イタズラ心と…乙女心
…結局、捜索も虚しく私達はアンナさんの手掛かりを何一つ掴むことが出来ないまま、アークドラグノフに帰還することになりました。
「…手を退けと…そう言ったんだな〜?」
「…危険だと感じたら、だってさ。 根が深そうとも言っていたね。 あぁ後でリィル君と知影ちゃんにお礼言い忘れないようにね」
…心無しか御二方共御機嫌が斜めの様です。
『…それで、今の俺とお前の状態をどう説明するんだよ…このまま隠し通すのか?』
そうですよね…話が拗れていますが…如何致しましょうか。
「…は〜…弓弦のやつはまだ向こうにいるみたいだしな〜…」
「会ってないのかい?」
「…会えなかったのよ。 お話しすることは出来たのだけど…」
フィーナ様が一瞬こちらを見られます。
「…インカムを持っていなかったから私は話せなかった…腑に落ちん…」
「……」
『…疑われまくっているが…遊ぶのは大概にして理由をこっそりフィーに言った方が良いだろ? なぁ風音…』
…実は現在の私、凄く悪いことをしています。 一度味わってしまった感覚、忘れ難いのが悲しき人の性。 未練がましいのは大変承知していますが…弓弦様が私の内にいらっしゃるという稀有な体験をより長く、より楽しみたいのです。 申し訳無いとも存じております…何せ…。
*
「…ご主人様からの連絡は入らないの?」
「…ん〜…駄目だな〜。 向こうがインカムの入れようとしないからな〜…」
目の前の分かれ道の前でレオンさんとフィーナ様が弓弦様についての話をしていらっしゃいました。 都合良く目の前の分かれ道は五つ、それぞれ別の道を進んでいる最中弓弦様から提案が。
『…風音、分かっているよな? さすがにそろそろ通信を入れないとヤバイから“エヒトハルツィナツィオン”を使って声を戻してくれ』
「…はい、畏まりました…“真なる幻、其は理を捻じ曲げ我が身を化せん…エヒトハル、ツィナ、ツィオン”」
言葉を噛まないように慎重に詠唱を完成させます。 すると。
「…声が変わると主人格も入れ替わる…という仕組みか。 常識に囚われてると駄目だが、驚いたな」
身体が俺の意思で自由に動かせるようになる…どうでも良いが魔法の最後、伸ばしても伸ばさなくても成り立つんだな…気にしてはいなかったが。
『どなたと御話にになりますか?』
「そうだな…」
楽しみは一番最後だな…よし。
インカムについている小型ダイヤルを回す…いつでも繋げるように回線が開いているみたいだ…繋がった。
『弓弦! お前今、どこにいるんだ〜!』
まずはレオンだ。
「思うことがあってな。 フィーから聞いているだろ? 少し洞窟の奥でアンナを探している…悪いが俺を置いて先に戻っていてくれないか?」
『置いていくってお前〜…お前さんに早く会うためにフィリアーナちゃん達も来ているんだぞ〜?」
「来ているのは知っている。 フィーのやつには後で連絡を入れるから気にしないでくれ」
『そうか〜…そういや楓ちゃんって女性隊員が今俺達の下にいるが〜…あの娘に連絡を頼んだのはお前さんか〜?』
「あぁ。 やっぱりどうしても、少しでもアンナの行方の手掛かりを掴みたいから無理を言ってお願いしたんだが…何か迷惑でもかけたか?」
『…ん〜迷惑ではないのは確かだが〜…またあんな可愛い「かわっ!?」…可愛くてレベルの高い娘だったが〜どうしたんだ急に?』
レオンの本心からの言葉が俺の心を抉る。
「い、いや何でもない…」
『クスッ♪ あらあら…褒められてしまいましたね♪』
…まぁ姿は兎も角、風音の振舞いがあれば誰とてそういう感想を抱くはずなので仕方が無い。
『…御褒めになっても何も出ませんよ?』
「楓に連絡係として暫くそっちに滞在するように頼んであるから居させてやってくれ」
『…ということは〜…暫くこっちに戻る気は無いんだな〜? 絶対に怒るぞ〜? 知影ちゃんなんかお前さんとの約束を守っているから尚更だ〜』
そうか…珍しいな。
『ご褒美、考えておかないといけませんね』
「あぁ。 すまない」
『了解だ〜。 何か分かったら楓ちゃんに伝えれば良いんだな〜?』
「すまない」
『気にするな〜部下が自由に動けるようにするのが隊長の役目だからな〜』
「ありがとう」…と言って通信を切る。
『部下思いの良い隊長…ですね』
「あぁ…俺なんかじゃ到底及ばないよ。 …さて」
インカムを持っているのはレオンだけだ…となると、この時点で会話出来る人物は2人に限られてくる…次は彼女。 試したことは無いが出来るはずだ。
『イヅナですね』
「そういうことだ。 イヅナ、聞こえるか?」
『…聞こえる』
よし、繋がった。
「元気にしているか?」
『…うん』
「そうか…まだ暫く戻れないから俺や風音の代わりに知影とフィーのこと、頼むな」
『…分かった。 …風音はどうしてるの?』
『クス、どうしましたか?』
…聞こえるのだろうか?
