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科学的で空想的

 それから数日が過ぎた。

 結局俺の身体の中には知影が居座っていて出ようとしないし、見つからないようにしているためか悪魔達との会話もない。 まぁだからといって静かになる訳もなく、事ある毎に知影が話し掛けてくるので相変わらず俺の脳内は騒がしい。

 リィルもまだ悩んでいるのか、あれから研究室に閉じ篭っている。 彼女の反応を見る限りセイシュウが何らかの形で、今回の件に関わっているのは確定なのだが、そこは彼女が話してくれるまで待つしかないだろう。

 外出禁止なので任務ミッションに行くことも出来ず、隊長業務をする必要もないので中々手持ち無沙汰になっているんだが、どうやらそれも今日までになりそうだった。 何故か? 分かるとは思うがとうとう監査の人間が来たという訳だ。


「だから分かっているな?」


『嫌だなぁ…うんでも仕方無いし、分かったよ』


 その人物に会う前に俺は知影との同化を解除した。 当然メンバー全員で会わないといけないためになんとか説得出来たのだが、今後はもう少し注意しないといけない。

 彼女と同化しなければ、セイシュウのプロテクトは突破出来なかったからその点、仕方が無いのかもしれない。


「…これで良い?」


 強く互いの思考を一致させれば解除出来ると訊いていたが、すぐにこうやって解除出来ることを考えると、やっぱり彼女は器用なんだと思う。 俺達の息が合っているとも言えるか?

 コンコンと、ノックされるドアに、隊長室に集まった全員が息を飲む。 良くも悪くも、扉の先の人間に手綱を握られている訳になる。

 返事をすると扉が開く。 入って来たのはなんと言うか、眼を細めた、いかにも胡散臭そうな雰囲気の男だ。


「‘革新派のカイゼル・ベルナルド中佐ですわ’」


 リィルが耳打ちしてその男のことを教えくれるが、中佐か…まぁ監査としては妥当なところか?


「失礼します、ハイ」


 おい…喋り口調まで怪しさ爆発だな。


「……おや? 八嵩はちがさ大佐の姿が見えませんね、ハイ」


 げ…っ、やっぱりそうなるよな。 だが居ないものは……


「僕ならここに居るよ」


 開かれたままの扉から現れる、白衣を着用した眼鏡の男。 どこに行っていたのか問い質したい気持ちはあるが、何はともあれ無事で良かった。


「ハイ、そうですか、ハイ。 では、えー…お分かりだとは思いますが、この部隊の構成員は解散という形になります、ハイ」


「は…? アレは、監査は一体どうなったんだ?」


「えー監査とは体面上の言葉でありまして、ハイ、本部の方からこの部隊隊員は他部隊に移籍するという旨の言伝をいただいております、ハイ」


 全員と顔を見合わせる。 一概に困惑の表情を浮かべている中、セイシュウが手を上げた。


「さっき見えたんだけど、外に七隻ぐらいある戦艦は脅しかい? それとも、抹殺命令遂行用意かい?」


 は? 七隻って…っ!


『にゃぁ…受け入れにゃい場合は艦ごとドカンされるという訳にゃ…あの子怖かったにゃぁ…』


 少しだけ久し振りのクロの声が聞こえた。 俺の転移魔法で艦ごと転移するっていうのはどうだろうか…って無理か。 逐一信号かなんかが送られているはずなんだから、追いかけられてドカンになる。 っ、詰んでるぞおいっ。


「受け入れるしかない…という訳になるんだな?」


「賢明な判断かと、ハイ。 私も命が惜しいですので」


 死ぬ覚悟でここに来たと……いや、絶対に受け入れるしかないという選択肢を突き付けるのだから余裕の表れか。


「他部隊と言ったが…一人ずつまったくの別部隊になるのか?」


「実行部隊でしたらそうなりますね、ハイ。 もっとも、三名程本部に出向してもらうのですが、ハイ」


 商業区の人間はその限りじゃないという訳だな。 知り合いと一緒の部隊になる可能性が高まっただけでも重畳というところか。


「三名?」


 隣に並ぶフィーナの手が隠れるようにして俺のズボンを掴む。 セティも明らかに顔色が良くない……嫌な予感だ。


「橘少将、橘大佐、シェロック大佐の三名です、ハイ」


 ハイエルフーーー!!!!

