4話 朝起きる→お茶→車→追われる→逃げる
「実に奇妙だ・・・」
僕はスマホをいじりながら呟く。
7月30日の11時に目覚めた僕は12時、お湯を沸かしている間に夏休みの課題を机に広げる。
明日本気だそうと思った僕はリビングに逃走してソファーに座る。
そしてスマホを見ていて呟いたのが2章4話目の一番最初だ。
「どうしたの?」
と、問いかける水華に、
「ジョジョの冒険より奇妙だ、下手すりゃこれでラノベ1冊書けそうな気がするくらい奇妙・・・」
と、答えた。
僕がライトノベルを書いた所で売上の都合上販売停止になるんだろうな。
お湯が湧いたのか、水華は火を消しカップラーメンにお湯を注ぐ。
5分後、「「頂きます」」
朝昼ごはん、約11時間前に僕は仮想世界であっても人を殺したらしい。
それをふと考えてしまった僕は早食いになり、食べ終わったと同時にソファーの上で体育座りしていた。
僕のスマホ、仮想世界で見た怪しげなアプリが現実に来ている、
でも起動できない、削除できない、開けないから気になる。
「91番さんに謝罪しなくちゃ・・・」
僕がボソッと言った一言に水華は、
「どうやって会うの?」
知☆ら☆な☆い
ここでインターホンが鳴った、
***
「僕が出るよ、気にするな」
僕は立ち上がろうとしていた水華の肩を支えに立ち上がり、出てみた。
モニターに見覚えのない女性が映っていた。
「誰ですか?」
『610番ですよ~』
・・・え?
もしかしてあの神の候補者予選の1人・・・?
「そんなこと言っても自動ドアのロックは解除しませんよ」
『えぇー・・・、じゃあ下来てくれますか?』
えぇー・・・、怖い。
この女性、清楚でモデルさんっぽいイメージあるけど・・・。
「わかりましたよ、どこかで会話でもするんですか?財布必要ですか?」
『良い子だね、・・・じゃあどこかでお茶でもしましょうか』
なんらかのスイッチが入った僕は終了ボタンを押して舌打ちした。
僕はジーンズを履いて、ブランド物のベルトをジーンズに通して、買いたてのTシャツを着て、ハットを被り、
「水華、大人しく待ってろよ」
「うん」
水華に一言言って財布をケツポケに入れて扉を開いた。
そして一言、
「なにちょっとテレビに出てるモデルさんとお茶するだけで盛り上がってんだよ・・・」
どうやら僕はもしも彼女とデートすることになったら用の服装になってたようだ。
610番と名乗る女性=来栖玲子、最近テレビに出ている読者モデルだ。
***
「祭ちゃんは抹茶が好きなんだね」
28日に行った喫茶店で僕はどうやら抹茶ケーキ、アイス抹茶ラテを頼んでいたようだ。
甘やかされても気は抜かない、仮想世界では610番の来栖玲子は店員に『ここからここまで』と頼んだケーキ5品が机の上にある。
「一口あげようか」とか「あ~ん」とかされても僕は「すいません」と断っているが女性の行動は激しくなっている。
「まぁ京都府生まれなんで・・・」
嘘をつく。
女性は真に受けて、
「へぇ~、突然聞くけど私、来週撮影で京都に行くんだけどオススメの観光スポットって無い?」
質問された。
「どいつもこいつも金閣寺って言いますけど、僕通で行きますと銀閣寺ですよ!」
「なんで、なんで?」
「近くに大文字山があり、京大があり、なにせ京都駅から真っ直ぐ北に行き、京都御所の今出川通を東に曲がって直進すれば銀閣寺ですよ!」
女性は一口ケーキを食べ、
「京都御所って何・・・?」
「えっ・・・、東京駅のすぐ近くにある皇居って知ってますよね・・・?」
「あぁ~、あの戸籍ではなく皇統譜に記載されてるのが原因で投票権を持っていないお偉いさん達が住んでいるところだっけ?」
実にマニアックだ、それ以前に投票権を持ってないことは知っていたが理由は知らなかった・・・。
家帰ったら皇統譜を調べよう。
「そうそう、そういう人たちを天皇って言って、京都御所とは歴代天皇が鎌倉中期から明治初頭まで住んでいた宮殿のことですよ!」
「そ、そうなんだ」
「もしかして歴史・・・、苦手なんですか?」
女性は素直に頷いてケーキ5品を完食した。
それにしても来栖玲子の人気は絶大だ。
たかが有名人の背中が外に見えているだけでも写真を取る女子高生やいかにもオタクっぽい人たち。
これで僕の顔が週刊誌でモザイクかけられて掲載されてたらどうしようと思ってしまう。
一番つらいのが人集りの中に東金と秋沢が僕のことを指さして妬んでいることだ。
***
流石有名人なのか、それとも人が多すぎるのか、黒の高級車が手配されていた。
会計後ダッシュで車に乗り込んだ僕は女性の人気度を更に知る。
『サイン書いて~』とか『メアド教えて』等の要望に答えるかのように名刺入れを開けてサイン入りの名刺を手に掴み投げ飛ばし車に入った女性はファンにばれない程度に舌打ちしていた。