『…うん、聞こえてる。 …変なこと…していない?』
『そうですね…他の女性隊員の頭を撫でられたり、追いかけっこをされたり膝枕をさせてその上で熟睡されていましたね』
『む…っ! …皆に言いつける…‼︎』
『クス、フィーナ様には後程御伝えしますが他の皆様方にはよろしく御願いしますね♪』
『…分かった…早く帰ってきて「おい待てまだ話は」』
…弁明の暇も無く通信が切られてしまった。 もう帰りたくない…。
『クス、でしたらこのまま玄弓 楓として過ごされたら如何ですか? 私は一向に構いませんよ♪』
「…冗談だろ?」
『はい、冗談です』
…良かった…。
『…の、冗談です♪』
「は?」
冗談の冗談は…本気ということか?
『さぁ…♪』
「…次はフィーと“テレパス”で話すから邪魔しないでくれ…」
『…。 分かりました』
………よし。
「フィー、聞こえるか?」
『ご主人様! 今どちらにおられるのですか‼︎』
「…今洞窟の結構奥に向かっている最中でな。 通信が出来なく前に少し話そうと思ってな。 言いたいこと、あるだろ?」
『勿論あります。 ご主人様が洞窟の奥どころか私の近くにいることについて説明してください』
「『そうか…なら多分フィーの真下にいるのかもしれないな』…」
咄嗟に答えたのは俺ではなく風音だ。 相変わらず声真似が上手い…というより今回は俺の声を借りているだけか。
『…そうですか。 ご主人様の魔力を下ではなく横から感じるのは気の所為だと、そう言うのですね?』
…いかん、多分バレてる。
『それも丁度私とイヅナの間から感じるのですが…おかしいですね。 そちらには楓が…まさか』
「…えと、そのだな…話すと長くなるんだが…」
『御自白なさるのですか?』
風音の残念そうな声が。
「フィーだったら分かってくれるだろう。 実はな『大丈夫です。 大体分かりましたから』…どう分かったんだ?」
『楓とはご主人様が世を偲ぶために女装した姿…ですよね? おそらく風音が言ったことをそのまま話されているのでしょう。 そう考えれば合点がいきます…違いますか?』
俺に対する問い掛けの形をとってはいるが既に本人の中では確信があるようだ。 世を偲んではいないが。
「なら、分かっているな?」
『はい…楓については知らないフリ、気づかないフリをしていれば宜しいのですね…』
声音から察するに…納得しきれてはいないが命令だから従う…そんな感じだな。
「…会えないというわけではないだろう? 風音に聞かれるという前提は付くがそれでも良いのなら話すことは出来る…いつでも話せるはずだが?」
『…あくまでも楓として、ですよね?』
「…イヅナと一緒だ。 この3人以外には絶対聞かれていないという場合だったら、玄弓 楓としてではなく他称、お前の…ご主人様兼夫である、ユヅル・ルフ・オープスト・タチバナとして話す…それで良いだろ?」
『はい♪ …ですか知影さんに少し悪いような気がします…』
『フィーナ様の仰る通り贔屓が過ぎるかとは思います。 この際知影さんにも御説明された方が…』
頭の中に二つの声が聞こえるというのは些か頭に痛いものがあるな…知影に…か。
「…『あいつのため』と言えば2人共分かるよな?」
『知影さんのため…?』
『分かっています…ですが何も伝えないというのは…』
分かっていない風音と分かっているのフィー、正反対の答えを返す。
「まず、『橘 弓弦少将』は、アンナが見つかるまで暫くアークドラグノフを離れていた方が艦の人間に危害が無いはずだ。 何故かと言うと、先に向こうが謎の魔法を使って仕掛けてきた際に狙いはレオン…というよりは俺のような気がしたからだ…勘、だがな」
『…それが知影さんとどのような関係があるですか?』
「…こっちは結構確信がある。 どうも知影のやつがつい最近になって何かの魔法に目覚めたみたいでな…見たことの無い属性だった」