 嫌な予感見事的中という訳かっ!


「理由を訊いても良いか」


「それ以上私は何も…ハイ」


「そうか…悪いが何分急な話だ、時間をもらえないか?」


「そうですね…三十分程でしたら、ハイ」


「分かった」


「ではまた、三十分後にお邪魔します、ハイ」


 閉められる扉。

 それはまるでこの部隊の今後を暗示しているような気がして気分が悪い。


「……すまなかった」


 そんな中セイシュウが頭を下げる。


「僕が不在の間にここまで状況が急変しているなんて、予想も出来なかった…」


「そんなことはもう良いですわ。 今は眼前の問題にどう対処すべきなのか考えなければなりませんの、博士、何か方法は思い付きませんの?」


「……本部の出向が気になるね。 まさかとは思うけど、そのまさかだと考えると……そのための人質か…っ、レオンの無実を証明するしかないけど動きようもない…従うか…やられる前にやるしかないね」


「やるしかないって…まさか勝てると思っていますの?」


 不敵に笑うセイシュウが考えているのは多分、アレだろう。 まさか本当に…アレをやるつもりか? 大体分かったが人数とかキツくないか?


「弓弦君達を渡すつもりはないし、これしかないね。 それにこの艦、アークドラグノフは、戦艦、戦う艦だよ。 さ、リィル君インカムを七つ用意してくれ」


 その言葉に暫く、ポカンとしていたリィルだが、やがて強く頷いた。


「…分かりましたわッ!!」


 リィルを見送ったセイシュウから視線が向けられる。 「もう分かったかい?」と言ったところだろうか。


「…やれるかい?」


「はは、最高の案だと思う。 それで配置はどうする?」


「そうだな…まず突入するメンバーをそれぞれ決めないといけないか」


「そうだね。 人数的には、誰が一人で行くのかが大事になってくるね…。 だから中佐以上の人かな」


 中佐以上となると…フィーと、セティと、風音と、ユリと、セイシュウと、リィルと俺になるか。 


「ん? 丁度七人か…いけるじゃないか」


「僕かリィル君は残るよ。 じゃないと出来ないことがあるからね」


「じゃあ艦の指揮は私がやる。 艦長一度、やってみたかったんだぁ♪」


「そうか…なら後二隻の内、片方はディオとトウガだな。 もう片方は…」


「うん、お姉ちゃんに任せなさい♪」


 そうだな、姉さんも一人で大丈夫だな。


「あぁ、じゃあ任せたレイア」


「時間も無い、じゃあ纏めよう。 敵艦をAからGで仮称するよ。 まず、交渉決裂と同時に弓弦君が艦を転移させて包囲網を抜けて、その後すぐに七隻にそれぞれ皆を転移させる」


「転移位置の細かな設定は出来ないから、艦のどこに跳ぶかは分からない。 注意してくれ」


「目的は艦橋を制圧し、コントロールキーを破壊すること。 これが壊れると艦の操縦は出来ないからね…でも大丈夫かい弓弦君?」


「あぁ、なんとかする」


 この作戦の要は俺だ。 送った後皆を迎えに行くのは空間魔法を使える俺しか居ないので、俺が誰よりも速く艦を制圧しないといけなくなる。 まぁ無茶な作戦だ。 だがこれぐらいはやらないと、カッコつかないな。


「アークドラグノフは知影ちゃんに任せるよ。 細かい説明は後でするから…来たよ」


 足音が聞こえる。 それは徐々に近付いて扉の前で止まる。

 入って来たカイゼルは俺達の表情を見て、閉じていた眼を薄く開く。


「命令拒否のようですね、ハイ。 では…」


 外の方から強力な魔力マナの波動が伝わってくる。


「ドカンですね、ハイ」


 場所なんか気にしてられない。 兎に角意識を集中させて……跳ぶ!!