車を走らせ3分、行き先が知らない僕は不安になりながらスマホでゲームをしていた。
そして女性は本音を呟く、
「ブスばっかだね・・・、努力の欠片も見えないわ・・・」
「しょうがないじゃないですか・・・生まれつきも入ってくる問題ですし・・・」
「せめてエステ行くなり豊胸手術をするくらいしなさいよって感じよ、でもまぁ偽物より本物が勝つ・・・それが現実だもんね」
そういう愚痴言う女性、来栖玲子のルックスも偽物並の整いだ。
これが本物なら友達から始めたいくらいだ・・・。
「あの来栖さん・・・、整形とかそういうの一度もしたことないんですか?」
疑問の返事はデコピンできた。
「さっき言ったじゃない、そこらの人気厨のように『れいたん』って呼べって」
「れ、れーたんさん・・・一度も整形したこと無いんですか?」
フフと笑いながら『さんは要らない』と言った後に、
「作った身体を自慢するなんて、一流のクズ同然だわ」
「正論言いましたね、言い難いんですがモテモテじゃないんですか?」
「なんでそう思うの?」
あ・・・。
この程度言ってもいいか、
「僕って女性に意識は持たない系ですけどれーたんの身体を見て美しいな~って思って」
頭を撫でながら女性は耳元で、
「特に身体のどこが?」
ここはストレートを避けて、
「腕とか首とか・・・」
「ほとんどの人は顔と胸って言うけど祭ちゃんは見るところが一流なんだね~」
そんなつもりはないがつい、さっきの迷いは無かったことにした。
それにしてもさっきからスマホのモニターをチラチラ見られて絶望日記が書けない、お陰で記録87686号から更新ができない状態になっている。
絶望日記を手放した僕に他の特徴はあるのかと疑問に思い、女性の真の狙いがほぼ確定した。
610番は何かしらのルートで僕が二試合目に参加することを知り、どこかで絶対に当たると考えた610番は身近にいる候補者から現実で殺すつもりだろう・・・。
これが僕の予想だ、いや・・・多分確定だ。
「ねえ祭ちゃん、大丈夫?」
「大問題かな・・・、僕帰らないとな~」
「嘘~、せっかく理想の子と自宅で泊まろうと思ってたのに~」
僕は絶望日記を更新するために記録87687号まで書いて、車が走ってる中ドアを開け、
「610番の狙いがわかった気がする・・・、僕のことを殺して神の候補者になれる現在の倍率を125倍を124倍にするつもりだろ!!?」
610番は笑顔で僕の左手首を握って、
「ダメだよ、外に出ちゃ・・・」
「僕は逃げるぞ!、Fカップのれーたん!!」
僕は握られた左手首を振り払い車から飛び降りた。
そして路地裏に逃げ後ろを確認すると、
「嘘だろォォォ!!??」
僕と610番が乗っていた車の後ろに護衛としていた車から5人の黒服が出てきた。
「玲子様の命令だ!、玲子様の誘いを断って逃げるとはもったいないぞ小僧!!」
「うるせェェェェェ!!、あんな人と一緒にいたら僕の初めてがァァァ!!」
僕は矢先にあるゴミ箱を全速力で飛び躱し、ゴミ箱を蹴っ飛ばして黒服の動きを少し止める。
しかしそれは10秒ほどの足止めにしかならずまた会話が始まった。
「玲子様に初めてを授けたいっていう人は何万といるんだぞ!!」
「黙れェェェ!!、初めては将来の婚約者に授けるんだ!!」
走って思ったが僕と黒服の会話は次第に下ネタになっている。
「幸運だな小僧!、そっから先は袋小路だ!」
「嘘言うな強面!!、そんなジョークで死にたくなッ・・・・・!」
嘘じゃない、目の前はビルだ。
舐めんなよ僕の足掻きを!
「じゃあな黒服共、僕のほうが一枚上手だ!!」
「頭おかしくなったッ・・・・!?」
僕はゴミ箱をジャンプ台に、ビル2階の窓ガラスに飛び込んだ。
そしてゴミ箱サビが原因で見事に壊れた。
***
記録87687号
某都合上により外から窓ガラスに飛び込み、謎の空間で血だらけになった。
もしかしたら610番に殺される前に大量出血が原因で死ぬかも。
遺書でも書いておこうかなって思ったけど印鑑が無いや・・・、絶望的だわ。
僕はマンションの廊下にいるのか?
もしそうだとしたら構造がおかしいと最初は思ったが、最後に見た太陽の場所を考えれば洗濯物を干すために南側にベランダを設置するだろう、そう考えればビルの廊下がここにあっても不思議ではない。
寝っ転がって絶望日記の記録87688号を書こうとしたら脇腹を蹴られる痛みがしたので少し身体を起こすと見覚えのある人物だった。
「あら三和君じゃない、てっきり住民の落し物だと思った」
「他人の落し物を蹴る外道はどこにいるんだよ・・・神山さん・・・」
もう一度脇腹を蹴り、
「ここにいるわ、なんか嫌な雰囲気がするから部屋貸してあげるわ」
「なんか済まないな・・・」
立ち上がった僕の顔面をグーで殴り、
「もちろん何かで返してよ」
こんな暴力的な女性が僕のクラスメートだなんて信じたくないものだ




