五話 それは多分大問題でしょう
全く・・・、お腹減ったなぁ~。
突然だが僕は字を書くのが嫌いだ、昔っから大嫌いだ。
だから紙日記の筆記回数が少ない、国語が苦手、ノート点はボチボチ。
『Why not?(なんで)』と問われれば『Character because dirty!(文字が汚いから!)』と答える。
後は芯が折れるからとか思考より遅いとかが筆頭にくる。
今の僕は絶望日記を書く気が萎えてるので体調が優れない(体調は元から)。
それに名の知らない女の子に朝ごはんを食べられ元気が出ないのだ。
そして何より、今は昨日の宿題の範囲で作った筆記テストだから。
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自慢話であるが僕は記憶力なら誰にも負けない自信はある。
もしかしたら開発初期のPCに勝てるかもしれない。
国語は苦手と言っても暗記とも思える漢字、表現技法、古文、聞き取りは高校入試の時は『EASYモードが許されるのは小学生までだよね~』なんて懐かしいものを脳内再生させながら鉛筆が止まった。
文章で状況が理解できない僕は小論文、作文が綺麗サッパリにできないのだ。
一番嫌いなのが国英共通の自由作文、英語は2分考えて書けるが国語は上手くいかない、作者の伝えたいことがわからない状態で自分の主張なんて書けるはずがないと投げ捨てた結果がこれ(公立不合格)だよ。
まさかその嫌いなもの主席と次席、小論文と自由作文が今回テストの半分を占めている。
縦読みをあまり好まない僕は読むペースが一段と下る。
気づけばテストは終わっていた。
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結果はギリギリ合格、翌日から補習に行く必要がなくなった。
越前先生は黒板に文字を書きながら、
「お前ら5人、全員進級ラインに乗ったぞ!」
やっぱ見えてないのかな・・・、いや僕だけ見れる亡霊なのかな?
先生は教室の左側に寄り、黒板に書いてある文字が全部見れる。
『お疲れ様』と、この文字を見た瞬間に僕はため息をついた。
「本日にて本年度の2学年夏期国語補習を終わりにする」
明日からのんびりできるとでも思っていたが、不運にも厄介者がいるんだ・・・。
***
僕は珍しく神谷に話しかけることにした。
理由は奴はちゃんと合格したのか気になるからだ。
「な、・・・なぁ神谷」
無口キャラと思っていた僕は少々驚いた、
「初めて口聞くには態度でかいな、いつから仲良くなった?」
「お前の存在がみんなから消えた頃から」
軽く悪口だが多分セーフだろうと大きく前進した。
「ふぅん・・・、最近思うのがいっその事地球ごと消えて欲しいなって思っててさ」
「それは関係ないとして・・・」
「なにが聞きたい?」
僕は右手で壊れた携帯を撫でるのをやめて、
「今さっきやったテストはどうだった?」
神谷は左手を支えに肘をついて、
「提出したっきり帰ってこない、多分問題無いだろう」
「いや・・・大問題だろそれ」
「今11時か・・・、もう帰る」
さよならの一言も無しに神谷はバックを片手に持って、教室から去っていった。
***
教室の机に座って狸寝入りするのがささやかな幸せ、これも高校に進学したいって思った理由の一つだと思われる。
このまま寝て、早く夜にならないかな・・・と思っていたのだが、
「そんなことしてたら背中に刃物を刺されるよ」
首を右回りさせて見ると神山のEカップがあった。
桃みたいに美味しそうなので右手を伸ばして感触を試そとしたら手を手で弾かれ、
「大丈夫?」
軽く頷いて正気に戻った。
「さっきあなたの妹さんかしら、昇降口であったわよ」
妹なんていたっけ?僕は一人っ子のはず・・・。
「どうだったんだ?」
「妹さんが『祭次お兄ちゃんはどこにいますか?』って質問されたわ」
読者にも伝えてないのになぜあの女の子が僕の名前を知っているんだ?
「それでなんて答えた?」
「『祭次お兄様なら2学年理系3組にいるよ、場所がわからないなら教えてあげる』って言ったわ、廊下で待ってるわよ」
「そうか話してくる」
と神山に言って、教室を出た。
***
「ストーカーかよお前?」
「いや、だってお腹減ったんだもん」
「そんなんでよく今日まで生きてたな、それで名前は?」
「なんで生きてこれたんやろうなぁ~」
「名前を教えろよ!」
あっ、我ながら天才的なことを思いついた。
「名前を教えてくれたら今日の晩飯まで食わせてやる」
ご飯とプライド、どっちを優先する?
「えぇ・・・、あたいの名前は・・・水華って言うんだけど気に入らないんだよね・・・なんか」
「へー、水華って立派な名前があるじゃん。これで解決だ」
「なんでよ?」
「なんでもないよ、じゃあこれから昼ごはん食べに行くか」
今まで名前が出されていなかったため“女の子”でやっていたところを水華と簡単にやれるなんてそんな難しいこと、今の水華に言っても時間の無駄だろう。