『…知影を自分から遠ざけることで危険からも遠ざける…そうご主人様は考えているの。 …ご主人様、属性については帰還次第確認してみます』
見当があるみたいだ。
「頼む…俺は下手に動けないからな…それでどうだ風音、分かったか?」
『…クス、よく分かりました。 …因みに、もう一つの目的は意地悪をなさりたいのですよね♪』
…しまった。 覗かれた。
『違うわよ風音。 ご主人様は知影がどこまで自分がいない状況に耐えられるか試そうとなされているのよ。 …ですがご主人様、知影さんのことです、些細なことでも見逃すはずが無いのでいずれ気づくと思いますよ?』
…まぁ確かに『俺』が身体を動かしていたのなら二日もかからずに気づくだろう。
「心配するな。 その点については問題無いはずだ…さて、そろそろ切るぞ。 良いか、二人きりの時以外は他の人と話すように普通に接してくれ」
『はいご主人様…じゃなくて、楓』
「よし、良い子…じゃない、ありがとな」
“テレパス”を切る。
「さて、じゃあこのまま俺が『真なる幻、其は理を捻じ曲げ我が身を化せん、エヒトハルツィナ…ツィオン』…は?」
勝手に口が動いて“エヒトハルツィナツィオン”を発動させた…ということは…っ。
『…おい、何をやってるんだ…‼︎』
「クス、此方の方が効率上宜しいかと思いまして♪」
弓弦様の御身体を私が動かせるようになるというわけです。 弓弦様が御気を抜かれている際にジャミングを合わせれば少しの間だけ弓弦様を動かすことが出来るかもしれない…という仮定の下、実行致しましたが見事成功です♪
『見事成功です♪ …じゃないだろう‼︎ 俺の身体を返せ風音!』
「御断り致します。 御断りさせて頂きます。 偏に弓弦様の御為、断固御断りです♪」
私は声を変えるために使ったはずですが…弓弦様が戻したはずの身体の一部が何故か先程と同じようになっています。 …そしてそのまま私は皆様方と合流したのです。
*
…そして帰還、今に至ります。
「それで楓ちゃんはピュセルで寝泊まりする…ってことで良いんだな〜?」
「はい。 元々此処の者ではないので…それに以前アンナさんから許可を頂いています」
「別にピュセルじゃなくても良いんだよ? アークドラグノフには空いている部屋も多いから…」
「クス…結構ですよ。 重ねて申し上げますが忍びありませんので」
八嵩様は困ったような表情をされます…御気持ちは分からなくもないですが…。
『監視に都合の良い部屋で過ごしてほしいのだろう。 気持ちは分からなくもないが、変に監視用のカメラが設置されたら面倒だ。 出来れば確実に情報が漏れない場所じゃないとな』
弓弦様の仰る通り、飛んで火に入る夏の虫では頂けないので多少でも無理を通さねばなりません。
「…本人がそれで良いと言っているのならそれで良いと思うのだけど、他に何か問題があるのかしら?」
「…そうだね。 ごめん、まだ少し気が立っているみたいだ…」
自嘲気味に笑う八嵩様。
「…セイシュウ、お前まさかリィルちゃんにもそんな態度とったんじゃないよな〜?」
「…っ」
「おいおい…以前も言ったけどな〜? 過ぎたことを気にするな〜まして、他人のことをな〜? リィルちゃんに謝って甘味食いながら寝とけ…隊長命令だ〜」
「…そうさせてもらうよ」
背を向けて艦橋を後にする八嵩様の背中を見送られてから、隊長様が溜息と共に視線を、八嵩様が御忘れになられた携帯端末を閉じようとして…その手が止まりました。
「…‘履歴が削除されてるな…セイシュウのやつ、一体何を調べていたんだ…?’ …んじゃ〜お前さん達は楓ちゃんに艦を案内しとけ〜解散!」
「…だそうだ。 うむ、ではこの際皆で案内してはどうだろうか?」
「…私は…そうね。 良いわよ」
