャ、キシャキシャ!!」
「…もう十回目…全部私が勝ってるけど…反応速度を上げないと私にも…勝てない」
「……キシャキシャキシャシャシャア」
「…コク。 …訓練の賜物でもある。 …それだけじゃこの境地には…至れない」
「キシャ…キキシャシャシャ?」
「…コク…分かった後一回だけ…でもその前にこれ読まないと駄目」
「キシャ? キシャシャシャシャシャアシャ?」
「…私がやる」
「キシャ」
「『…闇に動く者…独り悶え苦しむ者そして、想いを織る者。 苦しむ者を癒すのはただ一つのもの。 それはまだ、本人が無意識の内に求めているものだがそれは…何か? …少なくとも折紙の可能性は無限大ーーー次回、求め苦しむ』…以上、じゃあやる」
「キシャ! キシャキシャア…!!」