私の中のチップ その2
実際の所、なぜ命綱をして地上123メートルの高層ビルの屋上から、25階の空調のダストに向かって
降りていこうとしている自分がいるのか・・・引き返せない所まで追い込まれたのかわからない。
あの日、新宿のボロビルの地下で医療椅子に座ったまま、警察の乱入を呆気にとられているうちに
確保されたから、こうなったのだ。
チップを外してもらうという、反社会的な行為の最中だった俺は
「あ~逮捕されたんだな・・会社も首だな。それに離婚も決定かな。
まあ離婚はいいか・・・」
だが、船越という警部は俺を逮捕したわけではなかった。
「これは詐欺なんだよ。あんたは被害者。おかげで現行犯逮捕ができた。
でもな、反社会的行為だからな・・・・・どうしよう」
「・・・・・・・」
「君はどうして、チップを外そうなどと考えたのかね」
俺は、浮気がばれたことや同僚が連続死した事を話し、
監視されていることに不安を感じていると話した。
すると、船越警部は、意外なことを話してきた。
「同じだな。実は俺も7年追ってきたドラッグの売人が突然頭が痛いと倒れ、
さらに4年追っていた強盗の被疑者も同じように亡くなった。
同様の自然死が、署内で今月4件あったんだよ。
まあ悪い奴らが、簡単に自然死してね。社会にはいい事だが、奇妙だろ。
不要な外注が駆除されたみたいでね・・・・そのとき思った事は、これは変だという事なんだよ。」
その違和感は、俺と同じだと伝えた。
こりゃ同情してくれたのかな~と思っていると、彼は続けた。
「機械化された肉体ってね・・銀河鉄道999は、より素晴らしい機械の肉体を探してけど、
それは腕とか体だろ・・・でも、俺たちのチップは脳神経につながっているんだよ。
そう考えると、誰かが操ることができるって思ったんだ」
「えっ、それってどういう事ですか」
「神経を操れば、血圧あげたり、心臓の動きを止めたり・・・・・
記憶をなくしたり、記憶を書き換えたり…簡単だという事だよ」
彼もまた、監視され管理されている事に我慢ができない同志だったのだ。
「俺はね、マザーコンピューターの場所を特定したんだよ。
署内で、あるコンピューター関係の技術者が、立て続けに心臓まひで自然死したんだよ。
なんの疑いも持たれず、処理されたが、その時も違和感を感じていた。」
その違和感が、犯罪者の死につながり、チップによる殺人ではないかという疑惑に至ったという。
「だからね。破壊するつもりなんだよ。マザーを!
君も手伝ってくれるよね」
これで、逮捕もくそもなくなり、俺はこうやって空中にぶら下がっているんわけだ。
船越警部も、俺の隣で、命綱にぶら下がっている。
後、カメラマンだ……
いよいよ空調設備の中に入ることに成功した。
ダクトの中を進み、ある部屋の上にやってきた。
「なんだよ・・・冷房ききすぎだよ」
船越がそう言いながら、天井板をはずした。
「なんだあれは・・・・」
そこには、スーツを着た男が倒れていた。
・・・・・・続く