「…コク」
ユリさんの御提案で最初に隊長室へと向かうことになった私達は、八嵩様と同じように艦橋を後に致しました。
「…博士も隊長も…雰囲気が普段と違った…」
「…うむ、私もあのような2人は見たことが無かったな…機会があれば聞きたいのだが…」
「駄目よ。 ああいう人間は爆発するまで抱え込むの。 あの人間達がそれぞれ抱え込んでいるものを吐露出来る人間がいない限りは無駄。 あなた達が変に心配を掛けると、それが余計な罪悪感に繋がって余計に拍車が掛かる結果しか生まないわ」
『…俺にとっての知影やフィーみたいな人ってことか…成る程な』
「……」
…動じてません…動じてませんよ…動じて…うぅ…っ。
「…? 楓、どうした…の?」
「いえ…少し感傷に浸っておりました…」
あの夜…『共に十字架を背負わせてくれ…家族だろ?』と弓弦様が仰った時、嬉しかったものですが…まさかそういった人物として認識されていないとは…戦慄しました…。
『微妙に人の台詞を変えたな』
「…む? もしや楓殿は他部隊に残された想い人がおるのか?」
「…気になる」
「クス、秘密とさせて頂きます」
「………はぐらかした」
拗ねた様なイヅナが愛らしいですね。
『風音もそう思うか? 可愛いよなぁ…』
染み染みと呟かれる弓弦様…御本人は無自覚なのでしょうが…いえ、私が推論を述べたところで意味があるわけではありませんね。
「入るわよ」
フィーナ様が扉を軽く叩いてから開きます。 …隊長室の中ではフレージュ様と知影さんが以前の隊長様、弓弦様と同じ様に書類に判を押されていますが、フレージュ様の機嫌が宜しくありません。
「……あ、皆…ほらリィルさん…皆が帰ってきましたよ」
「…お帰りなさいまし」
目線を上げられずに書類だけに目を通されている様子はまるで何かから逃げている…そんな気が致しました。
「…弓弦、まだ向こうにいるの?」
「…えぇ。 私達もお会いすることは出来なかったわ」
「そっか…弓弦…まだ帰ってこないんだ…寂しいな…」
『知影…ごめんな…』
…弓弦様…。
「…でもきっとご主人様のこと、何かご褒美を用意されているはずだわ。 きっと…ね」
フィーナ様がこちらを一瞥されてから知影さんに何か耳打ちをされます。 …悪い笑顔です。
「うむ、これだけ待たせているのだ。 あの橘殿と言えど何でも言うことを聞いてくれるはずだ。 …私は何を願えば良いだろうか…♪」
『ユリには言ってないのだが…聞かなければいけないのだろうか…なら、どうすれば良いんだ? 一つだけ、何でも聞くっていうのはいい加減飽きたからな。 しかし…変に俺が考えるよりかは当人にやってほしいことを考えてもらった方が喜ぶだろ…って、覗くな風音』
「…博士は…どうされてますの?」
「…レオンに言われて研究室で休んでる」
「…そうですのね…でしたら今は1人に「私はどうでも良いけど…糖分の過剰摂取をしてても知らないわよ?」行って参りますわ‼︎」
一瞬にしてフレージュ様の御姿が消えました。 …積まれた書類が、数十枚宙を舞ってしまい、それぞれ手分けして拾います。
「…リィル…一途」
「良いよね…爆発しろっ‼︎ …って感じだよ」
「知影? あなたは絶対にそんなこと言える立場じゃないから言わない方が良いわよ?」
「うむ。 この中で橘殿と一番近しいからな…いや別に誰と近しかろうが私が知ったことではないが」
「…だって私なんか最近やたらと蔑ろにされてるよ? 色々…出番も…うぅ…弓弦〜弓弦〜…」
「…皆様本当に橘少将のことが御好きなのですね」
書類を纏め、机の上に置いてからふと思ったことを口にします。 …そういえばまだ知影さん達には自己紹介をしていませんでしたね。
「申し遅れました。 橘少将との連絡係として暫く此処に滞在させて頂きます、玄弓 楓と申します。 呼び易い様に呼んで下されば結構ですので宜しくお願い致しますね」