『此方から彼方への門よ、開き、誘え!!』


 窓の外を、魔力マナの光が包み込んだ。












「やはり高貴なる妖精でしたか、ハイ」


 “コマンド”で身体の動きを封じられたカイゼルが、縄で縛られ床を転がる。


「やはり…そうか、向こうの連中には知られている訳だね」


 向こうはセイシュウに任せて俺は詠唱だ。 …大きな魔力マナの波動は七つ、そこに皆を跳ばす。


「ふふ、パパッと片付けて待っていますから…迎えに来てくださいねご主人様」


「あぁ、やり過ぎないようにな」


 フィーナをAの戦艦に跳ばす。 光の中に消えた笑顔に思わず見惚れてしまったな…はは。


「クス…では行って参ります」


「頼むぞ、風音」


「それだけですか?」


「は?」


「……」


 胸の前で腕を組み、眼を閉じる風音。 ツンと出された柔らかみのある唇に眼がいきそうになるも、理性で抑えて、額にそっと自分のを触れさせてから送る。


「…ズルいです、いけずです、生殺しで御座います…っ!」


 プイッと背けられた顔から向けられる視線が、どこかいじらしい風音はBの戦艦だ。


「…私も…行ってくる」


「頑張ってこい、怪我だけはしないようにな…」


「…コク」


 セティは可愛いなぁ…っ♪ ハッ!? コホン。 彼女はCだ。


「おし、行くぞディオルセフ」


「了ー解。 頼むよ弓弦」


「はは、トウガ分かっていると思うが…」


「あぁ勿論だ」


「へ? 何?」


 二人でディオを見つめて親指を立てる。


「「困った時のディオルセフ」」


「えぇっ!? なんで僕!?」


 ディオを弄る俺とトウガは友達さ。 彼らはD。 さて次は誰だ?


「おわっ!?」


「ん…すぅ…はぁ…っ♡」


 また匂いを嗅いでる…俺なんかの匂いを嗅ぐなんて物好きなものだが…俺がこの性癖に目覚めさせてしまったのかと思うと罪悪感が…っ。


「おいこら…送るから離れてくれ」


「む…こうしてると安心するのだ、これでも緊張しているのだから良いではないか」


 気持ちは分からなくもないが、時間が無い。 どうしたものか…?


「…ならこれ着てけ」


 取り敢えず着ている隊員服をユリに手渡す。 セイシュウが眼を点にしているが気にしない。


「…うむ、では弓弦はこれを…」


「いいや、汚したら悪いしな。 ほら、送るぞ」


「…うむ」


 隊員服の上に隊員服を着るという謎の着方をしたユリはEの戦艦だ。 …フィーを送ってから二分経ったか、そろそろ片付いていそうだが…後は姉さんだ。


「ほらユ〜君、速く送って」


「ん、分かった」


 姉さんの姿が転移の光に消えようとした瞬間。


「行ってらっしゃい、姉さん」


 そう俺の口は勝手に言葉を紡いでいた。

 姉さんは虚を衝かれたように暫くなんとも言えない顔をしていたが、はにかむと、「行ってきます」と言葉を残してFの戦艦に消えた。

 さて、最後は俺だ。 Gの戦艦だからパパッと片付けるか。











 転移完了。 


「ここは…見た所艦艇の辺り…だな、よし」


 多分他の艦が襲撃を受けたことで連絡はここにも来ているはず。

 他の戦艦の方で皆の魔力マナが強くなっているのを感じる。 暴れているな……俺も負けてられないってヤツだな。


「出て来い、クロ」


 身体から溢れた魔力マナが猫の形を形作り、白銀の毛並みを持つ美しい猫として顕現する。


「にゃはは、待っていたにゃ」


「命は奪わないように、凍らせるまでにしとくぞ」


「分かっているにゃ。 みんにゃに負けにゃいように、頑張るのにゃ」


 まったく、頼もしい限りだな。


「っ、いたぞーッ!!」


「お出ましにゃ!」


 人数は……三人か。 よし。


「せやぁぁぁぁぁぁッ!!」


 鞘のままで急所を殴打する。


『纏めて雪達磨ゆきだるまにゃ!!」


 後はクロが気絶した隊員の身動きを封じて、突破。 ま、話にならないな。 それにこの程度で手こずるようじゃ駄目だ。


「この道は…構造的に右だな」


 今はアークドラグノフで言う、商業区のあたりか……だが何も無いな。 部屋があるだけだ…戦艦である以上、あんな小さな商店街クラスの商業区があること自体珍しいものだが、これはこれで、違い過ぎて驚くものがあるな。 ここにある部屋って隊員の部屋ってことになるんだよな。 ここの部隊の隊員多いんだなぁ…そりゃあ業務は大変だろうな。


「これだけの部屋があるってことは、待ち伏せとかあってもおかしくにゃいにゃ…」


「物量作戦ってことか」


 しかし、時間を取られるのは厄介だ。 他の戦艦に向かったメンバーに援護に行けるのは俺だけである以上、もしもの時の備えは多ければ多い程良い。 もし馬鹿みたいに強い少将階級の奴が居て、誰かがやられるようなことがあったら一大事だ。

 それにアークドラグノフも大丈夫か心配だ。 天才三人が居るものの捌ききれないことはある。 まぁそこをなんとかしてしまうのが強みでもあるか。 例えばひたすら、リィルが集中している中閃いたり、直感で避けたり、セイシュウの甘味に対する不屈の精神が作用したり、知影のチート染みた愛と魂が発動したり……中々無敵だとは思う。 特に知影の愛は発動に五だけ使うとかありえそうで笑えない。


『ご主人様ご主人様』


 フィーからの“テレパス”だ。


「どうした?」


 訊くまでもないが、一応だ。


『終わりましたから迎えに来てください♪』


「あぁ分かった。 こっちももう少しで終わるから待っててくれ」


『わん♪』


 切れる。


「にゃはは、早く終わらせにゃいといけにゃいにゃ」


「そうだな。 『動きは風の如く、加速する!』っと…急ぎ足で行くぞ!!」


 それから一分ぐらい経った頃か、俺はGの戦艦の艦橋は無事制圧し、コントロールキーを抜いてどこかに強制転移させることに成功した。


* * *


 そろそろフィーナ様が、制圧を終えられる頃でしょうか……? クス…出来れば私が一番最初に、弓弦様に迎えに来てもらおうと思っていたのですが…残念です。


「ぎゃぁぁぁっ!?!?」


 弓弦様…クスクス…ハッ、いけません私としたことが…弓弦様に迎えに来て頂けるのが嬉しくてつい…うふふ。


「あらあら…殴られただけで…静かにして頂けますか?」


「ぐぅぇっ!?」


 クス、数は多くとも、所詮は有象無象…敵では御座いません。 ただ、蹂躙するだけ……


「参ります、焔の舞」


 弓弦様と交わり、楓となってから、私も魔法の扱いが上手くなったように思えます。 威力も上がりましたし以前よりも細かな調節が効くようになりました。 嗜好も一致してしまったのか、苦いコー、ヒーも飲むことが出来ますし…クスッ、弓弦様もそうなのでしょうか?