「…じゃあ楓ちゃん! …弓弦とはどんな関係なの?」
瞳に光がありません。
『変なことは言うなよ。 面倒だからな』
「先の任務の部隊長と隊員の関係です」
殺気を確かに秘めた瞳を徐々に穏やかになっていきます。
「…うん、なら良いかな。 流石の弓弦もこんな可愛い娘をすぐに攻略するなんて出来ないよね…うんうん」
「…しかしその任務で部隊の隊長だったからとて、わざわざその隊長と隊長の部隊との連絡係に志願するものか? …いや、しているからこそ楓殿はここにいるのだな…うむ」
「…義理堅い」
ユリさんもイヅナも感心された様子。 無事誤魔化せたみたいですね。
「これから彼女を案内しようと思うのだけど、誰かついてくる人はいるかしら? …全員行くのね。 じゃあ早速行くわよ」
「レッツゴー♪」
「うむ!」
「…ゴー」
『…どうやら心配無さそうだな』
「‘…はい’」
艦内を歩く私達の内、私へと向けられる視線を感じましたが食堂に寄り道、注文を済ませた後に隅の卓に腰を落ち着けました。
「…橘殿、今頃どうしているのだろうか…」
「あらユリ…そんなにご主人様のことが心配?」
「し、心配と言えば心配かもしれないがいや! 心配などしてないぞ!」
「あ! きたきた…はむ。 ん〜っ♪」
知影さんがパフェを食べて足をバタつかせます。
「…知影殿はやけに落ち着いているな」
「…言われてみればそうかも。 何かね…不思議と弓弦が近くにいるような気がして…それで落ち着いているのかもしれない」
「…うむ、美味だ。 …いつもの妄想ではないのか?」
「妄想って…酷いよユリちゃん…」
「…当然ね」
「…当然」
「むぅ…でも本当にそんな気がするんだけどな…だけど弓弦センサーが反応しないし…何だろうこの違和感…?」
『…本能で俺が近くにいることを察しているのか…凄いな』
何処か嬉しそうです。
「そうそう、最初に楓ちゃんを見た時一瞬だけど弓弦と重なったんだ」
「‼︎ た、橘少将と…ですか?」
「うん。 言葉遣いも歩き方も仕草も全然違うし…」
「きゃっ!? な、何をされるのですか!?」
ま、まさか胸を触られるとは…っ。 流石の行動力です…‼︎
「うわぁ…大きい…マシュマロみたいに手に吸い付く弾力が…うん、本物だ」
「本物に決まっているではありませんか‼︎」
「えっ!?」
何故か驚愕の事実を知ってしまったような声を発せられるフィーナ様。
「…そ、そうよね。 お、おおお、女の子だもの…っ、ごめんなさい‼︎」
『…絶対に何やら誤解しているな。 何とか誤解を解いてくれないか?』
…どう説明すれば良いのでしょうか…?
「…フィーナ? どこからどう見ても女の子だけど…良い香りもするし」
「立ち振る舞いも見ても女性としか思えんぞ?」
「…落ち着く」
「あらあら…ありがとうございます♪」
「…コホン、そうね…少し動揺したみたい。 …後でスリーサイズ、教えて…興味があるわ」
「はい、分かりました…フィリアーナ」
届けられたショートケーキの先をフォームで取って口に運びます…美味しいです…!
『…何でまたショートケーキなんだ?』
…。 はぁ、どうして御分かりにならないのでしょうか、この方は…。
「楓ちゃんってショートケーキが好きなの?」
「大好きですよ♪ 特に最後に食べる苺が格別好きです」
「へ〜…楓ちゃんって和菓子が好きそうなイメージなんだけどな」
「和菓子も好きですが一番は此のショートケーキですよ♪」
最後の苺を口に入れてゆっくりと味わいます。
『…ん、味覚も共有しているみたいだな…これで味わえなかったから地獄だが…』
「さてと、じゃあ次行こ次!」
皆様が食べ終わったことを確認されてから、今度は知影さんの先導で食堂を出ました。