 ですが、同時に身体の内側に、燃えるものを感じます。 どういったものかは分かりません、ですがどこか、恐ろしくも懐かしい感覚で御座います。 もっとも…御恥ずかしながら思い出せないのですが……


「これで…終わりでしょうか? 後はこの…ボタンを押し、コントロール…ケーキを抜いて…確か…ダイヤルを回して…あ、繋がりました…♪」


『風音か、どうした?』


「無事、強制転移ボタンを押してコントロールケーキを回収致しました。 迎えに来て下さい、御待ちしています」


『ん、そうか…じゃあ少しだけ待っててくれ…すぐ行く』


 通信の終了と時を同じくして、私の前に光り輝く魔法陣が現れました。 弓弦様の魔法陣です、なんと温かい光で御座いましょう…っ! 安らぎの光とは正に、このこと…クス、すっかり心酔していますね、私…。


「…ボコボコだな。 風音、ちゃんと手加減したか?」


「勿論で御座います、当然で御座います、手加減していない訳無いじゃありませんか…うふふ」


 殺めて十字架を背負いたくはありませんし、人を殺めればあなた様は悲しまれてしまいますから……


「そうか…いや何か魔力マナが荒れ狂っていたような気がしてな。 どうしたものかと思ってな」


「クス…早く弓弦様に御会いしたくて…張り切ってしまいました」


「はは、そうか。 じゃあ帰るか」


 綺麗に流されました…不本意です、悲しいです、もう少し構ってほしいです。 …そう思ってしまうのが惚れた弱みと言うものでありましょうか。

 弓弦様が戻られたここ数日も、知影さんが中にいらっしゃったこともあって、中々甘えることが出来なかった日々…悔やまれてなりません。

 ですから今、誰にも邪魔されないこの時に、そのような欲望が生じてしまうこと、仕方が無いとは思いませんか?

 しかし状況がそれを許してくれないとはまた、残酷です、無情です、無慈悲ではありませんか…っ。


『此方から彼方への門よ、開き、誘え』


 光に包まれる中、私は決めました。

 無事にこの窮地を脱することが出来たその後、二日程度楓になることを提案しましょう。 …どうしてもと仰るのならば、また後日という話になりますが…クス、良いですよね、弓弦様?


「ハックション!! ぅぅ…誰か噂してるな…」


 あらあら…うふふ、可愛い人♪


* * *


「主砲、一斉発射!!「出来ませんわ」…ちぇ」


「第一、戦艦を破壊してしまったら組織全体を敵に回してしまいますわよ」


「でも向こうからは砲撃が加えられているのに、反撃禁止って良い的じゃないですか!! 「左舷、十時の方向から熱源接近していますわ!!」っ、セイシュウさん、障壁展開後ダミー配置準備、障壁で弾かれた敵艦主砲の熱に合わせてダミーを展開、同時に舵を九時の方向へお願いします!!」


 ふふふ、この指示艦長って感じがするよね!! 特にこの逆境、燃えちゃうよ! 


「損傷率未だゼロ。 凄いですわ知影ちゃん」


「私が凄い訳ではないですよ、セイシュウさんが用意してくれていた装備が凄いだけです」


「いやぁ…照れちゃうな。 でもこんなこともあろうかと…って思って用意していたやつが日の目を見ることになるとはね、信じられないよ」


 アークドラグノフにある主な戦闘装備は、主砲二門、副砲四門、エネルギーフィールド、ミサイル百発、ダミー弾二十発。 整備はセイシュウさんがやってくれていたみたいだけど…凄い。 特に大活躍しているのは、エネルギーフィールド。 これもセイシュウさん自作だけど、効力はこの通り、戦艦の主砲を防ぎ切るだけの防御力がある。 私にも出来るかな…?

 いやでも主砲が撃ちたい。 やられてばっかりじゃ嫌だからね、向こうばっかりズルいし。

 そうそう、今艦橋では私とリィルさんとセイシュウさん、実行部隊ではない他の隊員さんが居るけど、まだ紹介されてないから色々省略!

 私が指揮で、セイシュウさんが操舵、リィルさんがオペレーターをやっている。 どうしてかって? そういうシナリオだからだよ。


「? 戦艦A、転移を始めましたわ!!」


 えー…五分経っていないけどもう一隻制圧しちゃったの…チートだよチート。 ヒロイン格差!! どうにかしてよ!!


『こちらオープスト。 Aは制圧完了したわ』


「分かったよ。 お疲れ様」


『別に疲れる程のものではなかったけど…ふふ、感謝するわ』


 ぐぐ…なにそのお姉様的態度…弓弦の前では尻尾振って媚び売る雌犬のクセに…ッ!!


「戦艦G、転移を開始しましたわ!」


「弓弦!? やった、早く連絡入ってこないかなぁ♪」


「うわ…女の子って怖…「何か言いましたか?」っ、いいえッ! 何も言ってませんッ!!」


「博士…そういうことは…言ってはいけませんわね!? おほほ!」


 なんでそんなに声を上擦らせるんだろ…変なセイシュウさん達。

 …あ、弓弦からの通信だ♪


『知影、聞こえるか? …よし、聞こえるな。 オープスト、戦艦G、制圧完了だ。 今から他戦艦に向かった隊員を終わり次第送り届ける。 …まだ半分以上残っているが頑張ってくれ』


 メキッ。


「ち、知影ちゃん、きっとワザとじゃありませんから怒らないであげてくださいまし」


「……」


 なんでそんな自然に“オープスト”って言うの!? 二人中良ーく指輪までしちゃって、すっかり気分は夫婦!? 私を無視、無視なのっ!? ファーストヒロインガン無視は禁句だよ! アッカリー○は嫌だよ…うぇぇぇん…っ!!


「愛が欲しい…っ!!」


『ん?』


「弓弦の愛が欲しいの!! もっと私を見てよ!! 犯して、犯してぇっ、孕ませ「何言ってるんだお前はぁぁぁぁッ!!」てぅっ!?」


 あ、弓弦♡


「『あ、弓弦♡』じゃないっ!! …ゼェ、ゼェ、本当に、何を言ってるんだ!! 女の子がそんな言葉を言うなんてはしたないぞッ!!」


「えへへ…来てくれたんだね、私の心を覗いてるんだったら話は早いや、じゃあここは恥ずかしいし、部屋に行こ?」


 そしてその先で…きゃっ♪


「あうっ!?」


「うん止めような。 それと顔に出ているから覗く必要が無いんだよ…ったく」


 ふふふ、もう弓弦ったら照れ屋さん♪


「B戦艦沈黙、転移を始めましたわ!!」


「…あら、流石は風音ね。 もう終わったみたい」


 弓弦のインカムに通信が入る。


「風音か、どうした?」


「ミサイル、接近してきますわ!!」


 忙しいね。 多分これが普通なんだろうけど。


「フィー、任せた」


「ふふ、では全て撃ち落としてきますわん」


「信じてる、無傷でな」


「信じられてます、コホン、だから余裕よ♪」


 …甲板に出てミサイルに当たってくれたらなぁ…は弓弦が怒るかな…?

 でもその方が幸せだよね…そうだよね…? はぁ…甲板に向かう背中が嬉しそうで恨めしい……


「ん、そうか…じゃあ少しだけ待っててくれ…すぐ行く。 …じゃあ風音を迎えに行って来る」


 私より風音さんの方が大事なの…? ううん違う、風音さんが居るから弓弦が迎えに行かないといけなくなるんだよね…うん、分かってる。


「目標B戦艦、砲門開け! 一番、二番、「撃つな」あうっ!? …弓弦の愛は…痛い…痛いは嬉しい……弓弦も痛いのが好きなの…?」


 ハリセン痛いけど…ふぇへへ、頭撫でられてる…♪


「俺は、優しい方が好きだな…こうやってさ」


 ぁ…ぎゅって…♪


「な? こっちの方が嬉しいだろ?」


「ぁ…もっと…」「行ってくる」


 もう一度私を、ぎゅって抱きしめてから弓弦は行っちゃった。


「ミサイル全弾沈黙しましたわ、同時に戦艦Cも沈黙し、転移開始」


 弓弦…私の弓弦…私だけの弓弦は照れ屋さん。 私のことが大切な未来の旦那様。 夜は激しい…訳じゃないんだ、だって、例えお酒が入っていても絶対に弓弦からは襲ってこないから、時を止めている間私が襲うんだ。 本当に薄い本みたいだけど、本当に、気持ち良いの…あの感覚は絶対クセになる。 一度覚えたら絶対、絶対。


「これで四隻。 後三隻だけど…ここからが心配かな」


「そうですわね。 特にユリ以外の三人が心配ですわ…」


 軋む音、あの突き上げてくるような感覚…ふぇへへ……


「いや、一番危ないのはFだ。 見間違いじゃなければあれ、ディー中将の…」


 …? 中将? 中将って確か組織全体に十人しか居ないっていう階級の人達だよね。 あれ、確かあそこはレイアさん(呼び方何でも良いって言ってたからこの呼び方だよ)が向かったけど…あれなんで弓弦、少尉のあの人一人で行かせたんだろ?


「ディー中将? まさか…『アークノア』!? 何故Fなのですわ、普通はAでなくて!?」


「…気分だと思うよ。 それよりも、大丈夫なのかい? 実行部隊隊員も強者揃いだしあの人も、余裕で本気のレオンと渡り合えて、下せるんだよ? それにあの艦は「戦艦Fに高エネルギー反応、一時ですわ」って、言ったそばからマズいっ!! ノアの主砲は弾き切れないよッ!!」


 えっ、嘘、フィールド貫通ってヤバいよね!?

 あ、でも…私のバリアを弓弦で貫通させた時気持ち良かったなぁ……


「回避運動!!」「了解ッ!!」


「戦艦E沈黙ですわ!!」


 ユリちゃんが終わった。 だけど戦艦Bに行った弓弦が帰って来ない……風音さんと何してるんだろう。


「衝撃来るよ、備え「エネルギー反応、相殺されましたわッ!!」…っ、どちらにせよ衝撃は来るよ、備えてッ!!」


 遠くの方で起きた、大きな爆発、つまり相殺の余波が艦を大きく揺らす。 直撃したかと思う程に揺れる艦橋内で立っていた私はバランスを崩した転けてしまった。

 頭打った…ぅぅ、痛い。


「相殺したのは?」


「当艦甲板部より放たれた、大質量の魔法ですわ」


「オープスト大佐か…戦艦一隻の魔力砲を相殺するなんて、これはまた圧倒的だね」


 えぇ…なにそれ、戦艦の主砲を相殺って…いやまぁ、別に? 私も回避させることなら出来るよ、うん。 だってアークドラグノフ以外の時間を魔法で止めちゃえば避けられるんだから…奥の手だし試したこともないけれど。 力技ってチートだと思わないかな。


「っ、アプリコット少尉は大丈夫ですの? それにディー中将はどうして革新派に…」


「組織が掌握されてるんだ、あの人も軍人である以上逆らえないよ。 …早くこの場を切り抜けないとね。 リィル君、この空間内に侵入してくる戦艦が無いかの見張り、頼むよ」


「分かりましたわ。 …本当に、どうしてこんなことに…」


「……」


 …セイシュウさん、なんであんなに怖い顔をしているんだろう。 やっぱり…?

 ううん、今は弓弦に集中しなきゃ…? それも大事だけど、艦を守らないと。

 ま、戦艦の主砲も弓弦の主砲も、どんと来い! だよ♪

「シテロなの。 次回もユールが大活躍するお話なのー。 いきなり始まった不思議な展開だけど一応シリアス展開ではあるの。 …分かってはいるけど、出番が少なくなって悲しい気持ちで、私も日様ユールに抱きしめてもらいって思う。 私だって女の子なの。 温もり欲しいの。 予告なの…『最も危険と言われた戦艦の艦橋では激戦が繰り広げられていた。 歴戦の中将も強いけど対峙するレイアはユールのお姉さんで、強いの。 さらに、ちょっとした秘密が明らかになったりするの、楽しみなのーーー次回、実力者の衝突』…日溜まりファンタジー、きゃっほーなの」

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